2018-12-31(Mon)
災害相次いだ1年 災害列島 正しく恐れ 備える
南海トラフ地震 「高台へ逃げろ」徹底 地域を挙げて備え急げ
朝日新聞デジタル 2018年12月28日05時00分
(社説)災害列島に生きる 正しく恐れ、備えるために
----山地が広がり平地が少ない。海に囲まれ、川が多い。この国のどこに住んでも、自然の影響から逃れることはできない。
近年、その自然が従来の常識からは想像できない態様・規模で頻繁に牙をむく。
----「経験したことがない」「最大級の」。そんな言葉が当たり前に使われる。もはや、異常が通常になりつつある。
しかもその傾向は、さらに強まると予想されている。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化が進むと極端な気象が増えると警告する。海の氷がとけると海流も変化し、影響は地球規模に及ぶ。名古屋大学などの研究グループは「対策をとらないまま海水温が上昇すれば、今世紀中に風速67メートルを超すスーパー台風が日本列島を直撃する」と予測している。
----自然とうまく付き合いながら命を守る。いま必要なのは、そんな考え方ではないか。
霞堤(かすみてい)、という言葉がある。堤防に切れ目を入れ、増水時はそこから水を田畑に逃がす古来の技法だ。だが明治以降、強固な堤防に変わっていった。
----「気候変動によりさらなる水害の激甚化が懸念される中、改めてその機能を評価することが必要」。国交省北海道開発局と道の委員会は、昨年まとめた水防災対策にそんな一文を入れた。
水につかる土地があるのを前提にしており、合意形成は容易でない。だが自然を制圧せず、力を受け流しながら共生する防災術に改めて光があたる。
西日本新聞 2018年12月28日 10時34分
社説:南海トラフ地震 「高台へ逃げろ」徹底せよ
----とにかく高台に逃げる-。この大津波への簡素で最大の対策を、対象地域の全域で徹底することが何より肝心だ。
海溝型の南海トラフ巨大地震への対応を巡り、政府・中央防災会議の有識者会合が報告書をまとめ、防災相に提出した。
政府は昨年、事前の避難につながる数日から数時間前の地震予知について、「現在の科学的知見では困難」として断念した。代替策として有識者会合は、巨大地震の前兆と疑われる異常現象が起きた場合の対応策を検討してきた。
----南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は70~80%程度と極めて高い。津波の高さは大分県佐伯市や宮崎県串間市で15メートル前後と想定されている。東日本大震災や熊本地震をはるかにしのぐ被害も起こり得る。
近年の災害で何度も経験した「想定外」の事態を教訓にしたい。九州一体で対応する発想も当然必要だ。浸水地域の想定、高台の整備、避難場所の確保などをさらに急ぎたい。避難勧告などが出されても「自分だけは大丈夫」と考えて動かない人は多い。啓発を含め、きめ細かに対策を組み立てたい。
朝日新聞デジタル 2018年12月28日05時00分
(社説)災害列島に生きる 正しく恐れ、備えるために
----山地が広がり平地が少ない。海に囲まれ、川が多い。この国のどこに住んでも、自然の影響から逃れることはできない。
近年、その自然が従来の常識からは想像できない態様・規模で頻繁に牙をむく。
----「経験したことがない」「最大級の」。そんな言葉が当たり前に使われる。もはや、異常が通常になりつつある。
しかもその傾向は、さらに強まると予想されている。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化が進むと極端な気象が増えると警告する。海の氷がとけると海流も変化し、影響は地球規模に及ぶ。名古屋大学などの研究グループは「対策をとらないまま海水温が上昇すれば、今世紀中に風速67メートルを超すスーパー台風が日本列島を直撃する」と予測している。
----自然とうまく付き合いながら命を守る。いま必要なのは、そんな考え方ではないか。
霞堤(かすみてい)、という言葉がある。堤防に切れ目を入れ、増水時はそこから水を田畑に逃がす古来の技法だ。だが明治以降、強固な堤防に変わっていった。
----「気候変動によりさらなる水害の激甚化が懸念される中、改めてその機能を評価することが必要」。国交省北海道開発局と道の委員会は、昨年まとめた水防災対策にそんな一文を入れた。
水につかる土地があるのを前提にしており、合意形成は容易でない。だが自然を制圧せず、力を受け流しながら共生する防災術に改めて光があたる。
西日本新聞 2018年12月28日 10時34分
社説:南海トラフ地震 「高台へ逃げろ」徹底せよ
----とにかく高台に逃げる-。この大津波への簡素で最大の対策を、対象地域の全域で徹底することが何より肝心だ。
海溝型の南海トラフ巨大地震への対応を巡り、政府・中央防災会議の有識者会合が報告書をまとめ、防災相に提出した。
政府は昨年、事前の避難につながる数日から数時間前の地震予知について、「現在の科学的知見では困難」として断念した。代替策として有識者会合は、巨大地震の前兆と疑われる異常現象が起きた場合の対応策を検討してきた。
----南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は70~80%程度と極めて高い。津波の高さは大分県佐伯市や宮崎県串間市で15メートル前後と想定されている。東日本大震災や熊本地震をはるかにしのぐ被害も起こり得る。
近年の災害で何度も経験した「想定外」の事態を教訓にしたい。九州一体で対応する発想も当然必要だ。浸水地域の想定、高台の整備、避難場所の確保などをさらに急ぎたい。避難勧告などが出されても「自分だけは大丈夫」と考えて動かない人は多い。啓発を含め、きめ細かに対策を組み立てたい。