2020-07-19(Sun)
リニア開業延期 時代錯誤の「国策最優先」 JRが姿勢を変えねば
リニア計画 計画ありきの姿勢脱皮を 立ち止まり懸案整理を 政府の姿勢疑問 早期開業ありき
ルート変更案 国交次官が否定 「変更は念頭にない」 JRの事業なのに・・・・
<各紙社説>
中国新聞 2020/7/14
社説:リニア中央新幹線 立ち止まり懸案整理を
----JR東海は県への説明を二転三転させた上、納得できるデータや科学的根拠を示していない。にもかかわらず工事の許可を求めるだけでは理解は得られまい。県の指摘する懸案に真剣に向き合うべきではないか。
----県が工事による流量減少に慎重にならざるを得ないのも理解できる。県の懸念に対して、JR東海は13年、工事で大井川の流量が最大毎秒2トン減ると予測。県から流量を変えないよう改善を求められ、18年に県の申し出に応じると答えていた。しかし、その後、工事期間中は静岡県の外に水が流れ出るとして改善はできないと答えた。
・・・金子社長は今年4月、反発を招く発言をした。トンネル掘削による大井川の流量減少を見極めるため国交省の設けた有識者会議で、静岡県の求める対策について「あまりに高い要求」「事業者にそこまで求めるのは無理ではないか」などと述べた。あきれるほかない。
----さらに静岡県は地震や停電でリニアが止まった時の乗客の避難についても疑問を投げ掛けている。万一の際、乗客は非常口までトンネル内を数キロ歩かされる。非常口から地上に出ても、そこは標高千メートル以上の南アルプスの山中。危機管理への不安が募るのも無理はあるまい。
----そもそも人口が減少する今、リニアは本当に必要なのか。新型コロナウイルスの感染拡大もあって、リモートワークが急速に普及している。巨額の建設費に見合う需要が望めるのか、改めて試算すべきではないか。
----東京への一極集中のひずみが指摘される中、リニア建設は是正どころか、一極集中をさらに加速しかねない。JR東海や国はいったん立ち止まって、環境や安全性、費用対効果などの懸案を整理する必要がある。
神戸新聞 2020/07/17
社説:リニア開業延期/「国策最優先」は時代錯誤
----JR東海は開業ありきの姿勢を改め、地元の合意を得る努力を重ねる必要がある。
----大井川の水量減の可能性はJR東海が13年、環境影響評価の準備書で示した。14年の着工認可に先立って国交相は、専門家の助言を踏まえ対策をとるよう求めた。
県は湧水の全量を川に戻すように求め、JR側も応じたが、昨年8月になり工事中の一定期間は戻せないと方針を覆した。地元が反発するのは当然だろう。
----水量減の可能性を示して7年を経ても、地元の理解を得られる対策を示せなかった責任を直視すべきである。・・・県が懸念するように工事で大井川に影響が出れば、その損失はいかなる形でも同等には償えない。
----地元と誠実に話し合いを重ねながら環境対策を検討し、効果的な手法が見いだせないならルート変更など計画自体を見直すのが筋である。
「国策」には地域の利害を差し置いてでも最優先で取り組むという考えは、時代錯誤というしかない。
信濃毎日新聞 (2020年7月17日)
社説:リニア開業延期 JRが姿勢を変えねば
----県は、南アルプスを貫くトンネルの掘削で大井川の流量が減る恐れを指摘。JRは明確な解決策を示せずにいる。
----JRの金子社長は今年5月ごろから、静岡で工事着手が遅れると27年開業が困難になる、との発言を繰り返すようになった。プレッシャーを強め、県が折れる展開を狙っていたとの見方がある。そうした発想が今も抜けていないのではないか。だとすれば問題解決は遠のくだろう。
----県が代替案として言及したルート変更について、JRは「あり得ない」と一顧だにしなかった。長い議論の経緯があったにしても、いったん決めたら押し通すだけの工期優先姿勢が垣間見える。・・・JRはまず、流域住民が納得できる対応策を示さねばならない。
----コロナ禍もあり、リニアを取り巻く状況は不確実性を増した。明るい未来を強調するだけでなく、生じた懸念と丁寧に向き合っていくことが、全ての関係者への誠実な対応と言えるのではないか。
北海道新聞 2020/07/14 05:00
リニア開業延期 地元の懸念拭う努力を
----環境問題をないがしろにして工事を進めてはならない。JR東海は地元の理解が得られる対策と説明を尽くしてもらいたい。
----政府やJR東海は、東海道新幹線の災害時の代替ルートとしての役割や、三大都市圏の一体化などの効果を建設の目的に掲げる。
だが東海道新幹線の乗客は新型コロナ禍で大幅減が続いている。テレワークの普及で、主力のビジネス客が今後も戻らない可能性もある。将来は人口減も進む。
巨額の投資に見合うのか、政府とJR東海は採算性や費用対効果を詳しく示すべきである。
----JR東海は全量を戻すと約束していたが、昨年8月になって戻せない期間があると表明した。
その後も十分な説明がなく、地元の不信感が高まっている。こうした状況では県が着工に同意しないのも当然と言えよう。
----政府の姿勢にも疑問を禁じ得ない。水量への影響は現在、政府の有識者会議で議論されている。県側はその結論を待つとしている。
ところが政府は先日、条件付きながら結論を待たずにJR東海が求める準備の工事を認めるよう、県に提案した。県は拒否した。
これでは政府も早期開業ありきだとみられても仕方ないだろう。拙速を避け、科学的な知見に基づいて打開策を探る必要がある。
----工事の推進を優先し、環境対策だけでなく地元への配慮を欠いてはなかったか。JR東海は自らの姿勢を見つめ直してほしい。
毎日新聞2020年7月12日 東京朝刊
社説:リニア開業延期見通し 計画ありきの姿勢脱皮を
----リニアは、大阪までの総工費9兆円のうち、国が財政投融資の低利資金3兆円で支援する「国家プロジェクト」だ。だからといって、一方的に計画を押しつける姿勢では、理解を得られまい。
----国交省の藤田耕三事務次官は、静岡県の川勝平太知事と会い、環境への影響が軽微な範囲で工事を認めるよう提案した。・・・開業スケジュールありきの拙速な対応ではないだろうか。
リニアを巡る環境には変化が生じている。新型コロナウイルスの感染拡大やデジタル化を背景に、遠距離移動は減る可能性がある。外国人観光客がどこまで回復するかも見通せない。このうえ開業が遅れれば建設費は膨らみ、JR東海の財務を圧迫する。運賃に転嫁すれば、需要はさらに減るだろう。こうしたリスクの再点検が必要だ。計画ありきで走り続けることはできない。
******************************
毎日新聞2020年7月14日 08時32分(最終更新 7月14日 08時32分)
静岡リニア問題、くすぶるルート変更論 国交次官は明確に否定
----川勝知事はルート変更について、リニアの早期実現と水資源や自然環境への影響回避を両立させるための「一つの考え方」とみている。しかし、藤田事務次官は会談後の記者会見でも「ルート変更は軽々しく議論する問題ではない。ルートを前提に影響を議論している。変更は念頭にない」と明確に否定した。
川勝知事 リニアが他の公益を阻害するなら、迂回(うかい)したらどうかという意見がある。
藤田事務次官 ルートを含めていろんな議論を重ねて、手続きを踏んできている。
川勝知事 ルートが決まる数年前まで静岡県の名前は入っていなかった。水の問題を考えたふしがない。
藤田事務次官 (国交省の)有識者会議で水の問題を議論している。予断を持たずに結論を待ちましょう。ルート変更を議論する段階ではない。
ルート変更案 国交次官が否定 「変更は念頭にない」 JRの事業なのに・・・・
<各紙社説>
中国新聞 2020/7/14
社説:リニア中央新幹線 立ち止まり懸案整理を
----JR東海は県への説明を二転三転させた上、納得できるデータや科学的根拠を示していない。にもかかわらず工事の許可を求めるだけでは理解は得られまい。県の指摘する懸案に真剣に向き合うべきではないか。
----県が工事による流量減少に慎重にならざるを得ないのも理解できる。県の懸念に対して、JR東海は13年、工事で大井川の流量が最大毎秒2トン減ると予測。県から流量を変えないよう改善を求められ、18年に県の申し出に応じると答えていた。しかし、その後、工事期間中は静岡県の外に水が流れ出るとして改善はできないと答えた。
・・・金子社長は今年4月、反発を招く発言をした。トンネル掘削による大井川の流量減少を見極めるため国交省の設けた有識者会議で、静岡県の求める対策について「あまりに高い要求」「事業者にそこまで求めるのは無理ではないか」などと述べた。あきれるほかない。
----さらに静岡県は地震や停電でリニアが止まった時の乗客の避難についても疑問を投げ掛けている。万一の際、乗客は非常口までトンネル内を数キロ歩かされる。非常口から地上に出ても、そこは標高千メートル以上の南アルプスの山中。危機管理への不安が募るのも無理はあるまい。
----そもそも人口が減少する今、リニアは本当に必要なのか。新型コロナウイルスの感染拡大もあって、リモートワークが急速に普及している。巨額の建設費に見合う需要が望めるのか、改めて試算すべきではないか。
----東京への一極集中のひずみが指摘される中、リニア建設は是正どころか、一極集中をさらに加速しかねない。JR東海や国はいったん立ち止まって、環境や安全性、費用対効果などの懸案を整理する必要がある。
神戸新聞 2020/07/17
社説:リニア開業延期/「国策最優先」は時代錯誤
----JR東海は開業ありきの姿勢を改め、地元の合意を得る努力を重ねる必要がある。
----大井川の水量減の可能性はJR東海が13年、環境影響評価の準備書で示した。14年の着工認可に先立って国交相は、専門家の助言を踏まえ対策をとるよう求めた。
県は湧水の全量を川に戻すように求め、JR側も応じたが、昨年8月になり工事中の一定期間は戻せないと方針を覆した。地元が反発するのは当然だろう。
----水量減の可能性を示して7年を経ても、地元の理解を得られる対策を示せなかった責任を直視すべきである。・・・県が懸念するように工事で大井川に影響が出れば、その損失はいかなる形でも同等には償えない。
----地元と誠実に話し合いを重ねながら環境対策を検討し、効果的な手法が見いだせないならルート変更など計画自体を見直すのが筋である。
「国策」には地域の利害を差し置いてでも最優先で取り組むという考えは、時代錯誤というしかない。
信濃毎日新聞 (2020年7月17日)
社説:リニア開業延期 JRが姿勢を変えねば
----県は、南アルプスを貫くトンネルの掘削で大井川の流量が減る恐れを指摘。JRは明確な解決策を示せずにいる。
----JRの金子社長は今年5月ごろから、静岡で工事着手が遅れると27年開業が困難になる、との発言を繰り返すようになった。プレッシャーを強め、県が折れる展開を狙っていたとの見方がある。そうした発想が今も抜けていないのではないか。だとすれば問題解決は遠のくだろう。
----県が代替案として言及したルート変更について、JRは「あり得ない」と一顧だにしなかった。長い議論の経緯があったにしても、いったん決めたら押し通すだけの工期優先姿勢が垣間見える。・・・JRはまず、流域住民が納得できる対応策を示さねばならない。
----コロナ禍もあり、リニアを取り巻く状況は不確実性を増した。明るい未来を強調するだけでなく、生じた懸念と丁寧に向き合っていくことが、全ての関係者への誠実な対応と言えるのではないか。
北海道新聞 2020/07/14 05:00
リニア開業延期 地元の懸念拭う努力を
----環境問題をないがしろにして工事を進めてはならない。JR東海は地元の理解が得られる対策と説明を尽くしてもらいたい。
----政府やJR東海は、東海道新幹線の災害時の代替ルートとしての役割や、三大都市圏の一体化などの効果を建設の目的に掲げる。
だが東海道新幹線の乗客は新型コロナ禍で大幅減が続いている。テレワークの普及で、主力のビジネス客が今後も戻らない可能性もある。将来は人口減も進む。
巨額の投資に見合うのか、政府とJR東海は採算性や費用対効果を詳しく示すべきである。
----JR東海は全量を戻すと約束していたが、昨年8月になって戻せない期間があると表明した。
その後も十分な説明がなく、地元の不信感が高まっている。こうした状況では県が着工に同意しないのも当然と言えよう。
----政府の姿勢にも疑問を禁じ得ない。水量への影響は現在、政府の有識者会議で議論されている。県側はその結論を待つとしている。
ところが政府は先日、条件付きながら結論を待たずにJR東海が求める準備の工事を認めるよう、県に提案した。県は拒否した。
これでは政府も早期開業ありきだとみられても仕方ないだろう。拙速を避け、科学的な知見に基づいて打開策を探る必要がある。
----工事の推進を優先し、環境対策だけでなく地元への配慮を欠いてはなかったか。JR東海は自らの姿勢を見つめ直してほしい。
毎日新聞2020年7月12日 東京朝刊
社説:リニア開業延期見通し 計画ありきの姿勢脱皮を
----リニアは、大阪までの総工費9兆円のうち、国が財政投融資の低利資金3兆円で支援する「国家プロジェクト」だ。だからといって、一方的に計画を押しつける姿勢では、理解を得られまい。
----国交省の藤田耕三事務次官は、静岡県の川勝平太知事と会い、環境への影響が軽微な範囲で工事を認めるよう提案した。・・・開業スケジュールありきの拙速な対応ではないだろうか。
リニアを巡る環境には変化が生じている。新型コロナウイルスの感染拡大やデジタル化を背景に、遠距離移動は減る可能性がある。外国人観光客がどこまで回復するかも見通せない。このうえ開業が遅れれば建設費は膨らみ、JR東海の財務を圧迫する。運賃に転嫁すれば、需要はさらに減るだろう。こうしたリスクの再点検が必要だ。計画ありきで走り続けることはできない。
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毎日新聞2020年7月14日 08時32分(最終更新 7月14日 08時32分)
静岡リニア問題、くすぶるルート変更論 国交次官は明確に否定
----川勝知事はルート変更について、リニアの早期実現と水資源や自然環境への影響回避を両立させるための「一つの考え方」とみている。しかし、藤田事務次官は会談後の記者会見でも「ルート変更は軽々しく議論する問題ではない。ルートを前提に影響を議論している。変更は念頭にない」と明確に否定した。
川勝知事 リニアが他の公益を阻害するなら、迂回(うかい)したらどうかという意見がある。
藤田事務次官 ルートを含めていろんな議論を重ねて、手続きを踏んできている。
川勝知事 ルートが決まる数年前まで静岡県の名前は入っていなかった。水の問題を考えたふしがない。
藤田事務次官 (国交省の)有識者会議で水の問題を議論している。予断を持たずに結論を待ちましょう。ルート変更を議論する段階ではない。
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