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2021-04-20(Tue)

東京外環道 調布道路陥没 半年 工事への不信感広がる

住民弁護団 調査と情報開示求める  
「東京外環トンネル施工等検討委員会有識者委員会 報告書に対する要請」(21年4月9日)



読売新聞 2021年04月19日07時24分
「調布と同じことが起きないか心配」外環道沿線の自治体、工事への不信感広がる
----東日本高速道路などによる東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事の影響で、東京都調布市の市道が陥没する事故が起きてから18日で半年となった。同社の有識者委員会は3月、再発防止策を公表したが、陥没現場周辺住民の不信感は強まり、事故の影響は近隣自治体にも広がっている。(広瀬誠)


時事通信 2021年04月15日14時35分
東日本高速などに説明要請 調布道路陥没で住民弁護団
----東京都調布市の住宅街で昨年10月、東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネル工事ルートの真上の道路が陥没した問題で、周辺住民らの弁護団は15日、有識者委員会が発表した報告書に疑義があるとして、施工した東日本高速道路(NEXCO東日本)などと国土交通省に説明を求めたと明らかにした。


しんぶん赤旗 2021年4月16日
調布陥没 事業者に住民弁護団が調査と情報開示求める
----東京外かく環状道路の巨大トンネル工事ルート上にある調布市で陥没などが起きた問題で、被害住民有志の弁護団(郷原信郞弁護団長)は工事事業者の東日本高速道路(ネクスコ東日本)、中日本高速道路、国土交通省に対し要請書を送り、15日に新宿区で記者会見しました。


UPLAN 20210415
調布外環道事故被害補償に関する郷原弁護団記者会見
https://youtu.be/mAhmEx839Tk
【外環被害住民連絡会・調布】 4月9日に郷原弁護団が外環事業者に対して添付の要請書(添付)を提出されました。 その内容はこの重大事故の原因の核心を突いており、被害住民連絡会の要求に沿った大変力強い後ろ盾となるものです。この要請書に対し、当会幹事会として全面的に支持を表明し、今後も弁護団と足並みをそろえて活動して参りたいと考えております。







以下参考

dmenu ニュース
読売新聞 2021年04月19日07時24分
「調布と同じことが起きないか心配」外環道沿線の自治体、工事への不信感広がる
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/yomiuri/region/20210419-567-OYT1T50049


時事通信 2021年04月15日14時35分
東日本高速などに説明要請 調布道路陥没で住民弁護団
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041500742&g=eco


日本共産党東京都委員会 2021年4月16日
調布陥没 事業者に住民弁護団が調査と情報開示求める
https://www.jcp-tokyo.net/2021/0416/56851
jcp-tokyo


IWJ 2021.4.16
調布の住宅街の地盤がトンネル工事で陥没!! 郷原信郎弁護士「いかに利便性があっても安全が脅かされてはならぬ。事業者は重大な不祥事を発生させたとの認識でコンプライアンス対応を行なうべし」
~4.15 調布外環道事故被害補償に関する郷原弁護団記者会見 2021.4.15
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/491050


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令和3年4月9日
国土交通省 関東地方整備局長 土肥 弘次 殿
東日本高速道路株式会社 代表取締役 小畠 徹 殿
中日本高速道路株式会社 代表取締役 宮池 克人 殿

〒106-0032 東京都港区六本木6-2-31
六本木ヒルズノースタワー9階
郷原総合コンプライアンス法律事務所
電 話 03-5775-0654
FAX 03-3401-5417
弁護士 郷 原 信 郎
同 新 倉 栄 子

〒190-0023 東京都立川市柴崎町2-12-24
MK立川南ビル4階
立川フォートレス法律事務所
電 話 042-522-3580
FAX 042-522-3581
弁護士 贄 田 健二郎

〒104-0061 東京都中央区銀座7-13-5
NREG銀座ビル4階
リンクパートナーズ法律事務所
電 話 03-6264-5788
FAX 03-6264-5789
弁護士 藤 井 寿

要 請 書

 貴社らに対しては、3月31日付けで、当職らが外環道大深度工事に伴って発生した被害の被害者から受任した旨の通知を送付致しましたが、同書面において追って送付する旨述べておりました「弁護団要請事項」の詳細を、本書面において明らかにしたいと思います。
 今後、弁護団として御社への要請等を行うことに関する基本的な考え方も併せて述べたいと思いますので、その趣旨を踏まえて、ご対応頂きますようお願い致します。
 今回の事故は、「地上から40メートル以深、又は、支持層の下10メートル以深のいずれか深い方」という地下空間を、公共利用のために国交省の認可を受けて、地上の土地に関する権利と関わりなく使用できるという「大深度法」に基づいて行われていたトンネル工事に関して、法律では想定されていなかった地上の住民や家屋への被害が発生したものです。
 我々は、今回の問題を、「法令遵守」だけではなく、「法令の背後にある社会の要請も含めて、様々な社会の要請にしっかり応えていく」という意味のコンプライアンスの観点でとらえるべき事象と考えています。
 外環道建設工事を一体となって推進しておられる貴社ら事業者は、「トンネル の掘削をし、外環道を完成させることによって首都圏を中心とする社会全体に大きな利便を提供する」という、重要な社会の要請に応えることを目指して事業を行われているものと思います。
 しかし、それと同時に、「そのような工事を施工することによって、そのトンネルの掘削現場の地上の住民の人達に被害を与えたりすることがないようにする」ということも重要な社会的要請のはずです。
 今回の事故は、貴社らが、そのような重要な社会的要請に反して、地上の住民に大変深刻な被害を生じさせたものであり、それは貴社らにとっての「重大な不祥事」であり、「大深度法」に基づく工事やそれを施工する事業者に対する社会の信頼に重大な影響が生じかねない事態だと思います。
 「大深度法」は、国交省が認可し、同法が適用される工事については、地上の住民には影響が生じないことを前提としているため、地上の住民への説明や利害調整等を行うことは、法令上求めていません。利害調整を図ることもないし同意を得る必要もないという法律に守られてトンネル工事が行われていました。
 しかし、現実に、地上の住民に重大な被害が発生し、その点について社会の要請に反することになったのですから、「法令遵守」が尽くされていたとしても、トンネル工事を施工する事業者としてのコンプライアンスに関して、直接のステークホルダーの被害住民、そして、社会全体に対して重大な責任が生じることは言うまでもありません。
 貴社らにおかれては、重要な社会の要請に反した「重大な企業不祥事」を発生させたとの前提で、コンプライアンス対応を行うことを求めます。
 貴社らのトンネル工事が、どのような事前調査によって、どのような判断の下で行われたのか、なぜ、振動・騒音・低周波音、陥没・空洞、建物被害が生じたのか、それに関して、組織としてどのような検討が行われ、そこにどういう問題があったのか、ということをしっかり明らかにすること、十分な情報開示と説明を行うことが、貴社らのコンプライアンス対応として不可欠だと思います。
 貴社らが、そのようなコンプライアンス対応を行うことで、この件の重要なステークホルダーである被害住民の納得が得られるのであり、それが十分に行えないようであれば、いくら法令には違反していなかったとしても、工事を続行すべきではないと考えます。
 通常、重大な企業不祥事においては、それまで関係のない有識者を集めた第三者委員会を設置して、客観的・中立的な外部調査によって事実を解明し、原因を究明し、再発防止の対策を取るのが当然です。
 貴社らは、本件事故を受けて、「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」(以下、「有識者委員会」という)を設置しました。ところが、有識者委員会の委員 10 名のうち委員長を含む 8 名は、以前から設置されている本件工事の施工に関して技術的検討を行う「東京外環トンネル施工等検討委員会」の委員で構成されており、本件事故のいわば当事者ともいえる立場であり、中立的な立場で議論・検討を行う委員会とは到底言えません。この点については、被害住民側から、中立的な委員会による調査・検討の必要性が指摘されていましたが、貴社らは、全く聞き入れることなく、令和 3 年 3 月 19 日に「東京外環トンネル施工等検討委員会有識者委員会報告書」を公表しました。
 そして、その内容については、別紙に記載した重大な疑問があり、今回の事故についての情報開示・説明責任を果たすものではないことは明らかです。
 そこで、弁護団として、別紙記載の各要請事項に対する対応を求めます。回答は 4 月 20 日までに書面にて弁護団長郷原信郎までお送りください。別途、有識者委員会委員長および貴社らの責任ある立場の方との面談を求めます。

別 紙

東京外環トンネル施⼯等検討委員会 有識者委員会 報告書に対する要請書
1. 事前の地盤調査に関する疑問
▪ 要旨
東京外かく環状道路の大深度工事(以下、「本件工事」という)は、国内最大断面(径 16m)のトンネル 2 本が極めて近距離で併設(陥没箇所付近は離隔距離 0.3D)し、市街地下を掘進する国内最長のトンネルであり、世界最大級かつリスクの高い工事である。そのため、事業者には、近年頻発した道路陥没事故等の経験を経て、国土交通省等によりまとめられた「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン」i等の最新の知見に基づき、かつスケールデメリットを考慮して、地表面に影響を与えぬよう安全に工事を行うための極めて慎重なリスクマネジメントが求められる。
今回の深刻な地盤の損傷と陥没・空洞化・振動・騒音等の事象(以下、「本件事故」という)で問題となった本件工事の事前の地盤調査が十分なものであったかどうかを工事の安全の観点から評価するために、2021 年 3 月 19 日に公表された「東京外環トンネル施工等検討委員会有識者委員会報告書」(以下、「報告書」という)及び「東京外環道大深度地下の公共的使用に関する特別措置法に基づく使用認可申請書及び添付書類」(以下、「申請書」という)iiを精査した。
その結果、地質・地盤リスク管理の基本である事前の地盤調査が、いつの間にか「事業区域が大深度地下にあることを証するための調査」に置き換えられ、実施すべきボーリング調査が 1km にわたって実施されず、地質・地盤リスクアセスメントが不十分なまま工事が行われたことが、本件事故発生の重大な要因となったことが示唆された。
■ 1km ものボーリング調査空白地域
210416図 1 陥没地周辺地盤調査位置図
図 1. 陥没地周辺地盤調査位置図
出典:大深度地下使用認可申請書(別添書類第 3 号)事業区域が大深度地下にあることを証する書類 p.3-15 記載図を編集

「申請書」は、本件工事のボーリング調査の間隔を平均 167m 程度とし、「周辺環境条件によりボーリングが実施できず、ボーリング調査間隔が 200m 以上となる範囲を重点的に(微動アレイ探査を)実施した」としている。図1は、「申請書」に収録されている「図 1 陥没地周辺地盤調査位置図」を拡大・加工したものであるが、「エリア A」(「陥没・空洞箇所周辺及び地質が類似している区間」と定義されている)の周辺の H20-1、H20-2、H20-3、H21-8、H21-9、H21-10、H21-11、H21-13 の 8 本のボーリングは、いずれもトンネルルート上もしくは極めて近い地点で実施されている。それに対して、陥没地点の直近のボーリング地点 H21-12 は「エリア A」のトンネルルートから標高の高い西方に水平距離で 80m、46Lは同じく西方 200m の距離にある。そのため、陥没地点周辺では、トンネルルート上では1㎞にわたってボーリングが行われておらず、ボーリング調査による直接的な地盤状況の確認が行われていない。
このような陥没地点周辺での地盤の事前調査の実施とそのデータの取扱いに関して重大な疑問がある。
第一に、トンネルルート上で1km にもわたってボーリング調査が実施されなかったのが、「周辺環境条件によりボーリングが実施できず」という事由によるものとは考えられない。「エリア A」のトンネルルート上には、図 1 および図 4 に示すように、国道事務所所有地、NEXCO 中日本所有地および調布市が管理する公園が適度な間隔で並んでおり、安全確認に必須のボーリング調査がそれらの場所で実施できない状態であったとは認め難い。ボーリング調査が実施可能であったにもかかわらず、何らかの理由で1km もの区間で、安全な施工に必須のボーリング調査による地質・地盤リスク情報を持たずに掘削を進めた結果、支持地盤の破壊と共に陥没・空洞・振動・騒音等の深刻な被害を引き起こしたものと考えられる。このような事実と重大な被害の事象に照らすと、「申請書」に「周辺環境条件によりボーリングが実施できず」と書かれていることには、重大な事実誤認もしくは意識的な虚偽記載の疑いがある。
第二に、微動アレイ探査は、「大深度地下使用技術指針・同解説」にも「適用上の留意点」として「基本的に測定点の直下の情報を得るものである。また、地盤の速度構造が水平として解析するため速度構造に凹凸があると誤差が大きくなる」とある通り(p.31)、大深度地下の地盤組成が正確に把握できるものではない。直近の二つのボーリング調査個所(H21-12 と H21-13)の間では 3 カ所の微動アレイ探査(B17,B-18、B-19)が行われ、「ボーリング地点間にて特定した支持地盤を横断するような埋没谷等の地盤急変部は存在しないことを確認した」としている。「報告書」でも「周辺環境条件によりボーリングが実施できずボーリング調査間隔が 200m以上となる範囲で(微動アレイ探査を)重点的に実施」、「エリアA」における微動アレイ探査は、支持地盤の急変部が存在しないことの確認を目的として使用されたと記されている(「報告書」p4-1)。しかし、微動アレイ探査が、本件事故の直接の原因とされている「閉塞」に結びつく掘削断面の地質・地盤リスク調査に寄与したとの記述はない。仮に、本件事故現場周辺の支持地盤が地下約 20m よりも浅い位置にあり、微動アレイ探査で支持地盤の連続性を確認できたとしても、地下 47m 以深の掘削断面の地質・地盤リスクを把握するには、微動アレイをもってボーリングに代えることはできない。
にもかかわらず、「報告書」は、「原因究明のために実施したボーリング調査等の結果は、上記の事前調査の結果と概ね一致しており、工事着手前に行われる地盤状況把握のための事前調査が適切に行われていたことが確認された」(「報告書」p.4-3)としている。1km もの区間の安全な工事に必須の地質・地盤リスクにかかわるボーリングデータの不在という重大な問題を見ようとしない有識者委員会の視点そのものに、重大な問題が潜んでいることを指摘せざるを得ない。
結局のところ、「エリア A」におけるシールドマシンの掘削断面は、微動アレイによる探査では十分な情報が得られない地下 47m 以深にあり、国分寺崖線の豊富な地下水に恵まれた入間川流域での安全なトンネル工事のためには、掘削断面から地上までの地盤と土質及び地下水の情報をボーリング調査で得ておくことが不可欠だった。
第三に、ボーリング調査結果の取扱いにも重大な疑義がある。有識者委員会の資料では、H21-12 の柱状図が「エリア A」の地盤の基本情報として示されている。46L は、支持地盤の位置の根拠となる柱状図付きで、事前調査に使われた 86 本のボーリングの一つとして「申請書」には出てくるが、何故かその後の外環工事関係資料からは一部の例外を除き消去されている。
「申請書」の「図 4-4.特定した南側範囲の支持地盤の上面」という縦断面図の一部を拡大・編集し、「図 2.支持地盤上面図」として次に示す。
図 2. ⽀持地盤上面図
210416図 2 ⽀持地盤上面図
出典:大深度地下使用認可申請書(別添書類第 3 号)事業区域が大深度地下にあることを証する書類 p.3-31 記載図を編集

図 2 では、トンネルルートから水平距離でそれぞれ 80m および 200m 離れている H21-12 および 46L の柱状図が、他のトンネルルート上のボーリングデータと共に支持地盤上面を特定するボーリングデータとして示されている。図 2 では、H21-11 から H21-13 の間の 1km 余りのほぼ中間点に H21-12 があり、46L は H21-13 に京王線を隔てて隣接しているように見えるが、図 1 が示すように、H21-12 はトンネルルートから約 80m、46L は 200m も西方のデータであり、ルートの縦断面図に用いること自体に疑問がある。また、図 1 では微動アレイが B-13 から B-19 までの 7 カ所で「支持地盤の特定のため」に使われたことが示されており、ボーリング調査と微動アレイ探査によって特定された支持地盤が図 2 内の赤丸のすぐ下に右肩上がりのほぼ直線(紫色の線)で、標高 10m から 25m の範囲に示されている。

図 3. 地形分類図
210416図 図 3 地形分類図
出典:大深度地下使用認可申請書(別添書類第 3 号)事業区域が大深度地下にあることを証する書類 p.3-15 記載図を編集
しかし、仮に、微動アレイによって支持地盤が特定できたとしても、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(以下、「大深度法」)の適用要件が充たされただけであり、それによってトンネル工事の安全・安心が担保されるわけではない。図 3 で示すように、トンネルルート上のボーリング調査は、H21-11 から H21-13 の間の 1km にわたって行われておらず、安全なトンネル工事に不可欠の 100m から 200mというボーリングの間隔を大幅に超過している。そして、地形的には中位段丘(武蔵野面:M3 面)から入間川氾濫原にトンネルが移行する場所で、工事による地盤破壊が引き起こされたのである。かかる「エリア A」についての事前調査と工事施工の杜撰さは、隣接する京王線から北側の工区では、H21-13 のボーリング情報に基づいて、「中央 JCT における地質調査・地下水調査を踏まえた JCT 構造等の変更」を理由に巨額の工事費が上積みされているのとは対照的であるiii。
「報告書」でも、H21-12 と H21-13 は共に「エリア A」の「特殊な地盤条件」に該当することを認めている(「報告書」p.4-3)。さらに、気泡材混合土配合試験(「報告書」p.5-16)では、試験に用いる材料の諸元を決定する際に、陥没地点の材料には H21-12 ではなく H21-13 のボーリングデータを用いている。
これは、台地側に 80m 離れた地点である H21-12 よりも、京王線の北側の入間川旧河川敷である H21-13のボーリングデータの方が陥没地点の掘削断面のデータとして適合性が高いと事業者が判断したためと考えられる。
しかるに、京王線北側と同じ「特殊な地盤条件」ivを有する「エリア A」を含む住宅地域に対しては、前述のように 1km もの間トンネルルート上のボーリング調査が行われていない。十分な事前のボーリング調査を行わず、振動等の異常事態が継続しても何らの本質的な対策がなされぬまま工事が続けられたことによって、「特殊な地盤条件」と呼ばれるその地盤が破壊され、本件事故が発生したのである。
図 4. 陥没地周辺のボーリング適地
210416図 4 陥没地周辺のボーリング適地
出典:大深度地下使用認可申請書 別添資料 平面図(7)を編集
■ 地質・地盤リスクマネジメントが必要
本件事故の原因究明と再発防止を目的として設置された東京外環トンネル施工等検討委員会・有識者委員会の「報告書」では、前述の 1km にもおよぶルート上のボーリング調査の不在をどのように評価したのだろうか。トンネル工事の安全上の重大問題が、計画・審査・施工のそれぞれの段階でなぜ看過されたのか。
国土交通省の土木事業に適用するために 2020 年 3 月に国土交通省自身が関連学協会等と共に策定した「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン」が公表されている。同ガイドラインは、「事業を進めるにあたっては、初期の段階で地質・地盤条件に関する情報を適切に捉えられるよう努力すべきであることは言うまでもないが、事業の各段階で利用可能な情報の質と量に基づいた地質・地盤条件の推定・想定と、それが持つ不確実性の程度や特性を理解した上でリスクの評価を行い、設計や施工、維持管理でどのようにリスク対応していくか判断することが重要」(p.3)と述べ、「地質・地盤リスクマネジメントは、事故や損失といった好ましくない影響を回避する手段にとどまらず、土木施設にとって地質上の有利なルートやサイトを選択する機会を得る等、地質・地盤による好ましい影響を得る手段でもある」(p.4)と指摘している。
本件事故の直接の原因が「細粒分が極めて少なく、かつ礫が卓越する特殊な地盤」への施工上の対応ミスであったとしても、その根本原因が、事前の地盤調査の不十分さ、地質・地盤リスクマネジメントの観点の欠如にあったことは明白である。同ガイドラインの検討委員 3 名を含む東京外環トンネル施工等検討委員会の委員 8 名に 2 名を加えた委員構成で、事故の原因究明と再発防止を目的に設置された有識者委員会は、同ガイドラインに添って本件事故に関する検討を行うべきであるのに、それを全く行っていない。
今後、支持層が破壊されてしまった地盤に極めて隣接して最大級のシールドトンネル工事を行うことになる北行きトンネルをはじめ、南行トンネルの京王線までの区間等において、直ちに「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン」に沿って地質・地盤リスクマネジメントの手法を取り入れることが不可欠である。
「エリア A」と京王線から北側は、地質・地盤リスクについては同等の地域であると想定されながら、6 片や住宅地域である「エリア A」においては「なんとなく掘った」(有識者委員会小泉委員長談)結果、本件事故が起き、京王線から北については、「鉄道の下は入念に工事する」(NEXCO 東日本・加藤部長談)という姿勢の違いは何に起因するのだろうか。このような人命にも関わるダブルスタンダードの上に「リスクをゼロにしろと言われたら工事はできない」(小泉委員長)と開き直る有識者委員会および事業者の姿勢は、本件事故の背後にあるリスクマネジメントおよび企業倫理に関わる重大な問題を示唆している。
上記のとおり京王線の線路以北の工事については少なく見ても 780 億円の大幅なコストの増額が認められているが、一方で人が住み往来する地域のリスクはそのまま放置されたということなのだろうか。有識者委員会の小泉委員長は 2021 年 3 月 19 日の記者会見で、「リスクをゼロにすることはできない。われわれ技術者は、どれだけのコストでリスクを背負うかを判断する」と発言しているが、その無責任な事業者のリスク管理の破綻の結果、平穏な生活を奪われたのは、大深度法によって同意なく自分の所有する土地の地下を掘られ、住居の支持地盤を破壊された住民である。
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<要請事項>
1-1.「エリア A」には、トンネルルート直上に、国道事務所、NEXCO 中日本および調布市が管理する土地が並んでいるにもかかわらず、安全確認に必須のボーリング調査を実施せずに施工することを決定した経緯の説明を求める。
1-2.「地上部からシールド掘進断面以深までの地層構成や地盤強度、粒度分布などについて確認していた(報告書 p.4-1)」とあるが、事前調査として実施したボーリング及び微動アレイ探査では「エリア A」における掘削地盤の地層構成が把握できていなかったことが明らかとなっている。地上部からシールド掘進断面以深までの地層構成や地盤強度、粒度分布はいかなる手段で把握していたのか説明を求める。
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2. 科学的根拠を欠いた不十分な検証による被害の矮小化
「報告書」は、本件事故により生じた被害を、「陥没・空洞事象」及び「掘削ルート直上の地盤の緩み」に限定し、周辺住民に深刻な被害をもたらした振動・騒音・低周波音、及び住民が強く懸念している広範囲での地盤の緩みや地盤沈下等について、極めて限定的なデータや情報に基づく科学的根拠を欠いた推論により被害を矮小化する独断的な結論の羅列であり、実績豊富な学識経験者で構成されたはずの有識者委員会による検討結果であることが、にわかには信じがたい内容である。第三者的立場で被害の実態把握とその原因究明の使命を担う有識者委員会の本来の役割の機能不全を露呈していると言わざるを得ない。
「報告書」は、本件事故発生後の検討結果である。事前の不十分な地盤調査により、当該地域の地盤リスクを見逃したことが本件事故発生に繋がったと考えられる中、有識者委員会では、事前調査の適切性に関する検証が行われた形跡はない。そして、被害状況の把握のプロセスにおいても、本件事故発生の反省が活かされることなく、多くの潜在的リスクや、より深刻な被害を生じていた可能性を慎重に検討せずに、粗雑な議論で安易な結論づけがなされているように思われる。
本章で議論する本件工事による被害の把握において、国土交通省が参画する全ての事業で適用されるべき、「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン」が適用されたとは考え難い。このような体制のままトンネルの掘削を再開すれば、同じ過ちを繰り返す日は近いと考えざるを得ない。当該地域にこれ以上の被害を発生させないためにも、同ガイドラインを適用した上で、被害状況の把握について再検討することを強く求める。
ここでは、「報告書」において、地域住民にとって深刻な被害の実態把握のプロセスが、いかに潜在的なリスクを無視して不十分かつ粗雑な検証で被害を矮小化する結論づけがなされているかについて、被害事象ごとに以下に指摘する。
(1) 振動・騒音・低周波音被害
■振動被害の把握・評価手法の問題点
本件事故の被害住民から成る被害住民連絡会・調布(以下、「住民連絡会」という)が 2020 年 12 月に実施した、被害地域の戸建て住宅 308 軒を対象としたアンケート調査の結果、本件工事において、2020年 8~10 月にかけて、工事ルート上の多くの住民がステイホーム期間中で在宅を余儀なくされる中、1日 10~14 時間の掘削による振動・騒音・低周波音により、長期間にわたる深刻な心身の被害に晒されていたことが明らかとなった。また、本件事故周辺地域では、本件工事の振動・低周波音被害により、心身の健康を損ない長期的な治療を必要とする住民も確認されている。
振動・騒音に関して「報告書」では、「シールドマシンの掘進による振動・騒音は最大で 55dB(2gal、震度 0 相当)程度で、レベル 1 地震動 200~300gal の 1/100 以下であるため、地盤に有害なひずみを発生させるほどの加振力はなく、地盤に緩みや地盤災害を発生させるレベルではない」(「報告書」p.8-9)としている。しかし、本来、大深度法は、大深度地下の土地利用によって地上には影響が生じないことを前提に、大深度地下の利用を認めているのであり、このような振動が 1 日に 10~14 時間、数週間にわたって継続的に発生したこと及びそれによる住民及び地盤や構造物への影響こそが最大の問題である。
上記「住民連絡会」の被害調査によると、8 月、9 月には、51 軒の住宅で振動及び低周波音の体感的被害の訴えがあった。特に 9 月に入り被害は深刻化し、地域住民が事業者に対して周辺住民vの被害状況を詳細に説明するとともに、振動・低周波音の軽減策の要請、並びに振動・低周波音の測定の要請を再三にわたり行ったが、ほぼゼロ対応であった。
このような振動・低周波音の増大原因となったと考えられるシールドのカッター回転不能(閉塞)は8 月に 2 回発生し、9 月 8 日以降は 25 日までほぼ毎日発生している。「報告書」では、シールド掘進に伴う振動計測結果として、掘進中の地上 6 地点と、トンネル坑内と地上の各 2 地点における計 8 地点の振動計測結果を記載しているが、振動の苦情が多数発生していたと考えられる 8 月以降、振動計測を行った調査日は 9 月 4 日と 10 月 9 日のわずか 2 日間(うち、坑内の振動計測は 10 月 9 日の 1 日のみ)である上に、強い振動被害を生じたと考えられる閉塞が多発した 9 月 8 日以降、10 月 2 日のベントナイト注入までの間の計測は一度も行われていない(「報告書」p.5-3, 5-10, 5-11)。(図 5 参照)
図 5. 2020 年 8~10 月のカッター回転不能(閉塞)発生日と振動計測日
210416図 5 2020 年 8~10 月のカッター回転不能(閉塞)発生日と振動計測日
出典:東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会 報告書(p.5-3,5-10,5-11)に基づき、弁護団が独自に作成
本件事故周辺の多くの住宅では、振動による地盤沈下の結果と推察される家屋損傷や食器がカタカタと音をたてるなどの事象が多数発生している。さらに、都の施設である入間川分水路の 360m にわたる破損事故や、ほぼルート上 3 カ所で生じたガス管のつなぎ目からのガス漏れなど、インフラの損傷も報告されているほか、北行きトンネルルート上のマンホール及び側溝付近では、振動による地盤の液状化の結果として生じたと思われる噴砂現象が 30m にわたって確認されている。
事業者は、このような様々な被害や不安をもたらした掘削工事に伴う振動を生じさせながら、再三にわたる住民の苦情を無視して、振動計測をすることもなく掘進を続けた。そして、事故発生後の有識者委員会による検討では、カッター回転不能(閉塞)が発生していない日に計測を行った、閉塞による振動を捉えていないわずか 2 日間のサンプルを用いて工事による振動レベルを断定し、住民の心身への被害を顧みることなく、規制基準値(55dB)以下であるため問題はなかったと結論づけた。
そもそも、振動に問題がなかったのであれば、当該地域で発生した多くの家屋やインフラの損傷、地盤の液状化の痕跡などはどのように説明されるのであろうか。このような一面的な結論づけは、科学的根拠を伴わない被害の矮小化に他ならない。
さらに、地盤の専門家によると、掘削工事中並びに事故後の低周波音被害については、本件事故で生じた地盤の緩みにより振動・低周波音が増幅されている状況が疑われているが、有識者委員会による原因究明調査においては、この点は一切検討されていない。
事故後の対策検討のためにも一刻も早い検討結果が必要であった事情は理解できるものの、早急な幕引きのためとも思える科学的根拠に欠ける独断的な断定により、被害住民が晒されている被害の実態の把握及びその改善に向けた最善策の検討を放棄する姿勢は、被害状況を慎重に精査することなく矮小化することで事業者の責任範囲を限定し、当事者である被害住民を置き去りにする、極めて誠意に欠ける対応である。
■ 振動被害の原因究明に関する根拠を欠いた検証
「報告書」では、「エリア A」において頻発したカッター回転不能(閉塞)の原因として、「トンネル上部の住居からの振動に関する問合せの増加による施工時間の短縮」(「報告書」p.5-35)を挙げている。しかし、カッター回転の不具合は、掘削断面が礫層に突入した頃から発生しており、同じく短縮掘削時間(1 日 14 時間)で稼働していた 2019 年 5 月~2020 年 7 月までの間のカッター回転のトラブルはなかったものとみられる。また、振動への問い合わせに対応して掘削時間が 1 日 14 時間から 12 時間に短縮されたのは 2020 年 8 月 26 日であり、カッター回転不能(閉塞)の頻発が始まる 9 月 8 日までの 13 日間は閉塞を生じていない。(図 6 参照)
ここから読み取れることは、カッター回転不能(閉塞)や不具合の発生の最大の要因は、掘削時間の短縮ではなく、地質構成(礫層の存在と細粒分の低下)である可能性が高いということである。また、閉塞の頻発区間は、掘削作業の難易度が上がるルート勾配の上昇地点とも合致していると思われる。
そもそも掘削時間の短縮の要因となった住民からの「問合わせ」は、振動被害がルート上の住民に及んだことへの「苦情」である。掘削断面に占める礫層の割合の上昇と細粒分の低下により、より強い振動が地上に伝播し、振動被害を生じ、住民の苦情に繋がった。しかし、本来、大深度地下利用において、地上の住民の安心な生活を脅かすような振動被害は生じてはならないものであり、地盤の状況等についての事前調査が不十分であったこと等により、或いは、振動騒音被害のレベルを軽視していたことにより、住民に深刻な振動被害を発生させたこと自体が重大な問題である。そのような振動被害の深刻化により、1 日 2 時間の掘削時間の短縮を余儀なくされたことが閉塞の頻発を助長する一因となったものだとしても、振動被害に対する住民の苦情は、杜撰な事前調査や工事計画によって生じた事象に対する「当然の反応」である。住民の苦情が、陥没・空洞事象の原因であるかのようにとらえること自体が根本的に誤っている。
土質を含めた詳細な地質調査、その地質調査成果に基づく設計と施工、観察と計測および住民の苦情等に基づく検証、追加調査の実施による実施設計修正、というような振動被害を生じさせないための対策が取られるべきところ、それらについての技術的な検討の責を担うトンネル施工検討委員会の責任を棚上げして、住民の苦情を事故の素因とするような有識者委員会の結論は到底受け入れられるものではない。
図 6. 掘削土の粒度区分とカッター回転不具合事象発生区間
210416図 6 掘削土の粒度区分とカッター回転不具合事象発生区間
出典:東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会 報告書 p.5-25 の掲載図に同報告書の内容を追記

(2) 地表面変位被害
■ 地盤沈下評価における基本情報の非開示及び開示データに対する疑念
「報告書」p.3-12 の地表面変位計測結果は、「トンネル掘進前から 2021 年 3 月 16 日時点までの地表面変位量」を示しているとされる。これによると、入間川の西側の東つつじヶ丘 2 丁目では、「南行き」トンネル直上の陥没発生地点を中心に最大 2 センチの地盤沈下が計測され、入間川より東側の若葉町 1丁目付近では、沈下はほとんど発生していない。
地表面変位計測は、事業者が実施した水準測量によるものと考えられるが、測量方法すら記載されず、水準点、基準日などの基本情報が一切記載されていない不十分かつ非常に不可解な情報開示となっている。地表面変位計測結果は、2020 年 12 月の有識者委員会の中間報告でも同様の方法で開示されており、以来、被害住民やマスメディアが住民説明会や有識者委員会の記者会見等において、事業者に対して基本情報の開示を繰り返し求めてきているが、回答はないまま「報告書」に基本情報不記載の計測データが公表された。(図 7 参照)
科学的根拠とするデータ開示においては、手法と条件を示すことが大原則であり、これらの基本情報が示されないデータについて、信頼性を議論することは不可能である。有識者委員会はこれらの前提が示されないデータについて、了承したのであろうか。


図 7.「報告書」における地表面変位計測結果の記載
210416図 7「報告書」における地表面変位計測結果の記載
出典:東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会 報告書 p.3-12

また、「報告書」の地表面変位計測結果に関しては、陥没発生の直前まで測定されていたであろう陥没地における沈下量データが削除されており(図 7 参照)、また測量方法(特に若葉町 1 丁目付近)についても詳細が不明であるなど多くの疑問がある。さらに、被害住民が事業者の電話相談窓口で基準日について照会した際には、あろうことか陥没地付近をシールドマシンが通過した 2020 年 9 月 14 日よりも後の 9 月 18 日であるとする回答を得ている。仮にこの 9 月 18 日という情報が事実とすれば、地表面変位計測結果として採用されているデータは、シールドマシン通過後を基準日としていることになり重大な虚偽が疑われる。
これについて、再三にわたってデータの基本情報の開示を要求したにもかかわらず、全く開示されない状況について、当事者である被害住民側に偽装や隠蔽の疑念が生じるのは当然である。この疑念を払しょくするためにも、地表面変位計測調査の基本情報について速やかな開示を求める。

■ 日本経済新聞社の衛星解析データに対する反証根拠の欠如
日本経済新聞社は衛星解析企業であるイタリアの TRE アルタミラ社と日本のスペースシフト社からデータを取得し、「干渉 SAR(合成開口レーダー)」と呼ばれる技術を用いて本件事故周辺地域周辺(東西530m、南北 870m)の地表の動きを 2020 年 4 月 8 日から 10 月 12 日まで分析した解析結果を 2020 年 12月 17 日の紙面で掲載した。記事では、シールドマシン通過前後の地盤変位を比較しており、通過前の 9月 9 日時点では 1 センチ以上の地盤沈下は皆無であったのに対して、陥没地点をシールドマシンが通過した直後の 9 月 20 日には、陥没現場付近の「南行き」ルート直上及びその東側の若葉町 1 丁目を含む6,000 平方メートルの広範囲にわたって、1 センチ以上の地盤沈下を示した地点が多数観測され、9 月 20日の時点での最大沈下量は 1.8 センチ、その後、沈下は広範囲に及び 10 月 12 日までに最大 3 センチ超となったことが示されている。(図 8 及び図 9 参照)
実際に、若葉町 1 丁目では、シールドマシンの通過以降、振動や地盤沈下の影響と考えられるマンホールの上昇や家屋や地面のひび割れなどが多数確認されているほか、振動による地盤の液状化の痕跡とされる噴砂現象がマンホール周り及び側溝付近の 30m にわたって確認されるなどしており、同地域の多数の地点で沈下を確認したとする日本経済新聞社の記事と符号する。さらに、シールドトンネル工事では、掘削後一時的に周囲の地盤が隆起し短期間に収まる現象が生じることがあるとされるが、この傾向にも合致している。

図 8. ⽇経新聞社による衛⽣データ分析による地盤沈下・隆起結果
210416図 8 ⽇経新聞社による衛⽣データ分析による地盤沈下・隆起結果
出典:日経新聞社 2020 年 12 月 17 日公開記事「衛星データで分析 東京・調布の道路陥没事故」を編集

図 9. 日経新聞社による衛生データ分析による時系列での最大沈下量・最大隆起量
210416図 9 日経新聞社による衛生データ分析による時系列での最大沈下量・最大隆起量
出典:日経新聞社 2020 年 12 月 17 日公開記事「衛星データで分析 東京・調布の道路陥没事故」を編集

「報告書」の計測結果と日本経済新聞社の解析結果の間には、最大沈下量で 1 センチ以上の差異があることに加えて、入間川より東側の若葉町 1 丁目付近における地盤沈下の有無について、全く異なる結果が示されている。両者の差異は何に起因するのかについての検証が必要である。
NEXCO 東日本は、記者会見において、日本経済新聞社のデータに関して、その精度に関する疑問を理由に議論を避け、自らの実施した地表面変位計測結果に基づき、基準値を上回る地盤沈下は生じていないと結論づけてきた。しかし、基本情報が明らかにされない以上、日本経済新聞社記事に対する反証としては不十分であると言わざるを得ない。

(3) 地盤の緩み被害
■ 不十分な検証による結論づけと解析中の微動アレイ調査についての報告書への不記載
本件事故により生じた地盤の緩みの範囲について、「報告書」では、本件事故を招いた「南行き」トンネル直上のみ(「報告書」p.3-31)と結論づけ、その根拠として、「南行き」ルート直上至近の 2 本のボーリング調査結果及び、その間の音響トモグラフィ結果を挙げているvi。しかし、約 500m に及ぶ本件事故周辺の地盤状況を結論づける根拠としては、全く不十分であると言わざるを得ない。(図 10 及び図 11参照)
また、陥没・空洞事故周辺の「北行き」ルート直上において 2020 年 12 月に実施された微動アレイ調査(図 10 参照)の結果は、いまだ「解析中」であることを理由に、住民に情報開示されず、「報告書」においてはその調査そのものについても一切触れられていない。微動アレイ調査の解析作業に時間を要しており、結果が得られていないのであれば、その旨を「報告書」に記し、「北行き」ルート直上の地盤の緩みについては暫定的な結論とするのが誠実な態度ではないだろうか。

図 10. 地盤の緩みリスクが高いと考えられるエリア及び地盤の緩みの調査状況
図 11. 本件事故後のボーリング調査地点
210416図 11 本件事故後のボーリング調査地点 図 10 地盤の緩みリスクが高いと考えられるエリア及び地盤の緩みの調査状況
出典:東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会 報告書 p.5-5 と p.3-14 の図を重ね合わせて編集
出典:東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会 報告書 p.3-1 の図を編集

■ 広範囲に及ぶ地盤の緩み被害の潜在的リスク及び「北行き」トンネル掘削におけるリスク評価の一環としての地盤調査の必要性
地盤の専門家からは、地下のあるポイントで土砂の取り込みが行われると、その影響範囲は上部に行くほど拡大するため、事故発生トンネルのルート直上に限定されない広範な地盤の緩みに対する調査が必要であるとする見解が示されている。さらに、振動や(それに由来する)地盤沈下に起因すると想定される家屋の損傷については、「南行き」トンネル直上以上に、東側(「北行き」トンネル側)で顕著であり、地盤補修工事が予定されているエリアのわずか 4~5m 東側を通過する「北行き」トンネルの再開時には重大な安全上のリスクになり得る地盤の緩みに対する住民の不安は大きい。また、陥没・空洞発生エリア近くの「北行き」トンネル側ルート上において、同エリアをシールドマシンが通過した 2020 年9 月頃にマンホール及び側溝付近に、30m にわたり振動による地盤の液状化によると思われる噴砂の痕跡も目撃されており、「北行き」ルート上における広範な地盤状況の確認は急務と考えられる。
また、支持地盤の連続性が失われ、地盤補修工事が必要な地域では、支持地盤より 10m 以深、もしくは地表から 40m のより深い方を大深度地下と定義する大深度地下利用の要件を満たさない可能性もある。この世界最大級のシールドトンネルである「北行き」トンネル工事の再開を目指すのであれば、地盤の緩みのリスクが少しでも想定される地域を対象に、十分な地盤調査を行い、新たな事故発生のリスク要因を排除するとともに説明責任を果たすことは事業者としての最低限の責務ではないだろうか。
適切な調査の結果、地盤の緩みが生じていないとすれば、被害住民にとっては大きな朗報である。不十分な根拠に基づく拙速な結論づけでは、住民の不安は全く解消されず、むしろ事業者への不信感を増すばかりである。

(4) 路面下空洞
路面下空洞調査結果に関する記述において、「報告書」の参考資料 p.1-2 では、「陥没の可能性ランクA に分類される箇所は確認されなかった」としつつも、多数発見された異常信号があった箇所について、「トンネル直上に集中していないこと」を理由に、「シールドトンネルの施工が影響している可能性は低い」と結論づけている。
しかし、地盤は 3 次元的に連続して存在しており、地下工事の影響が、直上の地盤にしか表れないとする論理は通らない。特に、陥没・空洞事故周辺の異常信号発生地点は、明らかに陥没・空洞発生エリアに集中している(図 12 参照)。にもかかわらず、明確な論拠なく、「トンネル施工の影響の可能性は低い」と断じるその手法は、十分な根拠なく断片的な情報に基づき、各被害事象の範囲を狭める乱暴な推論であるという点において、(1)~(3)のそれと酷似している。

図 12. 陥没・空洞事故周辺地域における路面下空洞調査の異常信号箇所

出典:東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会 報告書 参考資料 p.1-2 の記載図を編集
210416図 12 陥没・空洞事故周辺地域における路面下空洞調査の異常信号箇所
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<要請事項>
以上より、有識者委員会の「報告書」に記載の検証方法に関して、本稿で問題提起した以下の項目についての対応を要請する。
2-1.振動被害について、振動レベルの再検証は今となっては難しいが、事故周辺地域に様々に生じている振動が要因となった可能性のある家屋やインフラの損傷、地盤の液状化の痕跡等の事象に関する原因分析の実施。
2-2.低周波音被害について、掘削工事を停止している現在も低周波音被害を訴える住民が少なからずいることから、要望する住民宅における低周波音の測定、並びに住民自ら測定が可能となるよう事業者による低周波音測定器の購入および周辺住民への貸し出し。
2-3.地表面変位計測調査について、測量方法、測量地点、水準点、基準日、誤差オーダー等の基本情報の開示。
2-4.「北行き」トンネルの直上で実施された微動アレイ調査の結果についての速やかな住民への開示・説明。
2-5.地盤の緩みの潜在的リスクを伴うエリア全域における地盤の緩みの有無の確認。
2-6.「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン」を適用した上での被害状況の把握の再検討。
------------------------------------------------------------------------------------------
i 「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン―関係者が ONE-TEAM でリスクに対応するために―」国土交通省大臣官房 技術調査課・国立研究開発法人 土木研究所・土木事業における地質・地盤リスクマネジメント検討委員会(2020 年 3 月)
ii 「事業区域が大深度地下にあることを証する書類(別添書類第 3 号)」および「事業の施行に伴う安全の確保及び環境の保全のための措置を記載した書類(別添書類第 6 号)」が、工事の安全に特に関わる部分である。被害住民が外環道大深度事業認可申請書類を閲覧する際には、国土交通省あるいは関係自治体に「開示請求」手続きをしなければならないとされているが、これは事業者が被害住民に率先して提供すべき資料である。
iii 令和 2 年度第1回関東地方整備局事業評価監視委員会 資料 5-1-①「東京外かく環状道路(関越~東名)再評価」p.13
iv 第 7 回東京外環トンネル施工等検討委員会有識者委員会 資料 1「再発防止対策について」(2021 年3 月 19 日)p.2
v 東つつじヶ丘 2 丁目・3 丁目及び若葉町 1 丁目の住民
vi この 2 本のボーリングを用いて極めて限定的なエリアで音響トモグラフィ調査が実施されている


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