2021-05-08(Sat)
森友改ざん問題 赤木ファイル 黒塗りで事実を隠すな
財務省は最大限の開示を ごまかさずに全面開示を 国側は全てを開示せよ
<各紙社説>
朝日新聞デジタル 2021年5月8日 5時00分
(社説)赤木ファイル 黒塗りで事実を隠すな
----文書の存否すら明かさなかった不誠実な態度をようやく改め、開示に応じるというが、「黒塗り」で真相解明を阻むことがあってはならない。
・・・提訴から1年余り。俊夫さんの元上司がファイルの存在について語った音声データが裁判所に出されてからでも、半年が経過している。この間、財務省は、法廷では「争点とは関係ない」として、国会では「裁判に影響が出る」として、ファイルの公開要求に応じてこなかった。真実の隠蔽(いんぺい)を図ったとしかみえない態度に、改めて怒りを禁じ得ない。
毎日新聞 2021/5/7 東京朝刊
社説:森友の「赤木ファイル」 ごまかさずに全面開示を
----学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書が改ざんされた経緯を記したとされる「赤木ファイル」の存在を国が認めた。改ざんに加担させられたとして自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんがまとめた文書だ。妻が昨年3月、国などを相手に訴訟を起こし、開示を求めていた。国側は「回答の必要がない」「探索中」などと文書の存否を明らかにしてこなかった。 裁判所の求めでようやく存在を認めたが、これまで隠蔽(いんぺい)してきたと受け止められても仕方がない。
産経新聞 2021.5.8 05:00
【主張】「赤木ファイル」 財務省は最大限の開示を
----求められたファイルの存在確認に、1年以上を要した。あまりに不自然であり、意図的な隠蔽(いんぺい)や遅延を疑われても仕方あるまい。森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題は終わっていない。「いつまで森友か」といった批判は当たらない。いたずらに問題を引きずり、長引かせているのは財務省であり、政府である。
東京新聞 2021年5月8日 07時17分
<社説>赤木ファイル 国側は全てを開示せよ
----森友問題で、自殺した元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さんが決裁文書改ざんの過程を記したとされる「赤木ファイル」。国はその存在をようやく認めた。法廷で全面開示し、真相を解明してほしい。
以下参考
朝日新聞デジタル 2021年5月8日 5時00分
(社説)赤木ファイル 黒塗りで事実を隠すな
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14896225.html
文書の存否すら明かさなかった不誠実な態度をようやく改め、開示に応じるというが、「黒塗り」で真相解明を阻むことがあってはならない。
森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざんで、国が「赤木ファイル」の存在を認めた。改ざんに加担させられたことを苦に自死した元近畿財務局職員、赤木俊夫さんが、一連の経緯を記録したもので、妻の雅子さんが国などに損害賠償を請求している裁判で提出を求めていた。
提訴から1年余り。俊夫さんの元上司がファイルの存在について語った音声データが裁判所に出されてからでも、半年が経過している。この間、財務省は、法廷では「争点とは関係ない」として、国会では「裁判に影響が出る」として、ファイルの公開要求に応じてこなかった。真実の隠蔽(いんぺい)を図ったとしかみえない態度に、改めて怒りを禁じ得ない。
今回の開示表明は、あくまで裁判所に促されてのものだ。財務省はこれまでの後ろ向きな対応を猛省しなければならない。とりわけ、国会で拒否発言を重ねたトップの麻生財務相の責任は重い。
懸念されるのは、内容がどこまで明らかにされるかである。
国が示すとしたのは、俊夫さんが改ざんの経緯を時系列でまとめた資料と、財務省と近畿財務局との間でやりとりされたメールなどだ。俊夫さんが受けた苦痛を判断する手がかりになるだけでなく、改ざんの動機や詳しい指揮命令の実態が明らかになる可能性がある。
財務省は一部をマスキング処理、すなわち黒塗りをした上で開示する考えだ。国有地売却や文書改ざんに直接関係のない第三者らを守ることは必要だが、組織や職員に配慮した恣意(しい)的な判断は許されない。「夫に改ざんを促した人の名前はちゃんと出してほしい」という雅子さんの声に向き合うべきだ。
森友問題では、事実と異なる国会での政府答弁が139回、確認されている。国と森友側とのやりとりの記録について、実際にはあるのに「不存在」として情報公開に応じなかった例も46件明らかになった。
国民が共有すべき情報を公開しないばかりか、うその説明を重ねた政府、特に財務省の隠蔽体質は、民主主義の根幹を揺るがすものだ。
安倍政権は、森友問題の調査を当事者である財務省に担わせ、解明が不十分なまま、関係者の処分で幕引きをした。菅政権もそれを引き継いでいる。赤木ファイルという新たな証拠を契機に、第三者による徹底調査に乗り出すべきだ。
毎日新聞 2021/5/7 東京朝刊
余録:志村喬さん演じる市役所の課長が夜の公園でブランコをこぎ…
https://mainichi.jp/articles/20210507/ddm/001/070/110000c
志村喬(しむら・たかし)さん演じる市役所の課長が夜の公園でブランコをこぎ、「ゴンドラの唄」を口ずさむ。名シーンで知られる黒沢明(くろさわ・あきら)監督の「生きる」を、ロンドンを舞台にリメークする計画が進む。ノーベル文学賞を受賞した長崎出身の英国人作家、カズオ・イシグロさんが脚本を執筆中だ▲死期を悟った課長は小さな公園の整備に最後の生きがいを見いだし、お役所仕事の壁を破って完成させた。市民の利益より組織を優先する官僚制度の弊害や、その中で正しく生きようとする人たちの葛藤は、万国共通のテーマなのだろう▲この人も葛藤に苦しんだ。「森友学園」への国有地売却を巡り、決裁文書の改ざんを苦に自死した赤木俊夫(あかぎ・としお)さんだ。「疑惑や不信を招くような行為をしていませんか」。常に持ち歩いていたという、自己点検項目を列挙した「国家公務員倫理カード」は文字がすり切れていた▲改ざんに関連した文書をまとめた「赤木ファイル」は、財務省の指示内容や改ざん前後の記載の比較が一目でわかるように整理されていたそうだ。国は「探索中」としていたが、裁判所の求めでようやく存在を認めた▲「夫が何を誰に指示され、どう抵抗し、何を改ざんし、何に苦しんでいたのかが書いているはずです」。妻の雅子(まさこ)さんが小紙に寄せた手記で指摘している▲「国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正に職務を執行していますか」。カードの点検項目の一つだ。政府に自覚があるなら、ファイルの全容を開示するしかあるまい。
毎日新聞 2021/5/7 東京朝刊
社説:森友の「赤木ファイル」 ごまかさずに全面開示を
https://mainichi.jp/articles/20210507/ddm/005/070/072000c
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書が改ざんされた経緯を記したとされる「赤木ファイル」の存在を国が認めた。
改ざんに加担させられたとして自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんがまとめた文書だ。妻が昨年3月、国などを相手に訴訟を起こし、開示を求めていた。
国側は「回答の必要がない」「探索中」などと文書の存否を明らかにしてこなかった。
裁判所の求めでようやく存在を認めたが、これまで隠蔽(いんぺい)してきたと受け止められても仕方がない。
国側は今後、ファイルを開示する方針という。ただ「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」箇所などは「黒塗り」にすると説明しており、全面開示にはならない見通しだ。
森友問題の発端は、国有地が異例の安値で売却されたことだ。
財務省は鑑定価格から約8億円値引きした理由を、大量のごみの撤去費などがかかるためと説明してきた。
森友学園と安倍晋三前首相の妻昭恵氏との関わりも表面化した。国会で追及された安倍氏は、大幅な値下げ売却などについて「自分や妻が関与していたら首相も国会議員も辞める」と言い切った。改ざんはその後に始まった。
財務省の調査報告書によれば、当時理財局長だった佐川宣寿氏が改ざんを主導したというが、動機は不明で、指示系統もはっきりしていない。
麻生太郎財務相は動機について「それが分かれば苦労しない」と人ごとのように語った。
ファイルには上司の詳細な指示内容や改ざん前後の記録がまとめられているという。赤木さんの元上司は妻に「これを見たら我々がどういう過程で(改ざんを)やったのか全部分かる」と話した。
改ざん問題の解明には、赤木ファイルの全面開示が不可欠だ。
森友問題の政府対応に国民の不信は根強い。昨年6月には、第三者委員会による調査を求めて約35万筆の署名が政府に提出された。
赤木ファイルの存在が確認された以上、ごまかし続けることは許されない。
森友問題は終わっていない。政府は再調査すべきだ。
産経新聞 2021.5.8 05:00
【主張】「赤木ファイル」 財務省は最大限の開示を
https://www.sankei.com/column/news/210508/clm2105080003-n1.html
求められたファイルの存在確認に、1年以上を要した。あまりに不自然であり、意図的な隠蔽(いんぺい)や遅延を疑われても仕方あるまい。
森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題は終わっていない。「いつまで森友か」といった批判は当たらない。いたずらに問題を引きずり、長引かせているのは財務省であり、政府である。
その反省を基に、裁判に提出されるファイルの中身は最大限の開示に踏み切るべきだ。黒塗りだらけの文書が提出されれば、政府の信用は地に落ちる。
財務省近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんが決裁文書の改竄を強いられて自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が国に損害賠償を求めた訴訟で、妻側は赤木さんが改竄の経緯をまとめた「赤木ファイル」の提出を求めていた。
国側は当初、「存否を答える必要はない」とし、その後は「探索中」としていた。大阪地裁が今月6日までに存否を回答するよう求め、ようやく存在を認めた。
6月23日の口頭弁論に提出される予定だが、国側は意見書で「訴訟とは直接関係が認められない第三者の個人情報も含まれる」などとしてマスキングを施した上で提出するとした。マスキングとはつまり、黒塗りである。
意見書は「マスキングの範囲はできる限り狭いものとする」としたが、そもそも範囲の取捨選択を被告側に任せるのは妥当なのか。裁判所の訴訟指揮も問われる。
妻は「一切のマスキングをなしにして、夫が残したものは全部出してほしい」と求めている。
財務省を信じよ、というのは難しい。大量に改竄された文書自体が、財務省理財局長だった佐川宣寿氏が国会で「記録は廃棄した」と述べたものだった。
決裁文書改竄をめぐっては、財務省が平成30年6月に公表した調査報告書で、佐川氏が方向性を決め、近畿財務局などが関与したと説明していた。
だが報告書には、佐川氏の言葉も赤木さんの痛ましい死についても記載はなかった。佐川氏は国会の証人喚問でも「訴追の恐れ」を連発して証言のほとんどを拒み、大阪地検による不起訴が決まった後も口をつぐんだままだ。説明は尽くされていない。幕引きを遠ざけているのは、財務省自らであると知るべきだろう。
東京新聞 2021年5月8日 07時17分
<社説>赤木ファイル 国側は全てを開示せよ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/102872
森友問題で、自殺した元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さんが決裁文書改ざんの過程を記したとされる「赤木ファイル」。国はその存在をようやく認めた。法廷で全面開示し、真相を解明してほしい。
妻の雅子さんが「夫は改ざんの強制を苦に死を選んだ」と国と佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めた訴訟で、雅子さん側は二〇二〇年三月の提訴時、国側にファイルの提出を求めた。
国側は「探索中」としてファイルの存否を明らかにしてこなかった。雅子さん側は一年近くたった今年二月、ファイル提出を国に命令するよう大阪地裁に申し立て、地裁が国に「五月六日までに存否の回答を」と求めていた。
森友問題は、国有地が八億円も値引きされて学校法人森友学園に払い下げられたことが発覚して社会問題化した。後に財務省が公表した調査報告書によると、安倍晋三前首相が「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」と答弁した直後の一七年二月から、前首相の昭恵夫人らに関わる記述が文書から削除された。
生前の手記で赤木さんは、「佐川氏らの指示で改ざんの実行を強いられた」と述べている。雅子さんはふさぎこんだ夫から「過程を事細かく書き、ファイルにとじている」と聞かされていたという。
赤木さんの元上司が、雅子さんに「ファイルには本省の指示や修正箇所、改ざんの過程が一目で分かるように整理されていた」と話した音声データも残っている。
改ざんが発覚した一八年三月に赤木さんは自殺した。財務省の報告書は、佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたとしている。しかし、赤木さんが強制されたとされる作業の詳細には触れておらず、自殺の背景はうやむやのままだ。
国側は訴訟で、存否確認が遅れた理由を「対象の文書量が著しく膨大」「コロナ禍で業務を縮小した」としたが、とても誠意ある回答とは言えない。「不利な証拠を出したくない」との思惑があったのではないか。隠蔽(いんぺい)ととられても仕方がない。
雅子さん側が証拠提出した元上司の音声データが、地裁の訴訟指揮につながったとみられる。ファイルは六月の口頭弁論で示されることになったが、国側は「行政内部のやりとりなど職務上の秘密を黒塗り処理する必要がある」としている。指示の流れなど真実を解明し、無念の死に至った赤木さんの名誉を回復するためにも、ファイルの全面開示が不可欠である。
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<各紙社説>
朝日新聞デジタル 2021年5月8日 5時00分
(社説)赤木ファイル 黒塗りで事実を隠すな
----文書の存否すら明かさなかった不誠実な態度をようやく改め、開示に応じるというが、「黒塗り」で真相解明を阻むことがあってはならない。
・・・提訴から1年余り。俊夫さんの元上司がファイルの存在について語った音声データが裁判所に出されてからでも、半年が経過している。この間、財務省は、法廷では「争点とは関係ない」として、国会では「裁判に影響が出る」として、ファイルの公開要求に応じてこなかった。真実の隠蔽(いんぺい)を図ったとしかみえない態度に、改めて怒りを禁じ得ない。
毎日新聞 2021/5/7 東京朝刊
社説:森友の「赤木ファイル」 ごまかさずに全面開示を
----学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書が改ざんされた経緯を記したとされる「赤木ファイル」の存在を国が認めた。改ざんに加担させられたとして自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんがまとめた文書だ。妻が昨年3月、国などを相手に訴訟を起こし、開示を求めていた。国側は「回答の必要がない」「探索中」などと文書の存否を明らかにしてこなかった。 裁判所の求めでようやく存在を認めたが、これまで隠蔽(いんぺい)してきたと受け止められても仕方がない。
産経新聞 2021.5.8 05:00
【主張】「赤木ファイル」 財務省は最大限の開示を
----求められたファイルの存在確認に、1年以上を要した。あまりに不自然であり、意図的な隠蔽(いんぺい)や遅延を疑われても仕方あるまい。森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題は終わっていない。「いつまで森友か」といった批判は当たらない。いたずらに問題を引きずり、長引かせているのは財務省であり、政府である。
東京新聞 2021年5月8日 07時17分
<社説>赤木ファイル 国側は全てを開示せよ
----森友問題で、自殺した元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さんが決裁文書改ざんの過程を記したとされる「赤木ファイル」。国はその存在をようやく認めた。法廷で全面開示し、真相を解明してほしい。
以下参考
朝日新聞デジタル 2021年5月8日 5時00分
(社説)赤木ファイル 黒塗りで事実を隠すな
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14896225.html
文書の存否すら明かさなかった不誠実な態度をようやく改め、開示に応じるというが、「黒塗り」で真相解明を阻むことがあってはならない。
森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざんで、国が「赤木ファイル」の存在を認めた。改ざんに加担させられたことを苦に自死した元近畿財務局職員、赤木俊夫さんが、一連の経緯を記録したもので、妻の雅子さんが国などに損害賠償を請求している裁判で提出を求めていた。
提訴から1年余り。俊夫さんの元上司がファイルの存在について語った音声データが裁判所に出されてからでも、半年が経過している。この間、財務省は、法廷では「争点とは関係ない」として、国会では「裁判に影響が出る」として、ファイルの公開要求に応じてこなかった。真実の隠蔽(いんぺい)を図ったとしかみえない態度に、改めて怒りを禁じ得ない。
今回の開示表明は、あくまで裁判所に促されてのものだ。財務省はこれまでの後ろ向きな対応を猛省しなければならない。とりわけ、国会で拒否発言を重ねたトップの麻生財務相の責任は重い。
懸念されるのは、内容がどこまで明らかにされるかである。
国が示すとしたのは、俊夫さんが改ざんの経緯を時系列でまとめた資料と、財務省と近畿財務局との間でやりとりされたメールなどだ。俊夫さんが受けた苦痛を判断する手がかりになるだけでなく、改ざんの動機や詳しい指揮命令の実態が明らかになる可能性がある。
財務省は一部をマスキング処理、すなわち黒塗りをした上で開示する考えだ。国有地売却や文書改ざんに直接関係のない第三者らを守ることは必要だが、組織や職員に配慮した恣意(しい)的な判断は許されない。「夫に改ざんを促した人の名前はちゃんと出してほしい」という雅子さんの声に向き合うべきだ。
森友問題では、事実と異なる国会での政府答弁が139回、確認されている。国と森友側とのやりとりの記録について、実際にはあるのに「不存在」として情報公開に応じなかった例も46件明らかになった。
国民が共有すべき情報を公開しないばかりか、うその説明を重ねた政府、特に財務省の隠蔽体質は、民主主義の根幹を揺るがすものだ。
安倍政権は、森友問題の調査を当事者である財務省に担わせ、解明が不十分なまま、関係者の処分で幕引きをした。菅政権もそれを引き継いでいる。赤木ファイルという新たな証拠を契機に、第三者による徹底調査に乗り出すべきだ。
毎日新聞 2021/5/7 東京朝刊
余録:志村喬さん演じる市役所の課長が夜の公園でブランコをこぎ…
https://mainichi.jp/articles/20210507/ddm/001/070/110000c
志村喬(しむら・たかし)さん演じる市役所の課長が夜の公園でブランコをこぎ、「ゴンドラの唄」を口ずさむ。名シーンで知られる黒沢明(くろさわ・あきら)監督の「生きる」を、ロンドンを舞台にリメークする計画が進む。ノーベル文学賞を受賞した長崎出身の英国人作家、カズオ・イシグロさんが脚本を執筆中だ▲死期を悟った課長は小さな公園の整備に最後の生きがいを見いだし、お役所仕事の壁を破って完成させた。市民の利益より組織を優先する官僚制度の弊害や、その中で正しく生きようとする人たちの葛藤は、万国共通のテーマなのだろう▲この人も葛藤に苦しんだ。「森友学園」への国有地売却を巡り、決裁文書の改ざんを苦に自死した赤木俊夫(あかぎ・としお)さんだ。「疑惑や不信を招くような行為をしていませんか」。常に持ち歩いていたという、自己点検項目を列挙した「国家公務員倫理カード」は文字がすり切れていた▲改ざんに関連した文書をまとめた「赤木ファイル」は、財務省の指示内容や改ざん前後の記載の比較が一目でわかるように整理されていたそうだ。国は「探索中」としていたが、裁判所の求めでようやく存在を認めた▲「夫が何を誰に指示され、どう抵抗し、何を改ざんし、何に苦しんでいたのかが書いているはずです」。妻の雅子(まさこ)さんが小紙に寄せた手記で指摘している▲「国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正に職務を執行していますか」。カードの点検項目の一つだ。政府に自覚があるなら、ファイルの全容を開示するしかあるまい。
毎日新聞 2021/5/7 東京朝刊
社説:森友の「赤木ファイル」 ごまかさずに全面開示を
https://mainichi.jp/articles/20210507/ddm/005/070/072000c
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書が改ざんされた経緯を記したとされる「赤木ファイル」の存在を国が認めた。
改ざんに加担させられたとして自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんがまとめた文書だ。妻が昨年3月、国などを相手に訴訟を起こし、開示を求めていた。
国側は「回答の必要がない」「探索中」などと文書の存否を明らかにしてこなかった。
裁判所の求めでようやく存在を認めたが、これまで隠蔽(いんぺい)してきたと受け止められても仕方がない。
国側は今後、ファイルを開示する方針という。ただ「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」箇所などは「黒塗り」にすると説明しており、全面開示にはならない見通しだ。
森友問題の発端は、国有地が異例の安値で売却されたことだ。
財務省は鑑定価格から約8億円値引きした理由を、大量のごみの撤去費などがかかるためと説明してきた。
森友学園と安倍晋三前首相の妻昭恵氏との関わりも表面化した。国会で追及された安倍氏は、大幅な値下げ売却などについて「自分や妻が関与していたら首相も国会議員も辞める」と言い切った。改ざんはその後に始まった。
財務省の調査報告書によれば、当時理財局長だった佐川宣寿氏が改ざんを主導したというが、動機は不明で、指示系統もはっきりしていない。
麻生太郎財務相は動機について「それが分かれば苦労しない」と人ごとのように語った。
ファイルには上司の詳細な指示内容や改ざん前後の記録がまとめられているという。赤木さんの元上司は妻に「これを見たら我々がどういう過程で(改ざんを)やったのか全部分かる」と話した。
改ざん問題の解明には、赤木ファイルの全面開示が不可欠だ。
森友問題の政府対応に国民の不信は根強い。昨年6月には、第三者委員会による調査を求めて約35万筆の署名が政府に提出された。
赤木ファイルの存在が確認された以上、ごまかし続けることは許されない。
森友問題は終わっていない。政府は再調査すべきだ。
産経新聞 2021.5.8 05:00
【主張】「赤木ファイル」 財務省は最大限の開示を
https://www.sankei.com/column/news/210508/clm2105080003-n1.html
求められたファイルの存在確認に、1年以上を要した。あまりに不自然であり、意図的な隠蔽(いんぺい)や遅延を疑われても仕方あるまい。
森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題は終わっていない。「いつまで森友か」といった批判は当たらない。いたずらに問題を引きずり、長引かせているのは財務省であり、政府である。
その反省を基に、裁判に提出されるファイルの中身は最大限の開示に踏み切るべきだ。黒塗りだらけの文書が提出されれば、政府の信用は地に落ちる。
財務省近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんが決裁文書の改竄を強いられて自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が国に損害賠償を求めた訴訟で、妻側は赤木さんが改竄の経緯をまとめた「赤木ファイル」の提出を求めていた。
国側は当初、「存否を答える必要はない」とし、その後は「探索中」としていた。大阪地裁が今月6日までに存否を回答するよう求め、ようやく存在を認めた。
6月23日の口頭弁論に提出される予定だが、国側は意見書で「訴訟とは直接関係が認められない第三者の個人情報も含まれる」などとしてマスキングを施した上で提出するとした。マスキングとはつまり、黒塗りである。
意見書は「マスキングの範囲はできる限り狭いものとする」としたが、そもそも範囲の取捨選択を被告側に任せるのは妥当なのか。裁判所の訴訟指揮も問われる。
妻は「一切のマスキングをなしにして、夫が残したものは全部出してほしい」と求めている。
財務省を信じよ、というのは難しい。大量に改竄された文書自体が、財務省理財局長だった佐川宣寿氏が国会で「記録は廃棄した」と述べたものだった。
決裁文書改竄をめぐっては、財務省が平成30年6月に公表した調査報告書で、佐川氏が方向性を決め、近畿財務局などが関与したと説明していた。
だが報告書には、佐川氏の言葉も赤木さんの痛ましい死についても記載はなかった。佐川氏は国会の証人喚問でも「訴追の恐れ」を連発して証言のほとんどを拒み、大阪地検による不起訴が決まった後も口をつぐんだままだ。説明は尽くされていない。幕引きを遠ざけているのは、財務省自らであると知るべきだろう。
東京新聞 2021年5月8日 07時17分
<社説>赤木ファイル 国側は全てを開示せよ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/102872
森友問題で、自殺した元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さんが決裁文書改ざんの過程を記したとされる「赤木ファイル」。国はその存在をようやく認めた。法廷で全面開示し、真相を解明してほしい。
妻の雅子さんが「夫は改ざんの強制を苦に死を選んだ」と国と佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めた訴訟で、雅子さん側は二〇二〇年三月の提訴時、国側にファイルの提出を求めた。
国側は「探索中」としてファイルの存否を明らかにしてこなかった。雅子さん側は一年近くたった今年二月、ファイル提出を国に命令するよう大阪地裁に申し立て、地裁が国に「五月六日までに存否の回答を」と求めていた。
森友問題は、国有地が八億円も値引きされて学校法人森友学園に払い下げられたことが発覚して社会問題化した。後に財務省が公表した調査報告書によると、安倍晋三前首相が「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」と答弁した直後の一七年二月から、前首相の昭恵夫人らに関わる記述が文書から削除された。
生前の手記で赤木さんは、「佐川氏らの指示で改ざんの実行を強いられた」と述べている。雅子さんはふさぎこんだ夫から「過程を事細かく書き、ファイルにとじている」と聞かされていたという。
赤木さんの元上司が、雅子さんに「ファイルには本省の指示や修正箇所、改ざんの過程が一目で分かるように整理されていた」と話した音声データも残っている。
改ざんが発覚した一八年三月に赤木さんは自殺した。財務省の報告書は、佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたとしている。しかし、赤木さんが強制されたとされる作業の詳細には触れておらず、自殺の背景はうやむやのままだ。
国側は訴訟で、存否確認が遅れた理由を「対象の文書量が著しく膨大」「コロナ禍で業務を縮小した」としたが、とても誠意ある回答とは言えない。「不利な証拠を出したくない」との思惑があったのではないか。隠蔽(いんぺい)ととられても仕方がない。
雅子さん側が証拠提出した元上司の音声データが、地裁の訴訟指揮につながったとみられる。ファイルは六月の口頭弁論で示されることになったが、国側は「行政内部のやりとりなど職務上の秘密を黒塗り処理する必要がある」としている。指示の流れなど真実を解明し、無念の死に至った赤木さんの名誉を回復するためにも、ファイルの全面開示が不可欠である。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済