2021-08-24(Tue)
「骨太の方針」2021 閣議決定 2021.6.18
経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力
~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~
経済財政運営と改革の基本方針2021
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/decision0618.html
令和3年6月18日、「経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。
〇 経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~(令和3年6月18日閣議決定)(PDF形式:634KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/2021_basicpolicies_ja.pdf
〇 概要(PDF形式:507KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/summary_ja.pdf
*********************************
この国を考える 2021-06-13(Sun)
2021「骨太の方針」原案 コロナの教訓が見えない 方向性見えず
脱炭素社会、デジタル化、地方創生、少子化対策の4分野重点、投資加速
経済財政運営と改革の基本方針2021(仮称)原案の要旨
http://ajimura.blog39.fc2.com/blog-entry-6488.html
PW konokuni
以下参考
読売新聞 2021/06/19 05:00
社説:骨太方針決定 目標の羅列では意味がない
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210618-OYT1T50289/
テーマや目標を並べただけでは意味がない。新型コロナウイルスの感染収束後を見据え、日本経済に活力を取り戻すための長期的な戦略を明確に示してもらいたい。
政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。菅内閣として初めての骨太の方針となる。温室効果ガスの排出をなくす脱炭素や官民のデジタル化を、コロナ後の経済成長に向けた原動力と位置づけた。
方向性は妥当だが、内容は各省庁の従来施策の寄せ集めで、踏み込み不足と言わざるを得ない。
気候変動対策では、再生可能エネルギーを最大限導入すると強調し、必要な送配電網・電源への投資を着実に実施するとした。
ただ、電力自由化の影響で経営余力に乏しい電力会社に投資を促す方策や、二酸化炭素を出さない原子力発電所の再稼働に向けた政府の役割は明示していない。
デジタル分野では、行政手続きの大部分を5年以内にオンライン化することを盛り込んだ。今秋には菅首相の肝いりでデジタル庁が発足するが、各省庁と自治体間の連携不足という長年の課題にどう切り込むかは不透明なままだ。
コロナ対応では、日本は欧米各国と比べて人口あたりの病床数が多く、感染者数は少ないにもかかわらず、医療提供体制が 逼迫(ひっぱく) する事態を繰り返している。
その反省から、骨太の方針は、緊急時の病床や医療従事者の確保について、国や自治体の権限を強化することを検討するとしたものの、方法ははっきりしない。早期に具体策を打ち出してほしい。
巨額のコロナ対策で急速に悪化した財政をどう立て直すか。本来、骨太の方針で方向を示すべき戦略は、さらにあいまいだ。
国と地方の基礎的財政収支を2025年度に黒字化する従来の目標を堅持しつつ、今年度中に改めて目標年次を確認するという。
達成が不可能なことが明らかであるにもかかわらず、今年秋までに行われる衆院選を意識し、目標見直しの議論を先送りしたとみられても仕方ない。
22年からは団塊の世代が後期高齢者になり始め、社会保障費の伸びが加速する。財政再建への道筋を描き直さねばならない。
首相は、携帯電話料金の引き下げなど、国民に身近な個別の政策に熱心に取り組む一方、国家のビジョンが見えないと指摘されている。首相が目指す日本のあり方が、国民にしっかり伝わるような骨太の方針にすることが望まれる。
日本経済新聞 2021年6月19日 19:05
[社説]官民の賢い投資でコロナ後の成長探れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK189IR0Y1A610C2000000/
政府が2021年度の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。コロナ禍の克服に全力をあげるとともに、グリーン化やデジタル化を通じた成長基盤の強化に取り組む。
骨太の方針に盛り込んだ行政のデジタル化は、待ったなしの課題だ
コロナ禍に翻弄されたこの1年余りで、日本の感染症対策のお粗末さが浮き彫りになった。ワクチンの接種、病床や医療従事者の確保、保健所に対する指揮系統の明確化は待ったなしの課題だ。
骨太の方針に美辞麗句を並べても、迅速・確実に実行できないのでは意味がない。同じ過ちを繰り返さぬよう、必要な法整備や体制作りに万全を期してほしい。
コロナ後を見据えた成長戦略は、感染症対策に負けず劣らず重要である。ワクチンの接種率が上がり、経済社会活動の正常化が進むにつれて、政策対応の軸足もおのずと変わらざるを得まい。
骨太の方針がコロナ後のビジョンに多くのページを割いたのは理解できる。グリーン化、デジタル化、地方創生、少子化対策を「成長を生み出す4つの原動力」と位置づけたのも妥当だろう。だが感染症対策にもまして総花的な施策を並べた印象は拭えない。
グリーン化の優先順位ははっきりしている。50年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を達成するには、電気自動車や燃料電池車の普及、再生可能エネルギーの拡大などが欠かせない。約2兆円の基金も活用し、効果的な投資を集中的に進める必要がある。
電子政府の実現も急ぎたい。骨太の方針は22年度末までにマイナンバーカードをほぼ全国民に行き渡らせ、9月に発足するデジタル庁を中心に行政手続きのオンライン化を5年以内に進めるというが、それでも遅すぎるくらいだ。
経済安全保障の観点から、半導体などの供給網も再構築しなければなるまい。不要不急の施策を排除し、限られた財政資金を優先課題に重点配分すべきだ。
国が全てを賄うのではなく、上場企業だけで100兆円を超える手元資金などを活用する手もあろう。官民の賢い投資でコロナ後の成長を探るのが望ましい。
財政の実情と健全化の道筋を示すのも政府の責務だ。骨太の方針では国・地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する目標を堅持したが、21年度中にこれを再確認するという。いまは経済再生が先決でも、将来に備えた歳出・歳入改革の議論だけはしておきたい。
産経新聞 2021/6/20 05:00
主張:骨太方針 コロナ克服の確信持てぬ
https://www.sankei.com/article/20210620-WBBWXCSQKBJ4BHKE4ROWGVF7KQ/
政府が経済財政運営の指針「骨太の方針」を閣議決定した。デジタル化や脱炭素化などを成長の原動力とし、経済安全保障を新たな課題としたことなどが特徴だ。
新型コロナウイルス禍ではっきりした経済・社会の課題を克服し、同時に世界の潮流を見据えた政策展開でコロナ後の成長につなげるのが狙いだ。
残念なのは施策の羅列が目立つことだ。何が最優先であり、財源を含めてどこまで実現可能性があるのかが総じて判然としないのである。むしろ、各省庁が予算を獲得したい項目を詰め込んだ印象が強い。衆院選を視野に入れて聞こえのいい施策を並べたのなら、コロナ克服の確信は持てない。
コロナ禍の今は時代の転換点である。菅義偉政権が目指すべき国家像を明確にした上で、実効性のある施策を峻別(しゅんべつ)し、確実に具体化することが大事だ。そのための大胆な戦略と行動を求めたい。
コロナ対応では、医療提供体制の確保やワクチン調達などで後手に回ることが多かった。このため、より強力な司令塔の下で緊急時に対応することや、実効性のある対策を講じられるよう法的措置を検討することなどが盛り込まれた。あらゆる感染症有事に備えて体制整備を急ぐべきは当然だ。
成長の原動力はデジタル化と脱炭素化のほか地方創生と少子化対策の4つだ。菅政権以前から重点的に取り組んだものの、成果が不十分だったものばかりである。
後はないとの危機感で経済社会を変革するというなら抜本的な改革を実行に移すことが肝心だ。例えば少子化対策では、安定財源確保のため「社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組み」を検討するとしたが、その具体像を早急に明確にすべきである。
物足りないのは財政運営の方向性がみえないことだ。コロナ禍で大規模な財政支出が必要なのは当然だが、平時に戻ったとき悪化した財政赤字にどう対応するか。欧米が財政出動とともに財源確保策も示しているのとは対照的だ。
広告
令和7年度に基礎的財政収支を黒字化する目標の達成は極めて困難だ。骨太は、この目標を堅持した上で、今年度中にコロナ禍に伴う影響を検証し、目標年度を再確認するとしたが、これでは論議の先送りである。何のための骨太かを見つめ直した方がいい。
しんぶん赤旗 2021年6月19日(土)
主張:コロナ禍と「骨太」 国民の願いに反する財界主導
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-06-19/2021061902_01_1.html
菅義偉内閣が同政権で初めてとなる2021年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定しました。社会保障の削減を続ける方針を示し、大企業の要求に沿う「デジタル化」やカジノ推進を掲げました。コロナ危機に便乗して「これまで進められなかった課題を一気に進めるチャンスが到来している」といいます。危機に学ばず、医療の強化や生活支援に背を向けた姿勢は国民の願いからかけ離れています。
社会保障費の削減さらに
「骨太の方針」は次年度の政府予算案に反映されます。政府と財界代表らで構成する経済財政諮問会議が作成します。財界の要求が最優先される仕組みです。
「団塊の世代」が22年度から75歳以上になり始めるとして、「給付と負担のバランス」の名で社会保障費のさらなる削減を打ち出しました。政府はすでに16~21年度の6年間で社会保障費の伸びを合計8300億円削減しました。「その方針を継続する」として高齢化などによる自然増分も削り込む姿勢を示しました。
「感染症対応の医療提供体制を強化」といいますが、コロナ危機で顕在化した医療の弱体化に反省はありません。病床削減を図る「地域医療構想」や、都道府県の医療費削減を促す「医療費適正化計画」を推進します。菅政権は先の通常国会で「高齢者医療費2倍化法」と「病床削減推進法」を成立させました。これに拍車をかける方針です。保健所の増設、人員増には触れずじまいです。
国民の暮らしについては「コロナ禍が格差の拡大・固定化につながらないよう、目配りの効いた政策運営を行っていく」としています。しかし菅政権は格差、貧困に苦しんでいる人たちには手を差し伸べようとしません。持続化給付金、家賃支援給付金を1回で打ち切り、生活困窮者への支援にも消極的です。支援を求める声に今すぐ応えるべきです。
骨太は「賃上げを通じた経済の底上げ」に言及し、最低賃金の引き上げが不可欠と述べました。「より早期に全国加重平均1000円」をめざすというだけで、いつまでに実現するか明らかにしません。全国一律制や大幅引き上げに踏み出さなければ、消費や経済を底上げする力になりません。
「新たな成長」の柱に掲げたのが「官民挙げたデジタル化の加速」です。マイナンバーカードを22年度末までに全国民に行き渡らせる方針です。健康保険証、運転免許証との一体化に取り組むとしています。菅政権が進める「デジタル化」は、大企業のもうけのために個人データの利活用を広げる政策です。個人情報の保護をはじめ権利を守る法規制をなおざりにすることは許されません。
暮らし主導の成長こそ
骨太は日本経済が世界から立ち遅れていることに危機感を表明しました。日本が1990年代から低迷し続けている最大の原因は3度にわたる消費税増税や賃金抑制によって国民や中小企業が疲弊していることにあります。
「ポストコロナの持続的な成長」をはかるために必要なのは大企業を優遇する政治から国民の暮らしをなによりも優先する政治への転換です。消費税の減税・廃止、大幅な賃上げ、社会保障の拡充こそ必要です。
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~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~
経済財政運営と改革の基本方針2021
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/decision0618.html
令和3年6月18日、「経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。
〇 経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~(令和3年6月18日閣議決定)(PDF形式:634KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/2021_basicpolicies_ja.pdf
〇 概要(PDF形式:507KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/summary_ja.pdf
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この国を考える 2021-06-13(Sun)
2021「骨太の方針」原案 コロナの教訓が見えない 方向性見えず
脱炭素社会、デジタル化、地方創生、少子化対策の4分野重点、投資加速
経済財政運営と改革の基本方針2021(仮称)原案の要旨
http://ajimura.blog39.fc2.com/blog-entry-6488.html
PW konokuni
以下参考
読売新聞 2021/06/19 05:00
社説:骨太方針決定 目標の羅列では意味がない
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210618-OYT1T50289/
テーマや目標を並べただけでは意味がない。新型コロナウイルスの感染収束後を見据え、日本経済に活力を取り戻すための長期的な戦略を明確に示してもらいたい。
政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。菅内閣として初めての骨太の方針となる。温室効果ガスの排出をなくす脱炭素や官民のデジタル化を、コロナ後の経済成長に向けた原動力と位置づけた。
方向性は妥当だが、内容は各省庁の従来施策の寄せ集めで、踏み込み不足と言わざるを得ない。
気候変動対策では、再生可能エネルギーを最大限導入すると強調し、必要な送配電網・電源への投資を着実に実施するとした。
ただ、電力自由化の影響で経営余力に乏しい電力会社に投資を促す方策や、二酸化炭素を出さない原子力発電所の再稼働に向けた政府の役割は明示していない。
デジタル分野では、行政手続きの大部分を5年以内にオンライン化することを盛り込んだ。今秋には菅首相の肝いりでデジタル庁が発足するが、各省庁と自治体間の連携不足という長年の課題にどう切り込むかは不透明なままだ。
コロナ対応では、日本は欧米各国と比べて人口あたりの病床数が多く、感染者数は少ないにもかかわらず、医療提供体制が 逼迫(ひっぱく) する事態を繰り返している。
その反省から、骨太の方針は、緊急時の病床や医療従事者の確保について、国や自治体の権限を強化することを検討するとしたものの、方法ははっきりしない。早期に具体策を打ち出してほしい。
巨額のコロナ対策で急速に悪化した財政をどう立て直すか。本来、骨太の方針で方向を示すべき戦略は、さらにあいまいだ。
国と地方の基礎的財政収支を2025年度に黒字化する従来の目標を堅持しつつ、今年度中に改めて目標年次を確認するという。
達成が不可能なことが明らかであるにもかかわらず、今年秋までに行われる衆院選を意識し、目標見直しの議論を先送りしたとみられても仕方ない。
22年からは団塊の世代が後期高齢者になり始め、社会保障費の伸びが加速する。財政再建への道筋を描き直さねばならない。
首相は、携帯電話料金の引き下げなど、国民に身近な個別の政策に熱心に取り組む一方、国家のビジョンが見えないと指摘されている。首相が目指す日本のあり方が、国民にしっかり伝わるような骨太の方針にすることが望まれる。
日本経済新聞 2021年6月19日 19:05
[社説]官民の賢い投資でコロナ後の成長探れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK189IR0Y1A610C2000000/
政府が2021年度の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。コロナ禍の克服に全力をあげるとともに、グリーン化やデジタル化を通じた成長基盤の強化に取り組む。
骨太の方針に盛り込んだ行政のデジタル化は、待ったなしの課題だ
コロナ禍に翻弄されたこの1年余りで、日本の感染症対策のお粗末さが浮き彫りになった。ワクチンの接種、病床や医療従事者の確保、保健所に対する指揮系統の明確化は待ったなしの課題だ。
骨太の方針に美辞麗句を並べても、迅速・確実に実行できないのでは意味がない。同じ過ちを繰り返さぬよう、必要な法整備や体制作りに万全を期してほしい。
コロナ後を見据えた成長戦略は、感染症対策に負けず劣らず重要である。ワクチンの接種率が上がり、経済社会活動の正常化が進むにつれて、政策対応の軸足もおのずと変わらざるを得まい。
骨太の方針がコロナ後のビジョンに多くのページを割いたのは理解できる。グリーン化、デジタル化、地方創生、少子化対策を「成長を生み出す4つの原動力」と位置づけたのも妥当だろう。だが感染症対策にもまして総花的な施策を並べた印象は拭えない。
グリーン化の優先順位ははっきりしている。50年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を達成するには、電気自動車や燃料電池車の普及、再生可能エネルギーの拡大などが欠かせない。約2兆円の基金も活用し、効果的な投資を集中的に進める必要がある。
電子政府の実現も急ぎたい。骨太の方針は22年度末までにマイナンバーカードをほぼ全国民に行き渡らせ、9月に発足するデジタル庁を中心に行政手続きのオンライン化を5年以内に進めるというが、それでも遅すぎるくらいだ。
経済安全保障の観点から、半導体などの供給網も再構築しなければなるまい。不要不急の施策を排除し、限られた財政資金を優先課題に重点配分すべきだ。
国が全てを賄うのではなく、上場企業だけで100兆円を超える手元資金などを活用する手もあろう。官民の賢い投資でコロナ後の成長を探るのが望ましい。
財政の実情と健全化の道筋を示すのも政府の責務だ。骨太の方針では国・地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する目標を堅持したが、21年度中にこれを再確認するという。いまは経済再生が先決でも、将来に備えた歳出・歳入改革の議論だけはしておきたい。
産経新聞 2021/6/20 05:00
主張:骨太方針 コロナ克服の確信持てぬ
https://www.sankei.com/article/20210620-WBBWXCSQKBJ4BHKE4ROWGVF7KQ/
政府が経済財政運営の指針「骨太の方針」を閣議決定した。デジタル化や脱炭素化などを成長の原動力とし、経済安全保障を新たな課題としたことなどが特徴だ。
新型コロナウイルス禍ではっきりした経済・社会の課題を克服し、同時に世界の潮流を見据えた政策展開でコロナ後の成長につなげるのが狙いだ。
残念なのは施策の羅列が目立つことだ。何が最優先であり、財源を含めてどこまで実現可能性があるのかが総じて判然としないのである。むしろ、各省庁が予算を獲得したい項目を詰め込んだ印象が強い。衆院選を視野に入れて聞こえのいい施策を並べたのなら、コロナ克服の確信は持てない。
コロナ禍の今は時代の転換点である。菅義偉政権が目指すべき国家像を明確にした上で、実効性のある施策を峻別(しゅんべつ)し、確実に具体化することが大事だ。そのための大胆な戦略と行動を求めたい。
コロナ対応では、医療提供体制の確保やワクチン調達などで後手に回ることが多かった。このため、より強力な司令塔の下で緊急時に対応することや、実効性のある対策を講じられるよう法的措置を検討することなどが盛り込まれた。あらゆる感染症有事に備えて体制整備を急ぐべきは当然だ。
成長の原動力はデジタル化と脱炭素化のほか地方創生と少子化対策の4つだ。菅政権以前から重点的に取り組んだものの、成果が不十分だったものばかりである。
後はないとの危機感で経済社会を変革するというなら抜本的な改革を実行に移すことが肝心だ。例えば少子化対策では、安定財源確保のため「社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組み」を検討するとしたが、その具体像を早急に明確にすべきである。
物足りないのは財政運営の方向性がみえないことだ。コロナ禍で大規模な財政支出が必要なのは当然だが、平時に戻ったとき悪化した財政赤字にどう対応するか。欧米が財政出動とともに財源確保策も示しているのとは対照的だ。
広告
令和7年度に基礎的財政収支を黒字化する目標の達成は極めて困難だ。骨太は、この目標を堅持した上で、今年度中にコロナ禍に伴う影響を検証し、目標年度を再確認するとしたが、これでは論議の先送りである。何のための骨太かを見つめ直した方がいい。
しんぶん赤旗 2021年6月19日(土)
主張:コロナ禍と「骨太」 国民の願いに反する財界主導
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-06-19/2021061902_01_1.html
菅義偉内閣が同政権で初めてとなる2021年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定しました。社会保障の削減を続ける方針を示し、大企業の要求に沿う「デジタル化」やカジノ推進を掲げました。コロナ危機に便乗して「これまで進められなかった課題を一気に進めるチャンスが到来している」といいます。危機に学ばず、医療の強化や生活支援に背を向けた姿勢は国民の願いからかけ離れています。
社会保障費の削減さらに
「骨太の方針」は次年度の政府予算案に反映されます。政府と財界代表らで構成する経済財政諮問会議が作成します。財界の要求が最優先される仕組みです。
「団塊の世代」が22年度から75歳以上になり始めるとして、「給付と負担のバランス」の名で社会保障費のさらなる削減を打ち出しました。政府はすでに16~21年度の6年間で社会保障費の伸びを合計8300億円削減しました。「その方針を継続する」として高齢化などによる自然増分も削り込む姿勢を示しました。
「感染症対応の医療提供体制を強化」といいますが、コロナ危機で顕在化した医療の弱体化に反省はありません。病床削減を図る「地域医療構想」や、都道府県の医療費削減を促す「医療費適正化計画」を推進します。菅政権は先の通常国会で「高齢者医療費2倍化法」と「病床削減推進法」を成立させました。これに拍車をかける方針です。保健所の増設、人員増には触れずじまいです。
国民の暮らしについては「コロナ禍が格差の拡大・固定化につながらないよう、目配りの効いた政策運営を行っていく」としています。しかし菅政権は格差、貧困に苦しんでいる人たちには手を差し伸べようとしません。持続化給付金、家賃支援給付金を1回で打ち切り、生活困窮者への支援にも消極的です。支援を求める声に今すぐ応えるべきです。
骨太は「賃上げを通じた経済の底上げ」に言及し、最低賃金の引き上げが不可欠と述べました。「より早期に全国加重平均1000円」をめざすというだけで、いつまでに実現するか明らかにしません。全国一律制や大幅引き上げに踏み出さなければ、消費や経済を底上げする力になりません。
「新たな成長」の柱に掲げたのが「官民挙げたデジタル化の加速」です。マイナンバーカードを22年度末までに全国民に行き渡らせる方針です。健康保険証、運転免許証との一体化に取り組むとしています。菅政権が進める「デジタル化」は、大企業のもうけのために個人データの利活用を広げる政策です。個人情報の保護をはじめ権利を守る法規制をなおざりにすることは許されません。
暮らし主導の成長こそ
骨太は日本経済が世界から立ち遅れていることに危機感を表明しました。日本が1990年代から低迷し続けている最大の原因は3度にわたる消費税増税や賃金抑制によって国民や中小企業が疲弊していることにあります。
「ポストコロナの持続的な成長」をはかるために必要なのは大企業を優遇する政治から国民の暮らしをなによりも優先する政治への転換です。消費税の減税・廃止、大幅な賃上げ、社会保障の拡充こそ必要です。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済