2021-10-25(Mon)
リニア 静岡工区 「全量戻し」 国交省に指導要望
「大井川水資源問題に関する中間報告(案)」に対する県の見解
2021年10月18日
「第12回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議」において提示された、「大井川水資源問題に関する中間報告(案)」に対する県の見解を国土交通省鉄道局長あてに提出
鉄道局長あて県の見解(PDF:185KB)
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-020/rinia/documents/kenkai.pdf
静岡新聞 2021.10.19
JR「全量戻し」 静岡県、国交省に指導要望【大井川とリニア】
----リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、静岡県は18日、国土交通省専門家会議が9月26日の会議で示した「大井川水資源問題に関する中間報告(案)」に対する見解を同省に提出した。トンネル湧水の「全量戻し」の認識など6項目について問題点を指摘し、同省にJR東海を指導するよう求めた。
県は「全量戻し」に関し、「工事後、工事中といった区別なく、全てのトンネル湧水」との認識。中間報告案にも、工事中に県外に流出する湧水を戻さない場合、「県が求めている全量戻しとはならない」と明記されている。一方、JRは「工事中を含まない」と主張している。
中日新聞 2021年10月19日 11時46分 (10月19日 11時55分更新)
考えるリニア着工 「県民理解得られぬ」 湧水対応で県が国交省に見解
----リニア中央新幹線南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、静岡県は十八日、国土交通省・有識者会議の中間報告案への見解をまとめ、同省に提出した。掘削で発生する湧水(トンネル湧水)全量を大井川へ戻す「全量戻し」の対象期間に、工事中を含まないとするJR東海との認識のずれや、地下水位の低下による南アの生態系への影響を評価するための資料が不足していることなどを指摘し、地元理解は得られない内容だと示唆した。
静岡新聞 2021.10.16
リニア工事中止 国会請願へ署名 静岡県内市民団体が開始
----リニア中央新幹線の建設工事を巡り、リニア事業に反対する市民団体などの代表が15日、県庁で記者会見を開き、南アルプスのトンネル工事中止を求める署名を集め、国会請願を目指すと発表した。
静岡新聞 2021.10.14
湧水戻し、新方策を JR東海社長意向 リニア大井川水問題
----リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、JR東海の金子慎社長は13日の定例記者会見で、貫通前の工事期間中に県外流出する湧水の戻し方に関し「理解が得られるような方策をさらに検討していかないといけない」と述べ、新たな方法も含めて解決策を模索する考えを示した。
静岡新聞 2021.10.9
静岡県「JRの説明、不十分」 湧水全量戻し否定、問題視【大井川とリニア】
----リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、県くらし・環境部の渡辺光喜参事は8日の県議会危機管理くらし環境委員会で、JR東海が「トンネル湧水の全量戻し」ができない理由として挙げる県境付近の掘削方法に関して「十分な説明になっているとは認識していない」と問題視した。
静岡新聞 2021.10.8
事業者の説明、地元の納得不可欠 国交相、リニア工事巡り見解
----斉藤鉄夫国土交通相は8日の記者会見で、大井川の流量減少が懸念されるリニア中央新幹線の南アルプストンネル工事に関し「県民の意思をないがしろにして工事を進めることはあり得ない。(事業者のJR東海による)丁寧な説明と(地元の)納得が不可欠だ」との認識を示した。
静岡新聞 2021.10.7
大井川湧水の全量戻し、工事中も含む 知事、流量問題で見解
----リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、川勝平太知事は6日の定例記者会見で、静岡県や利水者が求める減水対策「トンネル湧水の全量戻し」について、減水の影響が大きくなる貫通前の工事期間中も湧水を大井川に戻さない限り着工は認めず、JR東海が山梨、長野側から進めている同トンネル工事を中止すべきとする見解を示した。
以下参考
リニア中央新幹線事業に関する対話の状況
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-020/rinia/omonadekigoto.html
2021年10月18日
「第12回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議」において提示された、「大井川水資源問題に関する中間報告(案)」に対する県の見解を国土交通省鉄道局長あてに提出
鉄道局長あて県の見解(PDF:185KB)
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-020/rinia/documents/kenkai.pdf
令和3年10月18日
国土交通省鉄道局長 上原 淳 様
静岡県中央新幹線対策本部長
静岡県副知事 難波 喬司
「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」における中間報告(案)に対する県の見解について
JR東海への助言・指導を目的とする「リニア中央新幹線静岡工区有識者会議(以下「有識者会議」という。)」において、昨年4月から約1年6ヶ月もの年月をかけ、我が国を代表する各分野の専門家によって、大井川の水資源問題について、科学的・工学的根拠に基づく議論が行われています。
有識者会議によるJR東海への御指導の結果、トンネル掘削において想定されるリスクや不確実性の評価の重要性についてJR東海が認識するようになってきたこと等について、感謝申し上げます。
さて、第12回有識者会議では、「大井川水資源問題に関する中間報告(案)(以下、「中間報告(案)」という)」についての集中的な審議が行われ、さらに、次回の第13回有識者会議で中間報告を取りまとめる方向性が示されました。
示された中間報告(案)については、県の見解との相違はありますが、有識者会議が責任を持って記述するものであり、県としては文面の修正は求めません。しかし、下記の点については、現在有する疑問や懸念を申し述べておかなければなりません。
貴職及び有識者会議の委員の先生方もお気づきかと思いますが、本県がJR東海との対話の中で、強く感じることは、JR東海が「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念を掲げるあまり、経済的発展の視点に偏りすぎていないかということにあります。
21世紀は環境の世紀と言われ、さらに、2015年国連サミットでは、SDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。
現在、国内外では、各企業、団体によるSDGs達成のための行動方針が表明されており、SDGsを考えない企業の発展・継続は望めないと言っても過言ではありません。
JR東海は公式ウェブサイトにおいて、「SDGsに掲げられた目標について実現に力を注いでいきます。」と宣言していますが、これまでの説明の内容では、その宣言を疑問視せざるを得ません。
今や、企業は、環境や社会問題の解決と事業との一体化が避けて通れない時代であります。
リニア中央新幹線が国家的プロジェクトというのであれば、我が国を代表する企業であるJR東海は、企業としての「SDGsへの貢献」や「環境、地域社会、経済の三方よし。これらによる未来よしへの貢献」について行動に移すべきだと考えます。そのような姿勢が根底から見られてこそ、社会的理解が得られるものと思います。
貴職におかれましては、JR東海の説明が社会の理解が得られるものとなるよう、下記の県の見解を十分に御留意いただき、JR東海を御指導いただきますようお願いいたします。
記
1 トンネル湧水の全量戻しの認識
有識者会議の大きな論点の一つである「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」について、静岡県及び県民の理解は、工事後、工事中と言った区別は無く、全てのトンネル湧水を大井川へ戻すというものである。中間報告(案)p5においても「工事期間中(中略)トンネル湧水が静岡県外へ流出する。このトンネル湧水を戻さない場合は、静岡県が求めている全量戻しとはならない。」と明記されている。
しかし、JR東海の金子社長は、JR東海の記者会見において、「『全量戻し』は使う人や使い方によって違う。私が言っているのは、工事期間中の県外流出とは違う問題」の旨を発言し、宇野副社長も「全量戻しは工事中は含まない」旨、第12回有識者会議後のブリーフィングで答えている。
このことから、「全量戻し」について、本県及び有識者会議の認識とJR東海の認識が異なっていることが明らかとなった。
このことは、「全量戻し」の重要性をJR東海は未だ理解せず、大井川の水資源や南アルプスの自然環境へ影響を与える事業を行う者としての自覚と責任感に欠いていることを明確に示しており、地域としては受入れがたいものである。
このような説明を行うことは、企業としての社会的責任が欠如していると疑わざるを得ず、この点についてのJR東海の認識を改めることがなければ、今後の対話において、流域をはじめとする県民の理解を得ることはできない。
2 工事期間中のトンネル湧水の流出の影響
第12回会議において、委員から、「トンネル工事により山体から抜けた地下水は元に戻らない。新しい地下水状態となる。この工事はそういうことをやるということを常に意識して頂いた方が良い」旨の発言があった。
工事中にトンネル内に流入する地下水の全量を導水路トンネル等で大井川に流す場合であっても、委員発言のとおり、「トンネル掘削により、これまで蓄えられていた山体内の地下水はトンネル掘削前の状態には戻らず、地下水位が以前より低下した新しい地下水の平衡状態になる。これによって、山体内の地下水の水がめ機能が低下する。」ことを意識せずに、中間報告(案)p5にあるように「県内の山体内に貯留されている量も含めた地下水がトンネル湧水として導水路等を通して大井川に戻されるので、中下流域の河川流量は維持される解析結果となった。(中略)トンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は、河川流量の季節変動や年-年変動による影響に比べて極めて小さいと考えられる」と記述し、いかにも影響がないかの表現としている。しかし、この現象は「工事中に山体内の水を自然現象以上に河川に流出させることで河川流量を維持し、将来にそのつけを回している」ことを意味している。このことは、「トンネル掘削により山体内の地下水位が低下し、大井川水系全体の水資源の安定性に影響が出る可能性」を考慮していないものと言える。また、中間報告(案)p5では、「これらの解析結果は不確実性を伴う」とあり、モニタリングとトンネル掘削の影響の低減策であるリスク対応についても記述されている。リスク対応としては、「薬液注入等による止水対策に加え、静岡県側からの高速長尺ボーリング等での揚水により県外流出量を極力軽減する方策が提示された。」と記述されているが、低減策の効果の評価についての議論が行われておらず、トンネル掘削の影響の低減策としての有効性を判断するに至っていない。
3 県外流出するトンネル湧水を大井川に戻す方法
中間報告(案)p5で、「工事期間中(先進抗貫通までの約10ヶ月間)に静岡県外へ流出するトンネル湧水を大井川へ戻す方法として、先進抗貫通後に県外流出量と同量の山梨県内のトンネル湧水を大井川へ戻す方策も提示された。」と記述されている。
この方策は10ヶ月間に流域外に流出させた量を、何年もかけて流域内に戻すという考え方であるが、本来、水循環や水利用への影響評価は、豊水期に梅雨、台風等による降水で水を蓄え、蓄えられた水を冬季の渇水期に計画的に使用するという1年のサイクルの中で考えるべきである。
JR東海提示の方策は、水循環の基本的な考え方を理解しないものであり、県や大井川利水関係協議会がトンネル工事の影響回避策として求め、有識者会議の論点のひとつとして議論してきたはずの「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」には該当するものとは評価できない。
4 発生土置き場と表流水、地下水との関係
中間報告(案)p16で「提示された場所においては、JR東海において、適切に処理・管理することが継続されれば、表流水や地下水の水量・水質等には影響をもたらすものでは無いと考える。」と前提条件付きで評価している。論点は、「適切に処理・管理することが継続されるか否か」である。中間報告(案)の記述は、「影響が無いように適切な処理・管理がなされれば影響は発生しない」という当たり前の事を述べているに過ぎない。
有識者会議におけるJR東海の発生土の処理についての説明は、例えば、二重遮水シートの長期耐久性について、JR東海が行う半永久的な管理へのリスクが十分考慮されていない、あるいは山体崩壊等、発生頻度は低いが発生すると甚大な影響が生じる事象についても評価されていないなど、どのように「適切に処理・管理することが継続」するかについて、流域をはじめとする県民が理解できる説明となっていない。
5 生態系への影響
中間報告(案)p7でトンネル掘削による生態系への影響について、「その影響の回避・低減策については、静岡県で行われている県専門部会での議論も踏まえ、今後、有識者会議の場でも議論することを予定している。JR東海においては、まずは、関連事例や専門家等の意見を事前に踏まえながら、環境保全についての意識醸成を図り、事業主体として行い得る地元が納得できる回避・低減策等を検討すべきである。」とある。
第12回会議において、委員から「(地下水低下の影響について)問題はその上(流)の生態系に対しては、大きな影響範囲で無くてもおそらく影響はあるのかもしれない。その点は注意しなければいけない」旨の発言があった。
南アルプスは、これまでは奥地で人為が及ばず、その結果、世界の南限とされる希少動植物が多数生息し、守るべき希少な生態系が残っているものの、周辺環境の変化の影響を受けやすく非常に脆弱である。
このように南アルプスの生態系は特殊性を有しており、トンネル工事による人為的変動の影響は計りしれず、JR東海は、影響の回避・低減を検討しなければならない。
これまでのJR東海の水収支解析は、中下流域の水資源への影響を検討するためのものであり、南アルプスの地下水位への影響を解析するためには十分なモデルではないことは有識者会議の共通理解であると、県としては認識している。
6 今後の進め方
中間報告(案)p7で「有識者会議としては、本会議におけるこれまでの指導・指摘等を踏まえ、JR東海は、利水者等の水資源に対する不安や懸念を再認識し、今後、静岡県を始めとした関係者との対話を丁寧に進めることで、トンネル工事に伴う水資源利用に関しての懸念が払拭され、地元の理解が得られるように真摯に対応すべきであると考える」とある。
また、第12回会議において、委員から「納得が得られるのは最後は事業に対して共感・信頼を持ってくれるという話だと思う。」旨の発言があった。
JR東海のトップは、これまで、「中間報告の素案に影響がごく小さいと記載されている。リスクだけ取り上げるのはミスリーディングだ。調査や解析(の結果)が一番ありそうな話だ。(流量減少は)蓋然性として低い。」などと発言している。
その発言は、発生確率は小さくても発生すると大きな影響が生じる可能性があるリスクも含め、リスクコミュニケーションを丁寧に行うことを軽視している。
これらJR東海のトップの累次の発言は、有識者会議の委員による「事業者が地域社会から信頼されることの重要性」に関する指摘を未だに理解していないものと言わざるをえない。
このような発言をしている限り、静岡県を始めとする関係者の共感・信頼を得ることはできないということをJR東海は認識すべきであることを付記する。
以 上
*********************************
静岡新聞 2021.10.19
JR「全量戻し」 静岡県、国交省に指導要望【大井川とリニア】
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/974338.html
中日新聞 2021年10月19日 11時46分 (10月19日 11時55分更新)
考えるリニア着工 「県民理解得られぬ」 湧水対応で県が国交省に見解
https://www.chunichi.co.jp/article/350017
読売新聞 2021/10/19 15:48
リニア工事の湧水、全て川に戻すのは「県民の理解得られない」…国にJR側への指導を要請
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211019-OYT1T50056/
静岡新聞 2021.10.16
リニア工事中止 国会請願へ署名 静岡県内市民団体が開始
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/973245.html
静岡新聞 2021.10.14
湧水戻し、新方策を JR東海社長意向 リニア大井川水問題
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/972255.html
静岡新聞 2021.10.9
静岡県「JRの説明、不十分」 湧水全量戻し否定、問題視【大井川とリニア】
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/970183.html
静岡新聞 2021.10.9
権利侵害「立証不十分」 リニア工事、JR反論 静岡地裁
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/970223.html
静岡新聞 2021.10.8
事業者の説明、地元の納得不可欠 国交相、リニア工事巡り見解
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/969937.html
静岡新聞 2021.10.7
大井川湧水の全量戻し、工事中も含む 知事、流量問題で見解
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/969165.html
静岡新聞 2021.10.6
岸田首相 リニア整備指示 国交相へ「経済圏の統合促す」
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/968371.html
静岡新聞 2021.10.5
岸田内閣に川勝知事要望 リニア問題、コロナ【岸田新内閣発足】
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/968130.html
//////////////////////////////////////////////////////////////////
2021年10月18日
「第12回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議」において提示された、「大井川水資源問題に関する中間報告(案)」に対する県の見解を国土交通省鉄道局長あてに提出
鉄道局長あて県の見解(PDF:185KB)
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-020/rinia/documents/kenkai.pdf
静岡新聞 2021.10.19
JR「全量戻し」 静岡県、国交省に指導要望【大井川とリニア】
----リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、静岡県は18日、国土交通省専門家会議が9月26日の会議で示した「大井川水資源問題に関する中間報告(案)」に対する見解を同省に提出した。トンネル湧水の「全量戻し」の認識など6項目について問題点を指摘し、同省にJR東海を指導するよう求めた。
県は「全量戻し」に関し、「工事後、工事中といった区別なく、全てのトンネル湧水」との認識。中間報告案にも、工事中に県外に流出する湧水を戻さない場合、「県が求めている全量戻しとはならない」と明記されている。一方、JRは「工事中を含まない」と主張している。
中日新聞 2021年10月19日 11時46分 (10月19日 11時55分更新)
考えるリニア着工 「県民理解得られぬ」 湧水対応で県が国交省に見解
----リニア中央新幹線南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、静岡県は十八日、国土交通省・有識者会議の中間報告案への見解をまとめ、同省に提出した。掘削で発生する湧水(トンネル湧水)全量を大井川へ戻す「全量戻し」の対象期間に、工事中を含まないとするJR東海との認識のずれや、地下水位の低下による南アの生態系への影響を評価するための資料が不足していることなどを指摘し、地元理解は得られない内容だと示唆した。
静岡新聞 2021.10.16
リニア工事中止 国会請願へ署名 静岡県内市民団体が開始
----リニア中央新幹線の建設工事を巡り、リニア事業に反対する市民団体などの代表が15日、県庁で記者会見を開き、南アルプスのトンネル工事中止を求める署名を集め、国会請願を目指すと発表した。
静岡新聞 2021.10.14
湧水戻し、新方策を JR東海社長意向 リニア大井川水問題
----リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、JR東海の金子慎社長は13日の定例記者会見で、貫通前の工事期間中に県外流出する湧水の戻し方に関し「理解が得られるような方策をさらに検討していかないといけない」と述べ、新たな方法も含めて解決策を模索する考えを示した。
静岡新聞 2021.10.9
静岡県「JRの説明、不十分」 湧水全量戻し否定、問題視【大井川とリニア】
----リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、県くらし・環境部の渡辺光喜参事は8日の県議会危機管理くらし環境委員会で、JR東海が「トンネル湧水の全量戻し」ができない理由として挙げる県境付近の掘削方法に関して「十分な説明になっているとは認識していない」と問題視した。
静岡新聞 2021.10.8
事業者の説明、地元の納得不可欠 国交相、リニア工事巡り見解
----斉藤鉄夫国土交通相は8日の記者会見で、大井川の流量減少が懸念されるリニア中央新幹線の南アルプストンネル工事に関し「県民の意思をないがしろにして工事を進めることはあり得ない。(事業者のJR東海による)丁寧な説明と(地元の)納得が不可欠だ」との認識を示した。
静岡新聞 2021.10.7
大井川湧水の全量戻し、工事中も含む 知事、流量問題で見解
----リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、川勝平太知事は6日の定例記者会見で、静岡県や利水者が求める減水対策「トンネル湧水の全量戻し」について、減水の影響が大きくなる貫通前の工事期間中も湧水を大井川に戻さない限り着工は認めず、JR東海が山梨、長野側から進めている同トンネル工事を中止すべきとする見解を示した。
以下参考
リニア中央新幹線事業に関する対話の状況
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-020/rinia/omonadekigoto.html
2021年10月18日
「第12回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議」において提示された、「大井川水資源問題に関する中間報告(案)」に対する県の見解を国土交通省鉄道局長あてに提出
鉄道局長あて県の見解(PDF:185KB)
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-020/rinia/documents/kenkai.pdf
令和3年10月18日
国土交通省鉄道局長 上原 淳 様
静岡県中央新幹線対策本部長
静岡県副知事 難波 喬司
「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」における中間報告(案)に対する県の見解について
JR東海への助言・指導を目的とする「リニア中央新幹線静岡工区有識者会議(以下「有識者会議」という。)」において、昨年4月から約1年6ヶ月もの年月をかけ、我が国を代表する各分野の専門家によって、大井川の水資源問題について、科学的・工学的根拠に基づく議論が行われています。
有識者会議によるJR東海への御指導の結果、トンネル掘削において想定されるリスクや不確実性の評価の重要性についてJR東海が認識するようになってきたこと等について、感謝申し上げます。
さて、第12回有識者会議では、「大井川水資源問題に関する中間報告(案)(以下、「中間報告(案)」という)」についての集中的な審議が行われ、さらに、次回の第13回有識者会議で中間報告を取りまとめる方向性が示されました。
示された中間報告(案)については、県の見解との相違はありますが、有識者会議が責任を持って記述するものであり、県としては文面の修正は求めません。しかし、下記の点については、現在有する疑問や懸念を申し述べておかなければなりません。
貴職及び有識者会議の委員の先生方もお気づきかと思いますが、本県がJR東海との対話の中で、強く感じることは、JR東海が「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念を掲げるあまり、経済的発展の視点に偏りすぎていないかということにあります。
21世紀は環境の世紀と言われ、さらに、2015年国連サミットでは、SDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。
現在、国内外では、各企業、団体によるSDGs達成のための行動方針が表明されており、SDGsを考えない企業の発展・継続は望めないと言っても過言ではありません。
JR東海は公式ウェブサイトにおいて、「SDGsに掲げられた目標について実現に力を注いでいきます。」と宣言していますが、これまでの説明の内容では、その宣言を疑問視せざるを得ません。
今や、企業は、環境や社会問題の解決と事業との一体化が避けて通れない時代であります。
リニア中央新幹線が国家的プロジェクトというのであれば、我が国を代表する企業であるJR東海は、企業としての「SDGsへの貢献」や「環境、地域社会、経済の三方よし。これらによる未来よしへの貢献」について行動に移すべきだと考えます。そのような姿勢が根底から見られてこそ、社会的理解が得られるものと思います。
貴職におかれましては、JR東海の説明が社会の理解が得られるものとなるよう、下記の県の見解を十分に御留意いただき、JR東海を御指導いただきますようお願いいたします。
記
1 トンネル湧水の全量戻しの認識
有識者会議の大きな論点の一つである「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」について、静岡県及び県民の理解は、工事後、工事中と言った区別は無く、全てのトンネル湧水を大井川へ戻すというものである。中間報告(案)p5においても「工事期間中(中略)トンネル湧水が静岡県外へ流出する。このトンネル湧水を戻さない場合は、静岡県が求めている全量戻しとはならない。」と明記されている。
しかし、JR東海の金子社長は、JR東海の記者会見において、「『全量戻し』は使う人や使い方によって違う。私が言っているのは、工事期間中の県外流出とは違う問題」の旨を発言し、宇野副社長も「全量戻しは工事中は含まない」旨、第12回有識者会議後のブリーフィングで答えている。
このことから、「全量戻し」について、本県及び有識者会議の認識とJR東海の認識が異なっていることが明らかとなった。
このことは、「全量戻し」の重要性をJR東海は未だ理解せず、大井川の水資源や南アルプスの自然環境へ影響を与える事業を行う者としての自覚と責任感に欠いていることを明確に示しており、地域としては受入れがたいものである。
このような説明を行うことは、企業としての社会的責任が欠如していると疑わざるを得ず、この点についてのJR東海の認識を改めることがなければ、今後の対話において、流域をはじめとする県民の理解を得ることはできない。
2 工事期間中のトンネル湧水の流出の影響
第12回会議において、委員から、「トンネル工事により山体から抜けた地下水は元に戻らない。新しい地下水状態となる。この工事はそういうことをやるということを常に意識して頂いた方が良い」旨の発言があった。
工事中にトンネル内に流入する地下水の全量を導水路トンネル等で大井川に流す場合であっても、委員発言のとおり、「トンネル掘削により、これまで蓄えられていた山体内の地下水はトンネル掘削前の状態には戻らず、地下水位が以前より低下した新しい地下水の平衡状態になる。これによって、山体内の地下水の水がめ機能が低下する。」ことを意識せずに、中間報告(案)p5にあるように「県内の山体内に貯留されている量も含めた地下水がトンネル湧水として導水路等を通して大井川に戻されるので、中下流域の河川流量は維持される解析結果となった。(中略)トンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は、河川流量の季節変動や年-年変動による影響に比べて極めて小さいと考えられる」と記述し、いかにも影響がないかの表現としている。しかし、この現象は「工事中に山体内の水を自然現象以上に河川に流出させることで河川流量を維持し、将来にそのつけを回している」ことを意味している。このことは、「トンネル掘削により山体内の地下水位が低下し、大井川水系全体の水資源の安定性に影響が出る可能性」を考慮していないものと言える。また、中間報告(案)p5では、「これらの解析結果は不確実性を伴う」とあり、モニタリングとトンネル掘削の影響の低減策であるリスク対応についても記述されている。リスク対応としては、「薬液注入等による止水対策に加え、静岡県側からの高速長尺ボーリング等での揚水により県外流出量を極力軽減する方策が提示された。」と記述されているが、低減策の効果の評価についての議論が行われておらず、トンネル掘削の影響の低減策としての有効性を判断するに至っていない。
3 県外流出するトンネル湧水を大井川に戻す方法
中間報告(案)p5で、「工事期間中(先進抗貫通までの約10ヶ月間)に静岡県外へ流出するトンネル湧水を大井川へ戻す方法として、先進抗貫通後に県外流出量と同量の山梨県内のトンネル湧水を大井川へ戻す方策も提示された。」と記述されている。
この方策は10ヶ月間に流域外に流出させた量を、何年もかけて流域内に戻すという考え方であるが、本来、水循環や水利用への影響評価は、豊水期に梅雨、台風等による降水で水を蓄え、蓄えられた水を冬季の渇水期に計画的に使用するという1年のサイクルの中で考えるべきである。
JR東海提示の方策は、水循環の基本的な考え方を理解しないものであり、県や大井川利水関係協議会がトンネル工事の影響回避策として求め、有識者会議の論点のひとつとして議論してきたはずの「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」には該当するものとは評価できない。
4 発生土置き場と表流水、地下水との関係
中間報告(案)p16で「提示された場所においては、JR東海において、適切に処理・管理することが継続されれば、表流水や地下水の水量・水質等には影響をもたらすものでは無いと考える。」と前提条件付きで評価している。論点は、「適切に処理・管理することが継続されるか否か」である。中間報告(案)の記述は、「影響が無いように適切な処理・管理がなされれば影響は発生しない」という当たり前の事を述べているに過ぎない。
有識者会議におけるJR東海の発生土の処理についての説明は、例えば、二重遮水シートの長期耐久性について、JR東海が行う半永久的な管理へのリスクが十分考慮されていない、あるいは山体崩壊等、発生頻度は低いが発生すると甚大な影響が生じる事象についても評価されていないなど、どのように「適切に処理・管理することが継続」するかについて、流域をはじめとする県民が理解できる説明となっていない。
5 生態系への影響
中間報告(案)p7でトンネル掘削による生態系への影響について、「その影響の回避・低減策については、静岡県で行われている県専門部会での議論も踏まえ、今後、有識者会議の場でも議論することを予定している。JR東海においては、まずは、関連事例や専門家等の意見を事前に踏まえながら、環境保全についての意識醸成を図り、事業主体として行い得る地元が納得できる回避・低減策等を検討すべきである。」とある。
第12回会議において、委員から「(地下水低下の影響について)問題はその上(流)の生態系に対しては、大きな影響範囲で無くてもおそらく影響はあるのかもしれない。その点は注意しなければいけない」旨の発言があった。
南アルプスは、これまでは奥地で人為が及ばず、その結果、世界の南限とされる希少動植物が多数生息し、守るべき希少な生態系が残っているものの、周辺環境の変化の影響を受けやすく非常に脆弱である。
このように南アルプスの生態系は特殊性を有しており、トンネル工事による人為的変動の影響は計りしれず、JR東海は、影響の回避・低減を検討しなければならない。
これまでのJR東海の水収支解析は、中下流域の水資源への影響を検討するためのものであり、南アルプスの地下水位への影響を解析するためには十分なモデルではないことは有識者会議の共通理解であると、県としては認識している。
6 今後の進め方
中間報告(案)p7で「有識者会議としては、本会議におけるこれまでの指導・指摘等を踏まえ、JR東海は、利水者等の水資源に対する不安や懸念を再認識し、今後、静岡県を始めとした関係者との対話を丁寧に進めることで、トンネル工事に伴う水資源利用に関しての懸念が払拭され、地元の理解が得られるように真摯に対応すべきであると考える」とある。
また、第12回会議において、委員から「納得が得られるのは最後は事業に対して共感・信頼を持ってくれるという話だと思う。」旨の発言があった。
JR東海のトップは、これまで、「中間報告の素案に影響がごく小さいと記載されている。リスクだけ取り上げるのはミスリーディングだ。調査や解析(の結果)が一番ありそうな話だ。(流量減少は)蓋然性として低い。」などと発言している。
その発言は、発生確率は小さくても発生すると大きな影響が生じる可能性があるリスクも含め、リスクコミュニケーションを丁寧に行うことを軽視している。
これらJR東海のトップの累次の発言は、有識者会議の委員による「事業者が地域社会から信頼されることの重要性」に関する指摘を未だに理解していないものと言わざるをえない。
このような発言をしている限り、静岡県を始めとする関係者の共感・信頼を得ることはできないということをJR東海は認識すべきであることを付記する。
以 上
*********************************
静岡新聞 2021.10.19
JR「全量戻し」 静岡県、国交省に指導要望【大井川とリニア】
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/974338.html
中日新聞 2021年10月19日 11時46分 (10月19日 11時55分更新)
考えるリニア着工 「県民理解得られぬ」 湧水対応で県が国交省に見解
https://www.chunichi.co.jp/article/350017
読売新聞 2021/10/19 15:48
リニア工事の湧水、全て川に戻すのは「県民の理解得られない」…国にJR側への指導を要請
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211019-OYT1T50056/
静岡新聞 2021.10.16
リニア工事中止 国会請願へ署名 静岡県内市民団体が開始
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/973245.html
静岡新聞 2021.10.14
湧水戻し、新方策を JR東海社長意向 リニア大井川水問題
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/972255.html
静岡新聞 2021.10.9
静岡県「JRの説明、不十分」 湧水全量戻し否定、問題視【大井川とリニア】
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/970183.html
静岡新聞 2021.10.9
権利侵害「立証不十分」 リニア工事、JR反論 静岡地裁
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/970223.html
静岡新聞 2021.10.8
事業者の説明、地元の納得不可欠 国交相、リニア工事巡り見解
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/969937.html
静岡新聞 2021.10.7
大井川湧水の全量戻し、工事中も含む 知事、流量問題で見解
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/969165.html
静岡新聞 2021.10.6
岸田首相 リニア整備指示 国交相へ「経済圏の統合促す」
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/968371.html
静岡新聞 2021.10.5
岸田内閣に川勝知事要望 リニア問題、コロナ【岸田新内閣発足】
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/968130.html
//////////////////////////////////////////////////////////////////
テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済