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2022-02-10(Thu)

富士山噴火 対策の“空白地”  リスクを徹底解剖

改定ハザードマップ 溶岩噴出量が2倍に  噴火から3時間 東京ブラックアウト


日経クロステック/日経コンストラクション 2022.02.04
富士山噴火、対策の“空白地”
富士山噴火リスクを徹底解剖(上)、改定ハザードマップでは溶岩噴出量が2倍に

----南太平洋のトンガ沖で2022年1月15日に発生した大規模噴火は人ごとではない。多くの活火山を抱える日本でも、噴火が起こった際にどれほどの地域に被害が出るのかを認識しておかなければならない。新連載「富士山噴火、対策の“空白地”」。まずは富士山噴火に関するハザードマップを読み解く。
 富士山噴火に関するハザードマップが2021年に改定されたことをご存じだろうか。想定される溶岩噴出量は従来の2倍に増え、溶岩流が到達する恐れのある自治体は15から27に拡大した。


日経クロステック/日経コンストラクション 2022.02.10
富士山噴火、対策の“空白地”
富士山噴火リスクを徹底解剖(下)、噴火からたった3時間で東京ブラックアウト

----富士山の大規模噴火で発生する溶岩流や火砕流は、東京都には届かないと想定されている。だからといって安心はできない。広域に堆積する火山灰が、首都圏の都市機能を停止させる恐れがあるからだ。内閣府が公表した富士山の噴火による首都圏の被害想定を基に、リスク徹底解剖(下)では「降灰」が東京都などに与える影響を読み解く。
 東京ブラックアウト──。富士山が大規模な噴火をした際、火山灰の影響で3時間後には東京や神奈川で大規模な停電が発生する恐れがある。噴火が続けば交通機能はまひし、経済活動もままならない。道路、鉄道、水道、発電所……。「降灰」でどんな事態が起こり得るのか。




以下参考


日経クロステック/日経コンストラクション 2022.02.04
富士山噴火、対策の“空白地”
富士山噴火リスクを徹底解剖(上)、改定ハザードマップでは溶岩噴出量が2倍に
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01935/020200002/
奥山 晃平
 南太平洋のトンガ沖で2022年1月15日に発生した大規模噴火は人ごとではない。多くの活火山を抱える日本でも、噴火が起こった際にどれほどの地域に被害が出るのかを認識しておかなければならない。新連載「富士山噴火、対策の“空白地”」。まずは富士山噴火に関するハザードマップを読み解く。
 富士山噴火に関するハザードマップが2021年に改定されたことをご存じだろうか。想定される溶岩噴出量は従来の2倍に増え、溶岩流が到達する恐れのある自治体は15から27に拡大した。
 本稿で解剖するのは「富士山ハザードマップ」。噴火の影響が及ぶ恐れのある範囲を示す地図だ。主に溶岩流や火砕流などの被害を扱っている。

JR御殿場線の松田駅付近で撮影。富士山の噴火で発生した溶岩流が到達する可能性がある(写真:日経クロステック)
 富士山のハザードマップは、内閣府などが04年に作製。その後、静岡、山梨、神奈川の3県と国などで構成する富士山火山防災対策協議会が21年3月に改定した。同協議会の内部組織で、火山の専門家らによる富士山ハザードマップ(改定版)検討委員会(委員長=藤井敏嗣・山梨県富士山科学研究所長)が、04年以降に得た新たな知見を踏まえ、18年からマップの見直しを進めていた。
 マップを改定するうえで、噴火のシミュレーションの対象年代を「3200年前~現在」から、特に噴火活動が活発な「5600年前~現在」まで拡大し、想定する火口の範囲も広げた。委員会によると、過去5600年間で起きた噴火は約180回。そのうち96%が小・中規模だったものの、「次の噴火が大規模になる可能性もある」という。

「5600年前~現代」に起きた各噴火の噴出量と噴火回数。大規模噴火の発生割合は4%(資料:富士山火山防災対策協議会)
 改定に伴って、噴火の被災想定範囲が拡大した。例えば火口から噴出した溶岩が地表を流れ落ちる溶岩流。富士山の噴火で想定する溶岩の噴出量は13億m3で、従来の約2倍まで増えた。参考にする噴火を1707年の宝永噴火から、より大規模な864~866年の貞観噴火に変更したからだ。貞観噴火は大量の溶岩流を噴出し、富士山のふもとの地形を変えるほどの規模だった。
 また、溶岩が流れだす可能性のある火口は、近年の調査結果を基に44カ所から252カ所に見直した。
次ページ溶岩流発生から2時間で新東名寸断か
溶岩流発生から2時間で新東名寸断か
 他にも、溶岩流の流下経路のシミュレーションで従来より詳細な地形データを採用した結果、溶岩流が到達する範囲が広くなった。山梨県富士山科学研究所の吉本充宏主幹研究員は、「改定前は谷や川など細い地形を反映できなかった。こうした地形を流れる溶岩は、平野と比べて冷えにくく、より遠い範囲まで到達する」と説明する。
 こうした想定の見直しなどで、溶岩流が到達する可能性のある地域が増加。従来は、静岡県と山梨県の15市町村だったが、改定後は神奈川県を含む3県27市町村になった。ただし、一度の噴火でハザードマップ上の全ての範囲に溶岩が流れるわけではない。噴火する火口の位置によって溶岩流の方向が変わる。
 溶岩流は、鉄道や道路など主要な交通インフラを寸断する恐れがある。吉本主幹研究員は「速度は遅いものの、高温・高密度で住宅や構造物に大きな被害をもたらす」と話す。新たなマップでは、溶岩流は新東名高速道路に最短で1時間45分、東名高速道路に2時間15分、東海道新幹線に5時間で到達する想定だ。日本の大動脈を噴火が寸断する可能性がある。
 噴火が最大規模だった場合、富士山から数十km以上離れた地域まで溶岩流が流れる。従来、流下範囲外だった神奈川県では、相模原市に約9日後、小田原市に約17日後に到達する。

改定した溶岩流のハザードマップ(左)。従来のマップ(右)で、神奈川県は溶岩流の流下範囲外だった(資料:富士山火山防災対策協議会)
次ページ火砕泥流は12分で新東名に到達
火砕泥流は12分で新東名に到達
 マップの改定では、火砕流の規模も見直した。火砕流は、火山灰や岩石が高温の火山ガスとともに時速数十km以上で斜面を流れる現象だ。
 過去5600年間で最大規模の火砕流を参考に、噴出量を従来の240万m3から、1000万m3に引き上げた。精密な地形データを使うことで、傾斜が急な北東方向の山梨県富士吉田市方面と、南西方向の静岡県富士宮市方面に到達距離が伸びた。
 火砕流の発生後、東富士五湖道路に最短6分で到達し、山梨県富士吉田市と神奈川県小田原市を結ぶ国道138号付近まで達する恐れがある。

改定した火砕流のハザードマップ(左)。従来のマップ(右)と比べ、火砕流の到達距離が北東方向と南西方向に伸びた(資料:富士山火山防災対策協議会)
 火砕流は、融雪型火山泥流を引き起こす要因にもなる。火砕流などの熱で山腹に積もった雪が解け、大量の水が岩石や火山灰などと混じり合い、高速で流下する現象だ。土石流と比べ、水分が多く流動性が高いため、広範囲で住宅などを巻き込む被害が及ぶ危険がある。
 火山泥流は発生からわずか12分で新東名高速道路、20分で東海道新幹線まで押し寄せる想定となっている。
 富士山ハザードマップの改定を基に、富士山火山防災対策協議会が広域避難計画の見直しを進めている。2021年度中の公表を目指す。
 次回の連載第2回は、被害想定の後編として首都圏を襲う「降灰」を取り上げる。わずか0.5mm程度の積灰で電車が運行停止となるリスクがある。


日経クロステック/日経コンストラクション 2022.02.10
富士山噴火、対策の“空白地”
富士山噴火リスクを徹底解剖(下)、噴火からたった3時間で東京ブラックアウト
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01935/020800003/
奥山 晃平
 富士山の大規模噴火で発生する溶岩流や火砕流は、東京都には届かないと想定されている。だからといって安心はできない。広域に堆積する火山灰が、首都圏の都市機能を停止させる恐れがあるからだ。内閣府が公表した富士山の噴火による首都圏の被害想定を基に、リスク徹底解剖(下)では「降灰」が東京都などに与える影響を読み解く。
 東京ブラックアウト──。富士山が大規模な噴火をした際、火山灰の影響で3時間後には東京や神奈川で大規模な停電が発生する恐れがある。噴火が続けば交通機能はまひし、経済活動もままならない。道路、鉄道、水道、発電所……。「降灰」でどんな事態が起こり得るのか。

富士山の大規模噴火後、西南西の風が卓越した場合の降灰に伴う降雨時の被害の影響範囲(資料:中央防災会議)
 首都圏などを対象とした被害想定は、内閣府の中央防災会議が設置した火山の専門家らによる「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ」(主査=藤井敏嗣・東京大学名誉教授)がまとめている。2020年4月に調査結果の報告書を公表した。
 想定する噴火の規模や噴出率は、1707年に発生して16日間続いた宝永噴火を参考にした。東京大学地震研究所で火山物理学が専門の鈴木雄治郎准教授は「噴火の際の噴出物には、火山灰や噴石など火砕物が多いタイプと、溶岩流が多いタイプがある。宝永噴火は前者で、大量の火砕物が厚く堆積した」と説明する。


前回の記事
富士山噴火リスクを徹底解剖(上)、改定ハザードマップでは溶岩噴出量が2倍に

灰の影響を受けるのは東側
 降灰の分布は、噴火時の風向や風速で大きく変わる。全てのケースをシミュレーションするのは難しく、ある特定の条件で抽出した。富士山の上空には一般的に西風が吹いており、降灰が厚くなるのは火口の東側の地域となる可能性が高い。中でも、西南西の風が卓越すると首都圏への影響が最も大きくなる。
 最悪の場合、東京都心で2cm以上の灰が積もる予想だ。例えば、東京都新宿区では噴火15日目で10cmほど堆積する。鉄道の運休は関東地方の広範囲に広がり、東京都では四輪駆動車以外が走行できない道路も出てくる。

富士山が大規模噴火し、西南西の風が卓越して15日間降灰が続いた場合の火山灰の堆積厚(中央防災会議の資料に日経クロステックが加筆)

富士山が大規模噴火し、東京都新宿区付近で西南西の風が卓越した場合の降灰状況(資料:中央防災会議)
次ページたった0.5mmの灰で鉄道が運休
たった0.5mmの灰で鉄道が運休
 火山灰は、噴火時に破砕して急速に冷えて固まったガラス片や鉱物の結晶片から成る。雨が降っても流されず、水を含んで固まるやっかいな性質を持つ。乾いても、風や車の通行などで舞い続ける。
 火山灰の堆積で最も被害を受けるのが交通インフラだ。例えば道路は、晴天時で10cm、降雨時で3cm以上積もっていると、タイヤと接地面の摩擦が大幅に低下して二輪駆動車は走行できなくなる。
 晴天時でも、10cmを超えるまで影響が出ないわけではない。1mm以上堆積するだけで車線などが見えにくくなり、安全な運転が困難になる。さらに、火山灰の飛散で視界が悪くなり、速度低下や渋滞を引き起こす。

道路や鉄道など主要なインフラについて、降灰で発生する被害の例(資料:中央防災会議)
 鉄道もわずかな降灰で運行が停止するリスクがある。0.5mmの堆積によって、線路が切り替わるポイントで動作不良が起きたり、車輪やレールの通電が妨げられたりする。
 首都圏の交通がまひするだけでなく、ライフラインが止まる恐れもある。火山灰は水にぬれると通電する。鉄塔や電柱に取り付ける絶縁体の碍子(がいし)に火山灰が積もったまま雨が降ると、漏電が起きて停電する。停電すれば鉄道の運行や道路の信号機が止まり、交通インフラに多大な被害を与える。
 発電所への影響も大きい。火力発電所では、降灰が6cmを超える地域だと吸気フィルターの交換頻度が増加し、ほぼ稼働できなくなる。
 上水道は集水域と降灰域が重なり、大量の火山灰が原水に混ざると水質が悪化し、浄水施設の処理が追い付かず断水する。下水道でも、ろ過材の目詰まりなどで使用が制限される想定だ。
次ページ灰の重みで木造家屋が倒壊
灰の重みで木造家屋が倒壊
 報告書によると、30cm以上積もった火山灰が降雨で水分を含むと、その重みで木造家屋が倒壊する危険もあるという。累積で30cmほど積もる試算の神奈川県相模原市などは気を付けなければならない。
 こうした被害を避けるため、道路や鉄道などに降り積もった火山灰は早急な除去が求められる。しかし、大規模噴火後に処理が必要な火山灰の総量は最大約4.9億m3に上り、膨大な時間がかかる見込みだ。これは、2011年の東日本大震災後に除去した災害廃棄物量の約10倍に当たり、約9割を処理するのに3年を要した。

富士山の大規模噴火後、西南西の風が卓越して15日間降灰が続いた場合、処理が必要な火山灰の総量(資料:中央防災会議)
 火山灰の降灰は、人体への健康被害も引き起こす。特に呼吸器系への影響が大きく、ぜんそくや気管支炎の持病のある人が火山灰を吸い込むと症状が悪化する可能性が高い。健康な人でもせきの増加などが生じることがある。
 報告書でまとめた被害想定は、ある特定のケースを抽出したシミュレーションであることに注意したい。実際の噴火で想定外の地域に降灰が及ぶケースは少なくない。
 報告書は「大規模噴火の発生のタイミングや降灰の影響が及ぶ範囲を噴火前に確実に予測するのは困難」とした上で、「あらかじめ計画を立てて備えれば、被害や社会的混乱を軽減できる」と指摘している。
 鈴木准教授は「富士山が噴火してからすぐに、降灰の影響で首都圏に死者や負傷者が出る可能性は低い。ただ、物流が滞る恐れはあるので、都民などは食料や水を各自で備蓄しておく必要がある」と注意を促す。

神奈川県山北町から見る富士山。富士山が大規模噴火し、西南西の風が卓越して15日間降灰が続いた場合、山北町では火山灰の堆積厚が80cmを超える地域も出てくる(写真:日経クロステック)

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