2018-11-26(Mon)
財制審建議 借金まみれの平成の教訓
社会資本整備 「量」の拡大から「質」の改善を図る方針を継続すべき
防災安全対策 ダム依存の治水対策、転換求めず
財政制度等審議会が、2019年度予算編成に関する建議をまとめた。
平成時代の財政運営を振り返り、「受益の拡大と負担の先送りを求めるゆがんだ圧力にあらがえなかった時代」、
「健全化どころか、一段と財政を悪化させてしまった平成時代の過ちを二度と繰り返してはならない」
など財源を借金に頼った政権や財政当局を批判した内容のようだ。
安倍政権の財政運営については、「現実離れした高成長と税収増を当て込み、歳出抑制や負担増にほとんど手をつけなかった」
「こうした中で、首相は防災対策の公共事業が柱の今年度第2次補正予算案の編成も指示した。景気浮揚も図るというが、防災にかこつけた不要不急の事業が紛れ込まないか」など懸念する。(毎日社説)
日本経済新聞 2018/11/22付
社説:平成の財政運営に猛省を促す財制審建議
----財政制度等審議会(榊原定征会長)が麻生太郎財務相に建議書を提出した。2019年度の予算編成にあたり、歳出への規律強化を求めたのは例年通りだが、平成最後の建議になったのを踏まえ、総論でこの間の財政運営を振り返ったのが特筆に値する。
その要諦は「健全化どころか、一段と財政を悪化させてしまった平成時代の過ちを二度と繰り返してはならない」と、政策の失敗を率直に認めた点である。
増税などの国民負担を先送りしながら歳出抑制に消極的な与党、それを許した財務省をはじめとする官僚組織、さらにはそのような政治家を支持した有権者に猛省を促すものと評価できる。
毎日新聞2018年11月21日 東京朝刊
社説:財政審議会の意見書 借金まみれの平成の教訓
----有識者らで構成する財務相の諮問機関、財政制度等審議会が平成時代30年間の財政を総括した意見書を提出した。平成最後の来年度予算編成を控えてまとめたものである。
意見書は、平成の財政を「受益の拡大と負担の先送りを求めるゆがんだ圧力にあらがえなかった時代」と位置付けた。高齢化で社会保障費が急増する中、財源を借金に頼った政権や財政当局を批判したものだ。
----なのに首相は現実離れした高成長と税収増を当て込み、歳出抑制や負担増にほとんど手をつけなかった。
先月には2回延期した消費増税を来年10月に行うと表明したが、来年度予算案には大型景気対策も盛り込む。負担先送りに歯止めをかける増税本来の理念はかすむばかりだ。
こうした中で、首相は防災対策の公共事業が柱の今年度第2次補正予算案の編成も指示した。景気浮揚も図るというが、防災にかこつけた不要不急の事業が紛れ込まないか。
社会資本整備についてみると、「量」の拡大から「質」の改善を図る方針を継続すべきと明記している。
概要には
「社会資本整備については、「量」をいたずらに拡大する状況にはなく、「質」の改善を図る方針を継続すべき。近年の大規模災害を踏まえ、実効性の高い防災・減災対策を進めるため、国の個別補助による計画的・集中的な支援を検討すべき。生産性の高いインフラを整備する上で、既存ストックの有効利用、民間資金・新技術等の活用を推進すべき。」
とある。
「大規模災害を踏まえ、実効性の高い防災・減災対策を進める集中的な支援」は当然で大いに結構なことだが、
「生産性の高いインフラを整備・・・民間資金・新技術等の活用を推進」は大規模開発推進と民営化促進に他ならない。
安倍政権の公共事業政策を、何の批判もなく、そのまま容認し、推進する内容だ。
防災・減災対策についても、問題がある。
「国の個別補助による計画的・集中的な支援」=
「従来の交付金による支援から、国の個別補助による計画的・集中的な支援に切り出していくこと」(本文)
と、交付金見直しを提起しているが、ひも付き補助金の復活が懸念される。
とりわけ、ダム依存の治水対策を温存、容認していることは問題だ。
西日本豪雨では、ダムの洪水調節機能の限界が明らかになったことで、ダム依存の治水対策からの転換がもとめられていた。
にもかかわらず、
「8ダムにおいては洪水調節容量を使い切る見込みとなり、ダムへの流入量と同程度の放流量とする異常洪水時防災操作を実施したものの、205 ダムにおいては円滑な洪水調節が実施された。失敗例に着目し、教訓とすることは重要であるが、こうした既存ダムが発揮した有効な機能を客観的に評価しつつ、更なる改善点の分析を進めることが必要である。」(本文)
つまりは、ダム依存、ダム偏重の治水対策は継続するということだ。これでは、抜本的な防災対策とはならない。
以下参考
平成31年度予算の編成等に関する建議(平成30年11月20日)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/index.html
平成31年度予算の編成等に関する建議
平成30年11月20日 財政制度等審議会
PDF版 一括ダウンロード[PDF(PDF:15655KB) ]
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/04.pdf
表紙/名簿/審議経過/目次/本文 (PDF:803KB)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/01.pdf
(参考1)概要 (PDF:868KB)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/02.pdf
(参考2)参考資料 (PDF:11964KB)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/03.pdf
(参考1)平成31年度予算の編成等に関する建議(概要)
4.社会資本整備
・ 社会資本整備については、「量」をいたずらに拡大する状況にはなく、「質」の改善を図る方針を継続すべき。近年の大規模災害を踏まえ、実効性の高い防災・減災対策を進めるため、国の個別補助による計画的・集中的な支援を検討すべき。生産性の高いインフラを整備する上で、既存ストックの有効利用、民間資金・新技術等の活用を推進すべき。
(本文)
4.社会資本整備(抜粋)
社会資本整備については、これまでの建議において、整備水準が概成62しつつある状況を踏まえ、「量」をいたずらに拡大する状況にはなく、中長期的な視点に立って「質」の改善を図っていくことの重要性を強調してきた(「量」から「質」へ)。平成 31 年度(2019 年度)予算においては、引き続きこうした方針を継続しなければならないことはいうまでもない。一方、近年大規模な災害が頻発し、全国各地に深刻な被害をもたらしていることは看過できないところである。こうした現状を踏まえた上で、安全・安心の向上に資する、実効性の高い防災・減災対策に向けた重点化・効率化を進めるほか、日本の成長力を高める生産性の高い事業にも重点化するなど、予算の中身、使い方を徹底して見直す必要がある。〔資料Ⅱ-4-1参照〕
(1)最近の公共事業関係費の推移と留意点
公共事業関係費については、その規模はピーク時に比して当初予算ベースで4割減、補正予算後でも半減となっている。他方、一般政府の総固定資本形成(対 GDP 比)を見ると、欧米諸国との比較で、引き続き高い水準にある。
また、これまで過去にインフラ整備を着実に進めてきた結果、バブル景気の 30 年前の整備水準と比較しても、高速道路、新幹線、空港、港湾、生活関連施設等の社会資本の整備水準は大きく向上しており、社会インフラは概成しつつある。
今後の社会資本の整備に当たっては、将来の人口や交通需要の減少も見据え、「量」の観点から、新規採択を厳選することとし、「質」の観点から、社会インフラの長寿命化を図りながら既存ストックを最大限活用していくことが重要である。
(2)平成 31 年度(2019 年度)予算における重点課題
① 安全・安心の向上
イ)最近の大規模災害と今後の課題
・・・・
なお、ハード面の具体例として、西日本7月豪雨でダムがどのような機能を発揮していたかについて見てみる。8ダムにおいては洪水調節容量を使い切る見込みとなり、ダムへの流入量と同程度の放流量とする異常洪水時防災操作を実施したものの、205 ダムにおいては円滑な洪水調節が実施された。失敗例に着目し、教訓とすることは重要であるが、こうした既存ダムが発揮した有効な機能を客観的に評価しつつ、更なる改善点の分析を進めることが必要である。〔資料Ⅱ-4-3参照〕
(以下略)
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日本経済新聞 2018/11/22付
社説:平成の財政運営に猛省を促す財制審建議
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO38056750R21C18A1EA1000/
毎日新聞2018年11月21日 東京朝刊
社説:財政審議会の意見書 借金まみれの平成の教訓
https://mainichi.jp/articles/20181121/ddm/005/070/059000c
日本経済新聞 2018/11/20 12:04
財制審、客観的根拠に基づく政策立案求める 財政健全化に向け
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL20HJ9_Q8A121C1000000/
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防災安全対策 ダム依存の治水対策、転換求めず
財政制度等審議会が、2019年度予算編成に関する建議をまとめた。
平成時代の財政運営を振り返り、「受益の拡大と負担の先送りを求めるゆがんだ圧力にあらがえなかった時代」、
「健全化どころか、一段と財政を悪化させてしまった平成時代の過ちを二度と繰り返してはならない」
など財源を借金に頼った政権や財政当局を批判した内容のようだ。
安倍政権の財政運営については、「現実離れした高成長と税収増を当て込み、歳出抑制や負担増にほとんど手をつけなかった」
「こうした中で、首相は防災対策の公共事業が柱の今年度第2次補正予算案の編成も指示した。景気浮揚も図るというが、防災にかこつけた不要不急の事業が紛れ込まないか」など懸念する。(毎日社説)
日本経済新聞 2018/11/22付
社説:平成の財政運営に猛省を促す財制審建議
----財政制度等審議会(榊原定征会長)が麻生太郎財務相に建議書を提出した。2019年度の予算編成にあたり、歳出への規律強化を求めたのは例年通りだが、平成最後の建議になったのを踏まえ、総論でこの間の財政運営を振り返ったのが特筆に値する。
その要諦は「健全化どころか、一段と財政を悪化させてしまった平成時代の過ちを二度と繰り返してはならない」と、政策の失敗を率直に認めた点である。
増税などの国民負担を先送りしながら歳出抑制に消極的な与党、それを許した財務省をはじめとする官僚組織、さらにはそのような政治家を支持した有権者に猛省を促すものと評価できる。
毎日新聞2018年11月21日 東京朝刊
社説:財政審議会の意見書 借金まみれの平成の教訓
----有識者らで構成する財務相の諮問機関、財政制度等審議会が平成時代30年間の財政を総括した意見書を提出した。平成最後の来年度予算編成を控えてまとめたものである。
意見書は、平成の財政を「受益の拡大と負担の先送りを求めるゆがんだ圧力にあらがえなかった時代」と位置付けた。高齢化で社会保障費が急増する中、財源を借金に頼った政権や財政当局を批判したものだ。
----なのに首相は現実離れした高成長と税収増を当て込み、歳出抑制や負担増にほとんど手をつけなかった。
先月には2回延期した消費増税を来年10月に行うと表明したが、来年度予算案には大型景気対策も盛り込む。負担先送りに歯止めをかける増税本来の理念はかすむばかりだ。
こうした中で、首相は防災対策の公共事業が柱の今年度第2次補正予算案の編成も指示した。景気浮揚も図るというが、防災にかこつけた不要不急の事業が紛れ込まないか。
社会資本整備についてみると、「量」の拡大から「質」の改善を図る方針を継続すべきと明記している。
概要には
「社会資本整備については、「量」をいたずらに拡大する状況にはなく、「質」の改善を図る方針を継続すべき。近年の大規模災害を踏まえ、実効性の高い防災・減災対策を進めるため、国の個別補助による計画的・集中的な支援を検討すべき。生産性の高いインフラを整備する上で、既存ストックの有効利用、民間資金・新技術等の活用を推進すべき。」
とある。
「大規模災害を踏まえ、実効性の高い防災・減災対策を進める集中的な支援」は当然で大いに結構なことだが、
「生産性の高いインフラを整備・・・民間資金・新技術等の活用を推進」は大規模開発推進と民営化促進に他ならない。
安倍政権の公共事業政策を、何の批判もなく、そのまま容認し、推進する内容だ。
防災・減災対策についても、問題がある。
「国の個別補助による計画的・集中的な支援」=
「従来の交付金による支援から、国の個別補助による計画的・集中的な支援に切り出していくこと」(本文)
と、交付金見直しを提起しているが、ひも付き補助金の復活が懸念される。
とりわけ、ダム依存の治水対策を温存、容認していることは問題だ。
西日本豪雨では、ダムの洪水調節機能の限界が明らかになったことで、ダム依存の治水対策からの転換がもとめられていた。
にもかかわらず、
「8ダムにおいては洪水調節容量を使い切る見込みとなり、ダムへの流入量と同程度の放流量とする異常洪水時防災操作を実施したものの、205 ダムにおいては円滑な洪水調節が実施された。失敗例に着目し、教訓とすることは重要であるが、こうした既存ダムが発揮した有効な機能を客観的に評価しつつ、更なる改善点の分析を進めることが必要である。」(本文)
つまりは、ダム依存、ダム偏重の治水対策は継続するということだ。これでは、抜本的な防災対策とはならない。
以下参考
平成31年度予算の編成等に関する建議(平成30年11月20日)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/index.html
平成31年度予算の編成等に関する建議
平成30年11月20日 財政制度等審議会
PDF版 一括ダウンロード[PDF(PDF:15655KB) ]
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/04.pdf
表紙/名簿/審議経過/目次/本文 (PDF:803KB)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/01.pdf
(参考1)概要 (PDF:868KB)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/02.pdf
(参考2)参考資料 (PDF:11964KB)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia301120/03.pdf
(参考1)平成31年度予算の編成等に関する建議(概要)
4.社会資本整備
・ 社会資本整備については、「量」をいたずらに拡大する状況にはなく、「質」の改善を図る方針を継続すべき。近年の大規模災害を踏まえ、実効性の高い防災・減災対策を進めるため、国の個別補助による計画的・集中的な支援を検討すべき。生産性の高いインフラを整備する上で、既存ストックの有効利用、民間資金・新技術等の活用を推進すべき。
(本文)
4.社会資本整備(抜粋)
社会資本整備については、これまでの建議において、整備水準が概成62しつつある状況を踏まえ、「量」をいたずらに拡大する状況にはなく、中長期的な視点に立って「質」の改善を図っていくことの重要性を強調してきた(「量」から「質」へ)。平成 31 年度(2019 年度)予算においては、引き続きこうした方針を継続しなければならないことはいうまでもない。一方、近年大規模な災害が頻発し、全国各地に深刻な被害をもたらしていることは看過できないところである。こうした現状を踏まえた上で、安全・安心の向上に資する、実効性の高い防災・減災対策に向けた重点化・効率化を進めるほか、日本の成長力を高める生産性の高い事業にも重点化するなど、予算の中身、使い方を徹底して見直す必要がある。〔資料Ⅱ-4-1参照〕
(1)最近の公共事業関係費の推移と留意点
公共事業関係費については、その規模はピーク時に比して当初予算ベースで4割減、補正予算後でも半減となっている。他方、一般政府の総固定資本形成(対 GDP 比)を見ると、欧米諸国との比較で、引き続き高い水準にある。
また、これまで過去にインフラ整備を着実に進めてきた結果、バブル景気の 30 年前の整備水準と比較しても、高速道路、新幹線、空港、港湾、生活関連施設等の社会資本の整備水準は大きく向上しており、社会インフラは概成しつつある。
今後の社会資本の整備に当たっては、将来の人口や交通需要の減少も見据え、「量」の観点から、新規採択を厳選することとし、「質」の観点から、社会インフラの長寿命化を図りながら既存ストックを最大限活用していくことが重要である。
(2)平成 31 年度(2019 年度)予算における重点課題
① 安全・安心の向上
イ)最近の大規模災害と今後の課題
・・・・
なお、ハード面の具体例として、西日本7月豪雨でダムがどのような機能を発揮していたかについて見てみる。8ダムにおいては洪水調節容量を使い切る見込みとなり、ダムへの流入量と同程度の放流量とする異常洪水時防災操作を実施したものの、205 ダムにおいては円滑な洪水調節が実施された。失敗例に着目し、教訓とすることは重要であるが、こうした既存ダムが発揮した有効な機能を客観的に評価しつつ、更なる改善点の分析を進めることが必要である。〔資料Ⅱ-4-3参照〕
(以下略)
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日本経済新聞 2018/11/22付
社説:平成の財政運営に猛省を促す財制審建議
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO38056750R21C18A1EA1000/
毎日新聞2018年11月21日 東京朝刊
社説:財政審議会の意見書 借金まみれの平成の教訓
https://mainichi.jp/articles/20181121/ddm/005/070/059000c
日本経済新聞 2018/11/20 12:04
財制審、客観的根拠に基づく政策立案求める 財政健全化に向け
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL20HJ9_Q8A121C1000000/
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済