2020-01-10(Fri)
「桜を見る会」名簿不記載 「公文書管理法に違反」認める
菅氏、違法性認めるも「5年連続記載漏れ」の不自然さ 「知る権利」を侵害
朝日新聞デジタル2020年1月10日 20時20分
「桜を見る会」名簿、廃棄記録なし 菅長官、違法認める
---- 菅義偉官房長官は10日の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の取り扱いで、公文書管理法違反があったことを認めた。同法8条が定める廃棄前に必要な首相の同意手続きを取っていなかったことも明らかにした。
法令順守と、行政事務の重要な意思決定を文書に基づいて行う「文書主義」は、公務員が守るべき大原則。その基本すら守られていない現状が明らかになった。ルールに基づき対応してきたというこれまでの政府の説明は根底から覆ったことになる。
毎日新聞2020年1月10日 15時32分(最終更新 1月10日 15時32分)
菅氏、違法性認めるも「5年連続記載漏れ」の不自然さ 「桜を見る会」名簿
---- 事務的ミスが続いただけか、意図的か――。菅義偉官房長官は10日の記者会見で、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡り、2017年度までの5年間の招待者名簿が行政文書ファイル管理簿に記載されていなかった問題について「公文書管理法に違反する対応だった」と違法性を認めた。ただ、未記載の理由は「事務的な記載漏れ」だと釈明。5年連続で「記載漏れ」が続いたとは考えにくく、不自然な印象であるため、野党からは「意図的な不記載だ」との批判も出ている。
朝日新聞デジタル2020年1月10日 19時47分
木村草太氏 桜を見る会は「公文書隠蔽・廃棄問題」に
----菅義偉官房長官が10日午前の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の管理・廃棄について、公文書管理法が義務づける手続きをとっておらず、同法違反にあたることを認めた。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は政府の対応について、憲法が保障する「知る権利」を侵害するものだと指摘する。
毎日新聞2020年1月5日 18時23分(最終更新 1月5日 18時42分)
「桜を見る会」考
「桜を見る会」は「憲法違反」 木村草太氏指摘 「平等、知る権利阻害」
----安倍晋三首相の「桜を見る会」には「公的行事の私物化」「公選法違反ではないか」など、多岐にわたる批判が相次いでいる。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「法の下の平等や、国民の知る権利を阻害しており、憲法違反の疑いがあります」と訴える。
以下参考
朝日新聞デジタル 2020年1月11日 5時00分
桜を見る会名簿「適切に廃棄」のはずが ずさん管理露呈
http://digital.asahi.com/articles/ASN1B5D15N1BUTFK00T.html
公文書管理の流れと相次いで発覚した問題点
首相主催の「桜を見る会」をめぐり、菅義偉官房長官は10日、招待者名簿の取り扱いが公文書管理法に違反していたことを認めた。「ルールに基づき適切に保存・廃棄」としていた説明が、根底から覆る異常事態だ。「国民共有の知的資源」である公文書の管理で、何が起きているのか。▼1面参照
「桜を見る会」の追及に連日さらされている菅氏は10日の記者会見で、「廃棄の際に事前同意の手続きも経ていなかったということだ」と語った。「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の廃棄について、公文書管理法が義務づける首相の同意(実務的には内閣府の同意)を得る手続きを取っていなかったことを認めた。
公文書管理法は、保存期間が1年以上の公文書について、名称や保存期間、保存期間が過ぎた後の取り扱いなどを「管理簿」に記載しなければならないと定めている。廃棄した場合は、「廃棄簿」に記載するよう政府のガイドラインは定めている。
菅氏は7日と9日の会見で、招待者名簿を「管理簿」や「廃棄簿」に記載していなかったことを認めたばかり。ルールを無視して公文書を管理していたことを1週間で3度も認める異常な事態に陥っている。
「桜を見る会」をめぐる公文書の扱いについては、説明に後ろ向きな政府の姿勢が際立っている。菅氏は今週に入っても周囲に「省令違反のようなものだと聞いている」と語っていた。9日の会見では、政府の対応が違法かどうか重ねて問われたが、「内閣府の文書管理規則に沿った対応がなされていなかった」と述べるだけだった。
だが、連日のメディアの追及に、10日の会見では管理簿への不記載について「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」と、違法性を認めざるを得なくなった。
関係者の責任に言及せず
公文書管理法に違反した取り扱いが常態化していた「桜を見る会」の招待者名簿は、安倍晋三首相や菅氏らによる推薦も含んだ招待客を取りまとめたものだ。首相の推薦枠をめぐっては、オーナー商法で行政指導されたジャパンライフの元会長が招待されたかどうかも、焦点の一つだ。
招待客の選定過程を明らかにするためには、名簿の検証が欠かせない。だが、首相は昨年12月の臨時国会閉会後の会見で「内閣府があらかじめ定められた手続きにのっとって、適正に廃棄をしている」と主張。今月6日の年頭会見では、元会長が首相推薦枠だったかを問われ「招待者については個人に関する情報であるため、回答を差し控えている」と説明を拒んだ。
菅氏も招待者名簿の廃棄について「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」と繰り返してきた。だが、法を逸脱した対応が次々と明るみに出るに至り、正当性を強調していた説明は徐々に後退していた。
10日の会見では「深刻な事態という認識はあるか」と責任をただされ、「こうしたことを二度と再び犯すことがないよう、内部で注意はしっかり行っている」と述べるだけ。違法行為に対する関係者の責任や処分には言及しなかった。
菅氏は、管理簿や廃棄簿については「事務的な記載漏れ」と語る。ただ、5年間も違法状態が続いたことに、専門家からは政府の対応の不自然さを指摘する声が上がる。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「内閣府の中で招待者名簿を管理簿に記載しないという引き継ぎでも行われていたのだろうか」と指摘した。自民党内からも「最初から意図的に名簿を保存しないようにしたとしか思えない。『廃棄した』で逃げ切ろうという姿勢が見え見えだ」(ベテラン)という厳しい声が出始めた。
政府に、名簿が本当に存在しないのかどうかの再調査などに応じる様子はみられない。野党は説明責任に後ろ向きな姿勢を批判し、事実の解明を求めていく構えだ。立憲民主党の安住淳国会対策委員長は10日、国会内で記者団に「国民の財産である公文書を一方的に破棄するのは、戦前の軍部がやっているようなことで許しがたい」と語り、20日召集の通常国会で追及を強める考えを示した。
共産党の小池晃書記局長も朝日新聞の取材に対し、「適切に廃棄していると言いながら法律を守っていない。全体像を明らかにするため、首相自らが国会の場で説明責任を果たすべきだ」と述べた。(安倍龍太郎、菊地直己)
朝日新聞デジタル 2020年1月11日 5時00分
「桜」名簿の扱い、違法 菅長官、一転認める
http://digital.asahi.com/articles/DA3S14323079.html
菅義偉官房長官は10日の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の取り扱いで、公文書管理法違反があったことを認めた。同法8条が定める廃棄前に必要な首相の同意手続きを取っていなかったことも明らかにした。▼3面=処分に触れず
法令順守と、行政事務の重要な意思決定を文書に基づいて行う「文書主義」は、公務員が守るべき大原則。その基本すら守られていない現状が明らかになった。ルールに基づき対応してきたというこれまでの政府の説明は根底から覆ったことになる。
菅氏は9日の会見で、保存期間など名簿の取り扱いを記す行政文書の管理簿への未記載を認めたが、法令違反にあたるかどうかは言及を避けていた。10日の会見では「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと考えている」と明言。(1)管理簿への未記載(2)名簿を廃棄した日などを書き入れる廃棄簿への未記載(3)廃棄前に必要な首相の同意手続きがなかったこと、の3点を認めた。
ただ、理由については「事務的な記載漏れだった」と説明。内閣府や、桜を見る会の担当閣僚としての菅氏自身の責任についても記者から問われたが、「こうしたことを二度と再び犯すことがないよう内部で注意をしっかり行っているところだと思う」と述べるにとどめた。
首相が主催する内閣の公的行事「桜を見る会」をめぐっては昨秋以降、安倍晋三首相の地元有権者が多く参加していたことが明らかになり、「私物化」との批判が続いている。しかし、真相解明の鍵となる招待者名簿について、政府は「第2次安倍政権以降の招待者名簿はすべて廃棄済み」と説明し、再調査しようとはしていない。(安倍龍太郎)
■「公文書隠蔽問題」の様相に
木村草太・首都大学東京教授(憲法学)の話 国民には、政府のやっていることを評価し、検証する権利がある。しかし、基本的な公文書が残っていなければ、国民は評価できない。桜を見る会の招待者名簿などを残していないとする政府の対応は、公文書管理法違反だけでなく、憲法が保障する「知る権利」の侵害ではないか。追及を受けるまでもなく、政府自ら関係者を処分すべき事案であり、菅氏が会見で処分に言及しなかった以上、事の重大性を認識していないと批判されても仕方ない。桜を見る会問題は「公文書隠蔽(いんぺい)・廃棄問題」の様相を帯びてきた。
朝日新聞デジタル2020年1月10日 20時20分
「桜を見る会」名簿、廃棄記録なし 菅長官、違法認める
http://digital.asahi.com/articles/ASN1B3V85N1BUTFK009.html
菅義偉官房長官は10日の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の取り扱いで、公文書管理法違反があったことを認めた。同法8条が定める廃棄前に必要な首相の同意手続きを取っていなかったことも明らかにした。
法令順守と、行政事務の重要な意思決定を文書に基づいて行う「文書主義」は、公務員が守るべき大原則。その基本すら守られていない現状が明らかになった。ルールに基づき対応してきたというこれまでの政府の説明は根底から覆ったことになる。
菅氏は9日の会見で、保存期間など名簿の取り扱いを記す行政文書の管理簿への未記載を認めたが、法令違反にあたるかどうかは言及を避けていた。10日の会見では「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと考えている」と明言。①管理簿への未記載②名簿を廃棄した日などを書き入れる廃棄簿への未記載③廃棄前に必要な首相の同意手続きがなかったこと、の3点を認めた。
ただ、理由については「事務的な記載漏れだった」と説明。「担当者に確認しているところだが、こうした問題への対応意識が少なかったのではないか」とも話した。内閣府や、桜を見る会の担当閣僚としての菅氏自身の責任についても記者から問われたが、「こうしたことを二度と再び犯すことがないよう内部で注意をしっかり行っているところだと思う」と述べるにとどめた。
首相が主催する内閣の公的行事「桜を見る会」をめぐっては昨年秋以降、安倍晋三首相の地元有権者が多く参加していたことが明らかになり、「私物化」との批判が続いている。しかし、真相解明の鍵となる招待者名簿について、政府は「第2次安倍政権以降の招待者名簿はすべて廃棄済み」と説明し、再調査しようとはしていない。朝日新聞社の昨年12月の世論調査では、桜を見る会の一連の問題についての安倍首相の説明は、74%が「十分ではない」と答えている。
公文書管理法が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づける公文書だが、安倍政権ではこれまでもずさんな扱いぶりが問題となってきた。
森友学園への国有地売却問題では財務省が公文書を改ざん、廃棄した。国会答弁で存在しないとしてきたイラク派遣の際の陸上自衛隊の日報も後に見つかった。首相官邸で首相が省庁幹部と面談した際の記録を官邸側が作っていないことも明らかになっている。(安倍龍太郎)
毎日新聞2020年1月10日 15時32分(最終更新 1月10日 15時32分)
菅氏、違法性認めるも「5年連続記載漏れ」の不自然さ 「桜を見る会」名簿
http://mainichi.jp/articles/20200110/k00/00m/010/150000c
事務的ミスが続いただけか、意図的か――。菅義偉官房長官は10日の記者会見で、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡り、2017年度までの5年間の招待者名簿が行政文書ファイル管理簿に記載されていなかった問題について「公文書管理法に違反する対応だった」と違法性を認めた。ただ、未記載の理由は「事務的な記載漏れ」だと釈明。5年連続で「記載漏れ」が続いたとは考えにくく、不自然な印象であるため、野党からは「意図的な不記載だ」との批判も出ている。
公文書管理法では、行政文書を適切に管理するため、1年以上保存する文書ファイルの名称や種別、保存期間などを管理簿に記載することを義務づけている。菅氏は9日の会見では管理簿への未記載について「内閣府の文書管理規則に沿った対応がされていなかった」とだけ説明していたが、10日には「改めて確認をした結果、公文書管理法の関連規定、および内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」と違法性を認めた。
また「担当者の(公文書管理などの)問題への対応意識が少なかった」と釈明。文書による裏付けがない中で、名簿が当時の内閣府の解釈に沿って1年間保存されていたのか問われると、「そういうふうに思う。事務的に確認している」と述べた。
自身の責任を問われたが、明確には返答せず、「二度と再びこうしたことが起こることがないように、内部で注意などをしっかり行っている」と強調。「チェック態勢も今のままで良いとは思っていない」とも述べ、再発防止を徹底する考えを示した。
17年度までの5年間の招待者名簿を巡っては、管理簿に記載されず、廃棄記録も残されなかったことが判明している。野党側からは「首相らの推薦者を含めて、政治家がらみの名簿だから、行政文書として意図的に残さなかったのではないか」との指摘が出ている。【秋山信一】
毎日新聞2020年1月10日 15時15分(最終更新 1月10日 15時30分)
「桜を見る会」名簿不記載 「公文書管理法に違反」 10日の菅氏会見詳報
https://mainichi.jp/articles/20200110/k00/00m/010/141000c
菅義偉官房長官は10日の記者会見で、安倍晋三首相が主催した2013~17年の「桜を見る会」の招待者名簿の廃棄記録や、行政文書を管理するための帳簿への記載がなかったことについて「公文書管理法に違反する対応だった」と認めた。「桜を見る会」の責任者である菅官房長官の責任については明言を避けた。主な一問一答は次の通り。【政治部、統合デジタル取材センター】
法令違反の原因「対応意識が少なかったんじゃないでしょうか」
――昨日の会見で2013~17年の招待者名簿について、(公文書管理法で記載が義務づけられた)行政文書ファイル管理簿に記載がなかったという説明がありました。長官としては、公文書管理法に反していたという認識はあるんでしょうか。
◆記載漏れについてでありますけども、改めて確認をいたしました。その結果として、公文書管理法の関連規定、および内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと、このように考えます。
――そうなると、第2次安倍政権での「桜を見る会」で保存すべき名簿は全て管理簿に記載されていなかったということになりますけれども、なぜこのような運用になっていたんでしょうか。
◆そこは担当者に確認をしているところでありますけれども、そうした問題に対しての対応意識が少なかったんじゃないでしょうか。(※事務方からメモが差し入れられる)まあ、そういう中で、内閣府に確認をする中で、そうした意識の中で記載がなかったと、そういうことだと。
本当に名簿は1年保存されていたのか
――管理簿への記載がなかったわけですけれども、本当に名簿はこれまで1年間保存されていたんでしょうか。
◆あの、そうだろうというふうに思います。あの、そういうふうに思ってます。
――管理簿への記載がなかったのに、なぜそう言えるのでしょうか。
◆事務的に、そこは内閣府で確認をしております。
――招待者名簿の管理簿や廃棄簿への記載がなく、ルールを逸脱した運用が行われてきました。長官はこれまで「ルールに基づいた保存、廃棄が行われた」と説明してこられましたが、この発言は何に基づいておっしゃっていたのでしょうか。
◆あの、私に対しての質問は、当時、その1年未満とした今年、去年(※ママ。政府は18年4月、招待者名簿の保存期間を「1年」から「1年未満」に変更した)の質問だったというふうに思います。そういう中においては、ルールに基づいて、適切に対応してきている。そういうことを私は申し上げてきました。
――公文書管理法の施行以降、政府内で1年以上の文書が管理簿に未記載だった事例を把握していますか。こうした事例はしばしばあるのでしょうか。
◆まず、内閣府や各省庁が行う、これ内部監査、その中でそのような事例が把握されていることもあると、このように聞いています。そのような場合、どうなっているのかということを聞きましたら、内閣府から各省庁に対し、注意喚起や必要な指導・助言、これは行ってきているようです。詳細は内閣府の公文書管理の担当にお尋ねいただきたい。このように思います。
――公文書管理法では管理簿に記載された行政文書を廃棄する際、首相の同意、実際の運用上は内閣府公文書管理課の同意を得る必要があります。管理簿自体に記載がなかったということは、こうした審査手続きを経ずに、担当部署が勝手に廃棄していたことになります。そうした認識でよいでしょうか。違うとすれば、どういう手続きで廃棄したと認識しているのでしょうか。
◆あの、当時の担当者によれば、管理簿、および廃棄簿に記載がなかったことから、廃棄の際に事前同意の手続き、これも得ていなかったということであります。
責任の所在については答えず
――先ほど公文書管理法違反を認めましたけど、どの部分が違反だったという認識でしょうか。
◆あの、私、昨日の発言の中で、この廃棄して、同意も得ずに廃棄したというのはそのことだと思います。
――管理簿に未記載だったこと自体はいかがでしょうか。
◆いや、それもそうじゃないですか。
――一般論として、管理簿への記載がなければ、廃棄の審査を含めて公文書管理が適切に行われていたかは分からず、公文書管理の仕組みが根底から覆ることになります。政府内では他にも同様の事案があるとおっしゃったが、今回の事案が深刻な事態であるとの認識はありますか。内閣府の責任、また「桜を見る会」責任者の長官自身の責任をどう考えますか。
◆あのー、担当者に詳細のことを聞きましたら、そうした事実があったということは事実でありますから、まあ、こうしたことは二度と再び起こすことがないように、そこはしっかりと内部で注意等をですね、そこはしっかり行っているところだと思っています。
――13~17年の保存期間1年だった招待者名簿の管理はルールに基づいて行わず、公文書管理法違反だったとおっしゃった。にもかかわらず、直後の18年4月からは招待者名簿の保存期間は1年未満と即廃棄が可能な形に変更されています。5年間、管理簿にもなく、保存期間1年の設定が適切だったか、また不都合があったのか検証できるはずはないと思うが、どういう議論、経緯で1年未満の設定に変えたのでしょうか。
◆あのー、公文書管理法に基づいてガイドラインの見直し等があった時に、そのような形にしたということを報告を受けています。
「事務的な記録漏れ」と繰り返す
――先ほどのご答弁で、当時の名簿の管理を担当していた方が管理簿や廃棄簿に記載がなかったので、公文書管理課の事前の同意は廃棄時に必要ないと判断されたとおっしゃったが、そうすると当時の名簿管理の担当者は名簿が公文書、行政文書だという認識はなかったということでしょうか。
◆私、詳細については承知してませんけども、内閣府に確認したが、その事務的な記載漏れということでありました。
――未記載の経緯については今、担当者に確認されているというが、調査しているということでいいのでしょうか。
◆あの、確認した中で、事務的な記録漏れだったということであります。
――先ほど、こうしたことが二度と起こらないようにとおっしゃった。問題が起きたときに、長官はそういう答弁をすることが多いのですが、そもそもその前提として過去に何があったかであるとか、何が問題だったか、責任がどうだったかというのはきちんと把握されないと次の再発防止には進めないと思います。今回のこうした法律違反があったことについて、責任者としてはどういう行政責任があったと考え、それについて国民に対してどのような思いをお持ちなのでしょうか。
◆これ、昨日も質問される中で、私自身が直接もう一度調べさせていただきました。まあ、そういう中で、そうした事務的な記載漏れとか、これ数人でやっているようでありまして、そうした関係者から聞いたところ、そういう内容でありました。ですから、今後、二度と再びこうしたことが起こることがないように、チェック態勢というのも今のままでいいとは思っていません。
朝日新聞デジタル 2020年1月10日 17時28分
名簿廃棄「事前同意の手続き経ず…」 違法認めた菅長官
https://digital.asahi.com/articles/ASN1B4369N1BUTFK00F.html
菅義偉官房長官は10日午前の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿をめぐり、行政文書の管理簿や廃棄簿への記載がなかったことや、正当な廃棄手続きを経ていなかったことについて、公文書管理法違反にあたるとの認識を示した。主なやりとりは以下の通り。
――9日の会見で13~17年度の招待者名簿について、「行政文書ファイル管理簿」に記載がなかったとの説明があった。公文書管理法に反するとの認識はあるか。
「公文書管理法の関連規定、及び内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと考えている」
――第2次安倍政権で開かれた「桜を見る会」で、保存すべき名簿が全て管理簿に記載されていなかったことになる。なぜこのような運用になったのか。
「まず、そこは担当者に確認しているところだが、こうした問題に対する対応意識が少なかったのではないか。……そういう中で、内閣府に確認をする中で、そうした意識の中で記載漏れだと。そういうことだ」
――本当に名簿は定められていたとおり、1年間保存されていたのか。
「そうだろうと思う。……そういうふうに思っている」
――管理簿への記載がなかったが、なぜそう言えるのか。
「事務的に内閣府で確認をしている」
――菅長官は「ルールに基づいた保存・廃棄を行っている」と説明してきた。この発言は何に基づいていたのか。
「(保存期間を)1年未満とした18、19年の(招待者名簿についての)質問だったと思う。そういう中においてはルールに基づいて適切に対応してきている」
――公文書管理法の施行以降、政府内で1年以上の文書が管理簿に未記載だった事例はほかにあるか。
「内閣府や各省庁が行う内部監査、その中でそのような事例が把握されていることもあると聞いている。その場合、内閣府から各省庁に注意喚起や必要な指導・助言を行ってきているようだ」
――公文書管理法では管理簿に記載された行政文書を廃棄する際、内閣総理大臣の同意を得る必要があるとしている。こうした審査手続きを経ずに担当部署が勝手に廃棄していたことになる。
「当時の担当者によれば、管理簿および廃棄簿に記載がなかったことから、廃棄の際に事前同意の手続きも経ていなかったとのことだ」
――長官は先ほど、公文書管理法違反を認めたが、どの部分が違反だったとの認識か。
「私、昨日の発言の中で、この廃棄して……同意も得ずに廃棄したということは、そのことだと思う」
――管理簿に未記載だったこと自体はどうか。
「それもそうじゃないか」
――政府内では他にも同様の事案があるとのことだが、今回の事案が深刻な事態だという認識はあるか。内閣府の責任、桜を見る会責任者の長官自身の責任をどう考えているか。
「担当者に詳細を聞いたら、そうした事実があったということは事実であり、こうしたことは二度と再び犯すことがないように、しっかりと内部で注意など、そこはしっかり行っているところだと思う」
――当時の名簿管理の担当者は、名簿が公文書、行政文書だという認識がなかったということか。
「詳細については承知していないが、内閣府に確認したのは事務的な記載漏れ、ということだった」
――法律違反があったことについて、責任者としてはどういった行政責任があったと考え、国民に対してどのような思いを持っているのか。
「そうした事務的な記載漏れとか、これ、数人でやっているようであり、そうした関係者から聞いたところ、そういう内容だった。ですから今後二度と再びこうしたことが起きることがないように、チェック体制というのも今のままでいいとは思っていない」
NHK 2020年1月10日 12時59分桜を見る会
桜を見る会「招待者名簿不記載は公文書管理法違反」官房長官
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20200110/k10012241161000.html
「桜を見る会」の招待者名簿をめぐり、菅官房長官は記者会見で、平成25年から5年分の名簿を行政文書の管理簿に記載していなかったのは公文書管理法違反などにあたるという認識を示したうえで、再発を防止するためチェック態勢を強化する考えを示しました。
「桜を見る会」の招待者名簿をめぐり、菅官房長官は9日、平成25年から5年分は、公文書管理法で義務づけられている行政文書の管理簿への記載を行っていなかったことを明らかにしました。
これについて菅官房長官は記者会見で、改めて事実関係を詳細に確認したところ、今回の管理簿への不記載は公文書管理法と内閣府の文書管理規則に違反していたという認識を示しました。
そのうえで「内閣府の担当者は文書管理への対応意識が少なかったのではないか。二度とこうしたことを犯さないよう、しっかりと内部で注意などを行っているところだ。チェック態勢も今のままでいいとは思っていない」と述べ、文書管理のチェック態勢を強化する考えを示しました。
日本経済新聞 2020/1/10 12:44
名簿不記載は法令違反 官房長官、桜を見る会めぐり
http://nikkei.com/article/DGXMZO54251690Q0A110C2EA3000/
菅義偉官房長官は10日の閣議後の記者会見で、首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿の管理について「公文書管理法の規定、文書管理規則に違反する対応だった」との認識を示した。内閣府は同法の規定に反し、名簿を文書リストの「行政文書ファイル管理簿」に記載していなかった。
公文書管理法は保存期間1年以上の行政文書に関し、文書ファイルの名称や保存期間を管理簿に記載するよう義務付けている。菅氏は「事務的な記載漏れだ」と説明した。「チェック体制も今のままでいいとは思っていない」と再発防止に取り組む考えを示した。
菅氏は9日の会見で、2013~17年の名簿は管理簿に記載がなかったと明らかにしていた。5年分の名簿は同法の運用指針で定める廃棄記録も残していなかった。
朝日新聞デジタル2020年1月10日 5時00分
桜を見る会、管理記録も無し 招待者名簿5年分 法令違反か
http://digital.asahi.com/articles/DA3S14321753.html
公文書管理ルールと異なる桜を見る会の招待者名簿の取り扱い
菅義偉官房長官は9日の記者会見で「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿について、公文書管理法が義務づける行政文書の管理簿への記載を行っていなかったことを明らかにした。名簿は廃棄簿への記載がなかったことも判明しており、ルールを逸脱した管理の実態が改めて浮き彫りになった。
公文書管理法は、保存期間が1年以上の公文書について、名称や保存期間、保存期間が過ぎた後の取り扱いなどを「行政文書ファイル管理簿」に記載しなければならないと定める。管理簿にまとめられた文書のリストは公表され、この管理簿を用いて情報公開請求も行うことができる。
菅氏は会見で「内閣府によれば、当時の担当者の記憶によって、13~17年の名簿は管理簿に記載がなかったということだ」と説明。「内閣府に文書管理の徹底を指示した」とした。
記者団は「法令違反ではないか」などと重ねてただしたが、菅氏は「内閣府の文書管理規則に沿った対応がなされていなかった」などと繰り返し、法令に触れるかどうかの言及を避けた。菅氏が「詳細は内閣府に聞いてほしい」としたため、朝日新聞は内閣府に名簿管理の運用実態などを尋ねたが、9日夜までに回答はなかった。
この5年分の招待者名簿をめぐっては、公文書管理に関する政府のガイドラインが定める廃棄記録がなかったことが分かっている。公文書管理法施行とガイドライン策定は、第2次安倍政権が発足する前年の11年4月。菅氏は招待者名簿について「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」と強調するが、ずさんな管理の実態が相次いで明るみに出ており、公文書管理の専門家から政府の対応を疑問視する声が上がる。
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「公文書管理法に基づく管理がなされていなかったことは明らか」と、「名簿の保存は1年だとされているが、証拠がない以上、本当にそのように管理されていたのかは分からない」と話す。
また、13~17年度の名簿すべてが不記載だったことについて「単純ミスであるならば不自然だ」と指摘。「桜を見る会の名簿ということで意図的に記載しなかったのではないかとの印象すら受ける」と語った。(安倍龍太郎、菊地直己)
毎日新聞2020年1月9日 19時30分(最終更新 1月9日 20時45分)
「桜を見る会」招待者名簿 13年度から「行政文書で管理せず」の疑い 管理簿に不記載
http://mainichi.jp/articles/20200109/k00/00m/010/199000c
首相主催の「桜を見る会」を巡り、菅義偉官房長官は9日の記者会見で、2017年度まで5年間の招待者名簿について「内閣府の当時の担当者の記憶では、行政文書ファイル管理簿に記載がなかった」と述べた。内閣府は従来、17年度までの招待者名簿は「保存期間1年の行政文書」だと説明していたが、実際には公文書管理法上の義務である管理簿への記載を怠り、当初から行政文書として管理していなかった疑いが浮上した。
公文書管理法7条は、保存期間が1年以上の行政文書について、文書ファイルの名称や保存期間などを管理簿に記載するよう行政機関の長(内閣府は首相)に義務づけている。各府省は、公文書管理に関するルールを定めた政府のガイドラインに基づき、具体的な管理方法を文書管理規則で定めている。
菅氏は9日の会見で「管理簿に記載すべきものが記載されていなかった。内閣府の文書管理規則に沿った対応がされておらず、内閣府に文書管理の徹底を指示した」と述べた。
これまで内閣府は招待者名簿の保存期間について、17年度までは「1年」、18年度以降は管理簿への記載義務がない「1年未満」に設定していたと説明。安倍晋三首相や自民党の推薦による招待者数が増加した推移などについて、「既に名簿を廃棄したため分からない」などとしていた。
ところが、17年度までの名簿について、ガイドライン上の義務である廃棄記録を残していなかったことに続き、そもそも管理簿にも記載していなかったことが判明した。保管や廃棄の状況を裏付けられない事態になっている。
菅氏は管理簿への不記載の理由について「内閣府に聞いてほしい」と説明。内閣府は「現時点では詳細は不明」としている。【秋山信一】
朝日新聞デジタル2020年1月8日 5時00分
桜を見る会、廃棄記録なし 名簿5年分、指針違反
http://digital.asahi.com/articles/DA3S14319180.html
菅義偉官房長官は7日の記者会見で、内閣府が「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の廃棄記録を残していないことを明らかにした。政府のガイドラインに違反するだけでなく、繰り返し主張してきた「廃棄した」ことを裏付ける証拠文書すら残していないことになる。
公文書管理に関する政府のガイドラインでは、ファイル名や廃棄日の記録を義務づけているが、菅氏は「残すべきものが残されていなかったということは事実だ」として、記録がないことを認めた。「当時の担当者の記憶が鮮明でなく、経緯については分からないということだ」と説明。「(結果的に)記載ミスがあった」と話した。
菅氏はこれまで、招待者名簿は「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」と繰り返し、「廃棄済み」との説明を続けていた。記者団は「名簿が存在する可能性がある」として再調査の意向を尋ねたが、菅氏は「『廃棄した』というのであればないと思っている」と述べ、再調査は行わない考えを示した。
公文書管理法施行とガイドライン策定は11年4月。内閣府によると、17年度までの招待者名簿の保存期間は1年、18年度から1年未満となっており、担当者は「第2次安倍政権以降の招待者名簿はすべて廃棄済み」と説明している。
「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、保存期間満了後の行政文書を廃棄する際に首相の同意を必要とする公文書管理法第8条に抵触する可能性があると指摘。「廃棄簿への記載がないということは、義務づけられている廃棄の審査を経ていなかったとしか思えない」と語っている。(安倍龍太郎)
毎日新聞2019年12月29日 18時08分(最終更新 12月29日 19時26分)
「桜」招待者名簿の廃棄記録なし 内閣府 政府ガイドライン違反
http://mainichi.jp/articles/20191229/k00/00m/010/085000c
首相主催で毎年春に開かれてきた「桜を見る会」を巡り、2017年度まで5年間の招待者名簿や各省庁への招待者の推薦依頼文書の廃棄記録を内閣府が残していなかったことが判明した。公文書管理のルールを定めた政府のガイドラインは、文書廃棄時に行政文書ファイル名や廃棄日などを廃棄簿に記載することを義務づけているが、内閣府はガイドライン違反を認めた。記録を残していないため、実際に廃棄されたのか裏付けられない状況になっている。
内閣府は、19年度の招待者名簿について野党議員から資料要求のあった直後に廃棄していたが、過去の名簿を巡っても文書管理の不備が明らかになった。
公文書管理法施行とガイドライン策定は11年4月。一方、桜を見る会は東日本大震災直後だった11年度と、北朝鮮のミサイル発射を警戒していた12年度は中止。第2次安倍政権発足後の13年度以降は毎年開催している。
内閣府によると、17年度までの招待者名簿は保存期間が「1年」と設定されていた。公文書管理法に基づくと、保存期間1年以上の行政文書は名称や作成者、保存期間、保存場所などを「行政文書ファイル管理簿」に登録する。保存期間満了後は国立公文書館などへの移管か、廃棄の手続きがとられる。その際、文書管理者(通常は課室長)が、文書ファイル名や移管または廃棄の日付を移管簿や廃棄簿に記載する。
内閣府人事課は「過去の招待者名簿などは既に廃棄した」と説明しているが、毎日新聞が13~17年度の「桜を見る会」の文書について内閣府に確認したところ、廃棄簿への記載がなかった。
内閣府人事課の担当者は、廃棄記録がないことについて、「結果的にガイドラインに沿わない形になっている」と違反を認めた。その上で、「記録がない理由は不明だ。13~17年度の招待者名簿を作成した際、行政文書ファイル管理簿に登録したかどうかも不明だが、現在の管理簿には登録はなく、既に廃棄したと判断している」としている。
17年12月のガイドライン改正で保存期間「1年未満」の基準が明確化されたことを受けて、内閣府は18年4月、「大量の個人情報を適切に管理する必要がある」などとして招待者名簿の保存期間を「1年未満」に変更。18年度以降の分は制度上、管理簿や廃棄簿に記載する必要がなくなった。
「桜を見る会」を巡っては、安倍晋三首相や自民党の推薦による招待者数の増大や招待の根拠▽マルチ商法を展開して経営破綻した「ジャパンライフ」元会長の招待の経緯▽反社会的勢力の招待の有無――など疑問点がいくつも残っている。しかし、政府は、こうした情報を確認できる招待者名簿が既に廃棄されたことを理由に、調査や確認を拒んでいる。過去の招待者名簿の廃棄を裏付ける文書がないことが発覚したことで、野党側はさらに追及を強めるとみられる。【秋山信一】
*************************************
朝日新聞デジタル2020年1月10日 19時47分
木村草太氏 桜を見る会は「公文書隠蔽・廃棄問題」に
http://digital.asahi.com/articles/ASN1B6D21N1BUTFK01K.html
木村草太氏
菅義偉官房長官が10日午前の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の管理・廃棄について、公文書管理法が義務づける手続きをとっておらず、同法違反にあたることを認めた。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は政府の対応について、憲法が保障する「知る権利」を侵害するものだと指摘する。
◇
国民には、政府のやっていることを評価し、検証する権利がある。しかし、基本的な公文書が残っていなければ、国民は政府を評価できない。桜を見る会のあり方に問題があろうとなかろうと、招待者名簿などを残していないとする政府の対応は、公文書管理法違反というだけでなく、憲法が保障する「知る権利」の侵害ではないか。
桜を見る会をめぐっては、招待基準にある「功績、功労」に関係なく、安倍晋三首相の事務所の関係者などが優先的に招かれていた疑いがある。これが事実なら、憲法14条の定める平等原則に違反することは明らかだが、公文書が公開されないため、国民が違憲性・違法性を判断できない状況が続く。
国民の評価の前提となる名簿などを保存・公開せず、しかも違法に廃棄していた安倍内閣の責任は大きく、担当大臣や官僚の処分が当然必要だ。しかし、菅義偉官房長官は10日の記者会見で、名簿の管理・廃棄について公文書管理法に違反すると認める一方で、関係者の処分には言及しなかった。
「処分は不要。そこまで大きな責任を伴う問題だとは認識していない」というなら、その判断を明言し、国民の評価を仰ぐべきだ。国会や記者の追及を受けるまでもなく、政府自ら処分すべき事案であり、菅氏が会見で処分に言及しなかった以上、事の重大性を認識していないと批判されても仕方ない。桜を見る会問題は「公文書隠蔽(いんぺい)・廃棄問題」の様相を帯びてきた。
毎日新聞2020年1月5日 18時23分(最終更新 1月5日 18時42分)
「桜を見る会」考
「桜を見る会」は「憲法違反」 木村草太氏指摘 「平等、知る権利阻害」
http://mainichi.jp/articles/20200105/k00/00m/010/150000c
インタビューに答える首都大学東京の木村草太教授=東京都八王子市で、江畑佳明撮影
安倍晋三首相の「桜を見る会」には「公的行事の私物化」「公選法違反ではないか」など、多岐にわたる批判が相次いでいる。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「法の下の平等や、国民の知る権利を阻害しており、憲法違反の疑いがあります」と訴える。その真意を尋ねた。【江畑佳明/統合デジタル取材センター】
招待のあり方は「国民を二分し不平等」
――憲法の観点からは何が問題でしょうか。
◆まず、桜を見る会に誰をどう招待したか、について考えたいと思います。憲法14条1項はこう定めています。
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない」
桜を見る会に招待されるのは「功績、功労があった人」だというのが政府のこれまでの説明です。しかし、実際にはこの説明にそぐわないような、安倍事務所の後援会の人たちを数多く招待したとみられています。もし、それが事実なら、政府が国民を「功績と関係なく招待された人」と「招待されない人」に二分したことになります。これは、政府が合理的な理由がないままに、国民を不平等に扱い、差別した事案です。平等権侵害の典型例でしょう。仮に、招待されなかった人が「平等権の侵害だ」と訴訟を提起したら、政府は、どのような根拠で「平等だった」と反論すればよいのか。訴訟の担当者は、困ってしまうでしょう。
――政府が訴えられたら、勝訴できますか?
◆政府が負けてしまうと、(差別を受けた)被害者数も被害額も膨大になるので、裁判所は、なんとか政府が勝訴するような知恵をひねり出すでしょう。例えば、「招待されなかったからといって、賠償を求めることができるほどの損害は受けていない」などと言うのではないでしょうか。ただ、これは、政府の招待者の選抜が妥当だったという内容ではありません。そもそも、招待者の名簿や選抜の具体的基準や議事録がないわけで、裁判所としても「招待客の選抜に何ら問題はなかった」という判決は書きようがないでしょう。
参加者氏名「公開しても違憲・違法ではない」
――政府は招待者の氏名について、「個人情報だから非公開」という説明をしていますが、違和感を覚えます。
◆招待はされたけれども当日出席しなかった人まで氏名を公表するのは問題です。というのは、時々、叙勲を受章しない人がいるように、一般には名誉だと思われることでも、本人が不名誉に感じる場合があります。出席しなかった人は招待されたことを快く思っていないかもしれない。招待された事実を公にしたくない人の氏名は、公開すべきではありません。
これに対し、当日出席した人は、政府に称賛されたことを受け入れた人ですよね。だから氏名はプライバシー権で保護される情報には当たらないと考えるのが一般です。当日出席した人たちの氏名は、公開しても違憲・違法ではないでしょう。そもそも、当日の様子は報道機関のカメラが入って、官邸のホームページでも様子を公開しています。もし政府の主張通り、出席者が誰かということが、プライバシー権で守らなければならない個人情報であるならば、カメラなど入れてはいけないわけです。例えば、DV被害者を守るためのシェルターに報道機関がカメラを使って取材をしようと思ったら、利用者が誰かわからないように顔が見えないようにするなどの配慮をしますよね。政府は桜を見る会の出席者の情報を、シェルターの利用者と同じように扱っていることになります。これは明らかにおかしい。桜を見る会の会場は、報道のカメラが入るなど半ば公の場となっているため、参加者の氏名は当然公開されていい情報です。参加者は会場に来た時点で氏名の公開に同意した、とみなしていいと思います。
名簿の廃棄で「政府の信用が詐欺に使われても事実確認できない」
――「プライバシー権」と「個人情報」はよく似ているように思いますが、違いはあるのでしょうか。
◆はい。プライバシー権は、「個人情報コントロール権」であり、これには自らの個人情報をみだりに公表されない権利が含まれているとされます。ただし、①公共の利害に関する真実である場合と、②本人が同意した場合には、個人情報の公開も許されるとされます。
政府が誰の功績・功労を認めたのかは、公共利害に関連する事実です。また、桜を見る会への出席は、出席の事実を公に知られてもよいという同意だと理解できるでしょう。ですから、桜を見る会の出席者名簿は、①②いずれにも当たります。
――内閣府は招待者名簿を「保存期間1年未満の文書」として廃棄したと説明しています。
◆これも大きな問題だと考えます。マルチ商法などで多くの被害が出た「ジャパンライフ」の元会長が招待されていたのではと報道されていますが、なにもこれは「ジャパンライフ」に限った話ではないはずです。他にも「ウチの社長は桜を見る会に招待されたんですよ」と宣伝する会社があってもおかしくありません。その会社と商談を進めたり契約を検討したりしている場合、この情報の正誤を確認する必要が出てきます。ですが政府が名簿を廃棄したとなると、事実確認のしようがない。政府の信用が詐欺に使われる可能性があり、名簿の廃棄はこの点でも大きな問題点をはらんでいます。
「当然公開されるべき事実を隠したことは国民への裏切り」
――政府は2020年の「桜を見る会」の中止を決めましたが、名簿などが廃棄されてしまえば検証や改善のしようがないですね。
◆その通りです。この桜の見る会の最大の問題は、国民の政府を評価する権利と、その前提になる「知る権利」が侵害されている点です。当然公開されるべき事実を隠したことは、国民への裏切りです。今回、私たち国民は「主権者は国民であり、政府を評価するのは自分たちだ」という考えをもっと強く持つべきだと思うのです。
――菅義偉官房長官は記者会見でよく「適切に処理しています」と言っています。
◆政府の行為が「適切かどうか」を判断するのは国民です。しかし、国民の評価を受ける立場の政府が、勝手に自己評価して「適切だ」と言っているわけです。これは、国民主権の原理の否定です。私たちの憲法の根幹にある価値を否定しているのです。国民をバカにしているといってもいい。
例えば、試験の際に答案用紙を提出しなかったら、自動的に「0点」で不合格になりますよね。提出すれば、むちゃくちゃな内容でも、10点とか20点はつくかもしれない。答案を提出しないことは、むちゃくちゃな答案を出すよりもひどいことなのです。今の政府もこれと同じです。招待者の情報を出したくない事情があるのかもしれませんが、全く出さなければ国民は0点と評価すべきです。「実はこういう中身でした」と公開(答案を提出)すれば、国民の評価(試験の点数)は、不合格かもしれないけど、もしかしたらぎりぎりセーフの評価をしてもらえる可能性も残されています。とにかく、きちんと公開して、国民の審判を仰がねばなりません。だから政府は「データの復元などの手を尽くしました。内容や結果を判断するのは国民のみなさんです」というメッセージを出すべきです。
――ツイッターなどでは「もっとほかに議論すべきことがある」という批判もあります。
◆今、政府が出している情報だけでは、これが大問題なのか、取るに足らない問題なのかも判断できません。そういう批判をする人は、「名簿の中身がどんな内容でも安倍政権を支持する」という方々なのでしょう。それはそれで一つの政治的立場ですが、であるなら、「どんな内容でも支持する。だから公開すべきだ」と主張するのが筋ではないでしょうか。
それから、招待者は「功績、功労のあった人」ということですが、じゃあどんな功績を判断するために何を基準にしているのか、さらにどういう選定手続きを踏んだのか、の公開も必要です。もし内閣府が「安倍後援会の希望者全員」という基準で選んだのなら、そういう基準でしたと、明らかにすべきだと思います。それをどう評価するか。判断するのは国民です。
きむら・そうた
1980年生まれ。東京大法卒。同大助手、首都大東京准教授を経て、現職。専門は憲法。著書は「憲法の条件」(NHK出版新書)、「自衛隊と憲法」(晶文社)など多数。毎日小学生新聞にコラム「ほとんど憲法」を連載中。趣味は将棋観戦。
///////////////////////////////////////////////////////////////////////
朝日新聞デジタル2020年1月10日 20時20分
「桜を見る会」名簿、廃棄記録なし 菅長官、違法認める
---- 菅義偉官房長官は10日の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の取り扱いで、公文書管理法違反があったことを認めた。同法8条が定める廃棄前に必要な首相の同意手続きを取っていなかったことも明らかにした。
法令順守と、行政事務の重要な意思決定を文書に基づいて行う「文書主義」は、公務員が守るべき大原則。その基本すら守られていない現状が明らかになった。ルールに基づき対応してきたというこれまでの政府の説明は根底から覆ったことになる。
毎日新聞2020年1月10日 15時32分(最終更新 1月10日 15時32分)
菅氏、違法性認めるも「5年連続記載漏れ」の不自然さ 「桜を見る会」名簿
---- 事務的ミスが続いただけか、意図的か――。菅義偉官房長官は10日の記者会見で、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡り、2017年度までの5年間の招待者名簿が行政文書ファイル管理簿に記載されていなかった問題について「公文書管理法に違反する対応だった」と違法性を認めた。ただ、未記載の理由は「事務的な記載漏れ」だと釈明。5年連続で「記載漏れ」が続いたとは考えにくく、不自然な印象であるため、野党からは「意図的な不記載だ」との批判も出ている。
朝日新聞デジタル2020年1月10日 19時47分
木村草太氏 桜を見る会は「公文書隠蔽・廃棄問題」に
----菅義偉官房長官が10日午前の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の管理・廃棄について、公文書管理法が義務づける手続きをとっておらず、同法違反にあたることを認めた。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は政府の対応について、憲法が保障する「知る権利」を侵害するものだと指摘する。
毎日新聞2020年1月5日 18時23分(最終更新 1月5日 18時42分)
「桜を見る会」考
「桜を見る会」は「憲法違反」 木村草太氏指摘 「平等、知る権利阻害」
----安倍晋三首相の「桜を見る会」には「公的行事の私物化」「公選法違反ではないか」など、多岐にわたる批判が相次いでいる。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「法の下の平等や、国民の知る権利を阻害しており、憲法違反の疑いがあります」と訴える。
以下参考
朝日新聞デジタル 2020年1月11日 5時00分
桜を見る会名簿「適切に廃棄」のはずが ずさん管理露呈
http://digital.asahi.com/articles/ASN1B5D15N1BUTFK00T.html
公文書管理の流れと相次いで発覚した問題点
首相主催の「桜を見る会」をめぐり、菅義偉官房長官は10日、招待者名簿の取り扱いが公文書管理法に違反していたことを認めた。「ルールに基づき適切に保存・廃棄」としていた説明が、根底から覆る異常事態だ。「国民共有の知的資源」である公文書の管理で、何が起きているのか。▼1面参照
「桜を見る会」の追及に連日さらされている菅氏は10日の記者会見で、「廃棄の際に事前同意の手続きも経ていなかったということだ」と語った。「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の廃棄について、公文書管理法が義務づける首相の同意(実務的には内閣府の同意)を得る手続きを取っていなかったことを認めた。
公文書管理法は、保存期間が1年以上の公文書について、名称や保存期間、保存期間が過ぎた後の取り扱いなどを「管理簿」に記載しなければならないと定めている。廃棄した場合は、「廃棄簿」に記載するよう政府のガイドラインは定めている。
菅氏は7日と9日の会見で、招待者名簿を「管理簿」や「廃棄簿」に記載していなかったことを認めたばかり。ルールを無視して公文書を管理していたことを1週間で3度も認める異常な事態に陥っている。
「桜を見る会」をめぐる公文書の扱いについては、説明に後ろ向きな政府の姿勢が際立っている。菅氏は今週に入っても周囲に「省令違反のようなものだと聞いている」と語っていた。9日の会見では、政府の対応が違法かどうか重ねて問われたが、「内閣府の文書管理規則に沿った対応がなされていなかった」と述べるだけだった。
だが、連日のメディアの追及に、10日の会見では管理簿への不記載について「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」と、違法性を認めざるを得なくなった。
関係者の責任に言及せず
公文書管理法に違反した取り扱いが常態化していた「桜を見る会」の招待者名簿は、安倍晋三首相や菅氏らによる推薦も含んだ招待客を取りまとめたものだ。首相の推薦枠をめぐっては、オーナー商法で行政指導されたジャパンライフの元会長が招待されたかどうかも、焦点の一つだ。
招待客の選定過程を明らかにするためには、名簿の検証が欠かせない。だが、首相は昨年12月の臨時国会閉会後の会見で「内閣府があらかじめ定められた手続きにのっとって、適正に廃棄をしている」と主張。今月6日の年頭会見では、元会長が首相推薦枠だったかを問われ「招待者については個人に関する情報であるため、回答を差し控えている」と説明を拒んだ。
菅氏も招待者名簿の廃棄について「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」と繰り返してきた。だが、法を逸脱した対応が次々と明るみに出るに至り、正当性を強調していた説明は徐々に後退していた。
10日の会見では「深刻な事態という認識はあるか」と責任をただされ、「こうしたことを二度と再び犯すことがないよう、内部で注意はしっかり行っている」と述べるだけ。違法行為に対する関係者の責任や処分には言及しなかった。
菅氏は、管理簿や廃棄簿については「事務的な記載漏れ」と語る。ただ、5年間も違法状態が続いたことに、専門家からは政府の対応の不自然さを指摘する声が上がる。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「内閣府の中で招待者名簿を管理簿に記載しないという引き継ぎでも行われていたのだろうか」と指摘した。自民党内からも「最初から意図的に名簿を保存しないようにしたとしか思えない。『廃棄した』で逃げ切ろうという姿勢が見え見えだ」(ベテラン)という厳しい声が出始めた。
政府に、名簿が本当に存在しないのかどうかの再調査などに応じる様子はみられない。野党は説明責任に後ろ向きな姿勢を批判し、事実の解明を求めていく構えだ。立憲民主党の安住淳国会対策委員長は10日、国会内で記者団に「国民の財産である公文書を一方的に破棄するのは、戦前の軍部がやっているようなことで許しがたい」と語り、20日召集の通常国会で追及を強める考えを示した。
共産党の小池晃書記局長も朝日新聞の取材に対し、「適切に廃棄していると言いながら法律を守っていない。全体像を明らかにするため、首相自らが国会の場で説明責任を果たすべきだ」と述べた。(安倍龍太郎、菊地直己)
朝日新聞デジタル 2020年1月11日 5時00分
「桜」名簿の扱い、違法 菅長官、一転認める
http://digital.asahi.com/articles/DA3S14323079.html
菅義偉官房長官は10日の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の取り扱いで、公文書管理法違反があったことを認めた。同法8条が定める廃棄前に必要な首相の同意手続きを取っていなかったことも明らかにした。▼3面=処分に触れず
法令順守と、行政事務の重要な意思決定を文書に基づいて行う「文書主義」は、公務員が守るべき大原則。その基本すら守られていない現状が明らかになった。ルールに基づき対応してきたというこれまでの政府の説明は根底から覆ったことになる。
菅氏は9日の会見で、保存期間など名簿の取り扱いを記す行政文書の管理簿への未記載を認めたが、法令違反にあたるかどうかは言及を避けていた。10日の会見では「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと考えている」と明言。(1)管理簿への未記載(2)名簿を廃棄した日などを書き入れる廃棄簿への未記載(3)廃棄前に必要な首相の同意手続きがなかったこと、の3点を認めた。
ただ、理由については「事務的な記載漏れだった」と説明。内閣府や、桜を見る会の担当閣僚としての菅氏自身の責任についても記者から問われたが、「こうしたことを二度と再び犯すことがないよう内部で注意をしっかり行っているところだと思う」と述べるにとどめた。
首相が主催する内閣の公的行事「桜を見る会」をめぐっては昨秋以降、安倍晋三首相の地元有権者が多く参加していたことが明らかになり、「私物化」との批判が続いている。しかし、真相解明の鍵となる招待者名簿について、政府は「第2次安倍政権以降の招待者名簿はすべて廃棄済み」と説明し、再調査しようとはしていない。(安倍龍太郎)
■「公文書隠蔽問題」の様相に
木村草太・首都大学東京教授(憲法学)の話 国民には、政府のやっていることを評価し、検証する権利がある。しかし、基本的な公文書が残っていなければ、国民は評価できない。桜を見る会の招待者名簿などを残していないとする政府の対応は、公文書管理法違反だけでなく、憲法が保障する「知る権利」の侵害ではないか。追及を受けるまでもなく、政府自ら関係者を処分すべき事案であり、菅氏が会見で処分に言及しなかった以上、事の重大性を認識していないと批判されても仕方ない。桜を見る会問題は「公文書隠蔽(いんぺい)・廃棄問題」の様相を帯びてきた。
朝日新聞デジタル2020年1月10日 20時20分
「桜を見る会」名簿、廃棄記録なし 菅長官、違法認める
http://digital.asahi.com/articles/ASN1B3V85N1BUTFK009.html
菅義偉官房長官は10日の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の取り扱いで、公文書管理法違反があったことを認めた。同法8条が定める廃棄前に必要な首相の同意手続きを取っていなかったことも明らかにした。
法令順守と、行政事務の重要な意思決定を文書に基づいて行う「文書主義」は、公務員が守るべき大原則。その基本すら守られていない現状が明らかになった。ルールに基づき対応してきたというこれまでの政府の説明は根底から覆ったことになる。
菅氏は9日の会見で、保存期間など名簿の取り扱いを記す行政文書の管理簿への未記載を認めたが、法令違反にあたるかどうかは言及を避けていた。10日の会見では「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと考えている」と明言。①管理簿への未記載②名簿を廃棄した日などを書き入れる廃棄簿への未記載③廃棄前に必要な首相の同意手続きがなかったこと、の3点を認めた。
ただ、理由については「事務的な記載漏れだった」と説明。「担当者に確認しているところだが、こうした問題への対応意識が少なかったのではないか」とも話した。内閣府や、桜を見る会の担当閣僚としての菅氏自身の責任についても記者から問われたが、「こうしたことを二度と再び犯すことがないよう内部で注意をしっかり行っているところだと思う」と述べるにとどめた。
首相が主催する内閣の公的行事「桜を見る会」をめぐっては昨年秋以降、安倍晋三首相の地元有権者が多く参加していたことが明らかになり、「私物化」との批判が続いている。しかし、真相解明の鍵となる招待者名簿について、政府は「第2次安倍政権以降の招待者名簿はすべて廃棄済み」と説明し、再調査しようとはしていない。朝日新聞社の昨年12月の世論調査では、桜を見る会の一連の問題についての安倍首相の説明は、74%が「十分ではない」と答えている。
公文書管理法が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づける公文書だが、安倍政権ではこれまでもずさんな扱いぶりが問題となってきた。
森友学園への国有地売却問題では財務省が公文書を改ざん、廃棄した。国会答弁で存在しないとしてきたイラク派遣の際の陸上自衛隊の日報も後に見つかった。首相官邸で首相が省庁幹部と面談した際の記録を官邸側が作っていないことも明らかになっている。(安倍龍太郎)
毎日新聞2020年1月10日 15時32分(最終更新 1月10日 15時32分)
菅氏、違法性認めるも「5年連続記載漏れ」の不自然さ 「桜を見る会」名簿
http://mainichi.jp/articles/20200110/k00/00m/010/150000c
事務的ミスが続いただけか、意図的か――。菅義偉官房長官は10日の記者会見で、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡り、2017年度までの5年間の招待者名簿が行政文書ファイル管理簿に記載されていなかった問題について「公文書管理法に違反する対応だった」と違法性を認めた。ただ、未記載の理由は「事務的な記載漏れ」だと釈明。5年連続で「記載漏れ」が続いたとは考えにくく、不自然な印象であるため、野党からは「意図的な不記載だ」との批判も出ている。
公文書管理法では、行政文書を適切に管理するため、1年以上保存する文書ファイルの名称や種別、保存期間などを管理簿に記載することを義務づけている。菅氏は9日の会見では管理簿への未記載について「内閣府の文書管理規則に沿った対応がされていなかった」とだけ説明していたが、10日には「改めて確認をした結果、公文書管理法の関連規定、および内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」と違法性を認めた。
また「担当者の(公文書管理などの)問題への対応意識が少なかった」と釈明。文書による裏付けがない中で、名簿が当時の内閣府の解釈に沿って1年間保存されていたのか問われると、「そういうふうに思う。事務的に確認している」と述べた。
自身の責任を問われたが、明確には返答せず、「二度と再びこうしたことが起こることがないように、内部で注意などをしっかり行っている」と強調。「チェック態勢も今のままで良いとは思っていない」とも述べ、再発防止を徹底する考えを示した。
17年度までの5年間の招待者名簿を巡っては、管理簿に記載されず、廃棄記録も残されなかったことが判明している。野党側からは「首相らの推薦者を含めて、政治家がらみの名簿だから、行政文書として意図的に残さなかったのではないか」との指摘が出ている。【秋山信一】
毎日新聞2020年1月10日 15時15分(最終更新 1月10日 15時30分)
「桜を見る会」名簿不記載 「公文書管理法に違反」 10日の菅氏会見詳報
https://mainichi.jp/articles/20200110/k00/00m/010/141000c
菅義偉官房長官は10日の記者会見で、安倍晋三首相が主催した2013~17年の「桜を見る会」の招待者名簿の廃棄記録や、行政文書を管理するための帳簿への記載がなかったことについて「公文書管理法に違反する対応だった」と認めた。「桜を見る会」の責任者である菅官房長官の責任については明言を避けた。主な一問一答は次の通り。【政治部、統合デジタル取材センター】
法令違反の原因「対応意識が少なかったんじゃないでしょうか」
――昨日の会見で2013~17年の招待者名簿について、(公文書管理法で記載が義務づけられた)行政文書ファイル管理簿に記載がなかったという説明がありました。長官としては、公文書管理法に反していたという認識はあるんでしょうか。
◆記載漏れについてでありますけども、改めて確認をいたしました。その結果として、公文書管理法の関連規定、および内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと、このように考えます。
――そうなると、第2次安倍政権での「桜を見る会」で保存すべき名簿は全て管理簿に記載されていなかったということになりますけれども、なぜこのような運用になっていたんでしょうか。
◆そこは担当者に確認をしているところでありますけれども、そうした問題に対しての対応意識が少なかったんじゃないでしょうか。(※事務方からメモが差し入れられる)まあ、そういう中で、内閣府に確認をする中で、そうした意識の中で記載がなかったと、そういうことだと。
本当に名簿は1年保存されていたのか
――管理簿への記載がなかったわけですけれども、本当に名簿はこれまで1年間保存されていたんでしょうか。
◆あの、そうだろうというふうに思います。あの、そういうふうに思ってます。
――管理簿への記載がなかったのに、なぜそう言えるのでしょうか。
◆事務的に、そこは内閣府で確認をしております。
――招待者名簿の管理簿や廃棄簿への記載がなく、ルールを逸脱した運用が行われてきました。長官はこれまで「ルールに基づいた保存、廃棄が行われた」と説明してこられましたが、この発言は何に基づいておっしゃっていたのでしょうか。
◆あの、私に対しての質問は、当時、その1年未満とした今年、去年(※ママ。政府は18年4月、招待者名簿の保存期間を「1年」から「1年未満」に変更した)の質問だったというふうに思います。そういう中においては、ルールに基づいて、適切に対応してきている。そういうことを私は申し上げてきました。
――公文書管理法の施行以降、政府内で1年以上の文書が管理簿に未記載だった事例を把握していますか。こうした事例はしばしばあるのでしょうか。
◆まず、内閣府や各省庁が行う、これ内部監査、その中でそのような事例が把握されていることもあると、このように聞いています。そのような場合、どうなっているのかということを聞きましたら、内閣府から各省庁に対し、注意喚起や必要な指導・助言、これは行ってきているようです。詳細は内閣府の公文書管理の担当にお尋ねいただきたい。このように思います。
――公文書管理法では管理簿に記載された行政文書を廃棄する際、首相の同意、実際の運用上は内閣府公文書管理課の同意を得る必要があります。管理簿自体に記載がなかったということは、こうした審査手続きを経ずに、担当部署が勝手に廃棄していたことになります。そうした認識でよいでしょうか。違うとすれば、どういう手続きで廃棄したと認識しているのでしょうか。
◆あの、当時の担当者によれば、管理簿、および廃棄簿に記載がなかったことから、廃棄の際に事前同意の手続き、これも得ていなかったということであります。
責任の所在については答えず
――先ほど公文書管理法違反を認めましたけど、どの部分が違反だったという認識でしょうか。
◆あの、私、昨日の発言の中で、この廃棄して、同意も得ずに廃棄したというのはそのことだと思います。
――管理簿に未記載だったこと自体はいかがでしょうか。
◆いや、それもそうじゃないですか。
――一般論として、管理簿への記載がなければ、廃棄の審査を含めて公文書管理が適切に行われていたかは分からず、公文書管理の仕組みが根底から覆ることになります。政府内では他にも同様の事案があるとおっしゃったが、今回の事案が深刻な事態であるとの認識はありますか。内閣府の責任、また「桜を見る会」責任者の長官自身の責任をどう考えますか。
◆あのー、担当者に詳細のことを聞きましたら、そうした事実があったということは事実でありますから、まあ、こうしたことは二度と再び起こすことがないように、そこはしっかりと内部で注意等をですね、そこはしっかり行っているところだと思っています。
――13~17年の保存期間1年だった招待者名簿の管理はルールに基づいて行わず、公文書管理法違反だったとおっしゃった。にもかかわらず、直後の18年4月からは招待者名簿の保存期間は1年未満と即廃棄が可能な形に変更されています。5年間、管理簿にもなく、保存期間1年の設定が適切だったか、また不都合があったのか検証できるはずはないと思うが、どういう議論、経緯で1年未満の設定に変えたのでしょうか。
◆あのー、公文書管理法に基づいてガイドラインの見直し等があった時に、そのような形にしたということを報告を受けています。
「事務的な記録漏れ」と繰り返す
――先ほどのご答弁で、当時の名簿の管理を担当していた方が管理簿や廃棄簿に記載がなかったので、公文書管理課の事前の同意は廃棄時に必要ないと判断されたとおっしゃったが、そうすると当時の名簿管理の担当者は名簿が公文書、行政文書だという認識はなかったということでしょうか。
◆私、詳細については承知してませんけども、内閣府に確認したが、その事務的な記載漏れということでありました。
――未記載の経緯については今、担当者に確認されているというが、調査しているということでいいのでしょうか。
◆あの、確認した中で、事務的な記録漏れだったということであります。
――先ほど、こうしたことが二度と起こらないようにとおっしゃった。問題が起きたときに、長官はそういう答弁をすることが多いのですが、そもそもその前提として過去に何があったかであるとか、何が問題だったか、責任がどうだったかというのはきちんと把握されないと次の再発防止には進めないと思います。今回のこうした法律違反があったことについて、責任者としてはどういう行政責任があったと考え、それについて国民に対してどのような思いをお持ちなのでしょうか。
◆これ、昨日も質問される中で、私自身が直接もう一度調べさせていただきました。まあ、そういう中で、そうした事務的な記載漏れとか、これ数人でやっているようでありまして、そうした関係者から聞いたところ、そういう内容でありました。ですから、今後、二度と再びこうしたことが起こることがないように、チェック態勢というのも今のままでいいとは思っていません。
朝日新聞デジタル 2020年1月10日 17時28分
名簿廃棄「事前同意の手続き経ず…」 違法認めた菅長官
https://digital.asahi.com/articles/ASN1B4369N1BUTFK00F.html
菅義偉官房長官は10日午前の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿をめぐり、行政文書の管理簿や廃棄簿への記載がなかったことや、正当な廃棄手続きを経ていなかったことについて、公文書管理法違反にあたるとの認識を示した。主なやりとりは以下の通り。
――9日の会見で13~17年度の招待者名簿について、「行政文書ファイル管理簿」に記載がなかったとの説明があった。公文書管理法に反するとの認識はあるか。
「公文書管理法の関連規定、及び内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと考えている」
――第2次安倍政権で開かれた「桜を見る会」で、保存すべき名簿が全て管理簿に記載されていなかったことになる。なぜこのような運用になったのか。
「まず、そこは担当者に確認しているところだが、こうした問題に対する対応意識が少なかったのではないか。……そういう中で、内閣府に確認をする中で、そうした意識の中で記載漏れだと。そういうことだ」
――本当に名簿は定められていたとおり、1年間保存されていたのか。
「そうだろうと思う。……そういうふうに思っている」
――管理簿への記載がなかったが、なぜそう言えるのか。
「事務的に内閣府で確認をしている」
――菅長官は「ルールに基づいた保存・廃棄を行っている」と説明してきた。この発言は何に基づいていたのか。
「(保存期間を)1年未満とした18、19年の(招待者名簿についての)質問だったと思う。そういう中においてはルールに基づいて適切に対応してきている」
――公文書管理法の施行以降、政府内で1年以上の文書が管理簿に未記載だった事例はほかにあるか。
「内閣府や各省庁が行う内部監査、その中でそのような事例が把握されていることもあると聞いている。その場合、内閣府から各省庁に注意喚起や必要な指導・助言を行ってきているようだ」
――公文書管理法では管理簿に記載された行政文書を廃棄する際、内閣総理大臣の同意を得る必要があるとしている。こうした審査手続きを経ずに担当部署が勝手に廃棄していたことになる。
「当時の担当者によれば、管理簿および廃棄簿に記載がなかったことから、廃棄の際に事前同意の手続きも経ていなかったとのことだ」
――長官は先ほど、公文書管理法違反を認めたが、どの部分が違反だったとの認識か。
「私、昨日の発言の中で、この廃棄して……同意も得ずに廃棄したということは、そのことだと思う」
――管理簿に未記載だったこと自体はどうか。
「それもそうじゃないか」
――政府内では他にも同様の事案があるとのことだが、今回の事案が深刻な事態だという認識はあるか。内閣府の責任、桜を見る会責任者の長官自身の責任をどう考えているか。
「担当者に詳細を聞いたら、そうした事実があったということは事実であり、こうしたことは二度と再び犯すことがないように、しっかりと内部で注意など、そこはしっかり行っているところだと思う」
――当時の名簿管理の担当者は、名簿が公文書、行政文書だという認識がなかったということか。
「詳細については承知していないが、内閣府に確認したのは事務的な記載漏れ、ということだった」
――法律違反があったことについて、責任者としてはどういった行政責任があったと考え、国民に対してどのような思いを持っているのか。
「そうした事務的な記載漏れとか、これ、数人でやっているようであり、そうした関係者から聞いたところ、そういう内容だった。ですから今後二度と再びこうしたことが起きることがないように、チェック体制というのも今のままでいいとは思っていない」
NHK 2020年1月10日 12時59分桜を見る会
桜を見る会「招待者名簿不記載は公文書管理法違反」官房長官
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20200110/k10012241161000.html
「桜を見る会」の招待者名簿をめぐり、菅官房長官は記者会見で、平成25年から5年分の名簿を行政文書の管理簿に記載していなかったのは公文書管理法違反などにあたるという認識を示したうえで、再発を防止するためチェック態勢を強化する考えを示しました。
「桜を見る会」の招待者名簿をめぐり、菅官房長官は9日、平成25年から5年分は、公文書管理法で義務づけられている行政文書の管理簿への記載を行っていなかったことを明らかにしました。
これについて菅官房長官は記者会見で、改めて事実関係を詳細に確認したところ、今回の管理簿への不記載は公文書管理法と内閣府の文書管理規則に違反していたという認識を示しました。
そのうえで「内閣府の担当者は文書管理への対応意識が少なかったのではないか。二度とこうしたことを犯さないよう、しっかりと内部で注意などを行っているところだ。チェック態勢も今のままでいいとは思っていない」と述べ、文書管理のチェック態勢を強化する考えを示しました。
日本経済新聞 2020/1/10 12:44
名簿不記載は法令違反 官房長官、桜を見る会めぐり
http://nikkei.com/article/DGXMZO54251690Q0A110C2EA3000/
菅義偉官房長官は10日の閣議後の記者会見で、首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿の管理について「公文書管理法の規定、文書管理規則に違反する対応だった」との認識を示した。内閣府は同法の規定に反し、名簿を文書リストの「行政文書ファイル管理簿」に記載していなかった。
公文書管理法は保存期間1年以上の行政文書に関し、文書ファイルの名称や保存期間を管理簿に記載するよう義務付けている。菅氏は「事務的な記載漏れだ」と説明した。「チェック体制も今のままでいいとは思っていない」と再発防止に取り組む考えを示した。
菅氏は9日の会見で、2013~17年の名簿は管理簿に記載がなかったと明らかにしていた。5年分の名簿は同法の運用指針で定める廃棄記録も残していなかった。
朝日新聞デジタル2020年1月10日 5時00分
桜を見る会、管理記録も無し 招待者名簿5年分 法令違反か
http://digital.asahi.com/articles/DA3S14321753.html
公文書管理ルールと異なる桜を見る会の招待者名簿の取り扱い
菅義偉官房長官は9日の記者会見で「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿について、公文書管理法が義務づける行政文書の管理簿への記載を行っていなかったことを明らかにした。名簿は廃棄簿への記載がなかったことも判明しており、ルールを逸脱した管理の実態が改めて浮き彫りになった。
公文書管理法は、保存期間が1年以上の公文書について、名称や保存期間、保存期間が過ぎた後の取り扱いなどを「行政文書ファイル管理簿」に記載しなければならないと定める。管理簿にまとめられた文書のリストは公表され、この管理簿を用いて情報公開請求も行うことができる。
菅氏は会見で「内閣府によれば、当時の担当者の記憶によって、13~17年の名簿は管理簿に記載がなかったということだ」と説明。「内閣府に文書管理の徹底を指示した」とした。
記者団は「法令違反ではないか」などと重ねてただしたが、菅氏は「内閣府の文書管理規則に沿った対応がなされていなかった」などと繰り返し、法令に触れるかどうかの言及を避けた。菅氏が「詳細は内閣府に聞いてほしい」としたため、朝日新聞は内閣府に名簿管理の運用実態などを尋ねたが、9日夜までに回答はなかった。
この5年分の招待者名簿をめぐっては、公文書管理に関する政府のガイドラインが定める廃棄記録がなかったことが分かっている。公文書管理法施行とガイドライン策定は、第2次安倍政権が発足する前年の11年4月。菅氏は招待者名簿について「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」と強調するが、ずさんな管理の実態が相次いで明るみに出ており、公文書管理の専門家から政府の対応を疑問視する声が上がる。
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「公文書管理法に基づく管理がなされていなかったことは明らか」と、「名簿の保存は1年だとされているが、証拠がない以上、本当にそのように管理されていたのかは分からない」と話す。
また、13~17年度の名簿すべてが不記載だったことについて「単純ミスであるならば不自然だ」と指摘。「桜を見る会の名簿ということで意図的に記載しなかったのではないかとの印象すら受ける」と語った。(安倍龍太郎、菊地直己)
毎日新聞2020年1月9日 19時30分(最終更新 1月9日 20時45分)
「桜を見る会」招待者名簿 13年度から「行政文書で管理せず」の疑い 管理簿に不記載
http://mainichi.jp/articles/20200109/k00/00m/010/199000c
首相主催の「桜を見る会」を巡り、菅義偉官房長官は9日の記者会見で、2017年度まで5年間の招待者名簿について「内閣府の当時の担当者の記憶では、行政文書ファイル管理簿に記載がなかった」と述べた。内閣府は従来、17年度までの招待者名簿は「保存期間1年の行政文書」だと説明していたが、実際には公文書管理法上の義務である管理簿への記載を怠り、当初から行政文書として管理していなかった疑いが浮上した。
公文書管理法7条は、保存期間が1年以上の行政文書について、文書ファイルの名称や保存期間などを管理簿に記載するよう行政機関の長(内閣府は首相)に義務づけている。各府省は、公文書管理に関するルールを定めた政府のガイドラインに基づき、具体的な管理方法を文書管理規則で定めている。
菅氏は9日の会見で「管理簿に記載すべきものが記載されていなかった。内閣府の文書管理規則に沿った対応がされておらず、内閣府に文書管理の徹底を指示した」と述べた。
これまで内閣府は招待者名簿の保存期間について、17年度までは「1年」、18年度以降は管理簿への記載義務がない「1年未満」に設定していたと説明。安倍晋三首相や自民党の推薦による招待者数が増加した推移などについて、「既に名簿を廃棄したため分からない」などとしていた。
ところが、17年度までの名簿について、ガイドライン上の義務である廃棄記録を残していなかったことに続き、そもそも管理簿にも記載していなかったことが判明した。保管や廃棄の状況を裏付けられない事態になっている。
菅氏は管理簿への不記載の理由について「内閣府に聞いてほしい」と説明。内閣府は「現時点では詳細は不明」としている。【秋山信一】
朝日新聞デジタル2020年1月8日 5時00分
桜を見る会、廃棄記録なし 名簿5年分、指針違反
http://digital.asahi.com/articles/DA3S14319180.html
菅義偉官房長官は7日の記者会見で、内閣府が「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の廃棄記録を残していないことを明らかにした。政府のガイドラインに違反するだけでなく、繰り返し主張してきた「廃棄した」ことを裏付ける証拠文書すら残していないことになる。
公文書管理に関する政府のガイドラインでは、ファイル名や廃棄日の記録を義務づけているが、菅氏は「残すべきものが残されていなかったということは事実だ」として、記録がないことを認めた。「当時の担当者の記憶が鮮明でなく、経緯については分からないということだ」と説明。「(結果的に)記載ミスがあった」と話した。
菅氏はこれまで、招待者名簿は「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」と繰り返し、「廃棄済み」との説明を続けていた。記者団は「名簿が存在する可能性がある」として再調査の意向を尋ねたが、菅氏は「『廃棄した』というのであればないと思っている」と述べ、再調査は行わない考えを示した。
公文書管理法施行とガイドライン策定は11年4月。内閣府によると、17年度までの招待者名簿の保存期間は1年、18年度から1年未満となっており、担当者は「第2次安倍政権以降の招待者名簿はすべて廃棄済み」と説明している。
「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、保存期間満了後の行政文書を廃棄する際に首相の同意を必要とする公文書管理法第8条に抵触する可能性があると指摘。「廃棄簿への記載がないということは、義務づけられている廃棄の審査を経ていなかったとしか思えない」と語っている。(安倍龍太郎)
毎日新聞2019年12月29日 18時08分(最終更新 12月29日 19時26分)
「桜」招待者名簿の廃棄記録なし 内閣府 政府ガイドライン違反
http://mainichi.jp/articles/20191229/k00/00m/010/085000c
首相主催で毎年春に開かれてきた「桜を見る会」を巡り、2017年度まで5年間の招待者名簿や各省庁への招待者の推薦依頼文書の廃棄記録を内閣府が残していなかったことが判明した。公文書管理のルールを定めた政府のガイドラインは、文書廃棄時に行政文書ファイル名や廃棄日などを廃棄簿に記載することを義務づけているが、内閣府はガイドライン違反を認めた。記録を残していないため、実際に廃棄されたのか裏付けられない状況になっている。
内閣府は、19年度の招待者名簿について野党議員から資料要求のあった直後に廃棄していたが、過去の名簿を巡っても文書管理の不備が明らかになった。
公文書管理法施行とガイドライン策定は11年4月。一方、桜を見る会は東日本大震災直後だった11年度と、北朝鮮のミサイル発射を警戒していた12年度は中止。第2次安倍政権発足後の13年度以降は毎年開催している。
内閣府によると、17年度までの招待者名簿は保存期間が「1年」と設定されていた。公文書管理法に基づくと、保存期間1年以上の行政文書は名称や作成者、保存期間、保存場所などを「行政文書ファイル管理簿」に登録する。保存期間満了後は国立公文書館などへの移管か、廃棄の手続きがとられる。その際、文書管理者(通常は課室長)が、文書ファイル名や移管または廃棄の日付を移管簿や廃棄簿に記載する。
内閣府人事課は「過去の招待者名簿などは既に廃棄した」と説明しているが、毎日新聞が13~17年度の「桜を見る会」の文書について内閣府に確認したところ、廃棄簿への記載がなかった。
内閣府人事課の担当者は、廃棄記録がないことについて、「結果的にガイドラインに沿わない形になっている」と違反を認めた。その上で、「記録がない理由は不明だ。13~17年度の招待者名簿を作成した際、行政文書ファイル管理簿に登録したかどうかも不明だが、現在の管理簿には登録はなく、既に廃棄したと判断している」としている。
17年12月のガイドライン改正で保存期間「1年未満」の基準が明確化されたことを受けて、内閣府は18年4月、「大量の個人情報を適切に管理する必要がある」などとして招待者名簿の保存期間を「1年未満」に変更。18年度以降の分は制度上、管理簿や廃棄簿に記載する必要がなくなった。
「桜を見る会」を巡っては、安倍晋三首相や自民党の推薦による招待者数の増大や招待の根拠▽マルチ商法を展開して経営破綻した「ジャパンライフ」元会長の招待の経緯▽反社会的勢力の招待の有無――など疑問点がいくつも残っている。しかし、政府は、こうした情報を確認できる招待者名簿が既に廃棄されたことを理由に、調査や確認を拒んでいる。過去の招待者名簿の廃棄を裏付ける文書がないことが発覚したことで、野党側はさらに追及を強めるとみられる。【秋山信一】
*************************************
朝日新聞デジタル2020年1月10日 19時47分
木村草太氏 桜を見る会は「公文書隠蔽・廃棄問題」に
http://digital.asahi.com/articles/ASN1B6D21N1BUTFK01K.html
木村草太氏
菅義偉官房長官が10日午前の閣議後会見で、「桜を見る会」の2013~17年度の5年分の招待者名簿の管理・廃棄について、公文書管理法が義務づける手続きをとっておらず、同法違反にあたることを認めた。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は政府の対応について、憲法が保障する「知る権利」を侵害するものだと指摘する。
◇
国民には、政府のやっていることを評価し、検証する権利がある。しかし、基本的な公文書が残っていなければ、国民は政府を評価できない。桜を見る会のあり方に問題があろうとなかろうと、招待者名簿などを残していないとする政府の対応は、公文書管理法違反というだけでなく、憲法が保障する「知る権利」の侵害ではないか。
桜を見る会をめぐっては、招待基準にある「功績、功労」に関係なく、安倍晋三首相の事務所の関係者などが優先的に招かれていた疑いがある。これが事実なら、憲法14条の定める平等原則に違反することは明らかだが、公文書が公開されないため、国民が違憲性・違法性を判断できない状況が続く。
国民の評価の前提となる名簿などを保存・公開せず、しかも違法に廃棄していた安倍内閣の責任は大きく、担当大臣や官僚の処分が当然必要だ。しかし、菅義偉官房長官は10日の記者会見で、名簿の管理・廃棄について公文書管理法に違反すると認める一方で、関係者の処分には言及しなかった。
「処分は不要。そこまで大きな責任を伴う問題だとは認識していない」というなら、その判断を明言し、国民の評価を仰ぐべきだ。国会や記者の追及を受けるまでもなく、政府自ら処分すべき事案であり、菅氏が会見で処分に言及しなかった以上、事の重大性を認識していないと批判されても仕方ない。桜を見る会問題は「公文書隠蔽(いんぺい)・廃棄問題」の様相を帯びてきた。
毎日新聞2020年1月5日 18時23分(最終更新 1月5日 18時42分)
「桜を見る会」考
「桜を見る会」は「憲法違反」 木村草太氏指摘 「平等、知る権利阻害」
http://mainichi.jp/articles/20200105/k00/00m/010/150000c
インタビューに答える首都大学東京の木村草太教授=東京都八王子市で、江畑佳明撮影
安倍晋三首相の「桜を見る会」には「公的行事の私物化」「公選法違反ではないか」など、多岐にわたる批判が相次いでいる。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「法の下の平等や、国民の知る権利を阻害しており、憲法違反の疑いがあります」と訴える。その真意を尋ねた。【江畑佳明/統合デジタル取材センター】
招待のあり方は「国民を二分し不平等」
――憲法の観点からは何が問題でしょうか。
◆まず、桜を見る会に誰をどう招待したか、について考えたいと思います。憲法14条1項はこう定めています。
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない」
桜を見る会に招待されるのは「功績、功労があった人」だというのが政府のこれまでの説明です。しかし、実際にはこの説明にそぐわないような、安倍事務所の後援会の人たちを数多く招待したとみられています。もし、それが事実なら、政府が国民を「功績と関係なく招待された人」と「招待されない人」に二分したことになります。これは、政府が合理的な理由がないままに、国民を不平等に扱い、差別した事案です。平等権侵害の典型例でしょう。仮に、招待されなかった人が「平等権の侵害だ」と訴訟を提起したら、政府は、どのような根拠で「平等だった」と反論すればよいのか。訴訟の担当者は、困ってしまうでしょう。
――政府が訴えられたら、勝訴できますか?
◆政府が負けてしまうと、(差別を受けた)被害者数も被害額も膨大になるので、裁判所は、なんとか政府が勝訴するような知恵をひねり出すでしょう。例えば、「招待されなかったからといって、賠償を求めることができるほどの損害は受けていない」などと言うのではないでしょうか。ただ、これは、政府の招待者の選抜が妥当だったという内容ではありません。そもそも、招待者の名簿や選抜の具体的基準や議事録がないわけで、裁判所としても「招待客の選抜に何ら問題はなかった」という判決は書きようがないでしょう。
参加者氏名「公開しても違憲・違法ではない」
――政府は招待者の氏名について、「個人情報だから非公開」という説明をしていますが、違和感を覚えます。
◆招待はされたけれども当日出席しなかった人まで氏名を公表するのは問題です。というのは、時々、叙勲を受章しない人がいるように、一般には名誉だと思われることでも、本人が不名誉に感じる場合があります。出席しなかった人は招待されたことを快く思っていないかもしれない。招待された事実を公にしたくない人の氏名は、公開すべきではありません。
これに対し、当日出席した人は、政府に称賛されたことを受け入れた人ですよね。だから氏名はプライバシー権で保護される情報には当たらないと考えるのが一般です。当日出席した人たちの氏名は、公開しても違憲・違法ではないでしょう。そもそも、当日の様子は報道機関のカメラが入って、官邸のホームページでも様子を公開しています。もし政府の主張通り、出席者が誰かということが、プライバシー権で守らなければならない個人情報であるならば、カメラなど入れてはいけないわけです。例えば、DV被害者を守るためのシェルターに報道機関がカメラを使って取材をしようと思ったら、利用者が誰かわからないように顔が見えないようにするなどの配慮をしますよね。政府は桜を見る会の出席者の情報を、シェルターの利用者と同じように扱っていることになります。これは明らかにおかしい。桜を見る会の会場は、報道のカメラが入るなど半ば公の場となっているため、参加者の氏名は当然公開されていい情報です。参加者は会場に来た時点で氏名の公開に同意した、とみなしていいと思います。
名簿の廃棄で「政府の信用が詐欺に使われても事実確認できない」
――「プライバシー権」と「個人情報」はよく似ているように思いますが、違いはあるのでしょうか。
◆はい。プライバシー権は、「個人情報コントロール権」であり、これには自らの個人情報をみだりに公表されない権利が含まれているとされます。ただし、①公共の利害に関する真実である場合と、②本人が同意した場合には、個人情報の公開も許されるとされます。
政府が誰の功績・功労を認めたのかは、公共利害に関連する事実です。また、桜を見る会への出席は、出席の事実を公に知られてもよいという同意だと理解できるでしょう。ですから、桜を見る会の出席者名簿は、①②いずれにも当たります。
――内閣府は招待者名簿を「保存期間1年未満の文書」として廃棄したと説明しています。
◆これも大きな問題だと考えます。マルチ商法などで多くの被害が出た「ジャパンライフ」の元会長が招待されていたのではと報道されていますが、なにもこれは「ジャパンライフ」に限った話ではないはずです。他にも「ウチの社長は桜を見る会に招待されたんですよ」と宣伝する会社があってもおかしくありません。その会社と商談を進めたり契約を検討したりしている場合、この情報の正誤を確認する必要が出てきます。ですが政府が名簿を廃棄したとなると、事実確認のしようがない。政府の信用が詐欺に使われる可能性があり、名簿の廃棄はこの点でも大きな問題点をはらんでいます。
「当然公開されるべき事実を隠したことは国民への裏切り」
――政府は2020年の「桜を見る会」の中止を決めましたが、名簿などが廃棄されてしまえば検証や改善のしようがないですね。
◆その通りです。この桜の見る会の最大の問題は、国民の政府を評価する権利と、その前提になる「知る権利」が侵害されている点です。当然公開されるべき事実を隠したことは、国民への裏切りです。今回、私たち国民は「主権者は国民であり、政府を評価するのは自分たちだ」という考えをもっと強く持つべきだと思うのです。
――菅義偉官房長官は記者会見でよく「適切に処理しています」と言っています。
◆政府の行為が「適切かどうか」を判断するのは国民です。しかし、国民の評価を受ける立場の政府が、勝手に自己評価して「適切だ」と言っているわけです。これは、国民主権の原理の否定です。私たちの憲法の根幹にある価値を否定しているのです。国民をバカにしているといってもいい。
例えば、試験の際に答案用紙を提出しなかったら、自動的に「0点」で不合格になりますよね。提出すれば、むちゃくちゃな内容でも、10点とか20点はつくかもしれない。答案を提出しないことは、むちゃくちゃな答案を出すよりもひどいことなのです。今の政府もこれと同じです。招待者の情報を出したくない事情があるのかもしれませんが、全く出さなければ国民は0点と評価すべきです。「実はこういう中身でした」と公開(答案を提出)すれば、国民の評価(試験の点数)は、不合格かもしれないけど、もしかしたらぎりぎりセーフの評価をしてもらえる可能性も残されています。とにかく、きちんと公開して、国民の審判を仰がねばなりません。だから政府は「データの復元などの手を尽くしました。内容や結果を判断するのは国民のみなさんです」というメッセージを出すべきです。
――ツイッターなどでは「もっとほかに議論すべきことがある」という批判もあります。
◆今、政府が出している情報だけでは、これが大問題なのか、取るに足らない問題なのかも判断できません。そういう批判をする人は、「名簿の中身がどんな内容でも安倍政権を支持する」という方々なのでしょう。それはそれで一つの政治的立場ですが、であるなら、「どんな内容でも支持する。だから公開すべきだ」と主張するのが筋ではないでしょうか。
それから、招待者は「功績、功労のあった人」ということですが、じゃあどんな功績を判断するために何を基準にしているのか、さらにどういう選定手続きを踏んだのか、の公開も必要です。もし内閣府が「安倍後援会の希望者全員」という基準で選んだのなら、そういう基準でしたと、明らかにすべきだと思います。それをどう評価するか。判断するのは国民です。
きむら・そうた
1980年生まれ。東京大法卒。同大助手、首都大東京准教授を経て、現職。専門は憲法。著書は「憲法の条件」(NHK出版新書)、「自衛隊と憲法」(晶文社)など多数。毎日小学生新聞にコラム「ほとんど憲法」を連載中。趣味は将棋観戦。
///////////////////////////////////////////////////////////////////////
- 関連記事
テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済