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2020-01-14(Tue)

ホームドアない駅 また悲劇 白杖の男性がホーム転落 はねられ死亡

鉄道の「安全施設」と位置づけ 更なる整備というが・・ 「設置格差」の現実

東京新聞 2020年1月12日 朝刊
ホームドアない駅 また悲劇 白杖男性転落 ひかれ死亡 JR日暮里駅
----十一日午前零時五十分ごろ、東京都荒川区のJR日暮里駅のホームで白杖(はくじょう)をついて歩いていた視覚障害のある会社員森政和さん(53)=足立区舎人一=が線路に転落し、京浜東北線の大船発赤羽行き最終電車(十両編成)にひかれて死亡した。
----視覚障害者がホームから転落する事故は後を絶たない。鉄道各社は駅の利用客数などを考慮してホームドアを順次設置しており、未設置のままのホームで悲劇が繰り返されている。
 国土交通省によると二〇一〇~一七年度に視覚障害者がホームから転落したトラブルは六百五件あり、列車に接触して十人が死亡している。
----JR東は三二年度末ごろまでに、東京圏の在来線の主要路線全ての二百四十三駅にホームドアを整備する計画。都内で山手線は大規模改修の必要な新宿、渋谷駅などを除く大半の駅に設置されたが、京浜東北線は日暮里や鶯谷(うぐいすだに)、田端、上中里駅などは設置されていない。


朝日新聞デジタル2020年1月11日 9時58分
白杖の男性がホーム転落、電車にはねられ死亡 日暮里駅
----JR東日本は2032年度末までに首都圏の主要全330駅にホームドアを整備する方針で、京浜東北・根岸線は大宮―桜木町駅間37駅のうち23駅の整備を終えている。日暮里駅は山手線ホームには設置済みだったが、京浜東北線ホームは今夏の東京五輪・パラリンピック以降に整備される予定だったという。
 国土交通省のまとめでは、駅のホームからの転落事故は10年度以降、毎年約2800~3600件で推移し、このうち視覚障害者は58~94件あった。国交省は乗降客が1日3千人以上の駅にホームドアや点字ブロックを設置するよう呼びかけており、昨年3月末時点でホームドアは全国783駅に設置されている。


ダイヤモンドオンライン 2020.1.7 5:00
駅のホームドア「設置格差」の現実、鉄道の安全もカネ次第!?
----東京都心では設置されている駅を見かける機会も多くなった「ホームドア」だが、全国に目を向けて見ると、思うように導入が進んでいない事業者も少なくない。こうした「設置格差」が生じる原因はどこにあるのだろうか。
金持ち鉄道は導入進むが… 事業者に広がる「安全格差」
ホームドア設置は売上高が増えるような効果のない設備投資。儲けが少ない鉄道事業者には辛い投資である



国土交通省鉄道局の20年度予算案 ホームドアの更なる整備推進
※ 「安心・安全の確保」「全ての利用者の安全性を図るための施設」と位置づけ


191220鉄道局予算 ホームドア 鉄道安全施設と位置づけ




以下参考

東京新聞 2020年1月14日 朝刊
「ホームドア 設置急いで」 JR日暮里駅 視覚障害者団体が確認
http://tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK2020011402000105.html

JR日暮里駅の京浜東北線ホームで現状を確認する東京視覚障害者協会のメンバーら=13日、東京都荒川区で
 白杖(はくじょう)を持った視覚障害のある男性(53)が十一日未明にJR日暮里駅(東京都荒川区)のホームから転落し、京浜東北線の電車にひかれて死亡した事故を受けて、視覚障害者でつくる「東京視覚障害者協会」の会員ら十人が十三日、ホームの現状を確認した。改めてホームドアの早期設置を求める声が相次いだ。
 ホームは並走する山手線側にはホームドアがあるが、京浜東北線側は未設置。会員らは白杖を手にホームを歩き、点字ブロックや階段の位置、歩きやすさを確認した。山城完治さん(63)は「日暮里駅は利用者が多いが、ホームの階段の脇を歩こうとすると、一人分の横幅しかない。狭いので『線路に転落するのでは』という恐怖感につながる。通過する快速電車の音も怖い」と課題を挙げた。
 稲垣実会長(66)は「視覚障害者をホームで案内する人を確保し、危険度の高い駅から早くホームドアを設置するようJRに訴えたい」と話した。参加者からは「『京浜東北線のホームにはホームドアがありません』という音声案内が流れていたが、こういう案内があると助かる」といった声も聞かれた。
 今回の事故を受け、JR東日本は利用者に転落防止を注意喚起するために、京浜東北線のホームの端に赤色のラインを引いている最中。京浜東北線側のホームドアは、二〇二〇年度夏から三二年度ごろまでの間に設置する予定になっている。 (松尾博史)


しんぶん赤旗 2020年1月14日(火)
きょうの潮流
http://jcp.or.jp/akahata/aik19/2020-01-14/2020011401_06_0.html
 「2020年オリンピック・パラリンピックに向けてより高い水準のバリアフリー化を推進してまいります」(国土交通省)の宣伝文句がむなしく響きます。11日未明、東京・JR日暮里駅で、視覚障害者がホームから転落、京浜東北線の電車にはねられ亡くなりました▼「日暮里駅は、都内の駅の中で最も歩きにくい駅の一つ」。視覚障害があり、駅ホームの点検を精力的にすすめる山城完治さんは悔しげに語ります▼東京視覚障害者協議会によると、この25年間で、駅ホームから転落した視覚障害者の重傷死亡事故は少なくとも69件。9年前、山手線目白駅で転落死した武井視良(みよし)さんの事故後、国土交通省はホームドア整備の音頭を取ってきました。が、この間転落死事故はほぼ倍増に▼視覚障害者の2人に1人は駅ホームからの転落を経験。全盲の場合は、3人に2人。仕事などで毎日駅を利用する人の場合、9割もの人が経験しているという衝撃の調査結果が。視覚障害者の間では「ホームから落ちてはじめて一人前の視覚障害者になれる」との、笑えないブラックジョークも▼日暮里駅のホームは、片側に京浜東北線が、反対側に山手線が並走。山手線側だけにホームドアを設置していました。「ホームの片側だけは危険。両側に設置を」。山城さんらが要望していたことです▼JR東日本が正面から受け止め実行していれば防げた事故でした。「欄干のない橋」と呼ばれる駅ホームの解消を一日も早く―。視覚障害者の切なるねがいです。


東京新聞 2020年1月12日 朝刊
ホームドアない駅 また悲劇 白杖男性転落 ひかれ死亡 JR日暮里駅
http://tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK2020011202000127.html
 十一日午前零時五十分ごろ、東京都荒川区のJR日暮里駅のホームで白杖(はくじょう)をついて歩いていた視覚障害のある会社員森政和さん(53)=足立区舎人一=が線路に転落し、京浜東北線の大船発赤羽行き最終電車(十両編成)にひかれて死亡した。
 警視庁荒川署によると、森さんは改札につながる階段脇の幅一~一・五メートルほどの場所から転落した。現場に点字ブロックはあったが、ホームドアはなかった。電車の運転士は「線路に落下している人を見つけてブレーキをかけたが、間に合わなかった」と話しているという。
 同じホームで向かい側の山手線はホームドアが設置されていた。JR東日本によると、京浜東北線側は二〇二〇年度以降にホームドアを設置する予定という。
     ◇
 視覚障害者がホームから転落する事故は後を絶たない。鉄道各社は駅の利用客数などを考慮してホームドアを順次設置しており、未設置のままのホームで悲劇が繰り返されている。
 国土交通省によると二〇一〇~一七年度に視覚障害者がホームから転落したトラブルは六百五件あり、列車に接触して十人が死亡している。昨年十月には葛飾区の京成押上線京成立石駅で視覚障害のある女性=当時(66)=が転落し、列車と接触して死亡した。
 この事故の後、東京都盲人福祉協会は同駅を点検し、早期のホームドア設置などを要望してきた。同会の笹川吉彦会長(86)=新宿区=は「駅によってホームドアの設置がバラバラな現状があり、急いで付けてもらいたい」と訴える。
 今回、事故が起きたJR京浜東北線でも視覚障害者が命を落としている。一七年一月に埼玉県蕨市の蕨駅で盲導犬を連れた視覚障害のある男性=当時(63)=がホームから足を踏み外して線路に転落、列車にはねられて死亡している。
 JR東は三二年度末ごろまでに、東京圏の在来線の主要路線全ての二百四十三駅にホームドアを整備する計画。都内で山手線は大規模改修の必要な新宿、渋谷駅などを除く大半の駅に設置されたが、京浜東北線は日暮里や鶯谷(うぐいすだに)、田端、上中里駅などは設置されていない。 (土門哲雄、天田優里)


朝日新聞デジタル2020年1月11日 9時58分
白杖の男性がホーム転落、電車にはねられ死亡 日暮里駅
http://digital.asahi.com/articles/ASN1C30Z5N1CUTIL002.html
警視庁本部
 11日午前0時50分ごろ、東京都荒川区のJR日暮里駅で、東京都足立区の会社員森政和さん(53)がホームから転落し、JR京浜東北線大船発赤羽行きの最終電車(10両編成)にはねられて死亡した。森さんは視覚障害があり、白杖(はくじょう)を持っていたという。警視庁は誤って転落したとみて調べている。
 荒川署によると、森さんが白杖を使いながらホームを1人で歩き、足を踏み外して転落する姿が目撃されていた。現場は階段の脇で通路の幅が狭くなっていた。点字ブロックはあったが、ホームドアは設置されていなかったという。
 JR東日本は2032年度末までに首都圏の主要全330駅にホームドアを整備する方針で、京浜東北・根岸線は大宮―桜木町駅間37駅のうち23駅の整備を終えている。日暮里駅は山手線ホームには設置済みだったが、京浜東北線ホームは今夏の東京五輪・パラリンピック以降に整備される予定だったという。
 国土交通省のまとめでは、駅のホームからの転落事故は10年度以降、毎年約2800~3600件で推移し、このうち視覚障害者は58~94件あった。国交省は乗降客が1日3千人以上の駅にホームドアや点字ブロックを設置するよう呼びかけており、昨年3月末時点でホームドアは全国783駅に設置されている。(関口佳世子、細沢礼輝)


東京新聞 2020年1月11日 夕刊
ホームドア設置 間に合わず 京浜東北線 新年度以降に予定
http://tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK2020011102000254.html
 視覚障害者が駅のホームから転落する事故が相次ぐ中、十一日未明には東京都荒川区のJR日暮里駅で白杖(はくじょう)を持った男性が転落し、電車にひかれて死亡した。事故を防ぐためホームドアの設置が各駅で進められているが、利用客数などを考慮して順次設置しており、日暮里駅では路線によってホームドアの有無が分かれていた。 (土門哲雄、天田優里)
 警視庁荒川署によると、足立区舎人一の会社員森政和さん(53)は十一日午前零時五十分ごろ、日暮里駅の京浜東北線ホームから転落し、電車にひかれて死亡した。ホームドアはなかったが、すぐ向かい側の山手線はホームドアが設置されていた。
 JR東日本は京浜東北線側のホームドアを「二〇二〇年度第二・四半期ごろ以降の整備予定」としており、結果的に設置が間に合わず、事故が起きた形となった。
 国土交通省によると、二〇一〇~一七年度に視覚障害者が駅のホームから転落したトラブルは六百五件あり、列車に接触して十人が死亡した。一六年八月、東京メトロ銀座線青山一丁目駅で、盲導犬を連れていた視覚障害者の男性=当時(55)=がホームから転落し死亡した事故を受け、国交省が検討会を設置。利用者が一日十万人以上の駅に優先的にホームドアを設置することなどを促している。
 JR東は三二年度末ごろまでに、東京圏の在来線の主要路線全ての二百四十三駅にホームドアを整備する計画。山手線は大規模改修の必要な新宿、渋谷駅などを除く大半の駅に設置されたが、京浜東北線は日暮里や鶯谷(うぐいすだに)、田端、上中里駅などでまだ設置されていない。JR東の広報担当者は「乗降客数や駅の構造などを考慮しながら、順次設置を進めている」としている。
 昨年十月には葛飾区の京成押上線京成立石駅で、視覚障害者の女性(66)=荒川区=がホームから転落。女性はよじ登ろうとしたが、駅に入ってきた電車とホームに挟まれ死亡した。
 東京都盲人福祉協会は事故後に同駅を点検し、早期のホームドア設置や不備のある点字ブロックの改修を要望してきた。協会の笹川吉彦会長(86)=新宿区=は「視覚障害者にとって見知らぬ場所での一人歩きは氷の上を歩くようなもの」と指摘。「駅によってホームドアの設置がバラバラな現状があり、急いで付けてもらいたい」と訴えている。


毎日新聞2020年1月11日 東京夕刊
白杖男性、駅で転落死 ホームドアなし 東京・JR日暮里
http://mainichi.jp/articles/20200111/dde/041/040/028000c
 11日午前0時55分ごろ、東京都荒川区のJR日暮里駅で、足立区舎人(とねり)1の会社員、森政和さん(53)がホームに転落し、京浜東北線大船発赤羽行き普通最終電車(10両編成)にはねられて死亡した。森さんは視覚障害者で、警視庁荒川署は誤って転落したとみている。
 同署によると、日暮里駅はホームの両側を電車が通過する構造で、森さんは白杖(はくじょう)を持ち改札階への階段と線路の間を1人で歩いていて転落したらしい。運転士がブレーキをかけたが間に合わなかったという。
 JR東日本東京支社によると、このホームの山手線側はホームドアが設置されていたが、京浜東北線側は未設置だった。駅員に対し、視覚障害者らには声かけや介添えをするよう指導しているが、駅員は事故が起こるまで森さんに気付かなかったという。【金森崇之】


NHK 2020年1月11日 11時47分
視覚障害者が電車にはねられ死亡 誤ってホームから転落か
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20200111/k10012242391000.html
東京のJR日暮里駅で11日未明、目の不自由な男性がホームから転落し、最終電車にはねられて死亡しました。ホームドアは設置されていませんでした。
11日午前1時前、東京 荒川区のJR日暮里駅で東京 足立区の会社員、森政和さん(53)がホームから転落し、京浜東北線の最終電車にはねられて死亡しました。
 警視庁によりますと、森さんは目が不自由で、事故の直前、白いつえをついてホームを1人で歩いていたということです。
 転落した場所は階段があるため、幅約1.5メートルと、ほかの場所より狭くなっていたということで、警視庁は森さんが誤って転落したとみて、詳しい状況を調べています。
 JR東日本によりますと、現場に点字ブロックはありましたが、ホームドアはこの夏以降に工事が予定されているものの、まだ設置されていませんでした。

*****************************************
ダイヤモンドオンライン 2020.1.7 5:00
駅のホームドア「設置格差」の現実、鉄道の安全もカネ次第!?
https://diamond.jp/articles/-/225141
西上いつき:鉄道アナリスト・IY Railroad Consulting代表
東京都心では設置されている駅を見かける機会も多くなった「ホームドア」だが、全国に目を向けて見ると、思うように導入が進んでいない事業者も少なくない。こうした「設置格差」が生じる原因はどこにあるのだろうか。(鉄道アナリスト 西上いつき)
金持ち鉄道は導入進むが… 事業者に広がる「安全格差」

ホームドア設置は売上高が増えるような効果のない設備投資。儲けが少ない鉄道事業者には辛い投資である Photo:PIXTA
 今年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、鉄道駅のバリアフリー化も加速している。東京都心ではホームドアが設置されている駅を見かける機会も多くなった。
 首都圏の鉄道事業者で、特にハイペースで設置を進めているのが東京メトロと東急電鉄だ。東京メトロでは現在、全駅の約7割ほどに設置済み、各線での設置計画の前倒しを掲げている。東急も2020年目標だった全駅設置予定を前倒しし、今年度中に世田谷線を除く全駅に設置することを掲げている。
 ほかの首都圏の大手私鉄やJRも、この2社ほどハイペースではないものの、着実にホームドア導入を進めている。だが、全国に目を向けて見ると、思うように導入が進んでいない事業者も少なくない。国は、乗降客数10万人以上の駅にホームドアを導入すると目標を掲げているが、多くの駅ではいまだ設置に至っておらず、基準以下の駅に関してはさらに低い設置状況だ。
 ホームドアの設置には1駅あたり億単位の金額がかかるともされており、国が3分の1、自治体が3分の1を上限として補助することになっている。とはいえ、実体としては鉄道事業者側が多く負担しなければならないこともあり、コストは極めて大きい。特に駅数が多い沿線を抱えていたり、財政状況が芳しくなかったりする事業者には耳の痛い話となっている。
次のページ 全国的には思うように導入が進まず
 言わずもがなだが、ホームドアの安全における効力というのは極めて高いものであり、設置以降、転落事故が大幅に減少しているという結果も出ている。本来であれば、どの事業者も真っ先に導入したほうがいいのだろうが、事業者ごとの設置状況に格差が少しずつ生まれてきている。
 特に、資金力の違いは大きな影響を及ぼす。2019年度の鉄道事業の設備投資計画は、首都圏私鉄各社ほとんどが増加傾向にあり、来る東京オリンピック・パラリンピックに向け、ホームドアを含む安全対策にも多大な投資がなされている。これらの資金力を持つ事業者は、強固な安全をものにしていく。一方、全国に多数存在する、中小私鉄をはじめとする資金力が乏しい鉄道では、それがかなわないのだ。
 通常の企業では、設備投資をして作った資産で商品を生産し、売り上げを増やす。しかし、駅にホームドアを設置したからといって、目先の収益には直結しない。安全のための投資は、将来的な信頼を受けることにつながるかもしれないが、数値では効果が測りにくい。また、導入後のメンテナンス費用は、基本的には事業者が持つ。体力の乏しい鉄道事業者にとって、売り上げ増につながりにくい巨額設備投資は、なかなかハードルが高いものなのだ。
事業者間の意識レベルの差も
 ただし、資金面の問題だけではなく、そもそもの意識レベルが低い場合もある。昨年10月1日、京成電鉄の京成立石駅で、視覚障害者の女性がホームから線路に転落、電車にはねられて死亡するという事故が発生した。同駅はもともと、視覚障害者福祉協会から長年にわたり点字ブロックの改善を求められていたにもかかわらず、対応が間に合わなかった。同駅は再開発を控えている事情があり、高額なホームドアの導入に躊躇するのも理解できなくもないが、このケースはそれ以前の問題ともいえる。民間企業である鉄道会社であるがゆえ、事業者ごとに安全に対する考え方の格差が生まれてしまっているのだ。
次のページ 足並みをそろえることは難しい
 事業者側の考え方もさることながら、自治体ごとの安全への考えが異なれば、事はそう簡単に進まない。先述のとおり自治体は3分の1の補助をするはずだが、それ以前に、自治体ごとに資金力に差があることも大きな問題だ。各市町村をまたいで沿線が敷かれているわけで、ある路線で一斉にホームドアを整備しようとすれば、沿線自治体の足並みをそろえることは容易ではない。
 東急は、財政事情で費用を捻出できない自治体の分まで負担するという体制で早期のホームドア整備を実現したが、地方の鉄道事業者など、体力がない会社はなかなかまねできない話だ。
 東京メトロ・東急などが導入を進めることで、業界全体で安全性の平均値が上がり、その設備が「当たり前」とlなる日は遠からず来るだろう。そうなれば、ホームドア設置をしていない駅で転落事故が発生すれば、「ホームドア設置があれば防げた」という意見にもつながる。利用者側にとってみれば、安全性の向上は望ましいだろうが、企業体力のない事業者にとってみれば、死活問題にもなってくる。国が導入を促している分、実現できる事業者とできない事業者とで、今後に大きな格差を生むだろう。
 ホームドア以外にもバリアフリー新法によるエレベータの設置、さらにはICカードの導入が進むなど、都心部の駅では、21世紀に入ってから、駅の利用環境は一気に良くなってきた。
 しかし、地方などはまだまだ整備が追いついておらず、ホームドアについても、一部を除いてはほとんど設置が行われていない現状だ。もちろん、国が目標としている10万人以上の乗降客数という一定の基準はあるが、少子化が拡大している地方ではほとんど該当せず、バリアフリー新法のエレベータ設置と同じく、都心部だけで充実した整備が進んでいく。鉄道事業者は公共交通の側面を持つが、現実には格差が広がっていくだろう。都市鉄道と地方鉄道では、利用者が同じ運賃を払ったとしても、明らかに「利便性」だけではなく「安全」でも格差があるのだ。
 東急では11月、データ通信に対応したLED蛍光灯一体型の防犯カメラを全車両に導入することを発表した。これにより、沿線における安全性が一層強化される。その多くが民間企業である鉄道事業者主導で改革を行っていけば、格差が広がっていくのは避けられない。しかし、鉄道は本来、公共性の高い事業である。命の危険を揺るがす「安全」については、業界全体で格差解消を考えるべきではないだろうか。


日本経済新聞 2019/11/20 14:00
車両に合わせて扉が動く新型ホームドア JR西日本
http://nikkei.com/article/DGXMZO52387960Q9A121C1LKA000/
JR西日本は20日、車両の扉の位置に合わせて開口部が左右に動く新型ホームドアを開発したと発表した。多様な車両や編成の列車が乗り入れる駅のホームでは扉の位置が変わるため、ホームドアはロープが昇降する方式が一般的だった。新型はホームを覆い、隙間をなくすことで安全性を高めた。2023年に開業予定の北梅田(仮称)駅への導入を目指す。
新型は高さが2メートルあり、ホームを覆う「フルスクリーン型」。上部から3層の扉をつり下げる仕組みで、ふすまのように横方向に開口部が動くことで、様々な列車の扉の位置に対応する。デジタルサイネージ(電子看板)を備え、停車する列車の情報や広告などを表示する。設置費用は従来の片側5億~10億円より高額になる見通し。
北梅田駅は東海道本線とおおさか東線が乗り入れる予定。31年に新線「なにわ筋線」が開業した後は南海電気鉄道も乗り入れるため、多様な車両への対応が求められる。鉄道本部技術企画部の田中恭介チーフは「安全を担保できるよう精度を高めたい」と話す。


日本経済新聞 2019/10/14 2:00
ホームドア設置道半ば 視覚障害者の事故防げ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50931590S9A011C1SHJ000/
JR東日本は障害者などへの声かけを呼びかけるキャンペーンを始めた(9日、東京都新宿区)
東京都葛飾区の駅で1日、視覚障害のある女性(66)がホームから転落し死亡する事故があった。転落防止に有効なホームドアは2020年東京五輪・パラリンピックを見据えて増えているが、整備は途上だ。後を絶たない転落事故などを減らそうと、乗客に声かけを呼びかけるキャンペーンが今月始まった。専門家は「思いやりで事故は防げる」と訴える。
「ホームドアのないホームではいつも恐怖で足がすくんでしまう」。公益社団法人「東京都盲人福祉協会」副会長で視覚障害がある高橋博行さん(52)は協会に向かうため定期的にJRを利用するが「いつも命懸け」という。通い慣れた駅でも、ホームから転落しないかどうか強い不安に襲われる。
記者が移動に同行した7日は白杖(はくじょう)をついて歩く高橋さんに駅の警備員が気づき、「どこへ向かわれますか。肩に手を置いて下さい」と声をかけた。警備員に付き添われて電車に乗り込んだ高橋さんは「誰かが隣にいてくれれば安心して鉄道を利用できる」と話す。
ホームの危険性は、2016年に東京メトロ銀座線の駅で視覚障害者の男性が転落して死亡した事故を機に改めて見直された。国や鉄道各社は16年、1日に10万人以上が利用する駅(279駅)に原則としてホームドアを設ける対策を決めた。

東京都は13年に五輪・パラリンピックの開催が決まったことを受け、15年度から競技会場の周辺駅のホームドアの設置費用を国と共にそれぞれ3分の1ずつ補助している。
バレーボールや体操の会場と近いりんかい線「国際展示場」駅は補助を受け18年に完成。19年度も7億5千万円の予算を盛り込んで設置を促す。
ただホームドアの設置を巡っては重さに耐えられるようホームの補強工事が必要になるケースがあり、整備は簡単ではない。利用者10万人以上の駅の設置率は18年度末時点で44%で、「中小の駅を含めた全国的な普及にはなお時間がかかる」(国土交通省)状況だ。
JR東日本は11年から障害者や子供連れの人らに社員が声をかける「声かけ・サポート」運動を始めた。運動はポスターや構内放送で「困っている人には積極的な声がけを」と乗客へもサポートを呼びかける形へと広がり、今年は全国83社が参加して7日から始まった。JR東の担当者は「安全な駅の実現には乗客の協力も欠かせない」と話す。
社会福祉法人「日本点字図書館」(東京)によると、障害の症状は人それぞれ違うため、声をかける際には「何か手伝いましょうか」「どうしましたか」と相手のニーズを確認することが重要という。
東京大の福島智教授(障害学)は「転落事故の防止にはホームドアが最も有効だが、乗客が誘導することでも事故を防げる。実際に行動に移せるように、日ごろから家庭や学校で障害への理解を深めてほしい」と指摘した。

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