2020-03-16(Mon)
原発マネー報告書 「国策の闇」解明は政治の責任
関電問題で最終報告書 原発事業者の資格を疑う 原発の闇はまだ深い
毎日新聞2020年3月15日 東京朝刊
社説:関電問題で最終報告書 原発事業者の資格を疑う
----原発マネーをめぐる電力会社と地元関係者との異常な癒着ぶりが裏付けられた。
----しかし、これで問題の幕引きを図り、原発事業を従来通り継続できると考えているなら甘過ぎる。
原発事業者には安全性に加え、公益企業として経営の透明性や、コンプライアンス(法令順守)の徹底が厳しく求められる。
関電の新経営陣は、美浜や大飯原発でも今回のような不正な癒着がなかったかを徹底的に調査する必要がある。そのうえでウミがあれば、出し切るべきだ。
自浄能力を発揮できないようでは、不信は解消されない。原発事業者として失格の烙印(らくいん)を押されることになる。
日本経済新聞 2020/3/16 19:00
[社説]関電が信頼を取り戻すには
----関西電力の金品受領問題を調べてきた第三者委員会が報告書を公表した。幹部ら75人が総額3億6000万円相当の金品を受け取り、提供した元助役側には原子力発電所の関連工事受注への期待があったと断定した。
原発の立地自治体を裏切り、消費者の不信を増幅する行為である。異常な関係が30年以上にわたって続いた問題の根の深さに、改めて驚かざるをえない。関電が信頼を取り戻すには、不断の努力で自浄の成果を示すしか道はない。
産経新聞 2020.3.17 05:00
【主張】関電調査委報告 組織として一から出直せ
----電力会社と地元有力者との異様な関係が改めて浮かび上がった。過去と決別し社会の信頼をいかに取り戻すのか。関西電力は、組織として一から出直さねばならない。
関電の役員らが、原発のある福井県高浜町の元助役(故人)から金品を受け取っていた問題で、第三者委員会が報告書を公表した。経済産業省も関電に業務改善命令を出した。
東京新聞 2020年3月17日
【社説】関電の金品受領 原発の闇はまだ深い
----「関西電力はモンスターと言われるような人物を生み出した」-。関電の金品受領問題を調査した第三者委員会は、そう結論づけた。「怪物」の温床になった原発の深い闇。これで解消できるのか。
極めて異様な事件である。
しんぶん赤旗 2020年3月15日(日)
主張:原発マネー報告書 「国策の闇」解明は政治の責任
----関西電力の役員が高浜原発のある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた疑惑で、関電の第三者委員会が調査報告書を公表しました。報告書は、金品を受領したのは75人、総額約3億6000万円相当にのぼり、昨年公表の社内調査より人数も金額も上回ることを明らかにしました。原発という「国策」をめぐって多額の資金が動き、電力会社と立地自治体の“有力者”との深刻な癒着が生まれ、温存されてきたことは全く異常です。関電に原発事業を担う資格はありません。政府は、関電任せにせず、深まる「闇」の解明に責任を負うべきです。
以下参考
毎日新聞2020年3月15日 東京朝刊
社説:関電問題で最終報告書 原発事業者の資格を疑う
https://mainichi.jp/articles/20200315/ddm/005/070/017000c
原発マネーをめぐる電力会社と地元関係者との異常な癒着ぶりが裏付けられた。
関西電力幹部による金品受領問題を調査していた第三者委員会が最終報告書を公表した。
高浜原発がある福井県高浜町の元助役(故人)から、役員ら75人が現金や金貨、商品券など総額3億6000万円相当を受領していた。1987年から30年以上も続いていた。
関電は昨秋公表した社内調査で「元助役の自己顕示欲を満足させるため」と便宜供与を否定していた。
しかし、報告書は元助役に関電の工事を自分の関係先企業に発注させて利益を得る「見返り」の意図があったと認定した。
金品を受領した関電幹部らは元助役から求められるままに工事を発注していた。元助役は受注した企業から多額の顧問料などを得ていた。癒着関係は明白で、原発マネーの不正な還流をうかがわせる。
原発の安全対策費が増加した東日本大震災後に金品提供の額や対象者が増え、工事発注量も伸びた。
第三者委委員長の但木敬一・元検事総長は記者会見でこうした工事発注について「不正な便宜供与だ」と明言した。一方、元助役が死去していることも理由に「刑事告発は難しい」との認識を示した。
だが、報告書によると、関電幹部が工事を受注した企業から直接、金品を受け取るなど、違法性が疑われるケースもあった。
関電は最終報告に合わせて、社長交代を発表した。現在空席の会長には社外の人材を招いてガバナンス(企業統治)の改善を目指すという。
しかし、これで問題の幕引きを図り、原発事業を従来通り継続できると考えているなら甘過ぎる。
原発事業者には安全性に加え、公益企業として経営の透明性や、コンプライアンス(法令順守)の徹底が厳しく求められる。
関電の新経営陣は、美浜や大飯原発でも今回のような不正な癒着がなかったかを徹底的に調査する必要がある。そのうえでウミがあれば、出し切るべきだ。
自浄能力を発揮できないようでは、不信は解消されない。原発事業者として失格の烙印(らくいん)を押されることになる。
日本経済新聞 2020/3/16 19:00
[社説]関電が信頼を取り戻すには
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56842790W0A310C2SHF000/
関西電力の金品受領問題を調べてきた第三者委員会が報告書を公表した。幹部ら75人が総額3億6000万円相当の金品を受け取り、提供した元助役側には原子力発電所の関連工事受注への期待があったと断定した。
原発の立地自治体を裏切り、消費者の不信を増幅する行為である。異常な関係が30年以上にわたって続いた問題の根の深さに、改めて驚かざるをえない。関電が信頼を取り戻すには、不断の努力で自浄の成果を示すしか道はない。
第三者委は2019年10月から、関係者への聞き取りなど全体像の解明に取り組んできた。
高浜原発がある福井県高浜町の元助役は自身が関係する企業への工事発注を要求し、関電も情報を提供したり、発注に応じたりした事例があったという。透明性や中立性がとりわけ重視される電力会社にあってはならない事態だ。
第三者委は元助役の死亡により確実な証拠がなく、刑事告発は難しいとの見方を示すが、「基本的なガバナンス(企業統治)が機能しなかった」との指摘を関電は重く受け止めなければならない。
関電は18年に社内で問題について調査しながら、ごく一部の経営陣の判断で結果を取締役会に報告せず、公表しない方針を決めた。第三者委が極めて不適切だったと断じたのは当然である。
報告書を受けて岩根茂樹社長が退任し、森本孝副社長が後任の社長に昇格した。森本社長には再発防止策の徹底が求められる。報告書は今回の問題の根幹に、ユーザーや株主を含む「外」の目線より、「内」の事情を優先する関電の企業風土があると指摘する。これを徹底的に変える決意がいる。
関電は国内で再稼働した原発9基のうち、4基を運転する。第三者委の但木敬一委員長(元検事総長)は記者会見で「透明感のある立地政策をやらない限り、原発は維持できない」と語った。
これはエネルギー政策を担う国や、原発を持つ他の電力会社にも向けられた言葉でもある。
産経新聞 2020.3.17 05:00
【主張】関電調査委報告 組織として一から出直せ
https://www.sankei.com/column/news/200317/clm2003170001-n1.html
電力会社と地元有力者との異様な関係が改めて浮かび上がった。過去と決別し社会の信頼をいかに取り戻すのか。関西電力は、組織として一から出直さねばならない。
関電の役員らが、原発のある福井県高浜町の元助役(故人)から金品を受け取っていた問題で、第三者委員会が報告書を公表した。経済産業省も関電に業務改善命令を出した。
報告書の内容はあきれるばかりである。金品の受領は30年以上に及び、受領者は関電が一昨年行った社内調査より55人増えた。金額も約4千万円増の約3億6千万円に膨らんだ。
何より元助役の関連会社に対する工事発注について、第三者委は金品への見返りとして、関電による便宜供与を認めた。それは利用者が支払った電気代が原発マネーとして還流する癒着そのものであり、第三者委は両者が「共犯者」になったと断じた。
しかも関電は問題を取締役会に報告せず、公表もしなかった。報告書は株主や利用者の目線を欠いた「背信行為」「隠蔽(いんぺい)」と厳しく批判した。経営陣が問題に向き合っていれば、ここまで異様な関係を続けることもなかった。企業統治の機能不全は明らかだ。
今回の不祥事を受けて同社の岩根茂樹社長は辞任した。森本孝新社長は記者会見で「報告書の内容を厳粛に受け止め、信頼回復に全力を尽くす」と述べた。だが、森本氏は副社長として岩根氏を支える立場だった幹部だ。そうした既存の体制を維持したままで抜本的な統治改革ができるのか。
報告書が会長に外部人材を起用し、客観的な視点で改革に取り組むように求めたのは当然だ。関電の中には反発する声もあるが、閉鎖的な社内体質を大きく改めるためにも、会長を含めて大胆な人材活用が欠かせない。
この金品受領問題は関電だけでなく、他の電力会社と原発立地自治体との信頼関係も大きく揺さぶっている。立地自治体は不信感を強めており、原発の再稼働をさらに遅らせる懸念もある。
電力自由化を迎え、電力会社と立地自治体との関係は、旧来の因習を改めるなど透明性を確保しながら信頼を積み重ねることが重要である。そのためには政府も地元対策を電力会社に丸投げすることは許されない。原発再稼働などで地元との協議を主導すべきだ。
東京新聞 2020年3月17日
【社説】関電の金品受領 原発の闇はまだ深い
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020031702000149.html
「関西電力はモンスターと言われるような人物を生み出した」-。関電の金品受領問題を調査した第三者委員会は、そう結論づけた。「怪物」の温床になった原発の深い闇。これで解消できるのか。
極めて異様な事件である。
関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町で、関電のトップや原発立地関係者らが、町の実力者であった元助役(故人)側から長年にわたり、金の小判や現金入りの菓子袋など、多額の金品を受け取っていた。
元助役と関連の深い地元建設会社には、関電から原発関連工事が次々発注されており、建設会社からは、元助役に多額の資金が渡っていた。つまり、関電から出た「原発マネー」が、関電トップに還流していた疑いが強い。原資は、利用者が支払う電気料金だ。
関電はおととしすでに、金沢国税局の指摘を受けて社内調査を実施、金品問題を把握していたが、取締役会に諮らず、公表もしなかった。
第三者委員会による今回の調査では、元助役側からの受領者は、七十五人、総額三億六千万円と社内調査の結果より多くなり、それらの金品が原発関連工事発注の「見返り」であると明確に結論づけた。
調査報告書によると、関電と元助役とのいびつな関係は、高浜原発3、4号機の誘致に当たり、推進役として元助役の力を借りたことから始まった。3・11後、原発の安全対策工事の増加が見込まれる中で、受領者数や金額が大きく膨らんでいったという。
第三者委の但木敬一委員長は「地元対策に透明性がないことが、今回の原因だ」と指摘した。
立地にしろ、増設にしろ、不透明な原発マネーの力を背景に地元の同意を取り付けてきたと思われる関電のやり方に、根本的な疑問を投げたということだ。
3・11後の対策工事に不正が絡むとすれば、原発の安全性への不安は増す。
不透明な金の流れは、原発立地や3・11後の対策工事にどのような影響を与えたか。本当に安全なのか。そもそも金でしか解決しようのないものを、地方に無理やり押しつけようとしたことが、闇を生んだのではないか-。
「立地の闇」にさらなる光を当てない限り、闇に巣くう「怪物」たちは、よみがえる。
そして何より、無理強いは、もうやめにすることだ。そうすれば新たな闇は生まれない。
しんぶん赤旗 2020年3月15日(日)
主張:原発マネー報告書 「国策の闇」解明は政治の責任
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2020-03-15/2020031501_05_1.html
関西電力の役員が高浜原発のある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた疑惑で、関電の第三者委員会が調査報告書を公表しました。報告書は、金品を受領したのは75人、総額約3億6000万円相当にのぼり、昨年公表の社内調査より人数も金額も上回ることを明らかにしました。原発という「国策」をめぐって多額の資金が動き、電力会社と立地自治体の“有力者”との深刻な癒着が生まれ、温存されてきたことは全く異常です。関電に原発事業を担う資格はありません。政府は、関電任せにせず、深まる「闇」の解明に責任を負うべきです。
恐れた「暗部の暴露」
関電の会長、社長らが元助役・森山栄治氏(故人)から現金や高価なスーツ仕立券、金貨など多額の金品を受け取っていたことは昨年秋に発覚しました。原発関連工事を請け負う建設会社が元助役に資金提供しており、国民が払った電気料金を原資とする「原発マネー」が関電に還流していた疑惑として大問題になりました。
昨年10月、関電は隠していた社内調査結果を公表し、原子力担当部門を中心に役員23人が金品を受領し、総額は3億2000万円相当だったなどと認めました。しかし、調査対象期間は2006年~18年に限定され、元助役の金品提供の狙いや資金の元手、政治家の介在の有無など不明な点があまりに多く、隠ぺい姿勢に対し批判が集まりました。関電は第三者委を設置し、同委が聞き取り対象を広げるなどして調査を行いました。
今回の報告書によれば、元助役からの金品提供は1987年に始まりました。高浜原発3、4号機の増設をめぐり、元助役が「不適切」な地元での根回しに関わっていたことなども指摘しています。長期にわたる異常な関係の構造的根深さを浮き彫りにしています。
金品の額が2011年の東京電力福島第1原発事故以降、「急激に増加」したと認定したことは重大です。報告書は金品提供の狙いについて、元助役が自身の関連企業への見返りを期待したものと述べています。原発再稼働へ向けた「安全対策工事」などを通じ、関電が特定業者の便宜をはかった違法性の疑いは強まるばかりです。再稼働をめぐる利権をさらに徹底的に追及することが不可欠です。
報告書は、元助役からの金品提供を関電役員側が断れず、長年隠ぺいした背景に、高浜原発3、4号機増設時の「暗部を暴露」され、原発が停止することを恐れたり、原発の「安定的な運営・稼働を重視する考え」が強く、それがコンプライアンス(法令順守)を上回る至上命令になったりしていたなどと記述しています。しかし、「暗部」について、報告書は突っ込んだ解明をしていません。
国政調査権の行使も必要
昨年公表の社内調査で、元助役が国会議員や県議会などに「広い人脈を有し」と明記していた問題も、今回の報告書では明らかにしませんでした。関電の第三者委では全容解明はできません。
安倍晋三政権が進める原発再稼働をめぐる政治家らの関与は絶対にあいまいにはできません。安倍政権は「原発マネー」疑惑究明に背を向けず、解明に責任を果たすべきです。国会は、国政調査権を行使し、関係者を招致し真相解明を行うことも必要です。
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毎日新聞2020年3月15日 東京朝刊
社説:関電問題で最終報告書 原発事業者の資格を疑う
----原発マネーをめぐる電力会社と地元関係者との異常な癒着ぶりが裏付けられた。
----しかし、これで問題の幕引きを図り、原発事業を従来通り継続できると考えているなら甘過ぎる。
原発事業者には安全性に加え、公益企業として経営の透明性や、コンプライアンス(法令順守)の徹底が厳しく求められる。
関電の新経営陣は、美浜や大飯原発でも今回のような不正な癒着がなかったかを徹底的に調査する必要がある。そのうえでウミがあれば、出し切るべきだ。
自浄能力を発揮できないようでは、不信は解消されない。原発事業者として失格の烙印(らくいん)を押されることになる。
日本経済新聞 2020/3/16 19:00
[社説]関電が信頼を取り戻すには
----関西電力の金品受領問題を調べてきた第三者委員会が報告書を公表した。幹部ら75人が総額3億6000万円相当の金品を受け取り、提供した元助役側には原子力発電所の関連工事受注への期待があったと断定した。
原発の立地自治体を裏切り、消費者の不信を増幅する行為である。異常な関係が30年以上にわたって続いた問題の根の深さに、改めて驚かざるをえない。関電が信頼を取り戻すには、不断の努力で自浄の成果を示すしか道はない。
産経新聞 2020.3.17 05:00
【主張】関電調査委報告 組織として一から出直せ
----電力会社と地元有力者との異様な関係が改めて浮かび上がった。過去と決別し社会の信頼をいかに取り戻すのか。関西電力は、組織として一から出直さねばならない。
関電の役員らが、原発のある福井県高浜町の元助役(故人)から金品を受け取っていた問題で、第三者委員会が報告書を公表した。経済産業省も関電に業務改善命令を出した。
東京新聞 2020年3月17日
【社説】関電の金品受領 原発の闇はまだ深い
----「関西電力はモンスターと言われるような人物を生み出した」-。関電の金品受領問題を調査した第三者委員会は、そう結論づけた。「怪物」の温床になった原発の深い闇。これで解消できるのか。
極めて異様な事件である。
しんぶん赤旗 2020年3月15日(日)
主張:原発マネー報告書 「国策の闇」解明は政治の責任
----関西電力の役員が高浜原発のある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた疑惑で、関電の第三者委員会が調査報告書を公表しました。報告書は、金品を受領したのは75人、総額約3億6000万円相当にのぼり、昨年公表の社内調査より人数も金額も上回ることを明らかにしました。原発という「国策」をめぐって多額の資金が動き、電力会社と立地自治体の“有力者”との深刻な癒着が生まれ、温存されてきたことは全く異常です。関電に原発事業を担う資格はありません。政府は、関電任せにせず、深まる「闇」の解明に責任を負うべきです。
以下参考
毎日新聞2020年3月15日 東京朝刊
社説:関電問題で最終報告書 原発事業者の資格を疑う
https://mainichi.jp/articles/20200315/ddm/005/070/017000c
原発マネーをめぐる電力会社と地元関係者との異常な癒着ぶりが裏付けられた。
関西電力幹部による金品受領問題を調査していた第三者委員会が最終報告書を公表した。
高浜原発がある福井県高浜町の元助役(故人)から、役員ら75人が現金や金貨、商品券など総額3億6000万円相当を受領していた。1987年から30年以上も続いていた。
関電は昨秋公表した社内調査で「元助役の自己顕示欲を満足させるため」と便宜供与を否定していた。
しかし、報告書は元助役に関電の工事を自分の関係先企業に発注させて利益を得る「見返り」の意図があったと認定した。
金品を受領した関電幹部らは元助役から求められるままに工事を発注していた。元助役は受注した企業から多額の顧問料などを得ていた。癒着関係は明白で、原発マネーの不正な還流をうかがわせる。
原発の安全対策費が増加した東日本大震災後に金品提供の額や対象者が増え、工事発注量も伸びた。
第三者委委員長の但木敬一・元検事総長は記者会見でこうした工事発注について「不正な便宜供与だ」と明言した。一方、元助役が死去していることも理由に「刑事告発は難しい」との認識を示した。
だが、報告書によると、関電幹部が工事を受注した企業から直接、金品を受け取るなど、違法性が疑われるケースもあった。
関電は最終報告に合わせて、社長交代を発表した。現在空席の会長には社外の人材を招いてガバナンス(企業統治)の改善を目指すという。
しかし、これで問題の幕引きを図り、原発事業を従来通り継続できると考えているなら甘過ぎる。
原発事業者には安全性に加え、公益企業として経営の透明性や、コンプライアンス(法令順守)の徹底が厳しく求められる。
関電の新経営陣は、美浜や大飯原発でも今回のような不正な癒着がなかったかを徹底的に調査する必要がある。そのうえでウミがあれば、出し切るべきだ。
自浄能力を発揮できないようでは、不信は解消されない。原発事業者として失格の烙印(らくいん)を押されることになる。
日本経済新聞 2020/3/16 19:00
[社説]関電が信頼を取り戻すには
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56842790W0A310C2SHF000/
関西電力の金品受領問題を調べてきた第三者委員会が報告書を公表した。幹部ら75人が総額3億6000万円相当の金品を受け取り、提供した元助役側には原子力発電所の関連工事受注への期待があったと断定した。
原発の立地自治体を裏切り、消費者の不信を増幅する行為である。異常な関係が30年以上にわたって続いた問題の根の深さに、改めて驚かざるをえない。関電が信頼を取り戻すには、不断の努力で自浄の成果を示すしか道はない。
第三者委は2019年10月から、関係者への聞き取りなど全体像の解明に取り組んできた。
高浜原発がある福井県高浜町の元助役は自身が関係する企業への工事発注を要求し、関電も情報を提供したり、発注に応じたりした事例があったという。透明性や中立性がとりわけ重視される電力会社にあってはならない事態だ。
第三者委は元助役の死亡により確実な証拠がなく、刑事告発は難しいとの見方を示すが、「基本的なガバナンス(企業統治)が機能しなかった」との指摘を関電は重く受け止めなければならない。
関電は18年に社内で問題について調査しながら、ごく一部の経営陣の判断で結果を取締役会に報告せず、公表しない方針を決めた。第三者委が極めて不適切だったと断じたのは当然である。
報告書を受けて岩根茂樹社長が退任し、森本孝副社長が後任の社長に昇格した。森本社長には再発防止策の徹底が求められる。報告書は今回の問題の根幹に、ユーザーや株主を含む「外」の目線より、「内」の事情を優先する関電の企業風土があると指摘する。これを徹底的に変える決意がいる。
関電は国内で再稼働した原発9基のうち、4基を運転する。第三者委の但木敬一委員長(元検事総長)は記者会見で「透明感のある立地政策をやらない限り、原発は維持できない」と語った。
これはエネルギー政策を担う国や、原発を持つ他の電力会社にも向けられた言葉でもある。
産経新聞 2020.3.17 05:00
【主張】関電調査委報告 組織として一から出直せ
https://www.sankei.com/column/news/200317/clm2003170001-n1.html
電力会社と地元有力者との異様な関係が改めて浮かび上がった。過去と決別し社会の信頼をいかに取り戻すのか。関西電力は、組織として一から出直さねばならない。
関電の役員らが、原発のある福井県高浜町の元助役(故人)から金品を受け取っていた問題で、第三者委員会が報告書を公表した。経済産業省も関電に業務改善命令を出した。
報告書の内容はあきれるばかりである。金品の受領は30年以上に及び、受領者は関電が一昨年行った社内調査より55人増えた。金額も約4千万円増の約3億6千万円に膨らんだ。
何より元助役の関連会社に対する工事発注について、第三者委は金品への見返りとして、関電による便宜供与を認めた。それは利用者が支払った電気代が原発マネーとして還流する癒着そのものであり、第三者委は両者が「共犯者」になったと断じた。
しかも関電は問題を取締役会に報告せず、公表もしなかった。報告書は株主や利用者の目線を欠いた「背信行為」「隠蔽(いんぺい)」と厳しく批判した。経営陣が問題に向き合っていれば、ここまで異様な関係を続けることもなかった。企業統治の機能不全は明らかだ。
今回の不祥事を受けて同社の岩根茂樹社長は辞任した。森本孝新社長は記者会見で「報告書の内容を厳粛に受け止め、信頼回復に全力を尽くす」と述べた。だが、森本氏は副社長として岩根氏を支える立場だった幹部だ。そうした既存の体制を維持したままで抜本的な統治改革ができるのか。
報告書が会長に外部人材を起用し、客観的な視点で改革に取り組むように求めたのは当然だ。関電の中には反発する声もあるが、閉鎖的な社内体質を大きく改めるためにも、会長を含めて大胆な人材活用が欠かせない。
この金品受領問題は関電だけでなく、他の電力会社と原発立地自治体との信頼関係も大きく揺さぶっている。立地自治体は不信感を強めており、原発の再稼働をさらに遅らせる懸念もある。
電力自由化を迎え、電力会社と立地自治体との関係は、旧来の因習を改めるなど透明性を確保しながら信頼を積み重ねることが重要である。そのためには政府も地元対策を電力会社に丸投げすることは許されない。原発再稼働などで地元との協議を主導すべきだ。
東京新聞 2020年3月17日
【社説】関電の金品受領 原発の闇はまだ深い
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020031702000149.html
「関西電力はモンスターと言われるような人物を生み出した」-。関電の金品受領問題を調査した第三者委員会は、そう結論づけた。「怪物」の温床になった原発の深い闇。これで解消できるのか。
極めて異様な事件である。
関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町で、関電のトップや原発立地関係者らが、町の実力者であった元助役(故人)側から長年にわたり、金の小判や現金入りの菓子袋など、多額の金品を受け取っていた。
元助役と関連の深い地元建設会社には、関電から原発関連工事が次々発注されており、建設会社からは、元助役に多額の資金が渡っていた。つまり、関電から出た「原発マネー」が、関電トップに還流していた疑いが強い。原資は、利用者が支払う電気料金だ。
関電はおととしすでに、金沢国税局の指摘を受けて社内調査を実施、金品問題を把握していたが、取締役会に諮らず、公表もしなかった。
第三者委員会による今回の調査では、元助役側からの受領者は、七十五人、総額三億六千万円と社内調査の結果より多くなり、それらの金品が原発関連工事発注の「見返り」であると明確に結論づけた。
調査報告書によると、関電と元助役とのいびつな関係は、高浜原発3、4号機の誘致に当たり、推進役として元助役の力を借りたことから始まった。3・11後、原発の安全対策工事の増加が見込まれる中で、受領者数や金額が大きく膨らんでいったという。
第三者委の但木敬一委員長は「地元対策に透明性がないことが、今回の原因だ」と指摘した。
立地にしろ、増設にしろ、不透明な原発マネーの力を背景に地元の同意を取り付けてきたと思われる関電のやり方に、根本的な疑問を投げたということだ。
3・11後の対策工事に不正が絡むとすれば、原発の安全性への不安は増す。
不透明な金の流れは、原発立地や3・11後の対策工事にどのような影響を与えたか。本当に安全なのか。そもそも金でしか解決しようのないものを、地方に無理やり押しつけようとしたことが、闇を生んだのではないか-。
「立地の闇」にさらなる光を当てない限り、闇に巣くう「怪物」たちは、よみがえる。
そして何より、無理強いは、もうやめにすることだ。そうすれば新たな闇は生まれない。
しんぶん赤旗 2020年3月15日(日)
主張:原発マネー報告書 「国策の闇」解明は政治の責任
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2020-03-15/2020031501_05_1.html
関西電力の役員が高浜原発のある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた疑惑で、関電の第三者委員会が調査報告書を公表しました。報告書は、金品を受領したのは75人、総額約3億6000万円相当にのぼり、昨年公表の社内調査より人数も金額も上回ることを明らかにしました。原発という「国策」をめぐって多額の資金が動き、電力会社と立地自治体の“有力者”との深刻な癒着が生まれ、温存されてきたことは全く異常です。関電に原発事業を担う資格はありません。政府は、関電任せにせず、深まる「闇」の解明に責任を負うべきです。
恐れた「暗部の暴露」
関電の会長、社長らが元助役・森山栄治氏(故人)から現金や高価なスーツ仕立券、金貨など多額の金品を受け取っていたことは昨年秋に発覚しました。原発関連工事を請け負う建設会社が元助役に資金提供しており、国民が払った電気料金を原資とする「原発マネー」が関電に還流していた疑惑として大問題になりました。
昨年10月、関電は隠していた社内調査結果を公表し、原子力担当部門を中心に役員23人が金品を受領し、総額は3億2000万円相当だったなどと認めました。しかし、調査対象期間は2006年~18年に限定され、元助役の金品提供の狙いや資金の元手、政治家の介在の有無など不明な点があまりに多く、隠ぺい姿勢に対し批判が集まりました。関電は第三者委を設置し、同委が聞き取り対象を広げるなどして調査を行いました。
今回の報告書によれば、元助役からの金品提供は1987年に始まりました。高浜原発3、4号機の増設をめぐり、元助役が「不適切」な地元での根回しに関わっていたことなども指摘しています。長期にわたる異常な関係の構造的根深さを浮き彫りにしています。
金品の額が2011年の東京電力福島第1原発事故以降、「急激に増加」したと認定したことは重大です。報告書は金品提供の狙いについて、元助役が自身の関連企業への見返りを期待したものと述べています。原発再稼働へ向けた「安全対策工事」などを通じ、関電が特定業者の便宜をはかった違法性の疑いは強まるばかりです。再稼働をめぐる利権をさらに徹底的に追及することが不可欠です。
報告書は、元助役からの金品提供を関電役員側が断れず、長年隠ぺいした背景に、高浜原発3、4号機増設時の「暗部を暴露」され、原発が停止することを恐れたり、原発の「安定的な運営・稼働を重視する考え」が強く、それがコンプライアンス(法令順守)を上回る至上命令になったりしていたなどと記述しています。しかし、「暗部」について、報告書は突っ込んだ解明をしていません。
国政調査権の行使も必要
昨年公表の社内調査で、元助役が国会議員や県議会などに「広い人脈を有し」と明記していた問題も、今回の報告書では明らかにしませんでした。関電の第三者委では全容解明はできません。
安倍晋三政権が進める原発再稼働をめぐる政治家らの関与は絶対にあいまいにはできません。安倍政権は「原発マネー」疑惑究明に背を向けず、解明に責任を果たすべきです。国会は、国政調査権を行使し、関係者を招致し真相解明を行うことも必要です。
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