2020-03-19(Thu)
森友文書改ざん 国・佐川氏を提訴 なぜ死ななければ・・・
「内閣吹っ飛ぶ」 遺書は震える字 「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」
民主主義の根幹が揺らぐ問題 徹底的な検証がないまま、うやむやになりかねない
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
国・佐川氏を妻提訴 森友文書改ざん、財務局職員自殺 「佐川氏指示」主張
----学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、同省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは、公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。
----財務省は一昨年6月、内部調査の結果を発表した。佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたとする一方、指示した文言が明確に書かれていないなど、数々の疑問が残る内容だった。大阪地検も不起訴にし、詳しい捜査内容を公にしていない。
公文書は政策決定の過程を記録し、後世に残すものだ。財務省はそれを改ざんして国会にも提出した。民主主義の根幹が揺らぐ問題なのに、徹底的な検証がないまま、うやむやになりかねない情勢だ。再発を防ぐ取り組みは進むどころか、「桜を見る会」でもまた公文書の廃棄などが問題になった。「なぜ夫が自殺に追い込まれなければいけなかったのか」と究明を求める思いに共感する国民は少なくないだろう。
佐川氏は改ざん発覚後の国会の証人喚問で、改ざんの経緯についてほとんどの証言を拒否した。妻は、国や佐川氏が法廷で真摯(しんし)に説明するよう求めている。一線の職員の命が失われた重みを受け止め、どう対応するのか。これを機に国会でも説明を尽くすのか。政権の姿勢が問われている。
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時42分
「内閣吹っ飛ぶ」森友文書改ざんで職員 遺書は震える字
----「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。2年前、公文書の改ざんを強いられた、とする手記と遺書を残して財務省近畿財務局の職員が自殺した。なぜ夫は死ななければならなかったのか――。妻は、すべてが法廷で明らかになることを願う。
公私ともに充実 暗転したあの日
「責任をどう取るか、ずっと考えてきました。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありません」
弁護団は提訴に合わせて、赤木俊夫さん(当時54)の手記や遺書を報道陣に公開した。手記は、自宅のパソコンに残されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚。3通が残されていた手書きの遺書には、震えるような字がつづられていた。
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時17分
「すべて、佐川局長の指示です」自殺した職員の手記全文
https://digital.asahi.com/articles/ASN3L6K55N3LPTIL00Z.html
NHK 2020年3月18日 19時42分森友学園問題
森友 文書改ざん “指示もと 佐川元局長と思う”自殺職員 手記
----財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ、自殺した近畿財務局の男性職員が、改ざんの経緯などを書き残していた「手記」などを、遺族が弁護士を通じて公表しました。国会での追及をかわすため、財務省の本省が主導して、抵抗した現場の職員に不正な行為を押しつけていた内情が克明に記されています。
以下参考
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
国・佐川氏を妻提訴 森友文書改ざん、財務局職員自殺 「佐川氏指示」主張
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14408138.html
公文書改ざん問題についての財務省の報告書(2018年6月4日)のポイント
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、同省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは、公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。▼2面=指示焦点、4面=国会では、39面=震える字
弁護団は同日、赤木さんが残した手記や遺書を公表した。手記では決裁文書の修正は佐川元局長の指示で、近畿財務局の現場職員の抵抗にもかかわらず行われたと説明されていた。原告側はこうした手記を証拠提出するとともに、佐川氏ら当時の関係者の尋問も求める方針で、訴訟を通じて改ざん問題の新たな事実が浮かび上がる可能性もある。
訴状によると、赤木さんは国有地売買の担当部署に所属。2017年2月に近畿財務局の上司に呼び出され、大阪府豊中市の国有地を森友学園に売却した取引の経緯を記した公文書から、学園側を優遇した記載を削除するなどの改ざんを指示された。赤木さんは強く抵抗したが、複数回改ざんを強要されたという。
赤木さんは業務のストレスなどから同7月にうつ病と診断されて仕事を休んだ。同11月に検察から任意の取り調べを打診された後は自殺願望を口にするようになった。
18年3月に公文書改ざん問題が報道された5日後、赤木さんは亡くなった。近畿財務局は19年2月、公務災害に認定している。
原告側は一連の改ざんについて、国有地売却をめぐって安倍晋三首相が「私や妻が関係していれば首相も国会議員もやめる」などとした国会答弁を受けて佐川氏が発案し、主導的立場から改ざんの指示を行ったと主張。改ざんを指示して長時間労働をさせたなどとして国に約1億700万円を請求する一方、佐川氏の職権乱用は違法性の程度が著しく、公務員本来の職務ではない個人の不法行為で、退職後も妻への経緯説明と謝罪を拒否したとして550万円の賠償を求めている。
財務省は「訴状が届いておらず、内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。
国有地売却や公文書改ざん問題を捜査していた大阪地検特捜部は、弁護士らから告発された佐川氏ら38人を不起訴処分として捜査を終えている。(遠藤隆史、米田優人)
■<視点>究明不足、問われる政権
公文書の改ざんを強いられ、命を絶った財務省職員の妻が国などを相手に提訴した。改ざんの詳しい経緯を明らかにしたいとの願いからだ。問題の発覚から2年。これまでの真相究明が不十分な証しと言える。
財務省は一昨年6月、内部調査の結果を発表した。佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたとする一方、指示した文言が明確に書かれていないなど、数々の疑問が残る内容だった。大阪地検も不起訴にし、詳しい捜査内容を公にしていない。
公文書は政策決定の過程を記録し、後世に残すものだ。財務省はそれを改ざんして国会にも提出した。民主主義の根幹が揺らぐ問題なのに、徹底的な検証がないまま、うやむやになりかねない情勢だ。再発を防ぐ取り組みは進むどころか、「桜を見る会」でもまた公文書の廃棄などが問題になった。「なぜ夫が自殺に追い込まれなければいけなかったのか」と究明を求める思いに共感する国民は少なくないだろう。
佐川氏は改ざん発覚後の国会の証人喚問で、改ざんの経緯についてほとんどの証言を拒否した。妻は、国や佐川氏が法廷で真摯(しんし)に説明するよう求めている。一線の職員の命が失われた重みを受け止め、どう対応するのか。これを機に国会でも説明を尽くすのか。政権の姿勢が問われている。(大阪社会部長・羽根和人)
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
(時時刻刻)佐川氏の指示、再び焦点 職員遺族が提訴 森友文書改ざん
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14408120.html
官邸を出る際、記者からの質問に答える安倍晋三首相=18日午後6時50分、岩下毅撮影
森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんが発覚してから2年。自ら命を絶った近畿財務局職員の妻が、夫の自殺は改ざんを強制されたためだとして国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長を提訴した。改ざんは佐川氏の指示だとする手記や遺書も公開し、裁判での真相解明を求める。野党は改ざんの経緯などについて追及を強める構えだ。▼1面参照
■原告側、「主導的」と指摘 職員手記、改ざんの経緯記録
「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰が誰のためにやったのか。改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか。真実を知りたい」
提訴後に大阪市内で記者会見した代理人弁護士は、赤木俊夫さん(当時54)の妻のコメントを読み上げた。
原告側は訴状の冒頭に、提訴の目的を列挙。真相解明だけでなく、「上層部の保身と忖度(そんたく)を目的とした指示で現場の職員が自殺することが二度とないようにすること」「どのような改ざんとうその答弁が行われたのか公的な場で説明すること」を求めるとした。
原告側は、佐川氏が改ざんを発案して主導的立場から指示したなどとして国とともに佐川氏個人を被告とした。訴訟で最大の焦点となるのは、14件の文書で安倍晋三首相の妻昭恵氏をめぐる記載を削除するなどした改ざんを、佐川氏が明確に指示したかどうかだ。
財務省は2018年6月に公表した調査報告書で、佐川氏が「文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した」ことで、理財局総務課長らが「直す必要があると認識した」と記載。佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と認めたが、明確な指示については言及していない。
一方、赤木さんの手記は「元は、すべて、佐川理財局長の指示です」と断言。「学園を厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう佐川氏から指示があったと聞いた」と記されている。
さらに「佐川局長の指示には誰も背けない」として、手記は本省からの指示に屈した近畿財務局の対応も描いた。財務局の部長は当初は指示に応じない姿勢を見せていたが、本省理財局の総務課長らからの電話で指示を受け入れた。トップの財務局長は「本件に関して全責任を負う」と発言した、と部長から聞いた――。手記は「これが財務官僚機構の実態なのです」と訴える。
さらに手記では、佐川氏や後任の理財局長が文書管理などをめぐって虚偽答弁を重ねたとして、赤木さんが不信感を募らせた様子が記されている。
残る謎を解明するカギとして、原告側は赤木さんが改ざんの過程を記録したファイルが国側に残されているとして、提出を求めた。さらに佐川氏本人への尋問や、当時の財務省幹部らの証人尋問を求める方針だ。
佐川氏は国会の証人喚問で改ざんについて問われた際には、「捜査の対象になっている」と証言を拒否。だがその大阪地検特捜部の捜査もすでに不起訴で終結した。赤木さんの妻のコメントの結びは、佐川氏に向けられた。「佐川さん、改ざんの経緯を、本当のことを話してください」(米田優人、岡戸佑樹)
■政権冷ややか「今さら」 財務省「報告書と齟齬ない」
安倍政権は、すでに財務省の調査報告書などがまとまっていることから、「今さら、という話だ」(政権幹部)とみて、再調査や国会での財務省関係者の招致などには応じない方針だ。
18日の参院財政金融委員会で麻生太郎財務相は、手記や遺書の内容が明らかになったことの受け止めを問われ、「ご遺族の気持ちを思うと言葉もなく、謹んでご冥福をお祈り申し上げる」と述べた。一方、佐川氏の国税庁長官への起用などについては「それぞれの能力や経験に照らしてポストに配置した」と述べ、問題はなかったとの認識を改めて示した。
手記の存在をめぐっては、財務省の茶谷栄治官房長が「報道を通じて初めて知った」と答弁。「手記と調査報告書は大きな齟齬(そご)はない」との認識を示し、「再調査を行うことは考えていない」と言い切った。
自民党の参院幹部も「(手記の内容で)新事実が出てきたわけではない」、参院中堅は「関係者は処分したとして、力で押し切るしかないだろう」といい、問題にフタをしてやり過ごしたい考えだ。
ただ、「桜を見る会」や東京高検検事長の定年延長問題などで政府の説明責任が厳しく問われる中、行政の公正性や中立性を揺るがす森友問題が再燃することを懸念する声も上がる。
自民党副幹事長のひとりは「安倍政権は隠蔽(いんぺい)体質と批判されている。今回のことで『やっぱりそうか』となりかねない」と漏らす。公明党の石田祝稔政調会長は18日の会見で「自ら命を絶つということは、よっぽどのことがあると率直に受け止める。今までの国会答弁との整合性は議論になるのではないか」と述べた。
立憲民主党など野党は18日、森友問題の再検証チームを発足させることを決めた。手記に記されていた佐川氏による改ざん指示の有無を国会でただすため、証人喚問なども求めていく構えだ。
さらに野党が問題視するのは、17年2月の衆院予算委員会での「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という首相答弁だ。これをきっかけに財務省の文書改ざんが始まり、問題の隠蔽工作が行われたとかねて批判してきた。
検証チームの座長に就いた立憲の川内博史衆院議員は「手記で明らかになったことの出発点は首相の答弁だ。すべての責任は首相にあると言わざるをえない」と、いまもあいまいとなっている改ざんが始まった経緯などを厳しくただす考えを示した。
首相は18日夜、首相官邸で記者団の取材に応じ、「改めてご冥福をお祈りしたい。改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していく」と述べた。首相の責任を問う質問も出たが、それには答えず官邸を立ち去った。(永田大、寺本大蔵)
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
改ざん苦悩、震える字 夫の手記・遺書、妻「真実知りたい」 財務局職員自殺、提訴
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14408190.html
赤木俊夫さんが残した手書きの文書
「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。2年前、公文書の改ざんを強いられた、とする手記と遺書を残して財務省近畿財務局の職員が自殺した。なぜ夫は死ななければならなかったのか――。妻は、すべてが法廷で明らかになることを願う。▼1面参照
「責任をどう取るか、ずっと考えてきました。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありません」
弁護団は提訴に合わせて赤木俊夫さん(当時54)の手記や遺書を報道陣に公開した。手記は、自宅のパソコンに残されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚。3通が残されていた手書きの遺書には、震えるような字がつづられていた。
訴状などによると、赤木さんは明るく社交的な性格で、書道や落語、美術鑑賞などを楽しむ生活を送っていた。誠実な努力家でもあり、誇りを持って仕事に取り組んでいたという。
夫婦仲も良く、公私ともに充実した日々。しかし2017年2月26日の日曜日、その生活が暗転した。
赤木さんが休日で妻と義母の3人で公園を訪れていた時、上司から「登庁してほしい」と連絡が入った。「上司が困っているから助けに行くわ」。出勤した赤木さんを待っていたのが、改ざんの指示だった。
妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明け、手記には「私は相当抵抗しました」と記した。言葉から必死に不正にあらがった様子が浮かぶ。それでも最後は改ざんに手を染めざるを得なかった。
改ざんを重ねるうちに、赤木さんから笑顔が消えてふさぎ込むように。同年7月、うつ病と診断され、仕事に行けなくなった。同年12月に大阪地検から電話で事情を聴かれると、病状は急速に悪化していった。そして18年3月、赤木さんは命を絶った。
弁護団によると、妻は当時のことを「体の半分がちぎれて無くなったようだ」と語ったという。しかし、その後も国側の対応に苦しめられた。弁護士を通じて佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に経緯の説明と謝罪を求めたが、面会は実現しなかった。公務災害とは認定されたが、開示された資料は大半が黒塗りでその理由もわからなかった。
弁護団の生越(おごし)照幸弁護士は会見で、妻の心情を代弁した。「手を尽くしても、知りたかったことが何もわからない。ご遺族にとって残された道は訴訟しかなかった」(遠藤隆史)
■検察も経緯把握、それでも不起訴
国有地売却や財務省の公文書改ざん問題を捜査していた大阪地検特捜部も、赤木さんが残した「手記」で記された改ざんの経緯を把握していた。それでも、弁護士らから告発された佐川元理財局長ら全員を不起訴として捜査を終えた。
改ざんに関する告発容疑は(1)決裁文書から安倍晋三首相の妻昭恵氏や政治家の名前を削除するなどして改ざんした有印公文書変造・同行使容疑など(2)財務省が学園側との交渉記録などを廃棄したとする公用文書毀棄(きき)容疑などだった。
だが、(1)では改ざんされた政治家の関与などは文書の本質的な部分ではなく、国有地の売買契約などの情報は大きく変わっていない▽(2)では「1年未満」とする保存期間を過ぎた文書は廃棄しなければならないとの財務省の規則がある――などから、特捜部はいずれも「有罪判決を得られる高度な見込みがあるとは言えない」と結論づけた。(多鹿ちなみ、細見卓司)
■公文書管理に警鐘
内閣府の公文書管理委員会委員を務めた三宅弘弁護士の話 公開された手記は、財務省による組織的な隠蔽(いんぺい)工作を明らかにし、中央省庁の公文書の管理実態について警鐘を鳴らすものだ。これだけの改ざんを理財局長だった佐川氏だけの判断でできたのだろうか。佐川氏個人ではなく財務省全体の問題とみて訴訟の推移を見ていくべきだろう。私たちは、民主主義の根幹を支える公文書管理のあり方に関心を持たなければならない。これは「桜を見る会」にも共通する問題だ。
■赤木さんの妻のコメント(全文)
赤木俊夫さんの妻は、弁護団を通じて次のようにコメントした。
夫が亡くなって2年が経ちました。あの時どうやったら助けることができたのか。いくら考えても私には助ける方法がまだ見つかりません。
心のつかえが取れないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいと思っています。
夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が誰のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか、真実を知りたいです。
今でも近畿財務局の中では話す機会を奪われ苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局にはつくっていただき、この裁判ですべてを明らかにしてほしいです。そのためには、まず佐川さん(佐川宣寿・元同省理財局長)が話さなければならないと思います。今でも夫のように苦しんでる人を助けるためにも、どうか佐川さん、改ざんの経緯を本当のことを話してください。よろしくお願いします。
■手記の要旨
手記 平成30年2月(作成中)
私は昨年2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当しました。世間をにぎわせている「森友学園への国有地売却問題」です。今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因で、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。
本省は、本件が取り上げられた当初の時点では、全ての資料を議員に示して事実を説明するという姿勢でした。ところが、佐川(宣寿)理財局長の指示で資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングも後送りするよう指示があったと聞いています。
国会、国会議員、会計検査院への各対応も、本省で基本的な対応のスタンスが決められました。特に会計検査院への対応では、本省から、資料は最小限とする▽できるだけ資料を示さない▽法律相談関係の検討資料は「ない」と説明する、との指示がありました。
本年3月2日の朝日新聞の(財務省による文書書き換え疑いを報じた)報道、その後国会を空転させている決裁文書の差し替えは事実です。元は、すべて、佐川局長の指示です。学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。局長の指示を受けた本省理財局幹部らが過剰に修正箇所を決め、修正した文書を近畿局で差し替えました。
1回目は昨年2月26日です。15時30分ごろ、統括官から手伝って欲しいと連絡を受け、出勤するよう指示がありました。3月7日ごろにも修正作業の指示が複数回あり、現場として私は相当抵抗しました。管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局の中村(稔)総務課長をはじめ、田村(嘉啓)国有財産審理室長などから部長に直接電話があり、部長も応じることはやむを得ないとし、美並(義人)近畿財務局長に報告したと承知しています。
美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと部長から聞きました。本省から出向組の次長は「元の調書が書き過ぎているんだよ」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に違い、差し替えを行ったのです。
佐川局長は修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して修正範囲をどんどん拡大し、修正回数は3回ないし4回程度と認識しています。
森友事案はすべて本省が処理方針を決め、国会や会計検査院への本省の対応が社会問題を引き起こし、うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。
この事実を知り、抵抗したとはいえ、関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。
家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さ。こんな人生って何?
兄、おいっ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。さようなら。
※肩書はいずれも当時。朝日新聞が森友学園の一連の問題でこれまで報じている財務省の主要幹部は実名としています
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時42分
「内閣吹っ飛ぶ」森友文書改ざんで職員 遺書は震える字
https://digital.asahi.com/articles/ASN3L6HX4N3LPTIL01F.html
「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。2年前、公文書の改ざんを強いられた、とする手記と遺書を残して財務省近畿財務局の職員が自殺した。なぜ夫は死ななければならなかったのか――。妻は、すべてが法廷で明らかになることを願う。
• 森友文書改ざん「指示された」 自殺職員妻が佐川氏提訴
• 「すべて、佐川局長の指示です」自殺した職員の手記全文
公私ともに充実 暗転したあの日
「責任をどう取るか、ずっと考えてきました。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありません」
弁護団は提訴に合わせて、赤木俊夫さん(当時54)の手記や遺書を報道陣に公開した。手記は、自宅のパソコンに残されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚。3通が残されていた手書きの遺書には、震えるような字がつづられていた。
提訴後の会見に集まる大勢の報道関係者ら=2020年3月18日午後、大阪市内、小川智撮影
訴状などによると、赤木さんは明るく社交的な性格で、書道や落語、美術鑑賞などを楽しむ生活を送っていた。誠実な努力家でもあり、誇りを持って仕事に取り組んでいたという。
夫婦仲も良く、公私ともに充実した日々。しかし2017年2月26日の日曜日、その生活が暗転した。
赤木さんが休日で妻と義母の3人で公園を訪れていた時、上司から「登庁してほしい」と連絡が入った。「上司が困っているから助けに行くわ」。出勤した赤木さんを待っていたのが、改ざんの指示だった。
妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明け、手記には「私は相当抵抗しました」と記した。赤木さんの言葉から、必死に不正にあらがった様子が浮かぶ。それでも最後は押し切られ、改ざんに手を染めざるを得なかった。
消えた笑顔「僕は犯罪者や」
改ざんを重ねるうちに、明るかった赤木さんから笑顔が消えてふさぎ込むように。同年7月、うつ病と診断され、仕事に行けなくなった。同年12月に大阪地検から電話で事情を聴かれると、病状は急速に悪化していった。自宅でも「玄関の外に検察がいる」「僕は犯罪者や」などと繰り返し、周囲に自殺願望を語るようになった。そして18年3月、赤木さんは命を絶った。
弁護団によると、妻は当時のことを「体の半分がちぎれて無くなったようだ」と語ったという。しかし、その後も国側の対応に苦しめられた。弁護士を通じて佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に経緯の説明と謝罪を求めたが、面会は実現しなかった。公務災害とは認定されたが、開示された資料は大半が黒塗りでその理由もわからなかった。
弁護団の生越(おごし)照幸弁護士は会見で、妻の心情をこう代弁した。「手を尽くしても、知りたかったことが何もわからない。ご遺族にとって残された道は訴訟しかなかった」(遠藤隆史)
妻「佐川さん、本当のこと話して」
学校法人森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんが好きだった坂本龍一さんや書道などに関する書籍を机に置き、提訴について会見する代理人の生越照幸弁護士(右)と松丸正弁護士=2020年3月18日午後、大阪市内、小川智撮影
自殺した財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)の妻は、弁護団を通じて次のようにコメントした。
(財務省近畿財務局の職員だった)夫が亡くなって2年が経ちました。あの時どうやったら助けることができたのか。いくら考えても私には助ける方法がまだ見つかりません。
心のつかえが取れないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいと思っています。
夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が誰のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか、真実を知りたいです。
今でも近畿財務局の中では話す機会を奪われ苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局には作っていただき、この裁判ですべてを明らかにしてほしいです。そのためには、まず佐川さん(佐川宣寿・元同省理財局長)が話さなければならないと思います。今でも夫のように苦しんでる人を助けるためにも、どうか佐川さん、改ざんの経緯を本当のことを話してください。よろしくお願いします。
財務局OB 手記読み涙「許せない」
自殺した赤木俊夫さんの元上司や国有地の問題を追及してきた市議からは、財務省理財局に対する怒りや真相解明を求める声が上がった。
近畿財務局OBの喜多徹信(てつのぶ)さん(71)は、赤木さんと同じ部署に所属し、国有財産の業務を担当した。赤木さんは曲がったことが嫌いな熱血漢だったといい、改ざんを強いられて悔しかっただろうに、と手記を読んで涙が出たという。
「財務省は徹底して上意下達の組織。追い詰められたんだと思う。理財局のしたことは常識外れで許せない」と声を震わせた。
国有地の売却価格などが非公表になっている問題を掘り起こした木村真・大阪府豊中市議は、裁判によって真相解明が進むことを期待する。「改ざん問題の一番のキーパーソンは佐川元理財局長。法廷の場でぜひ真実を明らかにしてもらいたい」と話した。(吉村治彦)
検察幹部「違法と認定できず」
国有地売却や財務省の公文書改ざん問題を捜査していた大阪地検特捜部も、赤木俊夫さんが残した「手記」で記された改ざんの経緯を把握していた。それでも、弁護士らから告発された佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長ら全員を不起訴として捜査を終えた。
改ざんに関する告発容疑は①決裁文書から安倍晋三首相の妻昭恵氏や政治家の名前を削除するなどして改ざんした有印公文書変造・同行使容疑など②財務省が学園側との交渉記録などを廃棄したとする公用文書毀棄(きき)容疑などだった。
だが、①では改ざんされた政治家の関与などは文書の本質的な部分ではなく、国有地の売買契約などの情報は大きく変わっていない▽②では「1年未満」とする保存期間を過ぎた文書は廃棄しなければならないとの財務省の規則がある――などから、特捜部はいずれも「有罪判決を得られる高度な見込みがあるとは言えない」と結論づけた。
検察内部でも捜査当時、「起訴すべきだ」という意見はあった。ある検察幹部は「捜査を経て改ざんなどの指示や経緯は相当判明していたが、それでも改ざんや廃棄が違法とは認定できなかった」と話した。(多鹿ちなみ、細見卓司)
内閣府の公文書管理委員会委員を務めた三宅弘弁護士
公開された手記は、財務省による組織的な隠蔽(いんぺい)工作を明らかにし、中央省庁の公文書の管理実態について警鐘を鳴らすものだ。これだけの改ざんを理財局長だった佐川宣寿氏だけの判断でできたのだろうか。佐川氏個人ではなく財務省全体の問題とみて、訴訟の推移を見ていくべきだろう。
私たちは手記で明らかにされた実態を踏まえ、民主主義の根幹を支える公文書管理のあり方に関心を持たなければならない。これは「桜を見る会」にも共通する問題だ。
元検事の落合洋司弁護士の話
手記の内容が事実なら、佐川氏らが国会追及を避けるために元の文書では「まずい」と考えて改ざんした実態が浮き彫りになったといえる。重要性が高いからこそ改ざんして文書自体の性質を変えたと判断でき、大阪地検特捜部は有印公文書変造・同行使罪で立件できたはずだ。
また手記では応接記録文書は「執務参考資料として保管されているのが一般的」としているのに、廃棄された。文書を廃棄した目的と背景を踏まえれば、公用文書毀棄(きき)罪についても起訴できたのではないか。
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時17分
「すべて、佐川局長の指示です」自殺した職員の手記全文
https://digital.asahi.com/articles/ASN3L6K55N3LPTIL00Z.html
自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんが残した手書きの文書=2020年3月18日午後、大阪市内、小川智撮影
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学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、自殺した財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)の手記全文は次の通り。
• 森友文書改ざん「指示された」 自殺職員妻が佐川氏提訴
手記 平成30年2月(作成中)
○はじめに
私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、その対応に連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わせている「森友学園への国有地売却問題」です。
今も事案を長期化・複雑化させているのは、“財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが”最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。この手記は、本件事案に関する真実等の詳細を書き記します。
1.森友学園問題
私は今も連日のように国会やマスコミで政治問題として取り上げられ、世間を騒がせている「森友学園への国有地売却問題」を昨年(平成29年)2月から担当していました。本件事案が社会問題化することとなった端緒は、平成29年2月9日、朝日新聞がこの問題を取り上げたことです。(朝日新聞が取り上げた日の前日の平成29年2月8日、豊中市議が国を相手に、森友学園に売却した国有地の売買金額の公表を求める訴えを提起)
近畿財務局が、豊中市に所在する国有地を学校法人森友学園に売却(売買契約締結)したのは平成28年6月20日です。私は、この時点では本件事案を担当していませんので、学園との売買契約に向けた金額の交渉等に関して、どのような経緯があったのかその事実を承知していません。
2.全ては本省主導
本件事案の財務省の担当窓口は理財局国有財産審理室(主に担当の補佐、担当係長等)です。補佐や担当係長から現場である財務局の担当者に、国会議員からの質問等の内容に応じて、昼夜を問わず資料の提出や回答案作成の指示(メール及び電話)があります。財務局は本省の指示に従い、資料等を提出するのですが、実は既に提出済みのものも多くあります。通常本件事案に関わらず、財務局が現場として対応中の個別の事案は動きがあった都度、本省と情報共有するために報告するのが通常のルール(仕事のやり方)です。
本件事案は、この通常のルールに加え、国有地の管理処分等業務の長い歴史の中で、強烈な個性を持ち国会議員や有力者と思われる人物に接触するなどあらゆる行動をとるような特異な相手方で、これほどまで長期間、国会で取り上げられ今もなお収束する見込みがない前代未聞の事案です。
そのため、社会問題化する以前から、当時の担当者は事案の動きがあった際、その都度本省の担当課に応接記録(面談等交渉記録)などの資料を提出して報告しています。したがって、近畿財務局が、本省の了解なしに勝手に学園と交渉を進めることはありえないのです。本省は近畿財務局から事案の動きの都度、報告を受けているので、詳細な事実関係を十分に承知しているのです。
(1)国会対応
平成29年2月以降ほとんど連日のように衆・参議院予算委員会等で、本件事案について主に野党議員から追及(質問)されます。世間を騒がせ、今も頻繁に取り上げられる佐川(前)理財局長が一貫して「面談交渉記録(の文書)は廃棄した」などの答弁が国民に違和感を与え、野党の追及が収まらないことの原因の一つとなっています。
一般的に、行政上の記録を応接記録として作成された文書の保存期間は、文書管理規則上1年未満とされていますので、その点において違法性はないと思いますが、実際には執務参考資料として保管されているのが一般的です。
この資料(応接記録)を文書管理規則に従って、終始「廃棄した」との説明(答弁)は財務省が判断したことです。その理由は、応接記録は細かい内容が記されていますので、財務省が学園に特別の厚遇を図ったと思われる、あるいはそのように誤解を与えることを避けるために、当時の佐川局長が判断したものと思われるます。
(2)国会議員への説明
本件事案に関して、野党議員を中心に財務省に対して、様々な資料を要求されます。
本省は、本件事案が取り上げられた当初の平成29年3月の時点では、全ての資料を議員に示して事実を説明するという姿勢であったのです。
ところが、(当時の)佐川理財局長の指示により、野党議員からの様々な追求を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています。(現場の私たちが直接佐川局長の声を聞くことはできませんが、本省(国有財産審理室)の補佐からは局長に怒られたとよく言っていました)
また、野党に資料を提出する前には、国会対応のために必ず与党(自民党)に事前に説明(本省では「与党レク」と呼称)した上で、与党の了承を得た後に提出するというルールにより対応されていました(本省補佐、近畿財務局管財部長などの話)。
(3)会計検査院への対応
国会(参議院)の要請を受けて、近畿財務局が本件事案に関して会計検査院の特別検査を、昨年平成29年4月と6月の2回受検しました。
受検時には、佐川理財局長の指示を受け、本省理財局から幹部職員(田村国有財産審理室長、国有財産業務課補佐ほか、企画課係長)が派遣され、検査会場に同席し、近畿財務局からの脱明を本省幹部職員が補足する対応がとられました。
その際、本省の検査院への対応の基本姿勢は、次のとおりです。
①決議書等の関係書類は検査院には示さず、本省が持参した一部資料(2~3分冊のドッチファイルを持参)の範囲内のみで説明する
②現実問題として、上記①のみでは検査院からの質問等に説明(対応)できないとして、田村審理室長が近畿財務局に保管されている決裁文書等を使用して説明することはやむを得ないと判断して、①の対応が修正された
③応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました(誰から誰に指示がされたかは不明確ですが、近畿財務局が作成した回答案のチェックを本省内関係課で分担され、その際資料は提示しないとの基本姿勢が取られていました)
(注)この時、法律相談の記録等の内部検討資料が保管されていることは、近畿財務局の文書所管課等(統括法務監査官、訟務課、統括国有財産管理官(1))の全ての責任者(統括法務監査官、訟務課長、統括国有財産管理官)は承知していました。
したがって、平成30年2月の国会(衆・予算委員等)で、財務省が新たに議員に開示した行政文書の存在について、麻生財務大臣や、太田理財局長の説明「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」(答弁)は、明らかに虚偽答弁なのです。
さらに、新聞紙上に掲載された本年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である。
それは、検査の際、この文書の存在は法務担当に聞かなくても、法務担当以外の訟務課・統括国有財産管理官は作成されていることを当然認識しています。これも近畿財務局は本省主導で資料として提示しないとの基本的な対応の指示に従っただけなのです。
また、本省にも報告され保管されていることは、上記2に記載している本省と財務局との情報共有の基本ルールから明らかです。
(4)財務省の虚偽答弁
本省が虚偽の答弁を繰り返していることを再掲しますと、上記(1)国会対応、(2)国会議員、(3)会計検査院への対応の全ては、本省で基本的な対応のスタンスが決められました。
特に、(3)では、本省から(近畿)財務局に以下の対応の指示がありました。
●資料は最小限とする
●できるだけ資料を示さない
●検査院には法律相談関係の検討資料は「ない」と説明する
この事案の対応で、先の国会で連日のように取り上げられた佐川(当時)理財局長の国会答弁の内容と整合性を図るよう、佐川局長や局長の意向を受けた本省幹部(理財局次長、総務課長、国有財産企画課長など)による基本的な対応姿勢が全てを物語っています。
“(疑問)
財務省は、このまま虚偽の説明を続けることで国民(議員)の信任を得られるのか。
当初、佐川理財局長の答弁がどこまでダメージコントロールを意識して対応されていたかといえば、当面の国会対応を凌ぐことだけしか念頭になかったのは明らかです。”
3.財務省は前代未聞の「虚偽」を貫く
平成30年1月28日から始まった通常国会では、太田(現)理財局長が、前任の佐川理財局長の答弁を踏襲することに終始し、国民の誰もが納得できないような“詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられているのです。”
現在、近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。
しかしながら、近畿財務局の幹部をはじめ誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制のそのもの(実態)なのです。
本件事例を通じて、財務省理財局(国有財産担当部門)には、組織としてのコンプライアンスが機能する責任ある体制にはないのです。
4.決裁文書の修正(差し替え)
本年3月2日の朝日新聞の報道、その後本日(3月7日現在)国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です。
元は、すべて、佐川理財局長の指示です。
局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。
佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、補佐が過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました。
第一回目は昨年2月26日(日)のことです。
当日15時30分頃、出勤していた統括官から本省の指示の作業が多いので、手伝って欲しいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。
その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。
管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから管財部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。
美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと管財部長から聞きました。管財部長以外にも、●●管財部次長、●●次長の管財部幹部はこの事実をすべて知っています。
本省からの出向組の●●次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)
これが財務官僚機構の実態なのです。
パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。
佐川局長は、修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。
役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。
森友事案はすべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。
この事案は当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。
怖い無責任な組織です。
○刑事罰、懲戒処分を受けるべき者
佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部
担当窓口の補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)
この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。
事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。
今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚さと怖さ)
家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。
私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何?
兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。
さようなら
※手記原文で赤字で記載されている部分を“”内で表し、明らかな誤字、脱字は修正しています。朝日新聞が森友学園の一連の問題でこれまで報じている財務省の主要幹部は実名としています。
時事通信 2020年03月18日21時22分
自殺職員「改ざんは佐川氏の指示」 遺族が手記公表、国など提訴―「森友」決裁文書
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020031800856&g=soc
近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの遺書=18日午後、大阪市北区
学校法人森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざんに関与した後、自殺した近畿財務局職員赤木俊夫さん=当時(54)=の遺族の弁護団は18日、改ざんは当時同省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官の指示だったなどとする赤木さんの手記や遺書を公表した。
自殺した近畿財務局職員の遺書
赤木さんの妻は同日、自殺は同省幹部らの改ざん指示が原因として、国と佐川氏に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
手記は自宅のパソコンなどに保存されていた。それによると、改ざんは佐川局長の指示を受けた理財局幹部が修正箇所を決め、修正した文書を近畿財務局で差し替えたと指摘。「現場として相当抵抗した」が、本省から出向中の次長が修正、差し替えを行い、計3、4回の修正があったとした。
改ざんの理由については、佐川局長の国会答弁との整合性を図るためとし、理財局はコンプライアンス(法令順守)が機能する体制にないと批判した。
改ざん後、心身に支障が生じて休職したとし、「抵抗したとはいえ、関わった者として責任をどう取るか考えたが、今の健康状態ではこの方法を取るしかなかった」と自殺に至った経緯もつづられていた。
自殺した近畿財務局職員の愛読書を置き、記者会見する弁護士=18日午後、大阪市北区
遺書は手書きで「これが財務官僚王国。最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」などと記していた。
赤木さんは2018年3月、自宅で死亡しているのが見つかった。同財務局が学園側と国有地取引で交渉していた当時、国有財産を管理する部署に所属。上司の幹部職員が学園側と直接交渉しており、赤木さんは部下だった。
訴状によると、赤木さんは改ざんを強制され、長時間労働の結果うつ病を発症して自殺した。弁護団は大阪市内で記者会見し、「改ざんは、誰が何のためにやったのか。真実を知りたい」などとする妻のコメントを発表した。
赤木さんの手記と遺書については、週刊文春3月26日号も内容を報じている。
財務省の話 訴状の内容を確認していないことからコメントは差し控えたい。
毎日新聞2020年3月18日 20時00分(最終更新 3月18日 22時50分)
安倍首相「改ざんはあってはならない」 森友問題で自殺職員の遺書巡り
https://mainichi.jp/articles/20200318/k00/00m/010/275000c
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の職員の手記や遺書が公表されたことについて記者団の質問に答える安倍晋三首相=首相官邸で2020年3月18日午後6時50分、川田雅浩撮影
安倍晋三首相は18日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の公文書改ざん問題を巡り、自殺した財務省近畿財務局の職員の遺書に佐川宣寿理財局長(当時)の指示だったと記されていたことに関し、「大変痛ましい出来事で、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたい」と語った。そのうえで「財務省で麻生(太郎)大臣の下で事実を徹底的に明らかにしたが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していく」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。【竹地広憲】
毎日新聞 2020年3月19日 東京朝刊
森友改ざん 「理財局が人生壊した」 自殺職員、苦悩と批判
https://mainichi.jp/articles/20200319/ddm/041/040/059000c
自殺した近畿財務局の男性職員の手記(画像の一部を加工しています)
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員の遺族が国などを提訴した。遺族が公表した手記には、命令に逆らえず改ざんに加担させられた、一人の公務員の苦悩と後悔が克明につづられている。なぜ改ざんが行われ、どうして彼は命を絶ったのか。問題の核心を語らずに退場した佐川宣寿・元国税庁長官に、遺族は法廷で真実を語るよう訴えている。【松本紫帆、山本康介】
多くの報道陣が集まった遺族側代理人の記者会見=大阪市北区で2020年3月18日、加古信志撮影
自殺した赤木俊夫さん(当時54歳)の手記によると、最初に改ざんさせられたのは2017年2月26日。日曜日に上司から呼び出された。翌月にも改ざんの指示があったが「相当抵抗」し、近畿財務局の幹部にも相談。しかし財務省理財局からの強い要求で、書き換えが繰り返されたという。
財務省が18年に公表した報告書は、理財局長だった佐川氏が改ざんを主導したと認定。しかし詳細な理由や指示系統は明らかにされず、佐川氏も説明を避けたまま辞任した。
手記はこの報告書と大きな矛盾はなく、一連の経緯を詳細に記録している。ただ、改ざんについては「元はすべて佐川氏の指示」と明言し、「学園に厚遇したと取られる箇所はすべて修正の指示があったと聞いた」と記載。佐川氏の意向に財務省幹部らが過剰に反応して修正範囲が拡大したとして「佐川氏の指示には誰も背けない」「最後は逃げて、近畿財務局の責任にされる」と、財務省の組織体制を批判している。
赤木さんは学園への国有地売却交渉には関わっていなかったが、国有地が大幅に値引きされた背景に政治家らへの配慮があったことも示唆。参院議員だった鴻池祥肇氏(18年に死去)らの要望に財務省が応じたことが「問題の発端」と指摘している。
こうした経緯を隠すため財務省幹部らが虚偽の国会答弁を繰り返したとして、「嘘(うそ)に嘘を重ねるあり得ない対応」「怖い組織」と記している。
7ページにわたる手記の末尾では、自身が行った改ざんについて「公的な場所で説明できない。今の健康状態ではこの方法しかない」と、自ら死を選んだ理由を吐露。「家族を泣かせ、人生を破壊したのは理財局です」とつづり、佐川氏や当時の幹部らが刑事罰を受けるべきだと強く訴えていた。
妻「佐川さんは真実を」 弁護団「裁判で経緯明らかに」
「改ざんは誰が、何のためにやったのか。佐川さん、どうか本当のことを話してください」。赤木さんの妻は代理人を通じ、佐川氏にそう訴えた。
代理人によると、妻はこれまで佐川氏に経緯の説明や謝罪を求める手紙を送ったが、誠意ある返事はなかった。麻生太郎財務相の墓参りも望んでいたが、実現していない。自殺の経緯を知るため国に情報公開請求を行ったが、公表されたのは大半が黒塗りの文書だけだった。
提訴後の記者会見で、代理人の生越照幸弁護士は「残された道は訴訟しかない。どうして自殺に追い込まれたのか、原因と経緯を明らかにするための裁判だ」と語った。
赤木さんは岡山県で生まれ育ち、高校卒業後に旧国鉄に就職。国鉄の民営化を機に、当時の大蔵省にノンキャリアとして採用された。公務員の仕事に誇りを持ち、「僕の契約相手は国民」が口癖だった。笑顔を絶やさず、妻と結婚して22年、ほとんどけんかもしなかったという。趣味が豊富で、書道はプロ級の腕前だった。
妻は公表したコメントで「どうやったら夫を助けることができたのか、いくら考えても方法が見つからない。夫が死を決意した本当のところを知りたい」と訴えた。
妻は近畿財務局の上司から、赤木さんが改ざんの経緯をまとめた書類やデータを職場に残していたと聞いたという。これらは公開されておらず、訴訟で提出を求める方針だ。
赤木さんと交流があった近畿財務局OBの喜多徹信さん(71)は手記を読み、「悔しい思いをしていたんやな」と涙を流した。「公務で違法行為をさせられ、死に追い込まれたのに、誰も責任を取らないのはおかしい」と憤った。
一方、佐川氏らを不起訴処分にした大阪地検の反応は冷静だ。ある検察幹部は「パソコンなど膨大な資料を捜査しており、手記を踏まえても結果は変わらなかっただろう。遺族の思いとは別に、検察は法律の枠内で判断するしかない」と語った。【村松洋】
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財務省「新たな事実ない」
麻生太郎財務相は18日の参院財政金融委員会で、「残された遺族の気持ちを思うと言葉もなく、謹んでご冥福をお祈り申し上げる」と述べた。2018年6月に決裁文書改ざんに関する調査報告書をまとめ、関与した職員への処分を行ったとした上で、「大臣としての職責を果たしていきたい」と語った。財務省は「新たな事実は見つかっていない」とし、再調査は行わない方針だ。
財務省内では、多くの職員が取材に対し「この件については話せない」と足早に立ち去った。ある職員は、「亡くなる直前に書き残したという思いの強さに胸が痛くなった。上司から無理な指示を受けた時に、どう行動すべきか考えさせられた」と話した。【清水憲司】
NHK 2020年3月18日 19時42分森友学園問題
森友 文書改ざん “指示もと 佐川元局長と思う”自殺職員 手記
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200318/k10012338301000.html
財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ、自殺した近畿財務局の男性職員が、改ざんの経緯などを書き残していた「手記」などを、遺族が弁護士を通じて公表しました。国会での追及をかわすため、財務省の本省が主導して、抵抗した現場の職員に不正な行為を押しつけていた内情が克明に記されています。
公表されたのは、森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられた近畿財務局の職員で、おととし3月、改ざんが発覚した5日後に自殺した赤木俊夫さん(当時54)が書き残していた「手記」と「遺書」です。
「手記」は2種類あり、自殺した日の日付の手書きのものには「今回の問題はすべて財務省理財局が行いました。指示もとは佐川宣寿元理財局長と思います。学園に厚遇したととられかねない部分を本省が修正案を示し、現場として相当抵抗した。事実を知っている者として責任を取ります」などと記されています。
また、もう1つの「手記」はパソコンで7ページにまとめられたもので「真実を書き記しておく必要があると考えた」との書き出しで始まります。
学園との国有地取り引きが国会で問題化する中、野党の追及をかわすために財務省本省が指示していた不正行為の実態について、財務局の現場の職員の視点で細かく記されています。
この中では、実際には保管されていた学園との交渉記録や財務局内の文書を、国会にも会計検査院にも開示しないよう最初から指示されていたと明かしたうえで、事後的に文書が見つかったとする麻生財務大臣など幹部の国会での説明に対し、「明らかな虚偽答弁だ」という認識を記しています。
さらに「虚偽の説明を続けることで国民の信任を得られるのか」と財務省の姿勢に疑問を投げかける記述や「本省がすべて責任を負うべきだが最後は逃げて、財務局の責任にするのでしょう。怖い無責任な組織です」と組織の体質を批判する記述もあります。
そして最後に手記を残す理由について「事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ」と締めくくっていて、死を覚悟してまでも自身の責任を果たそうとした赤木さんの思いが読み取れます。
一方、「遺書」はすべて手書きで3通あり、家族に宛ててこれまでの感謝の気持ちを記したもののほか、1通は「森友問題」という書き出しで、「理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる。恐い命 大切な命 終止符」と財務省への憤りが記されています。
「手記」の詳細
(※『』内が「手記」の文章)
自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんが書き残した「手記」の主な内容です。
「手記」は手書きの2ページのものと、パソコンでまとめた7ページのものの2種類があります。このうち手書きのものは、赤木さんが自殺したおととし(平成30年)3月7日の日付になっています。
この中では
『今回の問題はすべて財務省理財局が行いました。指示もとは佐川元理財局長と思います。学園に厚遇したととられかねない部分を本省が修正案を示し現場として相当抵抗した。事実を知っている者として責任を取ります』などと記されています。
一方、パソコンでまとめた「手記」は「真実を書き記しておく必要があると考えた」という書き出しで始まります。
『はじめに私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、その対応に、連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わせている「森友学園への国有地売却問題」です。本件事案は、今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。この手記は、本件事案に関する真実を書き記しておく必要があると考え、作成したものです。』
「森友学園問題」が社会問題化する経緯を記したあと、籠池前理事長ら森友学園側との交渉は、現場の近畿財務局ではなく財務省が主導したとしています。
『全ては本省主導国有地の管理処分等業務の長い歴史の中で、強烈な個性を持ち国会議員や有力者と思われる人物に接触するなどのあらゆる行動をとるような特異な相手方で、これほどまで長期間、国会で取り上げられ、今もなお収束する見込みがない前代未聞の事案です。そのため、社会問題化する以前から、当時の担当者は、事案の動きがあった際、その都度本省の担当課に応接記録(面談等交渉記録)などの資料を提出して報告しています。したがって、近畿財務局が、本省の了解なしに勝手に学園と交渉を進めることはありえないのです。』
続いて、国会対応にあたった財務省の内情を明かし、佐川氏から野党の追及をかわすために財務局に保管されている文書を開示しないよう指示があったとしています。
『国会対応平成29年2月以降ほとんど連日のように、衆・参議院予算委員会等で、本件事案について主に野党議員から追及(質問)されます。世間を騒がせ、今も頻繁に取り上げられる佐川(前)理財局長が一貫して「面談交渉記録(の文書)は廃棄した」などの答弁が国民に違和感を与え、野党の追及が収まらないことの原因の一つとなっています。この資料(応接記録)を文書管理規則に従って、終始「廃棄した」との説明(答弁)は、財務省が判断したことです。その理由は、応接記録は、細かい内容が記されていますので、財務省が学園に特別の厚遇を図ったと思われる、あるいはそのように誤解を与えることを避けるために、当時の佐川局長が判断したものと思われます。佐川理財局長の指示により、野党議員からの様々な追及を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています。(現場の私たちが直接佐川局長の声を聞くことはできませんが、本省国有財産審理室の補佐からは、局長に怒られたとよく言っていました。)また、野党に資料を提出する前には、国会対応のために、必ず与党(自民党)に事前に説明した上で、与党の了承を得た後に提出するというルールにより対応されていました。』
会計検査院の特別検査に対しても、保管されている記録を見せないよう、財務省本省の指示があったとし、この検査をめぐる財務省幹部の国会答弁は虚偽だとしています。
『会計検査院への対応国会(参議院)の要請を受けて、近畿財務局が本件事案に関して会計検査院の特別検査を、昨年平成29年4月と、6月の2回受検しました。この時、法律相談の記録等の内部検討資料が保管されていることは、近畿財務局の文書所管課等の全ての責任者(統括法務監査官、訟務課長、統括国有財産管理官)は承知していました。したがって、平成30年2月の国会(衆・予算委員会等)で、財務省が新たに議員に開示した行政文書の存在について、麻生財務大臣や、太田理財局長の説明「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」(答弁)は、明らかに虚偽答弁なのです。さらに、新聞紙上に掲載された本年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である。それは、検査の際、この文書の存在は、法務担当に聞かなくても、法務担当以外の訟務課・統括国有財産管理官は作成されていることを当然認識しています。これも近畿財務局は本省主導で資料として提示しないとの基本的な対応の指示に従っただけなのです。』
国会や会計検査院に対し、虚偽の説明を続ける財務省の姿勢に、赤木さんは赤い文字で「疑問」を投げかけています。
『(疑問)財務省は、このまま虚偽の説明を続けることで国民(議員)の信任を得られるのか。当初、佐川理財局長の答弁がどこまでダメージコントロールを意識して対応されていたかといえば、当面の国会対応を凌ぐことだけしか念頭になかったのは明らかです。』
『財務省は前代未聞の「虚偽」を貫く平成30年1月28日から始まった通常国会では、太田(現)理財局長が、前任の佐川理財局長の答弁を踏襲することに終始し、国民の誰もが納得できないような詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられているのです。現在、近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。しかしながら、近畿財務局の幹部をはじめ、誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制のそのもの(実態)なのです。本件事例を通じて、財務省理財局(国有財産担当部門)には、組織としてのコンプライアンスが機能する責任ある体制にはないのです。』
そして、みずからも関わることになった「決裁文書の改ざん」の経緯の説明に移っていきます。
『決裁文書の修正(差し替え)元は、すべて佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。佐川理財局長の指示を受けた、財務省本省理財局幹部、補佐が過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました。第一回目は昨年2月26日(日)のことです。当日15時30分頃、出勤していた統括官から本省の指示の作業が多いので、手伝ってほしいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局の総務課長をはじめ国有財産審理室長などから部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。美並局長は、本件に関しては全責任を負うとの発言があったと部長から聞きました。部長以外にも、次長ら管財部幹部はこの事実をすべて知っています。本省からの出向組の次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)これが財務官僚機構の実態なのです。パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。佐川局長は、修正する箇所を事細かく指示したかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。』
さらに森友学園をめぐる問題を主導した財務省の姿勢や、組織の体質への痛烈な批判が続きます。
『森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。この事案は、当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です。』
そして『刑事罰、懲戒処分を受けるべき者』として佐川氏のほか、当時の財務省理財局の幹部らを名指ししています。
所属する組織の指示で、不正に加担させられた赤木さん。自らの死を覚悟してまで「手記」を書いた理由を綴っています。
『この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何?兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。さようなら』。
「遺書」の内容
自 殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんが残した3通の「遺書」の内容です。
1通は「森友問題」という書き出しで「佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それに指示NOを誰も言わない理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる。恐い命 大切な命 終止符」と手書きされています。
ほかの2通も手書きで家族に宛てたもので、妻や義理の母親などに「これまで本当にありがとうゴメンなさい恐いよ。心身ともに滅いりました。ゴメンなさい大好きなお母さん」などと書かれています。
「手記」と財務省の調査報告書 食い違いも
「手記」には、決裁文書の改ざんや交渉記録の廃棄などの経緯が克明に記されています。この内容とおととし6月に財務省が公表した調査報告書の内容には、一部で食い違いも見られます。
(1)改ざんの指示
手記には決裁文書の改ざんについて「すべて、佐川理財局長の指示です」としたうえで、佐川氏の指示を受けた財務省理財局幹部が過剰に修正箇所を決め、3年前の2月26日から近畿財務局で改ざんが始まったなどと記されています。
これについて財務省の調査報告書でも改ざんが始まったのは2月26日で、佐川氏が改ざんを事実上指示していたと認定しています。
報告書によりますと、佐川氏は当時の部下の理財局の総務課長と国有財産審理室長から決裁文書の内容について報告を受け「そうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した」としています。
そして2月26日に審理室長らが文書の改ざんを行い、同じ日に、財務省理財局から近畿財務局の職員に出勤を要請したうえで、別の決裁文書について改ざんするよう具体的に指示したとしています。
(2)近畿財務局の反発
手記には「その後の3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり、現場として私はこれに相当抵抗した」と記されています。
これについて財務省の調査報告書でも近畿財務局の職員が本省理財局からのたび重なる改ざん指示に強く反発したことが記されています。
報告書によりますと、3月7日の未明に理財局から2つの決裁文書の改ざんの案が近畿財務局に送られましたが、佐川氏も含めて議論した結果、翌8日にはさらに多くの記述を改ざんする案が改めて財務局に示されたということです。
改ざんを指示された財務局の職員はそもそも改ざんを行うことに強い抵抗感があり、理財局からのたび重なる指示に強く反発したということで、この職員は3月8日までに上司の管財部長に相談をしたとしています。
しかし財務省は、自殺した職員が改ざんを指示されていたのかや、改ざんに反発した職員だったのかどうかは明らかにしていませんでした。
(3)会計検査院への虚偽回答
手記には3年前の平成29年4月と6月に会計検査院の検査を受けた際の対応について「応接記録を始め法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さず、検査院には『文書として保存していない』と説明するよう事前に本省から指示があった」と記されています。
これについて財務省の調査報告書でも去年3月以降、国有地売却問題を検査していた会計検査院から廃棄していない交渉記録を提出するよう繰り返し求められていたにもかかわらず、国会で存在を認めていない文書を提出するのは妥当ではないと考え「存在しない」とする、うその回答を続けたとしています。
(4)法律相談記録では食い違いも
一方、財務省がおととし2月に公表した国有地売却に関する法律相談の文書をめぐっては手記と財務省の調査報告書の内容が食い違っています。
財務省の調査報告書では法律相談の文書の保存が確認された時期について、情報公開請求への対応のため平成29年10月から11月にかけて関連文書を探索した結果、確認されたとしています。
しかし、手記には検査院の検査を受けた平成29年4月と6月の時点で「法律相談の記録等の資料が保管されてていることは近畿財務局の文書所管課などのすべての責任者は承知していた」としていて、「おととし2月の国会で麻生財務大臣や太田理財局長が『行政文書の開示請求の中で改めて近畿財務局で確認したところ法律相談に関する文書の存在が確認された』という答弁は、明らかに虚偽答弁だ」などと記されています。
妻のメッセージ「佐川さん、本当のことを話して下さい」
赤木さんの妻は提訴に合わせて、手記や遺書を公表した理由やいまの心境をメッセージとしてまとめ、代理人の弁護士が記者会見で読み上げました。
「夫が亡くなってから2年が経ちました。あのとき、どうやったら助けることができたのか。いくら考えても私には助ける方法がまだ見つかりません。心のつかえが取れないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいです。夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が何のためにやったのか。改ざんをする原因となった土地の売り払いは、どうやって行われたのか。真実を知りたいです。今でも近畿財務局の中には、話す機会を奪われ苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局には作ってもらい、この裁判で全てを明らかにしてほしいです。そのためにはまず、佐川さんが話さなければならないと思います。夫のように苦しんでいる人を助けるためにも、佐川さん、改ざんの経緯を、本当のことを話して下さい。よろしくお願いします」
弁護士「国は真相解明のため誠実に対応を」
提訴後に記者会見した原告の代理人の生越照幸弁護士は「真実を訴訟で明らかにするためには、国側が真相解明のために誠実に対応することが大前提となる。国は訴訟で旗色が悪くなるとすぐに認め、肝心の中身に入れないようにするケースが多い。今回は、国も佐川氏もきちんと対応するよう願っている」と話していました。
松丸正弁護士は「亡くなった赤木さんは手記の最後に、『今の健康状態と体力ではこの方法しかとれなかった』と記している。本当は事実をみずから伝えたかったはずだ。この裁判で真実を明らかにしたい。裁判を通じて、今後、違法なことを命じられた現役の職員たちが、声をあげて抵抗できるような組織にしていきたい」と話していました。
NHK 2020年3月18日 20時19分森友学園問題
財務省官房長「手記 報告書の内容と大きな齟齬(そご)ない」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200318/k10012338451000.html
自殺した近畿財務局の職員の手記について、財務省の茶谷栄治官房長は参議院財政金融委員会で、おととし財務省が公表した改ざん問題に関する調査報告書の内容と大きな齟齬(そご)はないという認識を示しました。
この中で財務省の茶谷官房長は、自殺した近畿財務局の職員の手記について「報道を通じて、今回初めて知ったところだ。問題の調査をしている最中にはわれわれはこの手記は見ていなかったが、調査では大臣官房の人事担当部局を中心に多数の職員から聞き取りをしたほか、関連文書や職員のコンピューターの確認をできるかぎり行った結果を取りまとめた」と述べました。
そのうえで「報道された手記では、決裁文書の改ざんなどが財務省本省の主導で行われたという趣旨の記述が多く見られるが、調査報告書でも国有財産行政の責任者だった理財局長が方向性を決定づけるなど、一連の問題行為は理財局の指示により行われたものであり、近畿財務局の職員が理財局のたび重なる指示に強く反発したことをまさに認識している。この手記と調査報告書に大きな齟齬はないものと考えている」と述べました。
麻生財務相「弔問 遺族の了解いただけず」
麻生副総理兼財務大臣は参議院財政金融委員会で、自殺した近畿財務局の職員の弔問に訪れるつもりがあるか対応を問われたのに対し「当時、ご遺族の了解をいただければ弔問させていただきたいと思っていたが、ご了解はいただけなかった。ご遺族の気持ちに反したことをしたいわけではなく、私たちとしては伺わせていただければという気持ちに変わりはないので、ご遺族の意向を直接きちんと伺いたい」と述べました。
日本経済新聞 2020/3/18 14:42 (2020/3/18 20:13更新)
自殺職員の妻、佐川氏提訴 森友文書「改ざんを強制」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56933760Y0A310C2AC8000/
亡くなった近畿財務局の職員の手記
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題で、財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは改ざんを強制されたのが原因などとして、妻が18日、国と佐川宣寿元国税庁長官に計約1億1200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻側は「改ざんは佐川氏の指示だった」などと記された赤木さんの手記を公表した。
赤木さんの自殺を巡っては、財務局が民間企業の労災に当たる「公務災害」と認定している。原告側の代理人弁護士は同日、大阪市内で記者会見し「夫が死を決意した本当のところを知りたい。裁判で全てを明らかにするためにも、佐川さんには改ざんの経緯や真実を話してほしい」などとする妻のコメントを代読した。
国と佐川元国税庁長官に損害賠償を求め提訴し、記者の質問に答える原告の弁護士ら(18日午後、大阪市)
訴状によると、2017年2月、財務局が学園に大阪府豊中市の国有地を鑑定価格から8億円余り値引きして売却していた問題が表面化。赤木さんは当時、上席国有財産管理官として紛糾する国会対応などに追われたという。
当時、理財局長だった佐川氏は17年2月以降、省内の部下に「森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと、決裁文書の改ざんを指示。赤木さんは抵抗したが、財務局の上司の指示を受けて3、4回にわたり改ざん作業を強制された。
この結果、長時間労働や連続勤務で心理的負荷が過度に蓄積。同年7月にうつ病と診断されて休職し、18年3月7日に自宅で手記や遺書を残して自殺した。手記には「森友事案はすべて本省の指示。本省の対応が社会問題を引き起こし、うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こした」などとつづられている。
決裁文書の改ざん問題を巡り、財務省は18年3月、決裁文書14件の改ざんを認めた。同6月に佐川氏が主導したとする報告書を公表し、佐川氏ら20人を処分した。
告発を受けた大阪地検特捜部は有印公文書変造や背任などの容疑で捜査したが、佐川氏や改ざんに関与した財務省職員ら計38人全員を不起訴とした。
中日新聞 2020年3月19日 朝刊
森友改ざんで自殺の職員「佐川氏の指示」 手記・遺書公表
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2020031902000070.html
18日に公表された赤木俊夫さんの手書きの遺書。「これが財務官僚王国最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」などとつづられていた
学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が、佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官(62)の指示で決裁文書の改ざんを強要され自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が十八日、佐川氏と国に約一億一千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻は「元はすべて佐川氏の指示。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」とする赤木さんの手記や遺書を公表。代理人を通じて「夫が死を決意した本当のことを知りたい」と訴えた。
訴状などによると、当時財務省理財局長だった佐川氏は、安倍晋三首相が国会で国有地売却問題について「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の二〇一七年二~四月、「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと財務省幹部に指示。幹部は近畿財務局に改ざんを命じた。
近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木さんは二月二十六日、同局の上司から呼び出されたのを皮切りに、三~四回にわたって決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分を削除する作業を強制された。
赤木さんは「こんな事をする必要はない」などと強く反発したり涙を流したりして抗議したが、本省や上司の指示のためやむを得ず従った。
この間、連続出勤や午前二~三時までの長時間労働が重なり、七月にうつ病を発症して休職。十二月には大阪地検から電話で事情聴取を受け「改ざんは本省のせいなのに、最終的には自分のせいにされる」と心理的負荷が強まり、翌一八年三月七日に自殺した。
手書きの遺書には「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ」などと書かれていた。
妻は国に対し「健康状態の悪化を容易に認識し、自殺を予見できた」として約一億七百万円を、佐川氏には「改ざんの強制で極めて強い心理的負荷を受けることは予見できた」として五百五十万円を求めた。
妻は提訴の理由について「死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。土地の売り払いはどう行われたのか、真実を知りたい」と代理人を通じてコメントした。
財務省は「(訴状の)内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。
<森友学園問題> 学校法人「森友学園」が取得し、小学校新設を計画していた大阪府豊中市の国有地が8億円余り値引きされたことが2017年2月に発覚。名誉校長には安倍昭恵首相夫人が一時就任していた。佐川宣寿元国税庁長官は国会答弁で森友側との事前価格交渉を否定したが、交渉をうかがわせる内部文書などが明らかになり財務省が決裁文書を改ざんしていたことも判明した。大阪地検特捜部は補助金の詐欺罪などで学園前理事長の籠池泰典被告と妻を起訴。両被告は大阪地裁で有罪判決を受け控訴した。背任や文書改ざんなどの疑いで告発された佐川氏や財務省職員らはいずれも不起訴となった。
◆政府、再調査せず
政府は十八日、森友学園問題で決裁文書の改ざんに関わり自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表を受け、改ざんの経緯などを改めて調査する考えはないとした。
安倍晋三首相は、官邸で記者団から手記に関する受け止めを聞かれ「財務省で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならず、今後も適正に対応していくものと考えている」と語った。再調査には触れなかった。自らの責任についての質問には、答えずに立ち去った。
財務省の茶谷栄治官房長は参院財政金融委員会で、二〇一八年六月に公表した調査報告書では、改ざんが行われた当時に理財局長だった佐川宣寿氏が方向性を決定付け、理財局が一連の行為を指示したと結論づけていると説明した。
自殺した職員が理財局からの度重なる指示に反発したことも認定したとして「新たな事実は見つかっていないと考えられる。再調査は考えていない」とした。
麻生太郎財務相は同委で「関与した職員に厳正な処分を行い、私自身も閣僚給与を自主返納した」として問題は決着済みと強調。「大臣の職責を果たしていきたい」と、改めて辞任を否定した。
NHK 2020年3月18日 20時05分森友学園問題
「森友学園」文書改ざん 野党側検証チーム ヒアリング実施へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200318/k10012338331000.html
「森友学園」をめぐる問題で自殺した近畿財務局の職員の手記が公表されたことを受け、野党側の検証チームは、職員の遺族の弁護士からヒアリングを行うなどして、事実関係を調べる方針です。
「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局の男性職員が改ざんの経緯などを書き残していた手記などが公表され、野党4党合同の検証チームのメンバーが記者会見しました。
座長を務める立憲民主党の川内博史氏は「男性職員は、この問題を正直に説明しようとして、悩まれて自死された。手記で明らかになったのは、安倍総理大臣の『私や妻が関係しているということになれば、総理大臣も国会議員もやめる』という答弁が、改ざんの出発点となったことだ」と指摘しました。
そのうえで「改ざんや職員の自殺の責任は安倍総理大臣にあり、真実を明らかにしなければならない」と述べました。
検証チームでは、当時財務省理財局長だった佐川宣寿氏が直接改ざんを指示したのかどうか確認する必要があるとして、自殺した職員の遺族の弁護士や当時の財務省の幹部などからヒアリングを行う方針です。
国民玉木代表「財務省 このままでは組織が死ぬ」
国民民主党の玉木代表は記者会見で「財務省は下に責任を押しつけて大臣も含めた上が責任を取っていないが、このままでは優秀な人は集まらず、組織が死ぬ。財務省みずからが徹底的に再調査し検証すべきだ。国会にも特別委員会を設け、事実を明らかにすべきだ」と述べました。
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毎日新聞2019年8月8日 東京朝刊
森友学園:国有地売却問題 決裁文書改ざん 財務局職員自殺は「労災」 過重公務と因果関係
https://mainichi.jp/articles/20190808/ddm/041/040/043000c
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、決裁文書改ざんを強要されたとのメモを残して昨年3月に自殺した近畿財務局の男性職員(当時54歳)について、近畿財務局が公務員の労災に当たる「公務災害」と認定していたことが7日、政府関係者への取材で分かった。認定は昨年冬。肉体、精神面での過重な公務との因果関係があったと判断したとみられる。
財務省は調査報告書で、文書改ざんは当時理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官(61)が方向付け、本省が財務局に指示したと明記していた。今回の認定は本省幹部が遺族を訪ねて報告、謝罪したといい、不正を起こさない取り組みが問われる。
財務省理財局は、国有地の大幅な値引きが報道で知れ渡った後の2017年2月下旬~4月、近畿財務局に指示し、決裁文書から安倍昭恵首相夫人に関する記述や政治家秘書らの働き掛けを示す部分を削除した。この時期に男性職員は担当の管財部に所属していた。
毎月100時間に及ぶ残業実態を親族に漏らしていたとされ、17年夏ごろから体調を崩し休職。改ざんが発覚した直後の昨年3月7日、神戸市の自宅で自ら命を絶った。
調査報告書は個人を特定しなかったが、管財部職員らが改ざん指示に抵抗、反発した経緯や、本省からの照会や取材対応で「多忙を極めた」ことを指摘。こうした経緯を踏まえ、公務災害と認定したようだ。財務省は個別の認定案件の詳細を明らかにしていない。
財務省は昨年、14件の改ざんを確認し、佐川氏ら20人を処分した。佐川氏らは有印公文書変造・同行使容疑などで大阪第1検察審査会の「不起訴不当」議決を受けた。
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民主主義の根幹が揺らぐ問題 徹底的な検証がないまま、うやむやになりかねない
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
国・佐川氏を妻提訴 森友文書改ざん、財務局職員自殺 「佐川氏指示」主張
----学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、同省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは、公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。
----財務省は一昨年6月、内部調査の結果を発表した。佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたとする一方、指示した文言が明確に書かれていないなど、数々の疑問が残る内容だった。大阪地検も不起訴にし、詳しい捜査内容を公にしていない。
公文書は政策決定の過程を記録し、後世に残すものだ。財務省はそれを改ざんして国会にも提出した。民主主義の根幹が揺らぐ問題なのに、徹底的な検証がないまま、うやむやになりかねない情勢だ。再発を防ぐ取り組みは進むどころか、「桜を見る会」でもまた公文書の廃棄などが問題になった。「なぜ夫が自殺に追い込まれなければいけなかったのか」と究明を求める思いに共感する国民は少なくないだろう。
佐川氏は改ざん発覚後の国会の証人喚問で、改ざんの経緯についてほとんどの証言を拒否した。妻は、国や佐川氏が法廷で真摯(しんし)に説明するよう求めている。一線の職員の命が失われた重みを受け止め、どう対応するのか。これを機に国会でも説明を尽くすのか。政権の姿勢が問われている。
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時42分
「内閣吹っ飛ぶ」森友文書改ざんで職員 遺書は震える字
----「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。2年前、公文書の改ざんを強いられた、とする手記と遺書を残して財務省近畿財務局の職員が自殺した。なぜ夫は死ななければならなかったのか――。妻は、すべてが法廷で明らかになることを願う。
公私ともに充実 暗転したあの日
「責任をどう取るか、ずっと考えてきました。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありません」
弁護団は提訴に合わせて、赤木俊夫さん(当時54)の手記や遺書を報道陣に公開した。手記は、自宅のパソコンに残されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚。3通が残されていた手書きの遺書には、震えるような字がつづられていた。
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時17分
「すべて、佐川局長の指示です」自殺した職員の手記全文
https://digital.asahi.com/articles/ASN3L6K55N3LPTIL00Z.html
NHK 2020年3月18日 19時42分森友学園問題
森友 文書改ざん “指示もと 佐川元局長と思う”自殺職員 手記
----財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ、自殺した近畿財務局の男性職員が、改ざんの経緯などを書き残していた「手記」などを、遺族が弁護士を通じて公表しました。国会での追及をかわすため、財務省の本省が主導して、抵抗した現場の職員に不正な行為を押しつけていた内情が克明に記されています。
以下参考
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
国・佐川氏を妻提訴 森友文書改ざん、財務局職員自殺 「佐川氏指示」主張
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14408138.html
公文書改ざん問題についての財務省の報告書(2018年6月4日)のポイント
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、同省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは、公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。▼2面=指示焦点、4面=国会では、39面=震える字
弁護団は同日、赤木さんが残した手記や遺書を公表した。手記では決裁文書の修正は佐川元局長の指示で、近畿財務局の現場職員の抵抗にもかかわらず行われたと説明されていた。原告側はこうした手記を証拠提出するとともに、佐川氏ら当時の関係者の尋問も求める方針で、訴訟を通じて改ざん問題の新たな事実が浮かび上がる可能性もある。
訴状によると、赤木さんは国有地売買の担当部署に所属。2017年2月に近畿財務局の上司に呼び出され、大阪府豊中市の国有地を森友学園に売却した取引の経緯を記した公文書から、学園側を優遇した記載を削除するなどの改ざんを指示された。赤木さんは強く抵抗したが、複数回改ざんを強要されたという。
赤木さんは業務のストレスなどから同7月にうつ病と診断されて仕事を休んだ。同11月に検察から任意の取り調べを打診された後は自殺願望を口にするようになった。
18年3月に公文書改ざん問題が報道された5日後、赤木さんは亡くなった。近畿財務局は19年2月、公務災害に認定している。
原告側は一連の改ざんについて、国有地売却をめぐって安倍晋三首相が「私や妻が関係していれば首相も国会議員もやめる」などとした国会答弁を受けて佐川氏が発案し、主導的立場から改ざんの指示を行ったと主張。改ざんを指示して長時間労働をさせたなどとして国に約1億700万円を請求する一方、佐川氏の職権乱用は違法性の程度が著しく、公務員本来の職務ではない個人の不法行為で、退職後も妻への経緯説明と謝罪を拒否したとして550万円の賠償を求めている。
財務省は「訴状が届いておらず、内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。
国有地売却や公文書改ざん問題を捜査していた大阪地検特捜部は、弁護士らから告発された佐川氏ら38人を不起訴処分として捜査を終えている。(遠藤隆史、米田優人)
■<視点>究明不足、問われる政権
公文書の改ざんを強いられ、命を絶った財務省職員の妻が国などを相手に提訴した。改ざんの詳しい経緯を明らかにしたいとの願いからだ。問題の発覚から2年。これまでの真相究明が不十分な証しと言える。
財務省は一昨年6月、内部調査の結果を発表した。佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたとする一方、指示した文言が明確に書かれていないなど、数々の疑問が残る内容だった。大阪地検も不起訴にし、詳しい捜査内容を公にしていない。
公文書は政策決定の過程を記録し、後世に残すものだ。財務省はそれを改ざんして国会にも提出した。民主主義の根幹が揺らぐ問題なのに、徹底的な検証がないまま、うやむやになりかねない情勢だ。再発を防ぐ取り組みは進むどころか、「桜を見る会」でもまた公文書の廃棄などが問題になった。「なぜ夫が自殺に追い込まれなければいけなかったのか」と究明を求める思いに共感する国民は少なくないだろう。
佐川氏は改ざん発覚後の国会の証人喚問で、改ざんの経緯についてほとんどの証言を拒否した。妻は、国や佐川氏が法廷で真摯(しんし)に説明するよう求めている。一線の職員の命が失われた重みを受け止め、どう対応するのか。これを機に国会でも説明を尽くすのか。政権の姿勢が問われている。(大阪社会部長・羽根和人)
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
(時時刻刻)佐川氏の指示、再び焦点 職員遺族が提訴 森友文書改ざん
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14408120.html
官邸を出る際、記者からの質問に答える安倍晋三首相=18日午後6時50分、岩下毅撮影
森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんが発覚してから2年。自ら命を絶った近畿財務局職員の妻が、夫の自殺は改ざんを強制されたためだとして国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長を提訴した。改ざんは佐川氏の指示だとする手記や遺書も公開し、裁判での真相解明を求める。野党は改ざんの経緯などについて追及を強める構えだ。▼1面参照
■原告側、「主導的」と指摘 職員手記、改ざんの経緯記録
「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰が誰のためにやったのか。改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか。真実を知りたい」
提訴後に大阪市内で記者会見した代理人弁護士は、赤木俊夫さん(当時54)の妻のコメントを読み上げた。
原告側は訴状の冒頭に、提訴の目的を列挙。真相解明だけでなく、「上層部の保身と忖度(そんたく)を目的とした指示で現場の職員が自殺することが二度とないようにすること」「どのような改ざんとうその答弁が行われたのか公的な場で説明すること」を求めるとした。
原告側は、佐川氏が改ざんを発案して主導的立場から指示したなどとして国とともに佐川氏個人を被告とした。訴訟で最大の焦点となるのは、14件の文書で安倍晋三首相の妻昭恵氏をめぐる記載を削除するなどした改ざんを、佐川氏が明確に指示したかどうかだ。
財務省は2018年6月に公表した調査報告書で、佐川氏が「文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した」ことで、理財局総務課長らが「直す必要があると認識した」と記載。佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と認めたが、明確な指示については言及していない。
一方、赤木さんの手記は「元は、すべて、佐川理財局長の指示です」と断言。「学園を厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう佐川氏から指示があったと聞いた」と記されている。
さらに「佐川局長の指示には誰も背けない」として、手記は本省からの指示に屈した近畿財務局の対応も描いた。財務局の部長は当初は指示に応じない姿勢を見せていたが、本省理財局の総務課長らからの電話で指示を受け入れた。トップの財務局長は「本件に関して全責任を負う」と発言した、と部長から聞いた――。手記は「これが財務官僚機構の実態なのです」と訴える。
さらに手記では、佐川氏や後任の理財局長が文書管理などをめぐって虚偽答弁を重ねたとして、赤木さんが不信感を募らせた様子が記されている。
残る謎を解明するカギとして、原告側は赤木さんが改ざんの過程を記録したファイルが国側に残されているとして、提出を求めた。さらに佐川氏本人への尋問や、当時の財務省幹部らの証人尋問を求める方針だ。
佐川氏は国会の証人喚問で改ざんについて問われた際には、「捜査の対象になっている」と証言を拒否。だがその大阪地検特捜部の捜査もすでに不起訴で終結した。赤木さんの妻のコメントの結びは、佐川氏に向けられた。「佐川さん、改ざんの経緯を、本当のことを話してください」(米田優人、岡戸佑樹)
■政権冷ややか「今さら」 財務省「報告書と齟齬ない」
安倍政権は、すでに財務省の調査報告書などがまとまっていることから、「今さら、という話だ」(政権幹部)とみて、再調査や国会での財務省関係者の招致などには応じない方針だ。
18日の参院財政金融委員会で麻生太郎財務相は、手記や遺書の内容が明らかになったことの受け止めを問われ、「ご遺族の気持ちを思うと言葉もなく、謹んでご冥福をお祈り申し上げる」と述べた。一方、佐川氏の国税庁長官への起用などについては「それぞれの能力や経験に照らしてポストに配置した」と述べ、問題はなかったとの認識を改めて示した。
手記の存在をめぐっては、財務省の茶谷栄治官房長が「報道を通じて初めて知った」と答弁。「手記と調査報告書は大きな齟齬(そご)はない」との認識を示し、「再調査を行うことは考えていない」と言い切った。
自民党の参院幹部も「(手記の内容で)新事実が出てきたわけではない」、参院中堅は「関係者は処分したとして、力で押し切るしかないだろう」といい、問題にフタをしてやり過ごしたい考えだ。
ただ、「桜を見る会」や東京高検検事長の定年延長問題などで政府の説明責任が厳しく問われる中、行政の公正性や中立性を揺るがす森友問題が再燃することを懸念する声も上がる。
自民党副幹事長のひとりは「安倍政権は隠蔽(いんぺい)体質と批判されている。今回のことで『やっぱりそうか』となりかねない」と漏らす。公明党の石田祝稔政調会長は18日の会見で「自ら命を絶つということは、よっぽどのことがあると率直に受け止める。今までの国会答弁との整合性は議論になるのではないか」と述べた。
立憲民主党など野党は18日、森友問題の再検証チームを発足させることを決めた。手記に記されていた佐川氏による改ざん指示の有無を国会でただすため、証人喚問なども求めていく構えだ。
さらに野党が問題視するのは、17年2月の衆院予算委員会での「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という首相答弁だ。これをきっかけに財務省の文書改ざんが始まり、問題の隠蔽工作が行われたとかねて批判してきた。
検証チームの座長に就いた立憲の川内博史衆院議員は「手記で明らかになったことの出発点は首相の答弁だ。すべての責任は首相にあると言わざるをえない」と、いまもあいまいとなっている改ざんが始まった経緯などを厳しくただす考えを示した。
首相は18日夜、首相官邸で記者団の取材に応じ、「改めてご冥福をお祈りしたい。改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していく」と述べた。首相の責任を問う質問も出たが、それには答えず官邸を立ち去った。(永田大、寺本大蔵)
朝日新聞デジタル 2020年3月19日 5時00分
改ざん苦悩、震える字 夫の手記・遺書、妻「真実知りたい」 財務局職員自殺、提訴
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14408190.html
赤木俊夫さんが残した手書きの文書
「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。2年前、公文書の改ざんを強いられた、とする手記と遺書を残して財務省近畿財務局の職員が自殺した。なぜ夫は死ななければならなかったのか――。妻は、すべてが法廷で明らかになることを願う。▼1面参照
「責任をどう取るか、ずっと考えてきました。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありません」
弁護団は提訴に合わせて赤木俊夫さん(当時54)の手記や遺書を報道陣に公開した。手記は、自宅のパソコンに残されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚。3通が残されていた手書きの遺書には、震えるような字がつづられていた。
訴状などによると、赤木さんは明るく社交的な性格で、書道や落語、美術鑑賞などを楽しむ生活を送っていた。誠実な努力家でもあり、誇りを持って仕事に取り組んでいたという。
夫婦仲も良く、公私ともに充実した日々。しかし2017年2月26日の日曜日、その生活が暗転した。
赤木さんが休日で妻と義母の3人で公園を訪れていた時、上司から「登庁してほしい」と連絡が入った。「上司が困っているから助けに行くわ」。出勤した赤木さんを待っていたのが、改ざんの指示だった。
妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明け、手記には「私は相当抵抗しました」と記した。言葉から必死に不正にあらがった様子が浮かぶ。それでも最後は改ざんに手を染めざるを得なかった。
改ざんを重ねるうちに、赤木さんから笑顔が消えてふさぎ込むように。同年7月、うつ病と診断され、仕事に行けなくなった。同年12月に大阪地検から電話で事情を聴かれると、病状は急速に悪化していった。そして18年3月、赤木さんは命を絶った。
弁護団によると、妻は当時のことを「体の半分がちぎれて無くなったようだ」と語ったという。しかし、その後も国側の対応に苦しめられた。弁護士を通じて佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に経緯の説明と謝罪を求めたが、面会は実現しなかった。公務災害とは認定されたが、開示された資料は大半が黒塗りでその理由もわからなかった。
弁護団の生越(おごし)照幸弁護士は会見で、妻の心情を代弁した。「手を尽くしても、知りたかったことが何もわからない。ご遺族にとって残された道は訴訟しかなかった」(遠藤隆史)
■検察も経緯把握、それでも不起訴
国有地売却や財務省の公文書改ざん問題を捜査していた大阪地検特捜部も、赤木さんが残した「手記」で記された改ざんの経緯を把握していた。それでも、弁護士らから告発された佐川元理財局長ら全員を不起訴として捜査を終えた。
改ざんに関する告発容疑は(1)決裁文書から安倍晋三首相の妻昭恵氏や政治家の名前を削除するなどして改ざんした有印公文書変造・同行使容疑など(2)財務省が学園側との交渉記録などを廃棄したとする公用文書毀棄(きき)容疑などだった。
だが、(1)では改ざんされた政治家の関与などは文書の本質的な部分ではなく、国有地の売買契約などの情報は大きく変わっていない▽(2)では「1年未満」とする保存期間を過ぎた文書は廃棄しなければならないとの財務省の規則がある――などから、特捜部はいずれも「有罪判決を得られる高度な見込みがあるとは言えない」と結論づけた。(多鹿ちなみ、細見卓司)
■公文書管理に警鐘
内閣府の公文書管理委員会委員を務めた三宅弘弁護士の話 公開された手記は、財務省による組織的な隠蔽(いんぺい)工作を明らかにし、中央省庁の公文書の管理実態について警鐘を鳴らすものだ。これだけの改ざんを理財局長だった佐川氏だけの判断でできたのだろうか。佐川氏個人ではなく財務省全体の問題とみて訴訟の推移を見ていくべきだろう。私たちは、民主主義の根幹を支える公文書管理のあり方に関心を持たなければならない。これは「桜を見る会」にも共通する問題だ。
■赤木さんの妻のコメント(全文)
赤木俊夫さんの妻は、弁護団を通じて次のようにコメントした。
夫が亡くなって2年が経ちました。あの時どうやったら助けることができたのか。いくら考えても私には助ける方法がまだ見つかりません。
心のつかえが取れないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいと思っています。
夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が誰のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか、真実を知りたいです。
今でも近畿財務局の中では話す機会を奪われ苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局にはつくっていただき、この裁判ですべてを明らかにしてほしいです。そのためには、まず佐川さん(佐川宣寿・元同省理財局長)が話さなければならないと思います。今でも夫のように苦しんでる人を助けるためにも、どうか佐川さん、改ざんの経緯を本当のことを話してください。よろしくお願いします。
■手記の要旨
手記 平成30年2月(作成中)
私は昨年2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当しました。世間をにぎわせている「森友学園への国有地売却問題」です。今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因で、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。
本省は、本件が取り上げられた当初の時点では、全ての資料を議員に示して事実を説明するという姿勢でした。ところが、佐川(宣寿)理財局長の指示で資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングも後送りするよう指示があったと聞いています。
国会、国会議員、会計検査院への各対応も、本省で基本的な対応のスタンスが決められました。特に会計検査院への対応では、本省から、資料は最小限とする▽できるだけ資料を示さない▽法律相談関係の検討資料は「ない」と説明する、との指示がありました。
本年3月2日の朝日新聞の(財務省による文書書き換え疑いを報じた)報道、その後国会を空転させている決裁文書の差し替えは事実です。元は、すべて、佐川局長の指示です。学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。局長の指示を受けた本省理財局幹部らが過剰に修正箇所を決め、修正した文書を近畿局で差し替えました。
1回目は昨年2月26日です。15時30分ごろ、統括官から手伝って欲しいと連絡を受け、出勤するよう指示がありました。3月7日ごろにも修正作業の指示が複数回あり、現場として私は相当抵抗しました。管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局の中村(稔)総務課長をはじめ、田村(嘉啓)国有財産審理室長などから部長に直接電話があり、部長も応じることはやむを得ないとし、美並(義人)近畿財務局長に報告したと承知しています。
美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと部長から聞きました。本省から出向組の次長は「元の調書が書き過ぎているんだよ」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に違い、差し替えを行ったのです。
佐川局長は修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して修正範囲をどんどん拡大し、修正回数は3回ないし4回程度と認識しています。
森友事案はすべて本省が処理方針を決め、国会や会計検査院への本省の対応が社会問題を引き起こし、うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。
この事実を知り、抵抗したとはいえ、関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。
家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さ。こんな人生って何?
兄、おいっ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。さようなら。
※肩書はいずれも当時。朝日新聞が森友学園の一連の問題でこれまで報じている財務省の主要幹部は実名としています
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時42分
「内閣吹っ飛ぶ」森友文書改ざんで職員 遺書は震える字
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「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」。2年前、公文書の改ざんを強いられた、とする手記と遺書を残して財務省近畿財務局の職員が自殺した。なぜ夫は死ななければならなかったのか――。妻は、すべてが法廷で明らかになることを願う。
• 森友文書改ざん「指示された」 自殺職員妻が佐川氏提訴
• 「すべて、佐川局長の指示です」自殺した職員の手記全文
公私ともに充実 暗転したあの日
「責任をどう取るか、ずっと考えてきました。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありません」
弁護団は提訴に合わせて、赤木俊夫さん(当時54)の手記や遺書を報道陣に公開した。手記は、自宅のパソコンに残されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚。3通が残されていた手書きの遺書には、震えるような字がつづられていた。
提訴後の会見に集まる大勢の報道関係者ら=2020年3月18日午後、大阪市内、小川智撮影
訴状などによると、赤木さんは明るく社交的な性格で、書道や落語、美術鑑賞などを楽しむ生活を送っていた。誠実な努力家でもあり、誇りを持って仕事に取り組んでいたという。
夫婦仲も良く、公私ともに充実した日々。しかし2017年2月26日の日曜日、その生活が暗転した。
赤木さんが休日で妻と義母の3人で公園を訪れていた時、上司から「登庁してほしい」と連絡が入った。「上司が困っているから助けに行くわ」。出勤した赤木さんを待っていたのが、改ざんの指示だった。
妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明け、手記には「私は相当抵抗しました」と記した。赤木さんの言葉から、必死に不正にあらがった様子が浮かぶ。それでも最後は押し切られ、改ざんに手を染めざるを得なかった。
消えた笑顔「僕は犯罪者や」
改ざんを重ねるうちに、明るかった赤木さんから笑顔が消えてふさぎ込むように。同年7月、うつ病と診断され、仕事に行けなくなった。同年12月に大阪地検から電話で事情を聴かれると、病状は急速に悪化していった。自宅でも「玄関の外に検察がいる」「僕は犯罪者や」などと繰り返し、周囲に自殺願望を語るようになった。そして18年3月、赤木さんは命を絶った。
弁護団によると、妻は当時のことを「体の半分がちぎれて無くなったようだ」と語ったという。しかし、その後も国側の対応に苦しめられた。弁護士を通じて佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に経緯の説明と謝罪を求めたが、面会は実現しなかった。公務災害とは認定されたが、開示された資料は大半が黒塗りでその理由もわからなかった。
弁護団の生越(おごし)照幸弁護士は会見で、妻の心情をこう代弁した。「手を尽くしても、知りたかったことが何もわからない。ご遺族にとって残された道は訴訟しかなかった」(遠藤隆史)
妻「佐川さん、本当のこと話して」
学校法人森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんが好きだった坂本龍一さんや書道などに関する書籍を机に置き、提訴について会見する代理人の生越照幸弁護士(右)と松丸正弁護士=2020年3月18日午後、大阪市内、小川智撮影
自殺した財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)の妻は、弁護団を通じて次のようにコメントした。
(財務省近畿財務局の職員だった)夫が亡くなって2年が経ちました。あの時どうやったら助けることができたのか。いくら考えても私には助ける方法がまだ見つかりません。
心のつかえが取れないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいと思っています。
夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が誰のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか、真実を知りたいです。
今でも近畿財務局の中では話す機会を奪われ苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局には作っていただき、この裁判ですべてを明らかにしてほしいです。そのためには、まず佐川さん(佐川宣寿・元同省理財局長)が話さなければならないと思います。今でも夫のように苦しんでる人を助けるためにも、どうか佐川さん、改ざんの経緯を本当のことを話してください。よろしくお願いします。
財務局OB 手記読み涙「許せない」
自殺した赤木俊夫さんの元上司や国有地の問題を追及してきた市議からは、財務省理財局に対する怒りや真相解明を求める声が上がった。
近畿財務局OBの喜多徹信(てつのぶ)さん(71)は、赤木さんと同じ部署に所属し、国有財産の業務を担当した。赤木さんは曲がったことが嫌いな熱血漢だったといい、改ざんを強いられて悔しかっただろうに、と手記を読んで涙が出たという。
「財務省は徹底して上意下達の組織。追い詰められたんだと思う。理財局のしたことは常識外れで許せない」と声を震わせた。
国有地の売却価格などが非公表になっている問題を掘り起こした木村真・大阪府豊中市議は、裁判によって真相解明が進むことを期待する。「改ざん問題の一番のキーパーソンは佐川元理財局長。法廷の場でぜひ真実を明らかにしてもらいたい」と話した。(吉村治彦)
検察幹部「違法と認定できず」
国有地売却や財務省の公文書改ざん問題を捜査していた大阪地検特捜部も、赤木俊夫さんが残した「手記」で記された改ざんの経緯を把握していた。それでも、弁護士らから告発された佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長ら全員を不起訴として捜査を終えた。
改ざんに関する告発容疑は①決裁文書から安倍晋三首相の妻昭恵氏や政治家の名前を削除するなどして改ざんした有印公文書変造・同行使容疑など②財務省が学園側との交渉記録などを廃棄したとする公用文書毀棄(きき)容疑などだった。
だが、①では改ざんされた政治家の関与などは文書の本質的な部分ではなく、国有地の売買契約などの情報は大きく変わっていない▽②では「1年未満」とする保存期間を過ぎた文書は廃棄しなければならないとの財務省の規則がある――などから、特捜部はいずれも「有罪判決を得られる高度な見込みがあるとは言えない」と結論づけた。
検察内部でも捜査当時、「起訴すべきだ」という意見はあった。ある検察幹部は「捜査を経て改ざんなどの指示や経緯は相当判明していたが、それでも改ざんや廃棄が違法とは認定できなかった」と話した。(多鹿ちなみ、細見卓司)
内閣府の公文書管理委員会委員を務めた三宅弘弁護士
公開された手記は、財務省による組織的な隠蔽(いんぺい)工作を明らかにし、中央省庁の公文書の管理実態について警鐘を鳴らすものだ。これだけの改ざんを理財局長だった佐川宣寿氏だけの判断でできたのだろうか。佐川氏個人ではなく財務省全体の問題とみて、訴訟の推移を見ていくべきだろう。
私たちは手記で明らかにされた実態を踏まえ、民主主義の根幹を支える公文書管理のあり方に関心を持たなければならない。これは「桜を見る会」にも共通する問題だ。
元検事の落合洋司弁護士の話
手記の内容が事実なら、佐川氏らが国会追及を避けるために元の文書では「まずい」と考えて改ざんした実態が浮き彫りになったといえる。重要性が高いからこそ改ざんして文書自体の性質を変えたと判断でき、大阪地検特捜部は有印公文書変造・同行使罪で立件できたはずだ。
また手記では応接記録文書は「執務参考資料として保管されているのが一般的」としているのに、廃棄された。文書を廃棄した目的と背景を踏まえれば、公用文書毀棄(きき)罪についても起訴できたのではないか。
朝日新聞デジタル 2020年3月18日 20時17分
「すべて、佐川局長の指示です」自殺した職員の手記全文
https://digital.asahi.com/articles/ASN3L6K55N3LPTIL00Z.html
自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんが残した手書きの文書=2020年3月18日午後、大阪市内、小川智撮影
•
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、自殺した財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)の手記全文は次の通り。
• 森友文書改ざん「指示された」 自殺職員妻が佐川氏提訴
手記 平成30年2月(作成中)
○はじめに
私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、その対応に連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わせている「森友学園への国有地売却問題」です。
今も事案を長期化・複雑化させているのは、“財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが”最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。この手記は、本件事案に関する真実等の詳細を書き記します。
1.森友学園問題
私は今も連日のように国会やマスコミで政治問題として取り上げられ、世間を騒がせている「森友学園への国有地売却問題」を昨年(平成29年)2月から担当していました。本件事案が社会問題化することとなった端緒は、平成29年2月9日、朝日新聞がこの問題を取り上げたことです。(朝日新聞が取り上げた日の前日の平成29年2月8日、豊中市議が国を相手に、森友学園に売却した国有地の売買金額の公表を求める訴えを提起)
近畿財務局が、豊中市に所在する国有地を学校法人森友学園に売却(売買契約締結)したのは平成28年6月20日です。私は、この時点では本件事案を担当していませんので、学園との売買契約に向けた金額の交渉等に関して、どのような経緯があったのかその事実を承知していません。
2.全ては本省主導
本件事案の財務省の担当窓口は理財局国有財産審理室(主に担当の補佐、担当係長等)です。補佐や担当係長から現場である財務局の担当者に、国会議員からの質問等の内容に応じて、昼夜を問わず資料の提出や回答案作成の指示(メール及び電話)があります。財務局は本省の指示に従い、資料等を提出するのですが、実は既に提出済みのものも多くあります。通常本件事案に関わらず、財務局が現場として対応中の個別の事案は動きがあった都度、本省と情報共有するために報告するのが通常のルール(仕事のやり方)です。
本件事案は、この通常のルールに加え、国有地の管理処分等業務の長い歴史の中で、強烈な個性を持ち国会議員や有力者と思われる人物に接触するなどあらゆる行動をとるような特異な相手方で、これほどまで長期間、国会で取り上げられ今もなお収束する見込みがない前代未聞の事案です。
そのため、社会問題化する以前から、当時の担当者は事案の動きがあった際、その都度本省の担当課に応接記録(面談等交渉記録)などの資料を提出して報告しています。したがって、近畿財務局が、本省の了解なしに勝手に学園と交渉を進めることはありえないのです。本省は近畿財務局から事案の動きの都度、報告を受けているので、詳細な事実関係を十分に承知しているのです。
(1)国会対応
平成29年2月以降ほとんど連日のように衆・参議院予算委員会等で、本件事案について主に野党議員から追及(質問)されます。世間を騒がせ、今も頻繁に取り上げられる佐川(前)理財局長が一貫して「面談交渉記録(の文書)は廃棄した」などの答弁が国民に違和感を与え、野党の追及が収まらないことの原因の一つとなっています。
一般的に、行政上の記録を応接記録として作成された文書の保存期間は、文書管理規則上1年未満とされていますので、その点において違法性はないと思いますが、実際には執務参考資料として保管されているのが一般的です。
この資料(応接記録)を文書管理規則に従って、終始「廃棄した」との説明(答弁)は財務省が判断したことです。その理由は、応接記録は細かい内容が記されていますので、財務省が学園に特別の厚遇を図ったと思われる、あるいはそのように誤解を与えることを避けるために、当時の佐川局長が判断したものと思われるます。
(2)国会議員への説明
本件事案に関して、野党議員を中心に財務省に対して、様々な資料を要求されます。
本省は、本件事案が取り上げられた当初の平成29年3月の時点では、全ての資料を議員に示して事実を説明するという姿勢であったのです。
ところが、(当時の)佐川理財局長の指示により、野党議員からの様々な追求を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています。(現場の私たちが直接佐川局長の声を聞くことはできませんが、本省(国有財産審理室)の補佐からは局長に怒られたとよく言っていました)
また、野党に資料を提出する前には、国会対応のために必ず与党(自民党)に事前に説明(本省では「与党レク」と呼称)した上で、与党の了承を得た後に提出するというルールにより対応されていました(本省補佐、近畿財務局管財部長などの話)。
(3)会計検査院への対応
国会(参議院)の要請を受けて、近畿財務局が本件事案に関して会計検査院の特別検査を、昨年平成29年4月と6月の2回受検しました。
受検時には、佐川理財局長の指示を受け、本省理財局から幹部職員(田村国有財産審理室長、国有財産業務課補佐ほか、企画課係長)が派遣され、検査会場に同席し、近畿財務局からの脱明を本省幹部職員が補足する対応がとられました。
その際、本省の検査院への対応の基本姿勢は、次のとおりです。
①決議書等の関係書類は検査院には示さず、本省が持参した一部資料(2~3分冊のドッチファイルを持参)の範囲内のみで説明する
②現実問題として、上記①のみでは検査院からの質問等に説明(対応)できないとして、田村審理室長が近畿財務局に保管されている決裁文書等を使用して説明することはやむを得ないと判断して、①の対応が修正された
③応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました(誰から誰に指示がされたかは不明確ですが、近畿財務局が作成した回答案のチェックを本省内関係課で分担され、その際資料は提示しないとの基本姿勢が取られていました)
(注)この時、法律相談の記録等の内部検討資料が保管されていることは、近畿財務局の文書所管課等(統括法務監査官、訟務課、統括国有財産管理官(1))の全ての責任者(統括法務監査官、訟務課長、統括国有財産管理官)は承知していました。
したがって、平成30年2月の国会(衆・予算委員等)で、財務省が新たに議員に開示した行政文書の存在について、麻生財務大臣や、太田理財局長の説明「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」(答弁)は、明らかに虚偽答弁なのです。
さらに、新聞紙上に掲載された本年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である。
それは、検査の際、この文書の存在は法務担当に聞かなくても、法務担当以外の訟務課・統括国有財産管理官は作成されていることを当然認識しています。これも近畿財務局は本省主導で資料として提示しないとの基本的な対応の指示に従っただけなのです。
また、本省にも報告され保管されていることは、上記2に記載している本省と財務局との情報共有の基本ルールから明らかです。
(4)財務省の虚偽答弁
本省が虚偽の答弁を繰り返していることを再掲しますと、上記(1)国会対応、(2)国会議員、(3)会計検査院への対応の全ては、本省で基本的な対応のスタンスが決められました。
特に、(3)では、本省から(近畿)財務局に以下の対応の指示がありました。
●資料は最小限とする
●できるだけ資料を示さない
●検査院には法律相談関係の検討資料は「ない」と説明する
この事案の対応で、先の国会で連日のように取り上げられた佐川(当時)理財局長の国会答弁の内容と整合性を図るよう、佐川局長や局長の意向を受けた本省幹部(理財局次長、総務課長、国有財産企画課長など)による基本的な対応姿勢が全てを物語っています。
“(疑問)
財務省は、このまま虚偽の説明を続けることで国民(議員)の信任を得られるのか。
当初、佐川理財局長の答弁がどこまでダメージコントロールを意識して対応されていたかといえば、当面の国会対応を凌ぐことだけしか念頭になかったのは明らかです。”
3.財務省は前代未聞の「虚偽」を貫く
平成30年1月28日から始まった通常国会では、太田(現)理財局長が、前任の佐川理財局長の答弁を踏襲することに終始し、国民の誰もが納得できないような“詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられているのです。”
現在、近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。
しかしながら、近畿財務局の幹部をはじめ誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制のそのもの(実態)なのです。
本件事例を通じて、財務省理財局(国有財産担当部門)には、組織としてのコンプライアンスが機能する責任ある体制にはないのです。
4.決裁文書の修正(差し替え)
本年3月2日の朝日新聞の報道、その後本日(3月7日現在)国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です。
元は、すべて、佐川理財局長の指示です。
局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。
佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、補佐が過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました。
第一回目は昨年2月26日(日)のことです。
当日15時30分頃、出勤していた統括官から本省の指示の作業が多いので、手伝って欲しいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。
その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。
管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから管財部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。
美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと管財部長から聞きました。管財部長以外にも、●●管財部次長、●●次長の管財部幹部はこの事実をすべて知っています。
本省からの出向組の●●次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)
これが財務官僚機構の実態なのです。
パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。
佐川局長は、修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。
役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。
森友事案はすべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。
この事案は当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。
怖い無責任な組織です。
○刑事罰、懲戒処分を受けるべき者
佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部
担当窓口の補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)
この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。
事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。
今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚さと怖さ)
家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。
私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何?
兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。
さようなら
※手記原文で赤字で記載されている部分を“”内で表し、明らかな誤字、脱字は修正しています。朝日新聞が森友学園の一連の問題でこれまで報じている財務省の主要幹部は実名としています。
時事通信 2020年03月18日21時22分
自殺職員「改ざんは佐川氏の指示」 遺族が手記公表、国など提訴―「森友」決裁文書
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020031800856&g=soc
近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの遺書=18日午後、大阪市北区
学校法人森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざんに関与した後、自殺した近畿財務局職員赤木俊夫さん=当時(54)=の遺族の弁護団は18日、改ざんは当時同省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官の指示だったなどとする赤木さんの手記や遺書を公表した。
自殺した近畿財務局職員の遺書
赤木さんの妻は同日、自殺は同省幹部らの改ざん指示が原因として、国と佐川氏に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
手記は自宅のパソコンなどに保存されていた。それによると、改ざんは佐川局長の指示を受けた理財局幹部が修正箇所を決め、修正した文書を近畿財務局で差し替えたと指摘。「現場として相当抵抗した」が、本省から出向中の次長が修正、差し替えを行い、計3、4回の修正があったとした。
改ざんの理由については、佐川局長の国会答弁との整合性を図るためとし、理財局はコンプライアンス(法令順守)が機能する体制にないと批判した。
改ざん後、心身に支障が生じて休職したとし、「抵抗したとはいえ、関わった者として責任をどう取るか考えたが、今の健康状態ではこの方法を取るしかなかった」と自殺に至った経緯もつづられていた。
自殺した近畿財務局職員の愛読書を置き、記者会見する弁護士=18日午後、大阪市北区
遺書は手書きで「これが財務官僚王国。最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」などと記していた。
赤木さんは2018年3月、自宅で死亡しているのが見つかった。同財務局が学園側と国有地取引で交渉していた当時、国有財産を管理する部署に所属。上司の幹部職員が学園側と直接交渉しており、赤木さんは部下だった。
訴状によると、赤木さんは改ざんを強制され、長時間労働の結果うつ病を発症して自殺した。弁護団は大阪市内で記者会見し、「改ざんは、誰が何のためにやったのか。真実を知りたい」などとする妻のコメントを発表した。
赤木さんの手記と遺書については、週刊文春3月26日号も内容を報じている。
財務省の話 訴状の内容を確認していないことからコメントは差し控えたい。
毎日新聞2020年3月18日 20時00分(最終更新 3月18日 22時50分)
安倍首相「改ざんはあってはならない」 森友問題で自殺職員の遺書巡り
https://mainichi.jp/articles/20200318/k00/00m/010/275000c
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の職員の手記や遺書が公表されたことについて記者団の質問に答える安倍晋三首相=首相官邸で2020年3月18日午後6時50分、川田雅浩撮影
安倍晋三首相は18日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の公文書改ざん問題を巡り、自殺した財務省近畿財務局の職員の遺書に佐川宣寿理財局長(当時)の指示だったと記されていたことに関し、「大変痛ましい出来事で、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたい」と語った。そのうえで「財務省で麻生(太郎)大臣の下で事実を徹底的に明らかにしたが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していく」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。【竹地広憲】
毎日新聞 2020年3月19日 東京朝刊
森友改ざん 「理財局が人生壊した」 自殺職員、苦悩と批判
https://mainichi.jp/articles/20200319/ddm/041/040/059000c
自殺した近畿財務局の男性職員の手記(画像の一部を加工しています)
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員の遺族が国などを提訴した。遺族が公表した手記には、命令に逆らえず改ざんに加担させられた、一人の公務員の苦悩と後悔が克明につづられている。なぜ改ざんが行われ、どうして彼は命を絶ったのか。問題の核心を語らずに退場した佐川宣寿・元国税庁長官に、遺族は法廷で真実を語るよう訴えている。【松本紫帆、山本康介】
多くの報道陣が集まった遺族側代理人の記者会見=大阪市北区で2020年3月18日、加古信志撮影
自殺した赤木俊夫さん(当時54歳)の手記によると、最初に改ざんさせられたのは2017年2月26日。日曜日に上司から呼び出された。翌月にも改ざんの指示があったが「相当抵抗」し、近畿財務局の幹部にも相談。しかし財務省理財局からの強い要求で、書き換えが繰り返されたという。
財務省が18年に公表した報告書は、理財局長だった佐川氏が改ざんを主導したと認定。しかし詳細な理由や指示系統は明らかにされず、佐川氏も説明を避けたまま辞任した。
手記はこの報告書と大きな矛盾はなく、一連の経緯を詳細に記録している。ただ、改ざんについては「元はすべて佐川氏の指示」と明言し、「学園に厚遇したと取られる箇所はすべて修正の指示があったと聞いた」と記載。佐川氏の意向に財務省幹部らが過剰に反応して修正範囲が拡大したとして「佐川氏の指示には誰も背けない」「最後は逃げて、近畿財務局の責任にされる」と、財務省の組織体制を批判している。
赤木さんは学園への国有地売却交渉には関わっていなかったが、国有地が大幅に値引きされた背景に政治家らへの配慮があったことも示唆。参院議員だった鴻池祥肇氏(18年に死去)らの要望に財務省が応じたことが「問題の発端」と指摘している。
こうした経緯を隠すため財務省幹部らが虚偽の国会答弁を繰り返したとして、「嘘(うそ)に嘘を重ねるあり得ない対応」「怖い組織」と記している。
7ページにわたる手記の末尾では、自身が行った改ざんについて「公的な場所で説明できない。今の健康状態ではこの方法しかない」と、自ら死を選んだ理由を吐露。「家族を泣かせ、人生を破壊したのは理財局です」とつづり、佐川氏や当時の幹部らが刑事罰を受けるべきだと強く訴えていた。
妻「佐川さんは真実を」 弁護団「裁判で経緯明らかに」
「改ざんは誰が、何のためにやったのか。佐川さん、どうか本当のことを話してください」。赤木さんの妻は代理人を通じ、佐川氏にそう訴えた。
代理人によると、妻はこれまで佐川氏に経緯の説明や謝罪を求める手紙を送ったが、誠意ある返事はなかった。麻生太郎財務相の墓参りも望んでいたが、実現していない。自殺の経緯を知るため国に情報公開請求を行ったが、公表されたのは大半が黒塗りの文書だけだった。
提訴後の記者会見で、代理人の生越照幸弁護士は「残された道は訴訟しかない。どうして自殺に追い込まれたのか、原因と経緯を明らかにするための裁判だ」と語った。
赤木さんは岡山県で生まれ育ち、高校卒業後に旧国鉄に就職。国鉄の民営化を機に、当時の大蔵省にノンキャリアとして採用された。公務員の仕事に誇りを持ち、「僕の契約相手は国民」が口癖だった。笑顔を絶やさず、妻と結婚して22年、ほとんどけんかもしなかったという。趣味が豊富で、書道はプロ級の腕前だった。
妻は公表したコメントで「どうやったら夫を助けることができたのか、いくら考えても方法が見つからない。夫が死を決意した本当のところを知りたい」と訴えた。
妻は近畿財務局の上司から、赤木さんが改ざんの経緯をまとめた書類やデータを職場に残していたと聞いたという。これらは公開されておらず、訴訟で提出を求める方針だ。
赤木さんと交流があった近畿財務局OBの喜多徹信さん(71)は手記を読み、「悔しい思いをしていたんやな」と涙を流した。「公務で違法行為をさせられ、死に追い込まれたのに、誰も責任を取らないのはおかしい」と憤った。
一方、佐川氏らを不起訴処分にした大阪地検の反応は冷静だ。ある検察幹部は「パソコンなど膨大な資料を捜査しており、手記を踏まえても結果は変わらなかっただろう。遺族の思いとは別に、検察は法律の枠内で判断するしかない」と語った。【村松洋】
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財務省「新たな事実ない」
麻生太郎財務相は18日の参院財政金融委員会で、「残された遺族の気持ちを思うと言葉もなく、謹んでご冥福をお祈り申し上げる」と述べた。2018年6月に決裁文書改ざんに関する調査報告書をまとめ、関与した職員への処分を行ったとした上で、「大臣としての職責を果たしていきたい」と語った。財務省は「新たな事実は見つかっていない」とし、再調査は行わない方針だ。
財務省内では、多くの職員が取材に対し「この件については話せない」と足早に立ち去った。ある職員は、「亡くなる直前に書き残したという思いの強さに胸が痛くなった。上司から無理な指示を受けた時に、どう行動すべきか考えさせられた」と話した。【清水憲司】
NHK 2020年3月18日 19時42分森友学園問題
森友 文書改ざん “指示もと 佐川元局長と思う”自殺職員 手記
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200318/k10012338301000.html
財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ、自殺した近畿財務局の男性職員が、改ざんの経緯などを書き残していた「手記」などを、遺族が弁護士を通じて公表しました。国会での追及をかわすため、財務省の本省が主導して、抵抗した現場の職員に不正な行為を押しつけていた内情が克明に記されています。
公表されたのは、森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられた近畿財務局の職員で、おととし3月、改ざんが発覚した5日後に自殺した赤木俊夫さん(当時54)が書き残していた「手記」と「遺書」です。
「手記」は2種類あり、自殺した日の日付の手書きのものには「今回の問題はすべて財務省理財局が行いました。指示もとは佐川宣寿元理財局長と思います。学園に厚遇したととられかねない部分を本省が修正案を示し、現場として相当抵抗した。事実を知っている者として責任を取ります」などと記されています。
また、もう1つの「手記」はパソコンで7ページにまとめられたもので「真実を書き記しておく必要があると考えた」との書き出しで始まります。
学園との国有地取り引きが国会で問題化する中、野党の追及をかわすために財務省本省が指示していた不正行為の実態について、財務局の現場の職員の視点で細かく記されています。
この中では、実際には保管されていた学園との交渉記録や財務局内の文書を、国会にも会計検査院にも開示しないよう最初から指示されていたと明かしたうえで、事後的に文書が見つかったとする麻生財務大臣など幹部の国会での説明に対し、「明らかな虚偽答弁だ」という認識を記しています。
さらに「虚偽の説明を続けることで国民の信任を得られるのか」と財務省の姿勢に疑問を投げかける記述や「本省がすべて責任を負うべきだが最後は逃げて、財務局の責任にするのでしょう。怖い無責任な組織です」と組織の体質を批判する記述もあります。
そして最後に手記を残す理由について「事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ」と締めくくっていて、死を覚悟してまでも自身の責任を果たそうとした赤木さんの思いが読み取れます。
一方、「遺書」はすべて手書きで3通あり、家族に宛ててこれまでの感謝の気持ちを記したもののほか、1通は「森友問題」という書き出しで、「理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる。恐い命 大切な命 終止符」と財務省への憤りが記されています。
「手記」の詳細
(※『』内が「手記」の文章)
自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんが書き残した「手記」の主な内容です。
「手記」は手書きの2ページのものと、パソコンでまとめた7ページのものの2種類があります。このうち手書きのものは、赤木さんが自殺したおととし(平成30年)3月7日の日付になっています。
この中では
『今回の問題はすべて財務省理財局が行いました。指示もとは佐川元理財局長と思います。学園に厚遇したととられかねない部分を本省が修正案を示し現場として相当抵抗した。事実を知っている者として責任を取ります』などと記されています。
一方、パソコンでまとめた「手記」は「真実を書き記しておく必要があると考えた」という書き出しで始まります。
『はじめに私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、その対応に、連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わせている「森友学園への国有地売却問題」です。本件事案は、今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。この手記は、本件事案に関する真実を書き記しておく必要があると考え、作成したものです。』
「森友学園問題」が社会問題化する経緯を記したあと、籠池前理事長ら森友学園側との交渉は、現場の近畿財務局ではなく財務省が主導したとしています。
『全ては本省主導国有地の管理処分等業務の長い歴史の中で、強烈な個性を持ち国会議員や有力者と思われる人物に接触するなどのあらゆる行動をとるような特異な相手方で、これほどまで長期間、国会で取り上げられ、今もなお収束する見込みがない前代未聞の事案です。そのため、社会問題化する以前から、当時の担当者は、事案の動きがあった際、その都度本省の担当課に応接記録(面談等交渉記録)などの資料を提出して報告しています。したがって、近畿財務局が、本省の了解なしに勝手に学園と交渉を進めることはありえないのです。』
続いて、国会対応にあたった財務省の内情を明かし、佐川氏から野党の追及をかわすために財務局に保管されている文書を開示しないよう指示があったとしています。
『国会対応平成29年2月以降ほとんど連日のように、衆・参議院予算委員会等で、本件事案について主に野党議員から追及(質問)されます。世間を騒がせ、今も頻繁に取り上げられる佐川(前)理財局長が一貫して「面談交渉記録(の文書)は廃棄した」などの答弁が国民に違和感を与え、野党の追及が収まらないことの原因の一つとなっています。この資料(応接記録)を文書管理規則に従って、終始「廃棄した」との説明(答弁)は、財務省が判断したことです。その理由は、応接記録は、細かい内容が記されていますので、財務省が学園に特別の厚遇を図ったと思われる、あるいはそのように誤解を与えることを避けるために、当時の佐川局長が判断したものと思われます。佐川理財局長の指示により、野党議員からの様々な追及を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています。(現場の私たちが直接佐川局長の声を聞くことはできませんが、本省国有財産審理室の補佐からは、局長に怒られたとよく言っていました。)また、野党に資料を提出する前には、国会対応のために、必ず与党(自民党)に事前に説明した上で、与党の了承を得た後に提出するというルールにより対応されていました。』
会計検査院の特別検査に対しても、保管されている記録を見せないよう、財務省本省の指示があったとし、この検査をめぐる財務省幹部の国会答弁は虚偽だとしています。
『会計検査院への対応国会(参議院)の要請を受けて、近畿財務局が本件事案に関して会計検査院の特別検査を、昨年平成29年4月と、6月の2回受検しました。この時、法律相談の記録等の内部検討資料が保管されていることは、近畿財務局の文書所管課等の全ての責任者(統括法務監査官、訟務課長、統括国有財産管理官)は承知していました。したがって、平成30年2月の国会(衆・予算委員会等)で、財務省が新たに議員に開示した行政文書の存在について、麻生財務大臣や、太田理財局長の説明「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」(答弁)は、明らかに虚偽答弁なのです。さらに、新聞紙上に掲載された本年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である。それは、検査の際、この文書の存在は、法務担当に聞かなくても、法務担当以外の訟務課・統括国有財産管理官は作成されていることを当然認識しています。これも近畿財務局は本省主導で資料として提示しないとの基本的な対応の指示に従っただけなのです。』
国会や会計検査院に対し、虚偽の説明を続ける財務省の姿勢に、赤木さんは赤い文字で「疑問」を投げかけています。
『(疑問)財務省は、このまま虚偽の説明を続けることで国民(議員)の信任を得られるのか。当初、佐川理財局長の答弁がどこまでダメージコントロールを意識して対応されていたかといえば、当面の国会対応を凌ぐことだけしか念頭になかったのは明らかです。』
『財務省は前代未聞の「虚偽」を貫く平成30年1月28日から始まった通常国会では、太田(現)理財局長が、前任の佐川理財局長の答弁を踏襲することに終始し、国民の誰もが納得できないような詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられているのです。現在、近畿財務局内で本件事案に携わる職員の誰もが虚偽答弁を承知し、違和感を持ち続けています。しかしながら、近畿財務局の幹部をはじめ、誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制のそのもの(実態)なのです。本件事例を通じて、財務省理財局(国有財産担当部門)には、組織としてのコンプライアンスが機能する責任ある体制にはないのです。』
そして、みずからも関わることになった「決裁文書の改ざん」の経緯の説明に移っていきます。
『決裁文書の修正(差し替え)元は、すべて佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。佐川理財局長の指示を受けた、財務省本省理財局幹部、補佐が過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました。第一回目は昨年2月26日(日)のことです。当日15時30分頃、出勤していた統括官から本省の指示の作業が多いので、手伝ってほしいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局の総務課長をはじめ国有財産審理室長などから部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。美並局長は、本件に関しては全責任を負うとの発言があったと部長から聞きました。部長以外にも、次長ら管財部幹部はこの事実をすべて知っています。本省からの出向組の次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)これが財務官僚機構の実態なのです。パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。佐川局長は、修正する箇所を事細かく指示したかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。』
さらに森友学園をめぐる問題を主導した財務省の姿勢や、組織の体質への痛烈な批判が続きます。
『森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。この事案は、当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です。』
そして『刑事罰、懲戒処分を受けるべき者』として佐川氏のほか、当時の財務省理財局の幹部らを名指ししています。
所属する組織の指示で、不正に加担させられた赤木さん。自らの死を覚悟してまで「手記」を書いた理由を綴っています。
『この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何?兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。さようなら』。
「遺書」の内容
自 殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんが残した3通の「遺書」の内容です。
1通は「森友問題」という書き出しで「佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それに指示NOを誰も言わない理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる。恐い命 大切な命 終止符」と手書きされています。
ほかの2通も手書きで家族に宛てたもので、妻や義理の母親などに「これまで本当にありがとうゴメンなさい恐いよ。心身ともに滅いりました。ゴメンなさい大好きなお母さん」などと書かれています。
「手記」と財務省の調査報告書 食い違いも
「手記」には、決裁文書の改ざんや交渉記録の廃棄などの経緯が克明に記されています。この内容とおととし6月に財務省が公表した調査報告書の内容には、一部で食い違いも見られます。
(1)改ざんの指示
手記には決裁文書の改ざんについて「すべて、佐川理財局長の指示です」としたうえで、佐川氏の指示を受けた財務省理財局幹部が過剰に修正箇所を決め、3年前の2月26日から近畿財務局で改ざんが始まったなどと記されています。
これについて財務省の調査報告書でも改ざんが始まったのは2月26日で、佐川氏が改ざんを事実上指示していたと認定しています。
報告書によりますと、佐川氏は当時の部下の理財局の総務課長と国有財産審理室長から決裁文書の内容について報告を受け「そうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した」としています。
そして2月26日に審理室長らが文書の改ざんを行い、同じ日に、財務省理財局から近畿財務局の職員に出勤を要請したうえで、別の決裁文書について改ざんするよう具体的に指示したとしています。
(2)近畿財務局の反発
手記には「その後の3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり、現場として私はこれに相当抵抗した」と記されています。
これについて財務省の調査報告書でも近畿財務局の職員が本省理財局からのたび重なる改ざん指示に強く反発したことが記されています。
報告書によりますと、3月7日の未明に理財局から2つの決裁文書の改ざんの案が近畿財務局に送られましたが、佐川氏も含めて議論した結果、翌8日にはさらに多くの記述を改ざんする案が改めて財務局に示されたということです。
改ざんを指示された財務局の職員はそもそも改ざんを行うことに強い抵抗感があり、理財局からのたび重なる指示に強く反発したということで、この職員は3月8日までに上司の管財部長に相談をしたとしています。
しかし財務省は、自殺した職員が改ざんを指示されていたのかや、改ざんに反発した職員だったのかどうかは明らかにしていませんでした。
(3)会計検査院への虚偽回答
手記には3年前の平成29年4月と6月に会計検査院の検査を受けた際の対応について「応接記録を始め法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さず、検査院には『文書として保存していない』と説明するよう事前に本省から指示があった」と記されています。
これについて財務省の調査報告書でも去年3月以降、国有地売却問題を検査していた会計検査院から廃棄していない交渉記録を提出するよう繰り返し求められていたにもかかわらず、国会で存在を認めていない文書を提出するのは妥当ではないと考え「存在しない」とする、うその回答を続けたとしています。
(4)法律相談記録では食い違いも
一方、財務省がおととし2月に公表した国有地売却に関する法律相談の文書をめぐっては手記と財務省の調査報告書の内容が食い違っています。
財務省の調査報告書では法律相談の文書の保存が確認された時期について、情報公開請求への対応のため平成29年10月から11月にかけて関連文書を探索した結果、確認されたとしています。
しかし、手記には検査院の検査を受けた平成29年4月と6月の時点で「法律相談の記録等の資料が保管されてていることは近畿財務局の文書所管課などのすべての責任者は承知していた」としていて、「おととし2月の国会で麻生財務大臣や太田理財局長が『行政文書の開示請求の中で改めて近畿財務局で確認したところ法律相談に関する文書の存在が確認された』という答弁は、明らかに虚偽答弁だ」などと記されています。
妻のメッセージ「佐川さん、本当のことを話して下さい」
赤木さんの妻は提訴に合わせて、手記や遺書を公表した理由やいまの心境をメッセージとしてまとめ、代理人の弁護士が記者会見で読み上げました。
「夫が亡くなってから2年が経ちました。あのとき、どうやったら助けることができたのか。いくら考えても私には助ける方法がまだ見つかりません。心のつかえが取れないままで夫が死を決意した本当のところを知りたいです。夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が何のためにやったのか。改ざんをする原因となった土地の売り払いは、どうやって行われたのか。真実を知りたいです。今でも近畿財務局の中には、話す機会を奪われ苦しんでいる人がいます。本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局には作ってもらい、この裁判で全てを明らかにしてほしいです。そのためにはまず、佐川さんが話さなければならないと思います。夫のように苦しんでいる人を助けるためにも、佐川さん、改ざんの経緯を、本当のことを話して下さい。よろしくお願いします」
弁護士「国は真相解明のため誠実に対応を」
提訴後に記者会見した原告の代理人の生越照幸弁護士は「真実を訴訟で明らかにするためには、国側が真相解明のために誠実に対応することが大前提となる。国は訴訟で旗色が悪くなるとすぐに認め、肝心の中身に入れないようにするケースが多い。今回は、国も佐川氏もきちんと対応するよう願っている」と話していました。
松丸正弁護士は「亡くなった赤木さんは手記の最後に、『今の健康状態と体力ではこの方法しかとれなかった』と記している。本当は事実をみずから伝えたかったはずだ。この裁判で真実を明らかにしたい。裁判を通じて、今後、違法なことを命じられた現役の職員たちが、声をあげて抵抗できるような組織にしていきたい」と話していました。
NHK 2020年3月18日 20時19分森友学園問題
財務省官房長「手記 報告書の内容と大きな齟齬(そご)ない」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200318/k10012338451000.html
自殺した近畿財務局の職員の手記について、財務省の茶谷栄治官房長は参議院財政金融委員会で、おととし財務省が公表した改ざん問題に関する調査報告書の内容と大きな齟齬(そご)はないという認識を示しました。
この中で財務省の茶谷官房長は、自殺した近畿財務局の職員の手記について「報道を通じて、今回初めて知ったところだ。問題の調査をしている最中にはわれわれはこの手記は見ていなかったが、調査では大臣官房の人事担当部局を中心に多数の職員から聞き取りをしたほか、関連文書や職員のコンピューターの確認をできるかぎり行った結果を取りまとめた」と述べました。
そのうえで「報道された手記では、決裁文書の改ざんなどが財務省本省の主導で行われたという趣旨の記述が多く見られるが、調査報告書でも国有財産行政の責任者だった理財局長が方向性を決定づけるなど、一連の問題行為は理財局の指示により行われたものであり、近畿財務局の職員が理財局のたび重なる指示に強く反発したことをまさに認識している。この手記と調査報告書に大きな齟齬はないものと考えている」と述べました。
麻生財務相「弔問 遺族の了解いただけず」
麻生副総理兼財務大臣は参議院財政金融委員会で、自殺した近畿財務局の職員の弔問に訪れるつもりがあるか対応を問われたのに対し「当時、ご遺族の了解をいただければ弔問させていただきたいと思っていたが、ご了解はいただけなかった。ご遺族の気持ちに反したことをしたいわけではなく、私たちとしては伺わせていただければという気持ちに変わりはないので、ご遺族の意向を直接きちんと伺いたい」と述べました。
日本経済新聞 2020/3/18 14:42 (2020/3/18 20:13更新)
自殺職員の妻、佐川氏提訴 森友文書「改ざんを強制」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56933760Y0A310C2AC8000/
亡くなった近畿財務局の職員の手記
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題で、財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは改ざんを強制されたのが原因などとして、妻が18日、国と佐川宣寿元国税庁長官に計約1億1200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻側は「改ざんは佐川氏の指示だった」などと記された赤木さんの手記を公表した。
赤木さんの自殺を巡っては、財務局が民間企業の労災に当たる「公務災害」と認定している。原告側の代理人弁護士は同日、大阪市内で記者会見し「夫が死を決意した本当のところを知りたい。裁判で全てを明らかにするためにも、佐川さんには改ざんの経緯や真実を話してほしい」などとする妻のコメントを代読した。
国と佐川元国税庁長官に損害賠償を求め提訴し、記者の質問に答える原告の弁護士ら(18日午後、大阪市)
訴状によると、2017年2月、財務局が学園に大阪府豊中市の国有地を鑑定価格から8億円余り値引きして売却していた問題が表面化。赤木さんは当時、上席国有財産管理官として紛糾する国会対応などに追われたという。
当時、理財局長だった佐川氏は17年2月以降、省内の部下に「森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと、決裁文書の改ざんを指示。赤木さんは抵抗したが、財務局の上司の指示を受けて3、4回にわたり改ざん作業を強制された。
この結果、長時間労働や連続勤務で心理的負荷が過度に蓄積。同年7月にうつ病と診断されて休職し、18年3月7日に自宅で手記や遺書を残して自殺した。手記には「森友事案はすべて本省の指示。本省の対応が社会問題を引き起こし、うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こした」などとつづられている。
決裁文書の改ざん問題を巡り、財務省は18年3月、決裁文書14件の改ざんを認めた。同6月に佐川氏が主導したとする報告書を公表し、佐川氏ら20人を処分した。
告発を受けた大阪地検特捜部は有印公文書変造や背任などの容疑で捜査したが、佐川氏や改ざんに関与した財務省職員ら計38人全員を不起訴とした。
中日新聞 2020年3月19日 朝刊
森友改ざんで自殺の職員「佐川氏の指示」 手記・遺書公表
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2020031902000070.html
18日に公表された赤木俊夫さんの手書きの遺書。「これが財務官僚王国最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」などとつづられていた
学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が、佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官(62)の指示で決裁文書の改ざんを強要され自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が十八日、佐川氏と国に約一億一千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻は「元はすべて佐川氏の指示。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」とする赤木さんの手記や遺書を公表。代理人を通じて「夫が死を決意した本当のことを知りたい」と訴えた。
訴状などによると、当時財務省理財局長だった佐川氏は、安倍晋三首相が国会で国有地売却問題について「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の二〇一七年二~四月、「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと財務省幹部に指示。幹部は近畿財務局に改ざんを命じた。
近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木さんは二月二十六日、同局の上司から呼び出されたのを皮切りに、三~四回にわたって決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分を削除する作業を強制された。
赤木さんは「こんな事をする必要はない」などと強く反発したり涙を流したりして抗議したが、本省や上司の指示のためやむを得ず従った。
この間、連続出勤や午前二~三時までの長時間労働が重なり、七月にうつ病を発症して休職。十二月には大阪地検から電話で事情聴取を受け「改ざんは本省のせいなのに、最終的には自分のせいにされる」と心理的負荷が強まり、翌一八年三月七日に自殺した。
手書きの遺書には「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ」などと書かれていた。
妻は国に対し「健康状態の悪化を容易に認識し、自殺を予見できた」として約一億七百万円を、佐川氏には「改ざんの強制で極めて強い心理的負荷を受けることは予見できた」として五百五十万円を求めた。
妻は提訴の理由について「死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。土地の売り払いはどう行われたのか、真実を知りたい」と代理人を通じてコメントした。
財務省は「(訴状の)内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。
<森友学園問題> 学校法人「森友学園」が取得し、小学校新設を計画していた大阪府豊中市の国有地が8億円余り値引きされたことが2017年2月に発覚。名誉校長には安倍昭恵首相夫人が一時就任していた。佐川宣寿元国税庁長官は国会答弁で森友側との事前価格交渉を否定したが、交渉をうかがわせる内部文書などが明らかになり財務省が決裁文書を改ざんしていたことも判明した。大阪地検特捜部は補助金の詐欺罪などで学園前理事長の籠池泰典被告と妻を起訴。両被告は大阪地裁で有罪判決を受け控訴した。背任や文書改ざんなどの疑いで告発された佐川氏や財務省職員らはいずれも不起訴となった。
◆政府、再調査せず
政府は十八日、森友学園問題で決裁文書の改ざんに関わり自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表を受け、改ざんの経緯などを改めて調査する考えはないとした。
安倍晋三首相は、官邸で記者団から手記に関する受け止めを聞かれ「財務省で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならず、今後も適正に対応していくものと考えている」と語った。再調査には触れなかった。自らの責任についての質問には、答えずに立ち去った。
財務省の茶谷栄治官房長は参院財政金融委員会で、二〇一八年六月に公表した調査報告書では、改ざんが行われた当時に理財局長だった佐川宣寿氏が方向性を決定付け、理財局が一連の行為を指示したと結論づけていると説明した。
自殺した職員が理財局からの度重なる指示に反発したことも認定したとして「新たな事実は見つかっていないと考えられる。再調査は考えていない」とした。
麻生太郎財務相は同委で「関与した職員に厳正な処分を行い、私自身も閣僚給与を自主返納した」として問題は決着済みと強調。「大臣の職責を果たしていきたい」と、改めて辞任を否定した。
NHK 2020年3月18日 20時05分森友学園問題
「森友学園」文書改ざん 野党側検証チーム ヒアリング実施へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200318/k10012338331000.html
「森友学園」をめぐる問題で自殺した近畿財務局の職員の手記が公表されたことを受け、野党側の検証チームは、職員の遺族の弁護士からヒアリングを行うなどして、事実関係を調べる方針です。
「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局の男性職員が改ざんの経緯などを書き残していた手記などが公表され、野党4党合同の検証チームのメンバーが記者会見しました。
座長を務める立憲民主党の川内博史氏は「男性職員は、この問題を正直に説明しようとして、悩まれて自死された。手記で明らかになったのは、安倍総理大臣の『私や妻が関係しているということになれば、総理大臣も国会議員もやめる』という答弁が、改ざんの出発点となったことだ」と指摘しました。
そのうえで「改ざんや職員の自殺の責任は安倍総理大臣にあり、真実を明らかにしなければならない」と述べました。
検証チームでは、当時財務省理財局長だった佐川宣寿氏が直接改ざんを指示したのかどうか確認する必要があるとして、自殺した職員の遺族の弁護士や当時の財務省の幹部などからヒアリングを行う方針です。
国民玉木代表「財務省 このままでは組織が死ぬ」
国民民主党の玉木代表は記者会見で「財務省は下に責任を押しつけて大臣も含めた上が責任を取っていないが、このままでは優秀な人は集まらず、組織が死ぬ。財務省みずからが徹底的に再調査し検証すべきだ。国会にも特別委員会を設け、事実を明らかにすべきだ」と述べました。
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毎日新聞2019年8月8日 東京朝刊
森友学園:国有地売却問題 決裁文書改ざん 財務局職員自殺は「労災」 過重公務と因果関係
https://mainichi.jp/articles/20190808/ddm/041/040/043000c
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、決裁文書改ざんを強要されたとのメモを残して昨年3月に自殺した近畿財務局の男性職員(当時54歳)について、近畿財務局が公務員の労災に当たる「公務災害」と認定していたことが7日、政府関係者への取材で分かった。認定は昨年冬。肉体、精神面での過重な公務との因果関係があったと判断したとみられる。
財務省は調査報告書で、文書改ざんは当時理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官(61)が方向付け、本省が財務局に指示したと明記していた。今回の認定は本省幹部が遺族を訪ねて報告、謝罪したといい、不正を起こさない取り組みが問われる。
財務省理財局は、国有地の大幅な値引きが報道で知れ渡った後の2017年2月下旬~4月、近畿財務局に指示し、決裁文書から安倍昭恵首相夫人に関する記述や政治家秘書らの働き掛けを示す部分を削除した。この時期に男性職員は担当の管財部に所属していた。
毎月100時間に及ぶ残業実態を親族に漏らしていたとされ、17年夏ごろから体調を崩し休職。改ざんが発覚した直後の昨年3月7日、神戸市の自宅で自ら命を絶った。
調査報告書は個人を特定しなかったが、管財部職員らが改ざん指示に抵抗、反発した経緯や、本省からの照会や取材対応で「多忙を極めた」ことを指摘。こうした経緯を踏まえ、公務災害と認定したようだ。財務省は個別の認定案件の詳細を明らかにしていない。
財務省は昨年、14件の改ざんを確認し、佐川氏ら20人を処分した。佐川氏らは有印公文書変造・同行使容疑などで大阪第1検察審査会の「不起訴不当」議決を受けた。
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