2020-05-17(Sun)
「コロナ倒産」本格化 追い込まれたホテル業界 需要蒸発
ホテルマネー、引き揚げ連鎖も 破綻相次ぐ 賃料減免、REITに影
日本経済新聞 2020/5/16 23:24
賃料減免、REITに影 ホテル系最大手が分配金98%減 商業施設系に広がり警戒
----新型コロナウイルスの影響で、家賃の減免交渉に乗り出す企業や個人が増えている。不動産を保有して賃料などの収入を投資家に分配する不動産投資信託(REIT)では、ホテル系の最大手で実際に免除に応じる例が出てきた。減免の動きは商業施設などにも広がりかねない。テナントが賃料を払えない場合にどう負担を分け合うのか、不動産業界が直面する問題の前触れとなっている。
日本経済新聞 2020/5/9 21:00
ホテルマネー、引き揚げ連鎖も 需要蒸発で破綻相次ぐ
----新型コロナウイルスの感染拡大によるホテル事業者の経営破綻が増え始めた。訪日外国人(インバウンド)や東京五輪を狙って、新規参入や開業が相次いでいたところに宿泊需要が蒸発し、資金繰りに行き詰まっている。ホテル業界には投資ファンドからも資金が流入していただけに、破綻が広がればオーナーによる物件売却など、不動産市場に影響がでる可能性もある。
東洋経済オンライン 2020/05/04 5:35
「コロナ倒産」本格化、追い込まれたホテル業界 投資にのめり込んだ不動産会社に波及も----インバウンドの蒸発と外出自粛で刀折れ矢尽きた。
ホテル運営会社のファーストキャビンおよび子会社4社は4月24日、東京地⽅裁判所に破産⼿続開始の申し⽴てを⾏った。負債は合計約37億円となる模様だ。破産に伴い、直営5施設は営業を終了する。
日本経済新聞 2020/5/2 12:00
関西のホテル、開発ラッシュ裏目に コロナ倒産を警戒
----新型コロナウイルスの感染拡大で関西のホテル需要が大幅に落ち込んでいる。日本経済新聞社がまとめた大阪市内主要13ホテルの2020年3月の平均客室稼働率は3割を下回り、過去最低となった。大型連休中の新規予約を停止したホテルもある。ここ数年、インバウンド(訪日外国人)需要を見込み、ビジネスホテルを中心に開発が相次いだ反動もあり、経営環境が急速に悪化している。
日本経済新聞 2020/4/30 17:50
蒸発する需要 宿泊業の3月稼働率、東日本大震災後下回る
----新型コロナウイルスの感染拡大が国内の旅館やホテルの宿泊需要を直撃している。観光庁が30日に発表した3月の宿泊旅行統計調査によると、客室稼働率は31.9%にとどまった。東日本大震災直後である2011年4月の43.4%を下回り、09年1月の集計開始以来の最低を更新した。インバウンド(訪日外国人客)需要の急減だけでなく国内の外出自粛もあって、需要は蒸発しかかっている。
日本経済新聞 2020/4/20 19:33
中部の宿泊施設、開業中止も 訪日客・出張の「蒸発」で 新型コロナ・中部の衝撃
----新型コロナウイルスの猛威が収まらないなか、中部地方のホテル業界で休業や新規開業の中止が相次いでいる。訪日外国人(インバウンド)の増加や2027年開業予定のリニア中央新幹線への期待感から宿泊施設の建設ラッシュが続いてきたが、今後の景気次第では長期の需給ギャップが懸念されている。
以下参考
日本経済新聞 2020/5/16 23:24
賃料減免、REITに影 ホテル系最大手が分配金98%減 商業施設系に広がり警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59214280W0A510C2EA3000/
インヴィンシブル投資法人が保有する「ホテルマイステイズ札幌アスペン」(札幌市)
新型コロナウイルスの影響で、家賃の減免交渉に乗り出す企業や個人が増えている。不動産を保有して賃料などの収入を投資家に分配する不動産投資信託(REIT)では、ホテル系の最大手で実際に免除に応じる例が出てきた。減免の動きは商業施設などにも広がりかねない。テナントが賃料を払えない場合にどう負担を分け合うのか、不動産業界が直面する問題の前触れとなっている。
先週の東京市場では、ホテル系REIT最大手インヴィンシブル投資法人の投資口価格(株価に相当)が24%下落した。2020年6月期の1口あたり分配金の予想を30円としたためだ。19年12月期の1725円に比べ98%減る。
分配金減額の理由は、ホテル運営会社マイステイズ・ホテル・マネジメント(東京・港)の支援にある。マイステイズはインヴィンシブルが国内で保有する83ホテルのうち73を運営し、同REITに賃料を払っている。新型コロナの影響で宿泊客が減り、賃料を払えなくなった。
両社の交渉の結果、賃貸契約を変更し、3~6月分の固定賃料を免除する。さらに、同REITが建物の管理費なども支援する。同REITの収入は急減し、投資家への分配金を減らさざるを得なくなった。
REITに限らず不動産業界では、新型コロナの影響でテナントの収入が減った場合に、家主も賃料を減免して負担を負うべきかが大きな問題になりつつある。宿泊需要が「蒸発」したホテル系のREITで、いち早くこの問題が表面化した。
REITに特有な事情もある。インヴィンシブルもマイステイズも、米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループ傘下だ。
フォートレスはこの2社を活用して日本でホテル投資を拡大してきた。訪日外国人が急増し始めた13年ごろから、次々に買収し、運営をマイステイズに変更。稼働が安定したら物件をインヴィンシブルに売却し、投資資金を回収した。
インヴィンシブルは19年末にホテルの資産額がREITで最大の約4300億円になった。資産拡大に伴い、分配金は6年間で7倍弱に増加。投資口価格も3倍強と比較可能な銘柄でトップだ。
フォートレスは2社を一体運営し、これまではインヴィンシブルの拡大を重視し、投資家も恩恵を受けてきた。今回はマイステイズの経営支援を優先し投資家の負担が増える。フォートレス側もマイステイズに13億円を追加出資する。ただ、ある地銀の運用担当者は「マイステイズの財務状況は非上場のため見えにくく、REITの投資家は負担が合理的か判断が難しい。フォートレスがもっと身銭を切ってもいいのではないか」と話す。
REITと主要な施設運営会社が同グループという関係は、ホテル系や商業施設系に多い。同様の対応が広がれば「構造問題が意識され、近寄りがたい投資商品とみなされかねない」(アイビー総研の関大介氏)。
不動産証券化協会(ARES)によると、上場REITの約60銘柄が保有する不動産の総額は2月末時点で約19兆円。家賃収入(不動産賃貸事業収益)は19年度の1年間で約1兆1千億円ある。
イオンモールやイオンリテールは4月、運営するショッピングセンター(SC)に出店するテナントの賃料減免を発表した。SCを保有するのがイオンリート投資法人だ。商業施設系では同様の減免が多く出て、REITや投資家側にも負担が及ぶ可能性がある。
小売りなどテナントが稼いだ収益の一部が家賃として家主や投資家の利益になってきた。新型コロナで経済が収縮した今、損失の分担を巡って議論が活発になりそうだ。
(和田大蔵)
日本経済新聞 2020/5/12 20:30
REIT指数、4日ぶり反落 ホテル系に減配リスク
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58993710S0A510C2EN2000/
12日の東京市場で、不動産投資信託(REIT)の総合的な値動きを示す東証REIT指数が4営業日ぶりに反落した。前日にホテル系のインヴィンシブル投資法人が発表した分配金の大幅引き下げを受け、ホテル系REITを中心にほぼ全面安となった。緊急事態宣言の解除期待から前日に同指数は約2カ月ぶり高値をつけたが、再び投資家の警戒感が強まった。
東証REIT指数の12日の終値は前日比36ポイント(2%)安の1644だった。インヴィンシブルは制限値幅の下限(ストップ安水準)の23%安で引け、いちごホテルリート投資法人は9%安となった。商業施設系の下げも目立ち、「ららぽーと」などを保有するフロンティア不動産投資法人は5%安だった。
インヴィンシブルは主要テナントであるホテル運営会社の倒産を回避する狙いもあり、同社の賃料を減額、投資家に支払う分配金の引き下げを決めた。予想分配金利回りは12日終値ベースで1%未満となり「利回り商品であるREITとしての魅力がなくなった」(国内金融機関)ことから、売りが殺到した。
一部の銘柄は保有不動産の価値と比べて割安感が強いものの、テナントの信用リスクという懸念材料も加わり「REIT相場はボラティリティー(変動率)が高い展開が続く」(国内証券)との声が聞かれた。
日本経済新聞 2020/5/11 20:30
インヴィンシブル、分配金98%減 ホテル需要減で
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58943880R10C20A5EN2000/
不動産投資信託(REIT)のインヴィンシブル投資法人は11日、2020年6月期の1口あたり分配金(株式の配当に相当)が19年12月期に比べて1695円(98%)少ない30円になる見通しだと発表した。従来は未定としていた。新型コロナウイルスの影響で保有ホテル稼働率が急落し、賃料収入が大幅に減る。20年12月期の分配金予想は引き続き未定とした。
インヴィンシブルは米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループを設立母体とするREITで、主にホテルと賃貸住宅を保有する。主要テナントであるホテル運営会社、マイステイズ・ホテル・マネジメントから一時的な賃料免除などの要請を受けたため、賃貸契約の見直しに応じたという。
日本経済新聞 2020/5/9 21:00
ホテルマネー、引き揚げ連鎖も 需要蒸発で破綻相次ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58916690Z00C20A5EA5000/
新型コロナウイルスの感染拡大によるホテル事業者の経営破綻が増え始めた。訪日外国人(インバウンド)や東京五輪を狙って、新規参入や開業が相次いでいたところに宿泊需要が蒸発し、資金繰りに行き詰まっている。ホテル業界には投資ファンドからも資金が流入していただけに、破綻が広がればオーナーによる物件売却など、不動産市場に影響がでる可能性もある。
東京商工リサーチによると新型コロナ関連の宿泊業の経営破綻は8日時点で29件と、業種別で最多だ。4月24日にはカプセルホテル運営のファーストキャビン(東京・千代田)、同27日にはWBFホテル&リゾーツ(大阪市)が経営破綻した。
【関連記事】
• ファーストキャビン、破産申請 新型コロナで客急減
• ホテルのWBF、民事再生法を申請 負債額160億円
• 企業の資金繰り、夏越え試練 キャップ座談会
足元で経営が行き詰まっているのは、コロナ以前から財務が悪化していた企業が目立つ。
2009年設立のWBFは、北海道と関西を中心に約30施設を運営する。事業拡大に積極的で、ホテル開発などに充てるために銀行借り入れを増やしていた。
画像の拡大
WBFホテル&リゾーツが運営する東京・浅草の施設(東京都台東区)
WBFは事業構造にも問題があった。建物を不動産会社などから借りて運営するホテルも多く、賃料負担が重い。国内外の投資ファンドなどに支援を打診したが、ある1社は「賃料の支払い条件が厳しく、再建は難しいと判断した」と明かす。東京商工リサーチによると負債は約160億円まで膨らんでいた。裁判所の監督下で利払いや賃料など条件を見直し、改めてスポンサーを探す。
06年設立のファーストキャビンも近年、急激に施設数を増やしていた。旅客機をイメージした高級感のある内装が特徴で、フランチャイズチェーンを含め約20施設を運営していたが、「デザイン優先で立地や運営効率が悪かった」(大手不動産幹部)こともあり、東京商工リサーチによると19年3月期まで2期連続で最終赤字だった。
両社をはじめ新興勢力が積極的に施設数を増やしていた背景にはインバウンド需要の拡大がある。ビザ緩和などの政策で、インバウンドは19年まで8年連続で増加し、6年で3倍となっていた。今年夏に予定されていた東京五輪もあり、宿泊需要が増えるとの算段があった。
ホテルの建設ラッシュを後押ししたのが、長引く低金利で運用難となっていた投資マネーだ。株や債券以外の投資先として不動産に資金が流入、さらにホテルはオフィスビルやマンションよりも高い収益が見込めるとされていた。
不動産会社やファンドがホテルを開発して、運営会社に貸し出すと、運営会社は手元資金が少なくても出店の速度を上げることができた。不動産会社やファンドなど施設オーナーにとっては運営の手間をかけず、安定した賃料収入が得られるメリットもあって、両者がタッグを組みバブルの様相を呈していた。
最近では、都市部で売りに出た土地を、ホテルの開発計画を持つ不動産会社が競り落とすことが目立っていた。ホテルの急増が、オフィス空室率の歴史的な低水準や、マンションの販売価格上昇を招いたとの指摘もある。
それが新型コロナによる需要蒸発で、窮地に立たされている。
WBFの経営破綻では、上場不動産投資信託(REIT)のスターアジア不動産投資法人や投資法人みらいが、WBFに施設を賃貸していたと開示した。中堅不動産のタカラレーベンは2月に京都市内でWBFのホテルを開業したばかり。東急リバブルはWBFへの賃貸を目的に関西国際空港近くで大型ホテルを開発中で、7月に完成予定だった。
不動産証券化協会(ARES)によると、上場REITが保有するホテルは約1兆6千億円と、3年間で約7割増えた。私募REITや不動産ファンドを合わせるとさらに膨らむ。
緊急事態宣言が延長され、宿泊需要の回復は不透明感が漂う。政府は企業支援策を打ち出しているが、「無謀な経営をしていたところも目立ち、事業者の選別も必要だ」(金融機関)との声もある。今後、ホテル運営会社の経営破綻が広がり賃料収入が減ると、不動産オーナーも借入金返済が滞り、場合に
よっては物件を投げ売りする恐れもある。不動産価格の下落でファンドの資産価値が目減りし、投資家がファンドから資金を引き揚げるといった悪循環に陥りかねない。(和田大蔵)
東洋経済オンライン 2020/05/04 5:35
「コロナ倒産」本格化、追い込まれたホテル業界 投資にのめり込んだ不動産会社に波及も
https://toyokeizai.net/articles/-/347698
一井 純 : 東洋経済 記者 著者フォロー
WBFホテル&リゾーツは民事再生法の適用を申請した(記者撮影)
インバウンドの蒸発と外出自粛で刀折れ矢尽きた。
ホテル運営会社のファーストキャビンおよび子会社4社は4月24日、東京地⽅裁判所に破産⼿続開始の申し⽴てを⾏った。負債は合計約37億円となる模様だ。破産に伴い、直営5施設は営業を終了する。
同じくホテル運営会社のWBFホテル&リゾーツも27日、大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、同日に監督命令を受けた。負債総額は約160億円と、コロナ関連では最大の倒産となった。代理人を務める弁護士は、「複数の企業がスポンサーとして名乗りを上げているが、運営から撤退する施設も出て来るだろう」と話す。
もともと苦しい経営状況
2社の倒産の直接的な原因は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うホテルの休業だ。他方で、ホテル業界の苦境は今に始まったわけではない。いずれも新型コロナが引き金を引いたというよりも、もともと苦しい経営状況に追い打ちをかけたというほうが正確だ。
ホテルの月次データを公表している3つのREIT(上場不動産信託)のRevPAR(平均客室単価に客室稼働率を掛けた経営指標)を集計したのが下図だ。新型コロナのあおりをもろに食らった今年3月の下落が突出しているものの、業績自体は昨年中頃から軟調に推移していることがわかる。
昨年はホテル業界にとって悪いニュースが相次いだ。昨年7月、これまで増加の一途を辿っていた国内の延べ宿泊者数が横ばいとなり、8月には2年ぶりに前年割れへと転じた。日韓関係の悪化に伴い、韓国からの訪日客が減少したことが響いた。10月には台風19号が3連休を直撃したことも痛手となった。
→次ページ著しく緩んだ需給バランス
需要が冷え込んでも、インバウンド需要や東京五輪特需を当て込んだホテルの新規供給は止まらない。厚生労働省によれば、ホテルや旅館、簡易宿所といった宿泊施設数は、2013年度の7万9519から2018年度には8万5617へと増加。市場の需給バランスは著しく緩んだ。
冷え込む需要と止まらぬ供給。「以前は各店舗の稼働率は9割超だったが、足元では8割5分」。昨年7月、記者の取材に対してファーストキャビンの幹部はこう答えていた。限られた客をホテル同士が奪い合い、稼働率を維持するために宿泊単価を削るダンピング合戦の様相を呈した(2019年11月13日配信「過剰供給のツケ、『関西ホテルバブル』に変調」)。
大阪市内に本社を構えるWBF自身も、競争に巻き込まれたホテル会社の一つだ。市内で運営する「WBF淀屋橋南」について、WBFは「ホテル同士の競争が激しく、思ったほど収益が上がらないため撤退したい」と、ホテルを保有する投資法人みらいに対して通達。契約はまだ長期間残っていたが、違約金を払ってでも解約を進めたい意向だった。
不動産業界にも飛び火
ホテル業界には日々、不穏なニュースが飛び込む。東京商工リサーチによれば、今年2月から4月27日までの間で、宿泊業の倒産は21件を数えた。さらに3月から4月にかけて、上場するほとんどのホテル運営会社が業績予想の下方修正を発表するなど、まさに総崩れだ。営業再開の見通しが立たないため、業績予想を「未定」とした企業も多く、日銭商売であるホテルの資金繰り不安は日増しに高まる。
外出自粛が長引けば、影響はホテル業界の外へと飛び火していく。筆頭は、ホテル運営会社から賃料を得ている不動産会社だろう。WBFの倒産を受けて、同社が運営する「ホテルWBFアートステイなんば」を保有するスターアジア不動産投資法人は、「今後の方策を検討する」とリリースを発表した。中堅デベロッパーのタカラレーベンに至っては、今年2月に京都市内で「ホテルWBF五条堀川」を開業させたばかりだ。今後の運営方針について、同社はコメントを避けた。
→次ページ固定賃料の支払いさえ難しい
WBFが運営するホテルについて、東洋経済が不動産登記簿を取得したところ、複数のホテルの所有権が信託銀行に移転していた。このうち「ホテルWBF京都東寺」は、不動産ファンドのケネディクスが組成した私募ファンドに含まれている。ケネディクスは「運用方針についてはコメントできない」としているが、同ファンドには九州電力も出資しており、運営会社の倒産は投資家のリターンにも跳ね返る。
ホテルの賃料は一般的に、売り上げに連動する変動賃料と、売り上げにかかわらず毎月一定金額を支払う固定賃料とで構成される。ホテルの売り上げ減少を受け、受け取る変動賃料を「0円」と見積もる不動産会社は多いが、収入が途絶えているホテル運営会社にとっては固定賃料の支払いさえ難しい。運営会社の倒産を防ぐためにも、不動産会社は固定部分の減額にも踏み込まざるをえないだろう。
「回転型」ビジネスの功罪
現在進行形でホテルを保有している不動産会社だけでなく、開発したホテルを売却する不動産会社への影響も無視できない。不動産登記簿によれば、大阪市内に立つWBFが運営するホテルのうち少なくとも4棟は、関西地盤のデベロッパーである日本エスコンが開発、売却していた。
関西国際空港のすぐ近くでは、東急リバブルが「ホテルWBFグランデ関西エアポート」を開発中だ。今年7月の竣工予定で、その後は投資家へと売却する予定だが、「現時点では開発計画に変更はない」(同社)。
2019年9月にオープンした「ファーストキャビン柏の葉」。来海忠男社長は「ファーストキャビンを占う重要な店舗」と意気込んでいたが、わずか半年での閉店となった(記者撮影)
ホテル業界が沸いていたここ数年、不動産各社はこぞってホテル開発に参入した。多くは開発したホテルを系列REITや外部の投資家に売却し、回収した資金でさらに多くのホテルを開発するという「回転型」ビジネスだ。「昔は興味を示さなかったマンションデベロッパーが、宿泊単価上昇を受けてホテル開発に参入してきた」(大手デベロッパーのホテル開発担当者)。
コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします
インバウンド需要を追い風に、オフィスや商業施設よりもホテルの収益性が勝った時代には、投資家もホテルを欲しがり、物件と資金がうまく「回転」していた。好循環が続く間は爆発的な利益をもたらす回転型ビジネスだが、ひとたび開発物件の売却が滞れば、資金繰りに窮するおそれがある。
もともと負債総額が多く、行方が注目されていたファーストキャビンとWBF。2社の倒産劇は、これから起こる波乱の幕開けにすぎない。
一井 純さんの最新公開記事をメールで受け取る(著者フォロー)
日本経済新聞 2020/5/2 12:00
関西のホテル、開発ラッシュ裏目に コロナ倒産を警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58711640R00C20A5LKA000/
民事再生法の適用を申請したWBFの負債総額は約160億円だった
新型コロナウイルスの感染拡大で関西のホテル需要が大幅に落ち込んでいる。日本経済新聞社がまとめた大阪市内主要13ホテルの2020年3月の平均客室稼働率は3割を下回り、過去最低となった。大型連休中の新規予約を停止したホテルもある。ここ数年、インバウンド(訪日外国人)需要を見込み、ビジネスホテルを中心に開発が相次いだ反動もあり、経営環境が急速に悪化している。
「リーマン・ショックや東日本大震災でも経験したことのない稼働率の低さだ」。あるホテルの従業員が嘆く。普段なら利用客でにぎわうロビーも閑散としていた。このホテルの3月の稼働率は21%にとどまった。
■大阪市内の3月稼働率は過去最低
大阪市内13ホテルの3月の平均稼働率は29.8%で、前年同月に比べ約60ポイント下がった。09年の調査開始以降で最低だった。リーガロイヤルホテルは39.8%、帝国ホテル大阪は27.4%だった。
ホテルグランヴィア大阪は「国内は外出自粛が広がり、海外は入国規制の影響で稼働率が大きく落ち込んだ」という。政府の緊急事態宣言や大阪府の休業要請を受けて、大型連休中は新規の宿泊予約の受付を休止した。4~5月の平均稼働率はさらに下がりそうだ。
積極的な販促策を打ち出せないなか、会社員らのテレワーク需要への期待もある。ホテルニューオータニ大阪は5月末まで専用プランを提供する。ただ「売り上げカバーには到底至らない」とみている。コロナ後を見据えて、レストランの人気メニューのレシピをネットで公開している。
休業や開業延期も広がる。ホテル京阪はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)近くのホテル2軒を臨時休業している。予約済の客には近くの系列ホテルを案内した。外資系高級ホテルの米エースホテルは京都市中心部で4月に開業する予定だったが、5月21日に延期した。
大阪や京都では供給過剰を指摘する声が根強い。阪急阪神ホテルズが大阪駅近くに1千室規模のホテルを19年秋に開業するなど開発ラッシュが続いてきた。不動産情報サービス大手CBREの19年時点の推計によると、21年の大阪市内の客室数は約8万室となり、需要を2万室余り上回る見通しだ。京都市でも1万室以上多いという。
■ホテル倒産で止まる工事
宿泊のキャンセルが相次ぎ倒産も出始めている。WBFホテル&リゾーツ(大阪市)は4月27日、民事再生法の適用を申請した。事業継続を目指して、スポンサーを探している。同社から工事を請け負ったある建設会社は「工事は止まり、再開のめどは立たない。新たなスポンサーのもとで建設を再開して代金を回収したいが、厳しい」と懸念する。
東京商工リサーチによると、新型コロナによる倒産は4月末に全国で100件を超えた。2割以上がホテル・宿泊業だ。関西でも16件のうち4件あった。担当者は「今後も中堅以下のホテル倒産が増えそうだ」と話す。あるホテルは「休業する施設が増えて、正規従業員ですら働く現場がない。パートなど非正規のシフトはかなり絞っている」と明かす。このまま倒産が増え続ければ、雇用を直撃しかねない。
大手企業の流出で地盤低下が続いた関西はインバウンド需要が経済をけん引してきた。日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長は、統合型リゾート(IR)の誘致や25年の国際博覧会(大阪・関西万博)を見据えて「国や自治体は関西経済の成長を担う重要な産業として支えていくべきだ」としている。
日本経済新聞 2020/4/30 17:50
蒸発する需要 宿泊業の3月稼働率、東日本大震災後下回る
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL30HMS_Q0A430C2000000/
新型コロナウイルスの感染拡大が国内の旅館やホテルの宿泊需要を直撃している。観光庁が30日に発表した3月の宿泊旅行統計調査によると、客室稼働率は31.9%にとどまった。東日本大震災直後である2011年4月の43.4%を下回り、09年1月の集計開始以来の最低を更新した。インバウンド(訪日外国人客)需要の急減だけでなく国内の外出自粛もあって、需要は蒸発しかかっている。
この統計は全国のホテルや旅館といった宿泊施設を対象に宿泊者数や利用客室数、その稼働率を調査して翌月末に1次速報値、その1カ月後に2次速報値を公表している。3月の客室稼働率(1次速報値)は、仮に100室あるホテルで1日平均32室弱しか利用がなかったのを意味する。
神奈川大学の飯塚信夫教授は「コロナ禍の打撃を一番受けているのはサービス業だが、その(実際の経済活動の結果である)ハードデータの集計は全般的に遅い」と話す。そのなかで宿泊旅行統計は「数少ない集計の早いデータ」という。
稼働率にはかなり季節性がある。09年度から19年度までの過去11年の平均をみると、8月のピーク(67.8%)へ向けて上昇したあと、1月のボトム(50.2%)へ低下していくという明確なパターンを描く。
この季節性を考えると、普通は稼働率が上昇していく時期である3月の落ち込みは、深刻さがよりはっきりする。3月の稼働率が2月を下回るのは東日本大震災のあった11年以来だ。前年同月と比べると30.9ポイントの低下で、マイナス幅は11年3月の17.4ポイントを大きく超え集計開始以来、最大の落ち込みを記録した。
52.7%だった2月の稼働率にもすでに悪化はあらわれていた。1月(54.0%)を下回ったのは集計開始以来、初めて。前年同月比のマイナス幅は8.3ポイントと8年7カ月ぶりの大きさとなっていた。
2月はまずインバウンド需要の減少が響いた。稼働率を施設のタイプ別にみると、団体客を中心に外国人の宿泊が多い都市部のシティホテルとビジネスホテルの落ち込みが目立った。稼働率はシティが前年同月比20.4ポイント低下の59.0%、ビジネスが9.9ポイント低下の65.4%だった。
3月になると日本人も国内旅行に出かけられなくなり、悪化が一段と広がった。シティの稼働率は前年同月比51.6ポイント低下の29.6%、ビジネスは34.7ポイント低下の42.2%と2月からマイナスが急加速。さらにリゾートは36.1ポイント低下の24.3%、旅館は18.3ポイント低下の21.7%となるなど全面的に厳しくなった。
政府が緊急事態宣言を発令したのは4月。状況は今後さらに苦しくなるだろう。それでも沖縄県知事が大型連休中の県外からの訪問自粛を訴えるなど、強制力の弱い感染防止策によって民主主義は試されている。宿泊施設の「需要蒸発」は、需要の喚起策などではなく苦境にある事業者へのスピード感のある安全網整備などを迫る。
■GDP速報値で基礎統計の「代打」に
内閣府は5月18日に公表予定の1~3月期の国内総生産(GDP)速報値の算出方法を一部変更する。算出のための基礎統計としてGDP速報値の公表に間に合わない3月のサービス関連統計などは、例年は1~2月の数値から3月分を推計している。それではコロナ禍でサービス消費が急減した3月の状況を反映しにくいため、公表済みの3月の業界統計などを代わりの基礎統計として使う。
観光庁の宿泊旅行統計は、宿泊業における基礎統計の「代打」に選ばれた。いつもは総務省によるサービス産業動向調査の宿泊業の売上高を基礎統計とし、GDP速報値に間に合わない3月分(今年は5月29日公表予定)はこの調査の1~2月実績から推計していた。だが、今回はGDP速報値における宿泊サービス消費の推計に、3月の宿泊旅行統計におけるのべ宿泊者数(前年同月比49.6%減の2361万人)と消費者物価指数(CPI)の宿泊料を利用する。
〔日経QUICKニュース(NQN) 編集部次長・穂坂隆弘〕
日本経済新聞 2020/4/27 17:18
ホテルのWBF、民事再生法を申請 負債額160億円
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58537760X20C20A4000000/
ホテル運営のWBFホテル&リゾーツ(大阪市)は27日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請し、同日に保全・監督命令を受けた。負債総額は約160億円。新型コロナウイルスの感染拡大で、2月から宿泊客のキャンセルが相次いだのに加え、ホテルの開設などにも資金を投じ、資金繰りが悪化した。今後は再建に向けて、スポンサー企業を選定する。
同社は旅行会社のホワイト・ベアーファミリー(大阪市)のグループ社として、2009年に設立。近年はインバウンド(訪日外国人)需要を取り込み、ホテル以外にも、フィットネス事業などに積極的に展開していた。
日本経済新聞 2020/4/24 17:38
ファーストキャビン、破産申請 新型コロナで客急減
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58462860U0A420C2XQH000/
カプセルホテルを運営するファーストキャビン(東京・千代田)と関連会社4社は24日、東京地裁に破産を申請した。負債総額は約11億円。直営や運営受託、フランチャイズチェーン(FC)などで、約25軒のホテルを展開していた。同日付で社員とアルバイトの計約400人を解雇した。
ホテルの供給増による競争激化で赤字が続いていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で事業の継続が難しくなっていた。
ファーストキャビンは2006年に創業。航空機のキャビンをイメージした高級感のある空間が特徴のカプセルホテル。女性客からも支持を集めていた。価格帯は4000~6000円が中心だが、近年では比較的高単価な店舗も出店するなど積極展開していた。
だが、東京五輪の開催を前に宿泊特化型ホテルの供給量が急増し、競争が激化。宿泊単価が下落するなどして業績を圧迫していた。ファーストキャビンの19年3月期の売上高は、同時に破産申請するファーストキャビン開発(東京・千代田)と合わせて約27億円、最終損益は8600万円の赤字だった。2期連続で赤字が続いていた。
そこに追い打ちをかけたのが新型コロナの感染拡大だ。3月下旬から4月上旬のホテル稼働率が1割まで落ち込む日もあった。政府による緊急事態宣言の発令後は一部施設を休業するなどしており、事業の継続が難しくなった。18日にはJR西日本との合弁会社であるJR西日本ファーストキャビン(東京・千代田)も解散した。
ファーストキャビンが直営する「ファーストキャビン京橋」(東京・中央)など5軒のホテルは営業を終了する。FC店舗の多くは現在、新型コロナの感染拡大に伴い営業を休止しているが、収束後はオーナーの判断で営業を再開する店舗もあるという。
日本経済新聞 2020/4/16 19:43
JR西日本、簡易宿所運営の子会社を解散
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58146240W0A410C2000000/
JR西日本は16日、宿泊施設を運営をするファーストキャビン(東京・千代田)との合弁会社のJR西日本ファーストキャビン(同)を解散すると発表した。
JR西日本ファーストキャビンは2017年2月に設立、関西でカプセルタイプのホテルなど簡易宿所3施設を運営していた。関西ではビジネスホテルの供給増により宿泊単価の低下が続き、今後の事業継続が難しいと判断した。新型コロナウイルスの感染が拡大する前から解散を決めていた。
日本経済新聞 2020/4/20 19:33
中部の宿泊施設、開業中止も 訪日客・出張の「蒸発」で 新型コロナ・中部の衝撃
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58075230V10C20A4L91000/
新型コロナウイルスの猛威が収まらないなか、中部地方のホテル業界で休業や新規開業の中止が相次いでいる。訪日外国人(インバウンド)の増加や2027年開業予定のリニア中央新幹線への期待感から宿泊施設の建設ラッシュが続いてきたが、今後の景気次第では長期の需給ギャップが懸念されている。
休館となったビジネスホテル(15日、名古屋市中区)
愛知を中心に全国で27件のビジネスホテルを展開するABホテルはこのほど、岐阜や鳥取で予定していたホテル4カ所の開業を取りやめると発表した。「新型コロナが終息したとしても景気の先行きは不透明。当初の収支計画通りにはいかないと判断した」という。
中でも力を入れていたのが21年8月に開業予定だった岐阜県高山市のプロジェクトだ。小京都とも呼ばれる「古い町並み」を目当てに欧米の富裕層らが急増。インバウンドに押されて宿泊予約が取りにくくなっている日本人観光客に商機を見いだす戦略を描いていた。着工はまだだが、建設業者や地主に解約金を払う。
岐阜県土岐市や千葉県君津市といった地方都市4カ所への出店計画も時期を「未定」に変更した。
画像の拡大
ワシントンホテルは12月、名古屋駅前に新店舗の開業を控える。工事は計画通りに進むが「コロナの影響で利用者が見込めなければ、開業時期をずらす可能性もある」(広報担当者)。手元資金に万全を期すため、30億円の融資を柔軟に引き出せるコミットメントラインを金融機関と結んだ。
宿泊客の「蒸発」で、都心部を中心に休業に踏み切る施設も相次ぐ。リゾートトラストは、名古屋市内で運営するホテル2カ所を6月末まで休業する。すでに予約済みの顧客には市内の系列ホテルを手当てする。顧客の集約で施設の稼働コストを抑える狙い。名古屋鉄道系やJR系のホテルも同様の動きをとる。
新城や蒲郡で温泉宿などを経営するある事業者は、予約がない日は臨機応変に休館するようにした。「光熱費や人件費は客の増減にかかわらずかさむ。コストだけが出ていく状況で、開けてても仕方がない」という。
こうした状況に、中小旅館などでつくる愛知県ホテル・旅館生活衛生同業組合の加藤忠則専務理事は「家族旅行や部活動の合宿自粛が夏休みまで続けば、廃業や倒産が増える可能性がある」と危機感を募らせる。同組合は8日、県に固定資産税などの重さを訴えた。
新型コロナの感染が急速に広がった3月以降、中部では三重県志摩市の旅館を運営する「星たる観光」が破産申請を決めるなど、関連倒産が出始めている。こうした宿泊施設は過去の過剰投資を回収できず、もともと経営が悪化していたところに新型コロナが追い打ちをかけた。業界関係者は今後、運転資金が枯渇すれば経営や財務が比較的健全な施設まで苦境に立たされかねないと懸念している。
■客室稼働率1割台も、建設ラッシュ裏目に
名古屋市内ではホテル稼働率が大幅に下がっている。皇室や政財界の要人の利用も多く名古屋を代表する宿泊施設のひとつ、名古屋観光ホテルは3月の稼働率が12.4%だった。例年、人事異動や春先の旅行シーズンで宿泊需要が高まる時期だが、今年は新型コロナウイルスの影響で前年同月に比べ50ポイント以上減った。
市内の主要なホテルでも軒並み40~70ポイント減だった。
愛知は東京、大阪から日帰り圏内にあるうえ、トヨタ自動車をはじめグローバル企業が集積しており、平時でも宿泊需要は出張客の増減に左右されやすい。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、愛知の宿泊施設の稼働率(19年速報値)はビジネスホテルで75.6%とほぼ全国平均並み、シティーホテルは76.9%と平均より2.5ポイントほど低かった。
JR東海が発表した3月の東海道新幹線の乗車人数は、前年同月比で41%だった。東京や大阪など7都府県に続き、全国が政府の緊急事態宣言の対象となり人の往来は一段と細っている。各宿泊施設は4月以降も厳しい数字を見込む。
影響は長期化する可能性がある。インバウンドやリニアへの期待感から愛知では名古屋市内を中心に、200~300室を備えたビジネスホテルの建設が相次いでいる。日本政策投資銀行東海支店によると、愛知県全体ではホテルの客室数が25年に5万室と、東京、大阪、北海道に続き全国4位になる見込み。新型コロナが終息しても、景気次第では客室の余剰感が続くリスクがある。
(細田琢朗)
日本経済新聞 2020/4/20 17:55
ホテル客室単価3割減 稼働率は東阪は2割台で過去最低 英STR調べ ホテル苦境鮮明に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58268360Q0A420C2QM8000/
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内のホテル収益環境が急速に悪化している。3月の平均客室単価は前年同月に比べて3割下がった。稼働率は東京と大阪では20%台まで下落。販売可能な1室あたりの収入も過去最低に落ち込んだ。渡航制限や外出自粛で国内外の宿泊客が急減した。休館が相次ぎ、開業の延期も全国に広がる。倒産も出始めるなど、苦境が鮮明になっている。
画像の拡大
住友不動産は羽田空港に隣接するホテルの開業を今夏に延期した(イメージ画像)
画像の拡大
ホテル専門の英調査会社STRによると、対象とする国内ホテル1125軒の3月の平均客室単価は1万597円。前年同月に比べ28.5%下がった。前月と比べても16.7%安い。単価は2012年3月以来の低さで、下げ幅は1996年1月の調査開始以来、最大となった。
都市別でみると、東京の単価は1万4716円で前年同月比25.9%下落。大阪は1万52円で同30.9%下がった。
3月の稼働率(確報値)は国内全体で32.5%だった。東京は25.5%、大阪は24.4%で、いずれも調査開始以降の最低となった。
前月からの稼働率の落ち込みが急だ。2月は国内全体が64.7%、東京が62.5%、大阪が58.1%だった。19年3月はすべて80%を超えており、需要の減少が鮮明だ。
過去の危機時と比べてもマイナス幅が大きい。リーマン・ショック後に最も下がった09年1月が国内全体で57.1%、東日本大震災直後の11年4月が61.3%で、これらの半分に低下している。
平均客室単価と稼働率がともに落ち込んだため、販売可能な1室あたりの収入「RevPAR」も急減している。3月の国内全体は3444円で、前年同月比で72.6%減少した。東京は3755円で同78.8%減、大阪は2457円で同80.7%減っており、いずれも過去最低だという。
需要の急減で臨時休館や営業を制限するホテルが全国で相次ぐ。森トラスト・ホテルズ&リゾーツはグループが運営する万平ホテル(長野県軽井沢町)など17施設を20日から5月6日まで臨時休業にした。「地域間での感染拡大を抑制する必要性がある」と説明する。今後稼働率の一段の低下は避けられそうにない。
開業の延期も目立つ。住友不動産は21日の予定だったホテルヴィラフォンテーヌプレミア/グランド羽田空港(東京・大田)の開業を今夏に延期。オリックスはJR金沢駅西口で開発中のハイアットセントリック金沢とハイアットハウス金沢について、家具・照明の製作や調達遅れのため開業を6月から9月末までに延ばした。
東京商工リサーチによると、17日までに新型コロナの影響とみられる宿泊業の倒産(準備中含む)は全国で14件。コロナ禍が長引けば今後事例が増えそうだ。(田中浩司)
日本経済新聞 2020/4/10 17:55
ホテル稼働率、過去最低に 3月東阪は3割下回る
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57926390Q0A410C2QM8000/
新型コロナウイルスの感染拡大で国内のホテル稼働率が過去最低になった。3月の稼働率は30.5%と前月の半分程度まで下がった。東京、大阪はともに20%台に低下。リーマン・ショックや東日本大震災の後も60%前後にとどまったのに比べて落ち込みが激しい。渡航制限や外出自粛で内外の宿泊客が急減。休館するホテルが増え、開業延期の動きも広がる。
ホテル専門の英調査会社STRは10日、国内ホテル約1000軒の3月の稼働率(速報値)を公表した。東京は23.5%、大阪は22.8%。いずれも1996年1月の調査開始以降で最低となった。
2月(確報値)は国内全体が64.7%、東京が62.5%、大阪が58.1%。2019年2月はすべて80%を超えており、需要の急減が鮮明だ。
過去の危機時と比べても下げ幅が大きい。リーマン・ショック後に最も下がった09年1月が61.3%、東日本大震災直後の11年4月は57.1%で、これらの半分の水準まで下がっている。
需要急減を受けて休館するホテルも多い。東横インは同日、国内外の一部ホテルを休館すると発表した。政府の緊急事態宣言後、帝国ホテル東京(東京・千代田)などは新規の宿泊予約を制限している。今後も稼働率の低下は続きそうだ。
7月に開幕予定だった東京五輪を前に相次ぐと見込まれていたホテル開業の延期も目立つ。三井不動産は同日、三井ガーデンホテル福岡中洲(福岡市)の開業を延期すると発表した。開業日は今後の情勢を踏まえて決めるとしている。
/////////////////////////////////////////////
日本経済新聞 2020/5/16 23:24
賃料減免、REITに影 ホテル系最大手が分配金98%減 商業施設系に広がり警戒
----新型コロナウイルスの影響で、家賃の減免交渉に乗り出す企業や個人が増えている。不動産を保有して賃料などの収入を投資家に分配する不動産投資信託(REIT)では、ホテル系の最大手で実際に免除に応じる例が出てきた。減免の動きは商業施設などにも広がりかねない。テナントが賃料を払えない場合にどう負担を分け合うのか、不動産業界が直面する問題の前触れとなっている。
日本経済新聞 2020/5/9 21:00
ホテルマネー、引き揚げ連鎖も 需要蒸発で破綻相次ぐ
----新型コロナウイルスの感染拡大によるホテル事業者の経営破綻が増え始めた。訪日外国人(インバウンド)や東京五輪を狙って、新規参入や開業が相次いでいたところに宿泊需要が蒸発し、資金繰りに行き詰まっている。ホテル業界には投資ファンドからも資金が流入していただけに、破綻が広がればオーナーによる物件売却など、不動産市場に影響がでる可能性もある。
東洋経済オンライン 2020/05/04 5:35
「コロナ倒産」本格化、追い込まれたホテル業界 投資にのめり込んだ不動産会社に波及も----インバウンドの蒸発と外出自粛で刀折れ矢尽きた。
ホテル運営会社のファーストキャビンおよび子会社4社は4月24日、東京地⽅裁判所に破産⼿続開始の申し⽴てを⾏った。負債は合計約37億円となる模様だ。破産に伴い、直営5施設は営業を終了する。
日本経済新聞 2020/5/2 12:00
関西のホテル、開発ラッシュ裏目に コロナ倒産を警戒
----新型コロナウイルスの感染拡大で関西のホテル需要が大幅に落ち込んでいる。日本経済新聞社がまとめた大阪市内主要13ホテルの2020年3月の平均客室稼働率は3割を下回り、過去最低となった。大型連休中の新規予約を停止したホテルもある。ここ数年、インバウンド(訪日外国人)需要を見込み、ビジネスホテルを中心に開発が相次いだ反動もあり、経営環境が急速に悪化している。
日本経済新聞 2020/4/30 17:50
蒸発する需要 宿泊業の3月稼働率、東日本大震災後下回る
----新型コロナウイルスの感染拡大が国内の旅館やホテルの宿泊需要を直撃している。観光庁が30日に発表した3月の宿泊旅行統計調査によると、客室稼働率は31.9%にとどまった。東日本大震災直後である2011年4月の43.4%を下回り、09年1月の集計開始以来の最低を更新した。インバウンド(訪日外国人客)需要の急減だけでなく国内の外出自粛もあって、需要は蒸発しかかっている。
日本経済新聞 2020/4/20 19:33
中部の宿泊施設、開業中止も 訪日客・出張の「蒸発」で 新型コロナ・中部の衝撃
----新型コロナウイルスの猛威が収まらないなか、中部地方のホテル業界で休業や新規開業の中止が相次いでいる。訪日外国人(インバウンド)の増加や2027年開業予定のリニア中央新幹線への期待感から宿泊施設の建設ラッシュが続いてきたが、今後の景気次第では長期の需給ギャップが懸念されている。
以下参考
日本経済新聞 2020/5/16 23:24
賃料減免、REITに影 ホテル系最大手が分配金98%減 商業施設系に広がり警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59214280W0A510C2EA3000/
インヴィンシブル投資法人が保有する「ホテルマイステイズ札幌アスペン」(札幌市)
新型コロナウイルスの影響で、家賃の減免交渉に乗り出す企業や個人が増えている。不動産を保有して賃料などの収入を投資家に分配する不動産投資信託(REIT)では、ホテル系の最大手で実際に免除に応じる例が出てきた。減免の動きは商業施設などにも広がりかねない。テナントが賃料を払えない場合にどう負担を分け合うのか、不動産業界が直面する問題の前触れとなっている。
先週の東京市場では、ホテル系REIT最大手インヴィンシブル投資法人の投資口価格(株価に相当)が24%下落した。2020年6月期の1口あたり分配金の予想を30円としたためだ。19年12月期の1725円に比べ98%減る。
分配金減額の理由は、ホテル運営会社マイステイズ・ホテル・マネジメント(東京・港)の支援にある。マイステイズはインヴィンシブルが国内で保有する83ホテルのうち73を運営し、同REITに賃料を払っている。新型コロナの影響で宿泊客が減り、賃料を払えなくなった。
両社の交渉の結果、賃貸契約を変更し、3~6月分の固定賃料を免除する。さらに、同REITが建物の管理費なども支援する。同REITの収入は急減し、投資家への分配金を減らさざるを得なくなった。
REITに限らず不動産業界では、新型コロナの影響でテナントの収入が減った場合に、家主も賃料を減免して負担を負うべきかが大きな問題になりつつある。宿泊需要が「蒸発」したホテル系のREITで、いち早くこの問題が表面化した。
REITに特有な事情もある。インヴィンシブルもマイステイズも、米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループ傘下だ。
フォートレスはこの2社を活用して日本でホテル投資を拡大してきた。訪日外国人が急増し始めた13年ごろから、次々に買収し、運営をマイステイズに変更。稼働が安定したら物件をインヴィンシブルに売却し、投資資金を回収した。
インヴィンシブルは19年末にホテルの資産額がREITで最大の約4300億円になった。資産拡大に伴い、分配金は6年間で7倍弱に増加。投資口価格も3倍強と比較可能な銘柄でトップだ。
フォートレスは2社を一体運営し、これまではインヴィンシブルの拡大を重視し、投資家も恩恵を受けてきた。今回はマイステイズの経営支援を優先し投資家の負担が増える。フォートレス側もマイステイズに13億円を追加出資する。ただ、ある地銀の運用担当者は「マイステイズの財務状況は非上場のため見えにくく、REITの投資家は負担が合理的か判断が難しい。フォートレスがもっと身銭を切ってもいいのではないか」と話す。
REITと主要な施設運営会社が同グループという関係は、ホテル系や商業施設系に多い。同様の対応が広がれば「構造問題が意識され、近寄りがたい投資商品とみなされかねない」(アイビー総研の関大介氏)。
不動産証券化協会(ARES)によると、上場REITの約60銘柄が保有する不動産の総額は2月末時点で約19兆円。家賃収入(不動産賃貸事業収益)は19年度の1年間で約1兆1千億円ある。
イオンモールやイオンリテールは4月、運営するショッピングセンター(SC)に出店するテナントの賃料減免を発表した。SCを保有するのがイオンリート投資法人だ。商業施設系では同様の減免が多く出て、REITや投資家側にも負担が及ぶ可能性がある。
小売りなどテナントが稼いだ収益の一部が家賃として家主や投資家の利益になってきた。新型コロナで経済が収縮した今、損失の分担を巡って議論が活発になりそうだ。
(和田大蔵)
日本経済新聞 2020/5/12 20:30
REIT指数、4日ぶり反落 ホテル系に減配リスク
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58993710S0A510C2EN2000/
12日の東京市場で、不動産投資信託(REIT)の総合的な値動きを示す東証REIT指数が4営業日ぶりに反落した。前日にホテル系のインヴィンシブル投資法人が発表した分配金の大幅引き下げを受け、ホテル系REITを中心にほぼ全面安となった。緊急事態宣言の解除期待から前日に同指数は約2カ月ぶり高値をつけたが、再び投資家の警戒感が強まった。
東証REIT指数の12日の終値は前日比36ポイント(2%)安の1644だった。インヴィンシブルは制限値幅の下限(ストップ安水準)の23%安で引け、いちごホテルリート投資法人は9%安となった。商業施設系の下げも目立ち、「ららぽーと」などを保有するフロンティア不動産投資法人は5%安だった。
インヴィンシブルは主要テナントであるホテル運営会社の倒産を回避する狙いもあり、同社の賃料を減額、投資家に支払う分配金の引き下げを決めた。予想分配金利回りは12日終値ベースで1%未満となり「利回り商品であるREITとしての魅力がなくなった」(国内金融機関)ことから、売りが殺到した。
一部の銘柄は保有不動産の価値と比べて割安感が強いものの、テナントの信用リスクという懸念材料も加わり「REIT相場はボラティリティー(変動率)が高い展開が続く」(国内証券)との声が聞かれた。
日本経済新聞 2020/5/11 20:30
インヴィンシブル、分配金98%減 ホテル需要減で
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58943880R10C20A5EN2000/
不動産投資信託(REIT)のインヴィンシブル投資法人は11日、2020年6月期の1口あたり分配金(株式の配当に相当)が19年12月期に比べて1695円(98%)少ない30円になる見通しだと発表した。従来は未定としていた。新型コロナウイルスの影響で保有ホテル稼働率が急落し、賃料収入が大幅に減る。20年12月期の分配金予想は引き続き未定とした。
インヴィンシブルは米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループを設立母体とするREITで、主にホテルと賃貸住宅を保有する。主要テナントであるホテル運営会社、マイステイズ・ホテル・マネジメントから一時的な賃料免除などの要請を受けたため、賃貸契約の見直しに応じたという。
日本経済新聞 2020/5/9 21:00
ホテルマネー、引き揚げ連鎖も 需要蒸発で破綻相次ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58916690Z00C20A5EA5000/
新型コロナウイルスの感染拡大によるホテル事業者の経営破綻が増え始めた。訪日外国人(インバウンド)や東京五輪を狙って、新規参入や開業が相次いでいたところに宿泊需要が蒸発し、資金繰りに行き詰まっている。ホテル業界には投資ファンドからも資金が流入していただけに、破綻が広がればオーナーによる物件売却など、不動産市場に影響がでる可能性もある。
東京商工リサーチによると新型コロナ関連の宿泊業の経営破綻は8日時点で29件と、業種別で最多だ。4月24日にはカプセルホテル運営のファーストキャビン(東京・千代田)、同27日にはWBFホテル&リゾーツ(大阪市)が経営破綻した。
【関連記事】
• ファーストキャビン、破産申請 新型コロナで客急減
• ホテルのWBF、民事再生法を申請 負債額160億円
• 企業の資金繰り、夏越え試練 キャップ座談会
足元で経営が行き詰まっているのは、コロナ以前から財務が悪化していた企業が目立つ。
2009年設立のWBFは、北海道と関西を中心に約30施設を運営する。事業拡大に積極的で、ホテル開発などに充てるために銀行借り入れを増やしていた。
画像の拡大
WBFホテル&リゾーツが運営する東京・浅草の施設(東京都台東区)
WBFは事業構造にも問題があった。建物を不動産会社などから借りて運営するホテルも多く、賃料負担が重い。国内外の投資ファンドなどに支援を打診したが、ある1社は「賃料の支払い条件が厳しく、再建は難しいと判断した」と明かす。東京商工リサーチによると負債は約160億円まで膨らんでいた。裁判所の監督下で利払いや賃料など条件を見直し、改めてスポンサーを探す。
06年設立のファーストキャビンも近年、急激に施設数を増やしていた。旅客機をイメージした高級感のある内装が特徴で、フランチャイズチェーンを含め約20施設を運営していたが、「デザイン優先で立地や運営効率が悪かった」(大手不動産幹部)こともあり、東京商工リサーチによると19年3月期まで2期連続で最終赤字だった。
両社をはじめ新興勢力が積極的に施設数を増やしていた背景にはインバウンド需要の拡大がある。ビザ緩和などの政策で、インバウンドは19年まで8年連続で増加し、6年で3倍となっていた。今年夏に予定されていた東京五輪もあり、宿泊需要が増えるとの算段があった。
ホテルの建設ラッシュを後押ししたのが、長引く低金利で運用難となっていた投資マネーだ。株や債券以外の投資先として不動産に資金が流入、さらにホテルはオフィスビルやマンションよりも高い収益が見込めるとされていた。
不動産会社やファンドがホテルを開発して、運営会社に貸し出すと、運営会社は手元資金が少なくても出店の速度を上げることができた。不動産会社やファンドなど施設オーナーにとっては運営の手間をかけず、安定した賃料収入が得られるメリットもあって、両者がタッグを組みバブルの様相を呈していた。
最近では、都市部で売りに出た土地を、ホテルの開発計画を持つ不動産会社が競り落とすことが目立っていた。ホテルの急増が、オフィス空室率の歴史的な低水準や、マンションの販売価格上昇を招いたとの指摘もある。
それが新型コロナによる需要蒸発で、窮地に立たされている。
WBFの経営破綻では、上場不動産投資信託(REIT)のスターアジア不動産投資法人や投資法人みらいが、WBFに施設を賃貸していたと開示した。中堅不動産のタカラレーベンは2月に京都市内でWBFのホテルを開業したばかり。東急リバブルはWBFへの賃貸を目的に関西国際空港近くで大型ホテルを開発中で、7月に完成予定だった。
不動産証券化協会(ARES)によると、上場REITが保有するホテルは約1兆6千億円と、3年間で約7割増えた。私募REITや不動産ファンドを合わせるとさらに膨らむ。
緊急事態宣言が延長され、宿泊需要の回復は不透明感が漂う。政府は企業支援策を打ち出しているが、「無謀な経営をしていたところも目立ち、事業者の選別も必要だ」(金融機関)との声もある。今後、ホテル運営会社の経営破綻が広がり賃料収入が減ると、不動産オーナーも借入金返済が滞り、場合に
よっては物件を投げ売りする恐れもある。不動産価格の下落でファンドの資産価値が目減りし、投資家がファンドから資金を引き揚げるといった悪循環に陥りかねない。(和田大蔵)
東洋経済オンライン 2020/05/04 5:35
「コロナ倒産」本格化、追い込まれたホテル業界 投資にのめり込んだ不動産会社に波及も
https://toyokeizai.net/articles/-/347698
一井 純 : 東洋経済 記者 著者フォロー
WBFホテル&リゾーツは民事再生法の適用を申請した(記者撮影)
インバウンドの蒸発と外出自粛で刀折れ矢尽きた。
ホテル運営会社のファーストキャビンおよび子会社4社は4月24日、東京地⽅裁判所に破産⼿続開始の申し⽴てを⾏った。負債は合計約37億円となる模様だ。破産に伴い、直営5施設は営業を終了する。
同じくホテル運営会社のWBFホテル&リゾーツも27日、大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、同日に監督命令を受けた。負債総額は約160億円と、コロナ関連では最大の倒産となった。代理人を務める弁護士は、「複数の企業がスポンサーとして名乗りを上げているが、運営から撤退する施設も出て来るだろう」と話す。
もともと苦しい経営状況
2社の倒産の直接的な原因は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うホテルの休業だ。他方で、ホテル業界の苦境は今に始まったわけではない。いずれも新型コロナが引き金を引いたというよりも、もともと苦しい経営状況に追い打ちをかけたというほうが正確だ。
ホテルの月次データを公表している3つのREIT(上場不動産信託)のRevPAR(平均客室単価に客室稼働率を掛けた経営指標)を集計したのが下図だ。新型コロナのあおりをもろに食らった今年3月の下落が突出しているものの、業績自体は昨年中頃から軟調に推移していることがわかる。
昨年はホテル業界にとって悪いニュースが相次いだ。昨年7月、これまで増加の一途を辿っていた国内の延べ宿泊者数が横ばいとなり、8月には2年ぶりに前年割れへと転じた。日韓関係の悪化に伴い、韓国からの訪日客が減少したことが響いた。10月には台風19号が3連休を直撃したことも痛手となった。
→次ページ著しく緩んだ需給バランス
需要が冷え込んでも、インバウンド需要や東京五輪特需を当て込んだホテルの新規供給は止まらない。厚生労働省によれば、ホテルや旅館、簡易宿所といった宿泊施設数は、2013年度の7万9519から2018年度には8万5617へと増加。市場の需給バランスは著しく緩んだ。
冷え込む需要と止まらぬ供給。「以前は各店舗の稼働率は9割超だったが、足元では8割5分」。昨年7月、記者の取材に対してファーストキャビンの幹部はこう答えていた。限られた客をホテル同士が奪い合い、稼働率を維持するために宿泊単価を削るダンピング合戦の様相を呈した(2019年11月13日配信「過剰供給のツケ、『関西ホテルバブル』に変調」)。
大阪市内に本社を構えるWBF自身も、競争に巻き込まれたホテル会社の一つだ。市内で運営する「WBF淀屋橋南」について、WBFは「ホテル同士の競争が激しく、思ったほど収益が上がらないため撤退したい」と、ホテルを保有する投資法人みらいに対して通達。契約はまだ長期間残っていたが、違約金を払ってでも解約を進めたい意向だった。
不動産業界にも飛び火
ホテル業界には日々、不穏なニュースが飛び込む。東京商工リサーチによれば、今年2月から4月27日までの間で、宿泊業の倒産は21件を数えた。さらに3月から4月にかけて、上場するほとんどのホテル運営会社が業績予想の下方修正を発表するなど、まさに総崩れだ。営業再開の見通しが立たないため、業績予想を「未定」とした企業も多く、日銭商売であるホテルの資金繰り不安は日増しに高まる。
外出自粛が長引けば、影響はホテル業界の外へと飛び火していく。筆頭は、ホテル運営会社から賃料を得ている不動産会社だろう。WBFの倒産を受けて、同社が運営する「ホテルWBFアートステイなんば」を保有するスターアジア不動産投資法人は、「今後の方策を検討する」とリリースを発表した。中堅デベロッパーのタカラレーベンに至っては、今年2月に京都市内で「ホテルWBF五条堀川」を開業させたばかりだ。今後の運営方針について、同社はコメントを避けた。
→次ページ固定賃料の支払いさえ難しい
WBFが運営するホテルについて、東洋経済が不動産登記簿を取得したところ、複数のホテルの所有権が信託銀行に移転していた。このうち「ホテルWBF京都東寺」は、不動産ファンドのケネディクスが組成した私募ファンドに含まれている。ケネディクスは「運用方針についてはコメントできない」としているが、同ファンドには九州電力も出資しており、運営会社の倒産は投資家のリターンにも跳ね返る。
ホテルの賃料は一般的に、売り上げに連動する変動賃料と、売り上げにかかわらず毎月一定金額を支払う固定賃料とで構成される。ホテルの売り上げ減少を受け、受け取る変動賃料を「0円」と見積もる不動産会社は多いが、収入が途絶えているホテル運営会社にとっては固定賃料の支払いさえ難しい。運営会社の倒産を防ぐためにも、不動産会社は固定部分の減額にも踏み込まざるをえないだろう。
「回転型」ビジネスの功罪
現在進行形でホテルを保有している不動産会社だけでなく、開発したホテルを売却する不動産会社への影響も無視できない。不動産登記簿によれば、大阪市内に立つWBFが運営するホテルのうち少なくとも4棟は、関西地盤のデベロッパーである日本エスコンが開発、売却していた。
関西国際空港のすぐ近くでは、東急リバブルが「ホテルWBFグランデ関西エアポート」を開発中だ。今年7月の竣工予定で、その後は投資家へと売却する予定だが、「現時点では開発計画に変更はない」(同社)。
2019年9月にオープンした「ファーストキャビン柏の葉」。来海忠男社長は「ファーストキャビンを占う重要な店舗」と意気込んでいたが、わずか半年での閉店となった(記者撮影)
ホテル業界が沸いていたここ数年、不動産各社はこぞってホテル開発に参入した。多くは開発したホテルを系列REITや外部の投資家に売却し、回収した資金でさらに多くのホテルを開発するという「回転型」ビジネスだ。「昔は興味を示さなかったマンションデベロッパーが、宿泊単価上昇を受けてホテル開発に参入してきた」(大手デベロッパーのホテル開発担当者)。
コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします
インバウンド需要を追い風に、オフィスや商業施設よりもホテルの収益性が勝った時代には、投資家もホテルを欲しがり、物件と資金がうまく「回転」していた。好循環が続く間は爆発的な利益をもたらす回転型ビジネスだが、ひとたび開発物件の売却が滞れば、資金繰りに窮するおそれがある。
もともと負債総額が多く、行方が注目されていたファーストキャビンとWBF。2社の倒産劇は、これから起こる波乱の幕開けにすぎない。
一井 純さんの最新公開記事をメールで受け取る(著者フォロー)
日本経済新聞 2020/5/2 12:00
関西のホテル、開発ラッシュ裏目に コロナ倒産を警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58711640R00C20A5LKA000/
民事再生法の適用を申請したWBFの負債総額は約160億円だった
新型コロナウイルスの感染拡大で関西のホテル需要が大幅に落ち込んでいる。日本経済新聞社がまとめた大阪市内主要13ホテルの2020年3月の平均客室稼働率は3割を下回り、過去最低となった。大型連休中の新規予約を停止したホテルもある。ここ数年、インバウンド(訪日外国人)需要を見込み、ビジネスホテルを中心に開発が相次いだ反動もあり、経営環境が急速に悪化している。
「リーマン・ショックや東日本大震災でも経験したことのない稼働率の低さだ」。あるホテルの従業員が嘆く。普段なら利用客でにぎわうロビーも閑散としていた。このホテルの3月の稼働率は21%にとどまった。
■大阪市内の3月稼働率は過去最低
大阪市内13ホテルの3月の平均稼働率は29.8%で、前年同月に比べ約60ポイント下がった。09年の調査開始以降で最低だった。リーガロイヤルホテルは39.8%、帝国ホテル大阪は27.4%だった。
ホテルグランヴィア大阪は「国内は外出自粛が広がり、海外は入国規制の影響で稼働率が大きく落ち込んだ」という。政府の緊急事態宣言や大阪府の休業要請を受けて、大型連休中は新規の宿泊予約の受付を休止した。4~5月の平均稼働率はさらに下がりそうだ。
積極的な販促策を打ち出せないなか、会社員らのテレワーク需要への期待もある。ホテルニューオータニ大阪は5月末まで専用プランを提供する。ただ「売り上げカバーには到底至らない」とみている。コロナ後を見据えて、レストランの人気メニューのレシピをネットで公開している。
休業や開業延期も広がる。ホテル京阪はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)近くのホテル2軒を臨時休業している。予約済の客には近くの系列ホテルを案内した。外資系高級ホテルの米エースホテルは京都市中心部で4月に開業する予定だったが、5月21日に延期した。
大阪や京都では供給過剰を指摘する声が根強い。阪急阪神ホテルズが大阪駅近くに1千室規模のホテルを19年秋に開業するなど開発ラッシュが続いてきた。不動産情報サービス大手CBREの19年時点の推計によると、21年の大阪市内の客室数は約8万室となり、需要を2万室余り上回る見通しだ。京都市でも1万室以上多いという。
■ホテル倒産で止まる工事
宿泊のキャンセルが相次ぎ倒産も出始めている。WBFホテル&リゾーツ(大阪市)は4月27日、民事再生法の適用を申請した。事業継続を目指して、スポンサーを探している。同社から工事を請け負ったある建設会社は「工事は止まり、再開のめどは立たない。新たなスポンサーのもとで建設を再開して代金を回収したいが、厳しい」と懸念する。
東京商工リサーチによると、新型コロナによる倒産は4月末に全国で100件を超えた。2割以上がホテル・宿泊業だ。関西でも16件のうち4件あった。担当者は「今後も中堅以下のホテル倒産が増えそうだ」と話す。あるホテルは「休業する施設が増えて、正規従業員ですら働く現場がない。パートなど非正規のシフトはかなり絞っている」と明かす。このまま倒産が増え続ければ、雇用を直撃しかねない。
大手企業の流出で地盤低下が続いた関西はインバウンド需要が経済をけん引してきた。日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長は、統合型リゾート(IR)の誘致や25年の国際博覧会(大阪・関西万博)を見据えて「国や自治体は関西経済の成長を担う重要な産業として支えていくべきだ」としている。
日本経済新聞 2020/4/30 17:50
蒸発する需要 宿泊業の3月稼働率、東日本大震災後下回る
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL30HMS_Q0A430C2000000/
新型コロナウイルスの感染拡大が国内の旅館やホテルの宿泊需要を直撃している。観光庁が30日に発表した3月の宿泊旅行統計調査によると、客室稼働率は31.9%にとどまった。東日本大震災直後である2011年4月の43.4%を下回り、09年1月の集計開始以来の最低を更新した。インバウンド(訪日外国人客)需要の急減だけでなく国内の外出自粛もあって、需要は蒸発しかかっている。
この統計は全国のホテルや旅館といった宿泊施設を対象に宿泊者数や利用客室数、その稼働率を調査して翌月末に1次速報値、その1カ月後に2次速報値を公表している。3月の客室稼働率(1次速報値)は、仮に100室あるホテルで1日平均32室弱しか利用がなかったのを意味する。
神奈川大学の飯塚信夫教授は「コロナ禍の打撃を一番受けているのはサービス業だが、その(実際の経済活動の結果である)ハードデータの集計は全般的に遅い」と話す。そのなかで宿泊旅行統計は「数少ない集計の早いデータ」という。
稼働率にはかなり季節性がある。09年度から19年度までの過去11年の平均をみると、8月のピーク(67.8%)へ向けて上昇したあと、1月のボトム(50.2%)へ低下していくという明確なパターンを描く。
この季節性を考えると、普通は稼働率が上昇していく時期である3月の落ち込みは、深刻さがよりはっきりする。3月の稼働率が2月を下回るのは東日本大震災のあった11年以来だ。前年同月と比べると30.9ポイントの低下で、マイナス幅は11年3月の17.4ポイントを大きく超え集計開始以来、最大の落ち込みを記録した。
52.7%だった2月の稼働率にもすでに悪化はあらわれていた。1月(54.0%)を下回ったのは集計開始以来、初めて。前年同月比のマイナス幅は8.3ポイントと8年7カ月ぶりの大きさとなっていた。
2月はまずインバウンド需要の減少が響いた。稼働率を施設のタイプ別にみると、団体客を中心に外国人の宿泊が多い都市部のシティホテルとビジネスホテルの落ち込みが目立った。稼働率はシティが前年同月比20.4ポイント低下の59.0%、ビジネスが9.9ポイント低下の65.4%だった。
3月になると日本人も国内旅行に出かけられなくなり、悪化が一段と広がった。シティの稼働率は前年同月比51.6ポイント低下の29.6%、ビジネスは34.7ポイント低下の42.2%と2月からマイナスが急加速。さらにリゾートは36.1ポイント低下の24.3%、旅館は18.3ポイント低下の21.7%となるなど全面的に厳しくなった。
政府が緊急事態宣言を発令したのは4月。状況は今後さらに苦しくなるだろう。それでも沖縄県知事が大型連休中の県外からの訪問自粛を訴えるなど、強制力の弱い感染防止策によって民主主義は試されている。宿泊施設の「需要蒸発」は、需要の喚起策などではなく苦境にある事業者へのスピード感のある安全網整備などを迫る。
■GDP速報値で基礎統計の「代打」に
内閣府は5月18日に公表予定の1~3月期の国内総生産(GDP)速報値の算出方法を一部変更する。算出のための基礎統計としてGDP速報値の公表に間に合わない3月のサービス関連統計などは、例年は1~2月の数値から3月分を推計している。それではコロナ禍でサービス消費が急減した3月の状況を反映しにくいため、公表済みの3月の業界統計などを代わりの基礎統計として使う。
観光庁の宿泊旅行統計は、宿泊業における基礎統計の「代打」に選ばれた。いつもは総務省によるサービス産業動向調査の宿泊業の売上高を基礎統計とし、GDP速報値に間に合わない3月分(今年は5月29日公表予定)はこの調査の1~2月実績から推計していた。だが、今回はGDP速報値における宿泊サービス消費の推計に、3月の宿泊旅行統計におけるのべ宿泊者数(前年同月比49.6%減の2361万人)と消費者物価指数(CPI)の宿泊料を利用する。
〔日経QUICKニュース(NQN) 編集部次長・穂坂隆弘〕
日本経済新聞 2020/4/27 17:18
ホテルのWBF、民事再生法を申請 負債額160億円
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58537760X20C20A4000000/
ホテル運営のWBFホテル&リゾーツ(大阪市)は27日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請し、同日に保全・監督命令を受けた。負債総額は約160億円。新型コロナウイルスの感染拡大で、2月から宿泊客のキャンセルが相次いだのに加え、ホテルの開設などにも資金を投じ、資金繰りが悪化した。今後は再建に向けて、スポンサー企業を選定する。
同社は旅行会社のホワイト・ベアーファミリー(大阪市)のグループ社として、2009年に設立。近年はインバウンド(訪日外国人)需要を取り込み、ホテル以外にも、フィットネス事業などに積極的に展開していた。
日本経済新聞 2020/4/24 17:38
ファーストキャビン、破産申請 新型コロナで客急減
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58462860U0A420C2XQH000/
カプセルホテルを運営するファーストキャビン(東京・千代田)と関連会社4社は24日、東京地裁に破産を申請した。負債総額は約11億円。直営や運営受託、フランチャイズチェーン(FC)などで、約25軒のホテルを展開していた。同日付で社員とアルバイトの計約400人を解雇した。
ホテルの供給増による競争激化で赤字が続いていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で事業の継続が難しくなっていた。
ファーストキャビンは2006年に創業。航空機のキャビンをイメージした高級感のある空間が特徴のカプセルホテル。女性客からも支持を集めていた。価格帯は4000~6000円が中心だが、近年では比較的高単価な店舗も出店するなど積極展開していた。
だが、東京五輪の開催を前に宿泊特化型ホテルの供給量が急増し、競争が激化。宿泊単価が下落するなどして業績を圧迫していた。ファーストキャビンの19年3月期の売上高は、同時に破産申請するファーストキャビン開発(東京・千代田)と合わせて約27億円、最終損益は8600万円の赤字だった。2期連続で赤字が続いていた。
そこに追い打ちをかけたのが新型コロナの感染拡大だ。3月下旬から4月上旬のホテル稼働率が1割まで落ち込む日もあった。政府による緊急事態宣言の発令後は一部施設を休業するなどしており、事業の継続が難しくなった。18日にはJR西日本との合弁会社であるJR西日本ファーストキャビン(東京・千代田)も解散した。
ファーストキャビンが直営する「ファーストキャビン京橋」(東京・中央)など5軒のホテルは営業を終了する。FC店舗の多くは現在、新型コロナの感染拡大に伴い営業を休止しているが、収束後はオーナーの判断で営業を再開する店舗もあるという。
日本経済新聞 2020/4/16 19:43
JR西日本、簡易宿所運営の子会社を解散
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58146240W0A410C2000000/
JR西日本は16日、宿泊施設を運営をするファーストキャビン(東京・千代田)との合弁会社のJR西日本ファーストキャビン(同)を解散すると発表した。
JR西日本ファーストキャビンは2017年2月に設立、関西でカプセルタイプのホテルなど簡易宿所3施設を運営していた。関西ではビジネスホテルの供給増により宿泊単価の低下が続き、今後の事業継続が難しいと判断した。新型コロナウイルスの感染が拡大する前から解散を決めていた。
日本経済新聞 2020/4/20 19:33
中部の宿泊施設、開業中止も 訪日客・出張の「蒸発」で 新型コロナ・中部の衝撃
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58075230V10C20A4L91000/
新型コロナウイルスの猛威が収まらないなか、中部地方のホテル業界で休業や新規開業の中止が相次いでいる。訪日外国人(インバウンド)の増加や2027年開業予定のリニア中央新幹線への期待感から宿泊施設の建設ラッシュが続いてきたが、今後の景気次第では長期の需給ギャップが懸念されている。
休館となったビジネスホテル(15日、名古屋市中区)
愛知を中心に全国で27件のビジネスホテルを展開するABホテルはこのほど、岐阜や鳥取で予定していたホテル4カ所の開業を取りやめると発表した。「新型コロナが終息したとしても景気の先行きは不透明。当初の収支計画通りにはいかないと判断した」という。
中でも力を入れていたのが21年8月に開業予定だった岐阜県高山市のプロジェクトだ。小京都とも呼ばれる「古い町並み」を目当てに欧米の富裕層らが急増。インバウンドに押されて宿泊予約が取りにくくなっている日本人観光客に商機を見いだす戦略を描いていた。着工はまだだが、建設業者や地主に解約金を払う。
岐阜県土岐市や千葉県君津市といった地方都市4カ所への出店計画も時期を「未定」に変更した。
画像の拡大
ワシントンホテルは12月、名古屋駅前に新店舗の開業を控える。工事は計画通りに進むが「コロナの影響で利用者が見込めなければ、開業時期をずらす可能性もある」(広報担当者)。手元資金に万全を期すため、30億円の融資を柔軟に引き出せるコミットメントラインを金融機関と結んだ。
宿泊客の「蒸発」で、都心部を中心に休業に踏み切る施設も相次ぐ。リゾートトラストは、名古屋市内で運営するホテル2カ所を6月末まで休業する。すでに予約済みの顧客には市内の系列ホテルを手当てする。顧客の集約で施設の稼働コストを抑える狙い。名古屋鉄道系やJR系のホテルも同様の動きをとる。
新城や蒲郡で温泉宿などを経営するある事業者は、予約がない日は臨機応変に休館するようにした。「光熱費や人件費は客の増減にかかわらずかさむ。コストだけが出ていく状況で、開けてても仕方がない」という。
こうした状況に、中小旅館などでつくる愛知県ホテル・旅館生活衛生同業組合の加藤忠則専務理事は「家族旅行や部活動の合宿自粛が夏休みまで続けば、廃業や倒産が増える可能性がある」と危機感を募らせる。同組合は8日、県に固定資産税などの重さを訴えた。
新型コロナの感染が急速に広がった3月以降、中部では三重県志摩市の旅館を運営する「星たる観光」が破産申請を決めるなど、関連倒産が出始めている。こうした宿泊施設は過去の過剰投資を回収できず、もともと経営が悪化していたところに新型コロナが追い打ちをかけた。業界関係者は今後、運転資金が枯渇すれば経営や財務が比較的健全な施設まで苦境に立たされかねないと懸念している。
■客室稼働率1割台も、建設ラッシュ裏目に
名古屋市内ではホテル稼働率が大幅に下がっている。皇室や政財界の要人の利用も多く名古屋を代表する宿泊施設のひとつ、名古屋観光ホテルは3月の稼働率が12.4%だった。例年、人事異動や春先の旅行シーズンで宿泊需要が高まる時期だが、今年は新型コロナウイルスの影響で前年同月に比べ50ポイント以上減った。
市内の主要なホテルでも軒並み40~70ポイント減だった。
愛知は東京、大阪から日帰り圏内にあるうえ、トヨタ自動車をはじめグローバル企業が集積しており、平時でも宿泊需要は出張客の増減に左右されやすい。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、愛知の宿泊施設の稼働率(19年速報値)はビジネスホテルで75.6%とほぼ全国平均並み、シティーホテルは76.9%と平均より2.5ポイントほど低かった。
JR東海が発表した3月の東海道新幹線の乗車人数は、前年同月比で41%だった。東京や大阪など7都府県に続き、全国が政府の緊急事態宣言の対象となり人の往来は一段と細っている。各宿泊施設は4月以降も厳しい数字を見込む。
影響は長期化する可能性がある。インバウンドやリニアへの期待感から愛知では名古屋市内を中心に、200~300室を備えたビジネスホテルの建設が相次いでいる。日本政策投資銀行東海支店によると、愛知県全体ではホテルの客室数が25年に5万室と、東京、大阪、北海道に続き全国4位になる見込み。新型コロナが終息しても、景気次第では客室の余剰感が続くリスクがある。
(細田琢朗)
日本経済新聞 2020/4/20 17:55
ホテル客室単価3割減 稼働率は東阪は2割台で過去最低 英STR調べ ホテル苦境鮮明に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58268360Q0A420C2QM8000/
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内のホテル収益環境が急速に悪化している。3月の平均客室単価は前年同月に比べて3割下がった。稼働率は東京と大阪では20%台まで下落。販売可能な1室あたりの収入も過去最低に落ち込んだ。渡航制限や外出自粛で国内外の宿泊客が急減した。休館が相次ぎ、開業の延期も全国に広がる。倒産も出始めるなど、苦境が鮮明になっている。
画像の拡大
住友不動産は羽田空港に隣接するホテルの開業を今夏に延期した(イメージ画像)
画像の拡大
ホテル専門の英調査会社STRによると、対象とする国内ホテル1125軒の3月の平均客室単価は1万597円。前年同月に比べ28.5%下がった。前月と比べても16.7%安い。単価は2012年3月以来の低さで、下げ幅は1996年1月の調査開始以来、最大となった。
都市別でみると、東京の単価は1万4716円で前年同月比25.9%下落。大阪は1万52円で同30.9%下がった。
3月の稼働率(確報値)は国内全体で32.5%だった。東京は25.5%、大阪は24.4%で、いずれも調査開始以降の最低となった。
前月からの稼働率の落ち込みが急だ。2月は国内全体が64.7%、東京が62.5%、大阪が58.1%だった。19年3月はすべて80%を超えており、需要の減少が鮮明だ。
過去の危機時と比べてもマイナス幅が大きい。リーマン・ショック後に最も下がった09年1月が国内全体で57.1%、東日本大震災直後の11年4月が61.3%で、これらの半分に低下している。
平均客室単価と稼働率がともに落ち込んだため、販売可能な1室あたりの収入「RevPAR」も急減している。3月の国内全体は3444円で、前年同月比で72.6%減少した。東京は3755円で同78.8%減、大阪は2457円で同80.7%減っており、いずれも過去最低だという。
需要の急減で臨時休館や営業を制限するホテルが全国で相次ぐ。森トラスト・ホテルズ&リゾーツはグループが運営する万平ホテル(長野県軽井沢町)など17施設を20日から5月6日まで臨時休業にした。「地域間での感染拡大を抑制する必要性がある」と説明する。今後稼働率の一段の低下は避けられそうにない。
開業の延期も目立つ。住友不動産は21日の予定だったホテルヴィラフォンテーヌプレミア/グランド羽田空港(東京・大田)の開業を今夏に延期。オリックスはJR金沢駅西口で開発中のハイアットセントリック金沢とハイアットハウス金沢について、家具・照明の製作や調達遅れのため開業を6月から9月末までに延ばした。
東京商工リサーチによると、17日までに新型コロナの影響とみられる宿泊業の倒産(準備中含む)は全国で14件。コロナ禍が長引けば今後事例が増えそうだ。(田中浩司)
日本経済新聞 2020/4/10 17:55
ホテル稼働率、過去最低に 3月東阪は3割下回る
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57926390Q0A410C2QM8000/
新型コロナウイルスの感染拡大で国内のホテル稼働率が過去最低になった。3月の稼働率は30.5%と前月の半分程度まで下がった。東京、大阪はともに20%台に低下。リーマン・ショックや東日本大震災の後も60%前後にとどまったのに比べて落ち込みが激しい。渡航制限や外出自粛で内外の宿泊客が急減。休館するホテルが増え、開業延期の動きも広がる。
ホテル専門の英調査会社STRは10日、国内ホテル約1000軒の3月の稼働率(速報値)を公表した。東京は23.5%、大阪は22.8%。いずれも1996年1月の調査開始以降で最低となった。
2月(確報値)は国内全体が64.7%、東京が62.5%、大阪が58.1%。2019年2月はすべて80%を超えており、需要の急減が鮮明だ。
過去の危機時と比べても下げ幅が大きい。リーマン・ショック後に最も下がった09年1月が61.3%、東日本大震災直後の11年4月は57.1%で、これらの半分の水準まで下がっている。
需要急減を受けて休館するホテルも多い。東横インは同日、国内外の一部ホテルを休館すると発表した。政府の緊急事態宣言後、帝国ホテル東京(東京・千代田)などは新規の宿泊予約を制限している。今後も稼働率の低下は続きそうだ。
7月に開幕予定だった東京五輪を前に相次ぐと見込まれていたホテル開業の延期も目立つ。三井不動産は同日、三井ガーデンホテル福岡中洲(福岡市)の開業を延期すると発表した。開業日は今後の情勢を踏まえて決めるとしている。
/////////////////////////////////////////////
テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済