2020-06-25(Thu)
リニア新幹線 コロナ禍がJR東海を直撃 今こそ見直して
* 「より速く」という価値観を求める時代が終わった
* スーパーメガリージョン(巨大都市圏)を形成するという考え方は時代遅れ
* 温室効果ガスを二〇五〇年にゼロにしようという時代に、リニアが許されるのか
中日新聞 2020年6月23日 05時00分 (6月23日 05時03分更新)
リニア 水野和夫・法政大教授に聞く
◆経済成長見込めず不要
----東京−名古屋間を四十分、東京−大阪間を六十七分で結ぶリニア中央新幹線。金利ゼロ時代に成長を追うことに否定的で、資本主義の終焉(しゅうえん)を問うてきた経済学者、水野和夫法政大教授(66)の目に、どう映るのか。新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界的な経済停滞に直面する今、その考えを聞いた。
−リニアの必要性をどう考えるか。
二〇〇〇年代初めに(英仏が共同開発し、〇〇年に墜落事故を起こした)超音速旅客機コンコルドが運航停止となった。「より速く」という価値観を求める時代が終わった象徴だ。リニアにより東京−名古屋−大阪を結び、(人、モノ、金を集めて国全体の成長につなげる)スーパーメガリージョン(巨大都市圏)を形成するという考え方は時代遅れ。人口二百万〜三百万人単位で地域を分散させ、工業や農業、エネルギーも各経済圏で完結、自立させるべきだ。
−新型コロナは大都市での感染が目立った。
米国のスーパーメガリージョンはワシントン−ニューヨーク−ボストン。ニューヨークの新型コロナ被害は深刻だった。二十一世紀になりグローバル化が感染症を拡大している。「より速く」の弊害だ。外出自粛が求められ、テレワークも普及する中で、無駄な出張の見直しも進むだろう。
−「より速く」とは。
利益の追求だ。人より速く得ることが利益獲得の最大の方法になっている。東海道新幹線は既に、「企業戦士」を家畜のように運ぶ使命で、東京という巨大都市をつくった。
中日新聞 2020年6月18日 05時00分 (6月18日 05時03分更新)
リニア着工 元中央環境審議会長、浅野福岡大名誉教授に聞く
◆脱炭素に逆行では
----大井川の流量減少など南アルプスの自然環境への懸念のほか、大量の電力を消費するリニア中央新幹線はどう考えるべきか。環境影響評価(アセスメント)に詳しい元中央環境審議会長、浅野直人・福岡大名誉教授に聞いた。福岡市の自宅とビデオ会議アプリを使って静岡を結び、インタビューした。
−リニアは国家的プロジェクトともいわれる
環境審議会で、リニアのように複数県にまたがる事業に今のアセス法の枠組みで対応できるか、疑問を呈したことがある。アセスの審査は県ごとのため、対応がバラバラになる可能性がある。県によっては見逃す恐れもある。二〇一一年のアセス法改正時に関係県による連合審査が必要でないかと主張したが、法制化は実現しなかった。
−環境アセスを経ても環境に影響が出ることも
予測には限界がある。何か起きたときに対応できる余地を残す、事後調査が必要。事業者は分からないことは「分からない」と正直に言うべきだ。分からないのに工事をして、「壊れたら仕方ありません」というのはおかしい。
−新型コロナがまん延している
一時的に経済活動が収縮し、温室効果ガスの排出量は減る。これで安心し「脱炭素」の動きが鈍ることがが心配だ。コロナで低減したから、環境配慮はゼロでいいとなってしまうのがとても怖い。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを二〇五〇年にゼロにしようという時代に、リニアが許されるのか。風力や太陽光で走らせるというのならいいのかもしれないが…。
朝日新聞デジタル2020年6月16日 5時00分
(声)リニア事業、今こそ見直して 司法書士 小林収(愛知県 75)
----新型コロナウイルスに対峙(たいじ)するために、新しい生活様式の確立が叫ばれるようになった。・・・特に遠距離出張の必要性は激減すると言われている。
・・・社会が急速な人口減少へ向かうなか、ただでさえ採算が危惧されている。工事認可の際にJR東海が示した採算見通しは、経済成長の持続と外国人旅行客の大幅増を当てにしたものだった。東京・名古屋・大阪間の高速移動だけを取りえとする事業に、これまでの間に国民の財産である財政投融資が3兆円つぎ込まれている。もはやJR東海1社の問題ではなくなりつつある。・・・国民全体がコロナ禍をどう克服するかという課題に直面している今こそ、新生活様式に適合した交通体系はどうあるべきかという観点から、リニア新幹線事業の冷静な見直しを希望したい。
Business Journal 2020.06.16 06:00
JR東海の悪夢…東海道新幹線の利用者94%減の一方、リニア建設費3800億円の負担
----JR東海はゴールデンウィーク(GW)期間を含む4月24日~5月6日の東海道新幹線や在来線特急の利用者数が前年同期に比べ94%減ったと発表した。
----「オンラインの会議や商談が普及すると、出張して会いに行かなくても失礼にはならなくなる。ビジネスの常識が変わる」(外資系証券会社のアナリスト)
----東海道新幹線の採算が良く、だから必然的に新幹線1本足打法になった。それだけに運賃収入の落ち込みはJR東海を直撃した。
「JR東海はリニア中央新幹線の投資が重く、JR東日本と比較するとホテルや駅ビル、商業施設を後回しにしてきたツケが回ってきている」(前出と別のアナリスト)
----新型コロナの影響でリニア中央新幹線の建設工事の中断が相次いだ。4月中旬までに東京都と神奈川県の一部で工事を中断したが、山梨県を除く、静岡、長野、岐阜、愛知の各県でも工事中断が相次いだ。
----JR東海は金子社長と川勝知事のトップ会談で打開を目指すが、開業へのハードルは一段と高くなっている。川勝知事は6月10日、県庁で開いた定例会見で、「私の関心は2027年にない」と言い切った。最速で37年とされる大阪延伸も困難になる。
以下参考
中日新聞 2020年6月23日 05時00分 (6月23日 05時03分更新)
リニア 水野和夫・法政大教授に聞く
https://www.chunichi.co.jp/article/76910
◆経済成長見込めず不要
中日新聞 2020年6月18日 05時00分 (6月18日 05時03分更新)
リニア着工 元中央環境審議会長、浅野福岡大名誉教授に聞く
https://www.chunichi.co.jp/article/74593
◆脱炭素に逆行では
朝日新聞デジタル2020年6月16日 5時00分
(声)リニア事業、今こそ見直して
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14513997.html
Business Journal 2020.06.16 06:00
JR東海の悪夢…東海道新幹線の利用者94%減の一方、リニア建設費3800億円の負担
https://biz-journal.jp/2020/06/post_163004.html
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* スーパーメガリージョン(巨大都市圏)を形成するという考え方は時代遅れ
* 温室効果ガスを二〇五〇年にゼロにしようという時代に、リニアが許されるのか
中日新聞 2020年6月23日 05時00分 (6月23日 05時03分更新)
リニア 水野和夫・法政大教授に聞く
◆経済成長見込めず不要
----東京−名古屋間を四十分、東京−大阪間を六十七分で結ぶリニア中央新幹線。金利ゼロ時代に成長を追うことに否定的で、資本主義の終焉(しゅうえん)を問うてきた経済学者、水野和夫法政大教授(66)の目に、どう映るのか。新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界的な経済停滞に直面する今、その考えを聞いた。
−リニアの必要性をどう考えるか。
二〇〇〇年代初めに(英仏が共同開発し、〇〇年に墜落事故を起こした)超音速旅客機コンコルドが運航停止となった。「より速く」という価値観を求める時代が終わった象徴だ。リニアにより東京−名古屋−大阪を結び、(人、モノ、金を集めて国全体の成長につなげる)スーパーメガリージョン(巨大都市圏)を形成するという考え方は時代遅れ。人口二百万〜三百万人単位で地域を分散させ、工業や農業、エネルギーも各経済圏で完結、自立させるべきだ。
−新型コロナは大都市での感染が目立った。
米国のスーパーメガリージョンはワシントン−ニューヨーク−ボストン。ニューヨークの新型コロナ被害は深刻だった。二十一世紀になりグローバル化が感染症を拡大している。「より速く」の弊害だ。外出自粛が求められ、テレワークも普及する中で、無駄な出張の見直しも進むだろう。
−「より速く」とは。
利益の追求だ。人より速く得ることが利益獲得の最大の方法になっている。東海道新幹線は既に、「企業戦士」を家畜のように運ぶ使命で、東京という巨大都市をつくった。
中日新聞 2020年6月18日 05時00分 (6月18日 05時03分更新)
リニア着工 元中央環境審議会長、浅野福岡大名誉教授に聞く
◆脱炭素に逆行では
----大井川の流量減少など南アルプスの自然環境への懸念のほか、大量の電力を消費するリニア中央新幹線はどう考えるべきか。環境影響評価(アセスメント)に詳しい元中央環境審議会長、浅野直人・福岡大名誉教授に聞いた。福岡市の自宅とビデオ会議アプリを使って静岡を結び、インタビューした。
−リニアは国家的プロジェクトともいわれる
環境審議会で、リニアのように複数県にまたがる事業に今のアセス法の枠組みで対応できるか、疑問を呈したことがある。アセスの審査は県ごとのため、対応がバラバラになる可能性がある。県によっては見逃す恐れもある。二〇一一年のアセス法改正時に関係県による連合審査が必要でないかと主張したが、法制化は実現しなかった。
−環境アセスを経ても環境に影響が出ることも
予測には限界がある。何か起きたときに対応できる余地を残す、事後調査が必要。事業者は分からないことは「分からない」と正直に言うべきだ。分からないのに工事をして、「壊れたら仕方ありません」というのはおかしい。
−新型コロナがまん延している
一時的に経済活動が収縮し、温室効果ガスの排出量は減る。これで安心し「脱炭素」の動きが鈍ることがが心配だ。コロナで低減したから、環境配慮はゼロでいいとなってしまうのがとても怖い。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを二〇五〇年にゼロにしようという時代に、リニアが許されるのか。風力や太陽光で走らせるというのならいいのかもしれないが…。
朝日新聞デジタル2020年6月16日 5時00分
(声)リニア事業、今こそ見直して 司法書士 小林収(愛知県 75)
----新型コロナウイルスに対峙(たいじ)するために、新しい生活様式の確立が叫ばれるようになった。・・・特に遠距離出張の必要性は激減すると言われている。
・・・社会が急速な人口減少へ向かうなか、ただでさえ採算が危惧されている。工事認可の際にJR東海が示した採算見通しは、経済成長の持続と外国人旅行客の大幅増を当てにしたものだった。東京・名古屋・大阪間の高速移動だけを取りえとする事業に、これまでの間に国民の財産である財政投融資が3兆円つぎ込まれている。もはやJR東海1社の問題ではなくなりつつある。・・・国民全体がコロナ禍をどう克服するかという課題に直面している今こそ、新生活様式に適合した交通体系はどうあるべきかという観点から、リニア新幹線事業の冷静な見直しを希望したい。
Business Journal 2020.06.16 06:00
JR東海の悪夢…東海道新幹線の利用者94%減の一方、リニア建設費3800億円の負担
----JR東海はゴールデンウィーク(GW)期間を含む4月24日~5月6日の東海道新幹線や在来線特急の利用者数が前年同期に比べ94%減ったと発表した。
----「オンラインの会議や商談が普及すると、出張して会いに行かなくても失礼にはならなくなる。ビジネスの常識が変わる」(外資系証券会社のアナリスト)
----東海道新幹線の採算が良く、だから必然的に新幹線1本足打法になった。それだけに運賃収入の落ち込みはJR東海を直撃した。
「JR東海はリニア中央新幹線の投資が重く、JR東日本と比較するとホテルや駅ビル、商業施設を後回しにしてきたツケが回ってきている」(前出と別のアナリスト)
----新型コロナの影響でリニア中央新幹線の建設工事の中断が相次いだ。4月中旬までに東京都と神奈川県の一部で工事を中断したが、山梨県を除く、静岡、長野、岐阜、愛知の各県でも工事中断が相次いだ。
----JR東海は金子社長と川勝知事のトップ会談で打開を目指すが、開業へのハードルは一段と高くなっている。川勝知事は6月10日、県庁で開いた定例会見で、「私の関心は2027年にない」と言い切った。最速で37年とされる大阪延伸も困難になる。
以下参考
中日新聞 2020年6月23日 05時00分 (6月23日 05時03分更新)
リニア 水野和夫・法政大教授に聞く
https://www.chunichi.co.jp/article/76910
◆経済成長見込めず不要
中日新聞 2020年6月18日 05時00分 (6月18日 05時03分更新)
リニア着工 元中央環境審議会長、浅野福岡大名誉教授に聞く
https://www.chunichi.co.jp/article/74593
◆脱炭素に逆行では
朝日新聞デジタル2020年6月16日 5時00分
(声)リニア事業、今こそ見直して
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14513997.html
Business Journal 2020.06.16 06:00
JR東海の悪夢…東海道新幹線の利用者94%減の一方、リニア建設費3800億円の負担
https://biz-journal.jp/2020/06/post_163004.html
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テーマ : 政治・経済・時事問題
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