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2020-09-28(Mon)

球磨川の悲劇を繰り返さないために なぜ「河川整備計画」未策定

「川辺川ダムなしでは対策に100年かかる」 「やっぱりダム」「どうしてもダム」の路線

ハーバー・ビジネス・オンライン  2020.09.28
球磨川の悲劇を繰り返さないために。なぜ日本の水害対策は「命を守る」視点が欠けているのか?(西島和) (抜粋)

----結論ありきだった「ダムによらない治水」の検討
 2009年1月、「ダムによらない治水対策を追求する」として「ダムによらない治水を検討する場」の第1回会合が開かれました。この会議には、国と県、関係市町村が参加し、「ダムを前提とした計画」にかわる対策について協議されるはずでした。しかし、約1年半にわたり会合を重ねても、国からはいくつかの「直ちに実施する対策」が示されただけで工程表が示されず、第8回会議では流域市町村から次々に抗議の声があがります。

「(直ちに実施とされている対策について)だいたい5年とか、10年とか年数を示していただくことはできないだろうかと思っております」(水上村長)
「実際洪水を受けているところがあって、もう8回もやって(略)どういうものを整備をしなくちゃいかんということをお示しをいただくべきじゃないですか」(球磨村長)「今のような国の、いつまで経ってもですね、いつまでどこまでするか分からないような計画ではですね、我々は住民に対して、説明責任がとれません」(錦町長)
 その後、国から「事務レベルの協議」でスピードアップを図ることが提案され「幹事会」を開催することになるのですが、「事務レベル」でスピードアップするはずの会議は、2年8ヶ月間の間に5回しか開催されず、挙句の果てに、「追加して実施する対策」によっても全国レベルより低い安全度しか実現しない、との見解が示されます。

 2014年4月の第10回会議で、蒲島知事は「現時点で最大の検討が尽くされた」が「全国の直轄河川に比べて低い水準にとどまっている」と発言。2015年2月の第12回会議では「川辺川ダムに代わる対策を見出すことに至りませんでした」として「ダムによらない治水を検討する場」は廃止されます。

 ここまでの議論で、結局「直ちに実施する対策」「追加して実施する対策」がいつまでに完成するのかは示されていません。例えば、地元が強く要望していた上流の人吉(ひとよし)地区の「流す」対策は一部盛り込まれましたが、これが「いつまでに実施されるのか」との住民の問いに、国は「期間を示すことはできない」と突き放しています。

 その後、球磨川の治水をめぐる議論は「球磨川治水対策協議会」へと転換し、「川辺川ダムに代わる対策を見出すことができませんでした」といいつつも「川辺川ダムに代わる対策」が延々と議論され、「川辺川ダムなしでは対策に100年かかる」といったふまじめな「プランB」(代替案)が提示されています。

 本来、河川法にもとづき策定されるべき「河川整備計画」は、30年程度の期間で実施する対策をもりこむことになっていますから、国は2009年以降早急に「30年間で実現できる現実的な対策」を示さなければなりませんでしたが、こうした対策はついぞ示されていません。こうした経過からは、「やっぱりダム」「どうしてもダム」の路線ははじめから既定となっていたようにみえます。

----いずれにしても、10年にわたり「ダムによらない治水を検討するフリをする」会議が行われていた間、球磨川の水害対策につけられていた予算は年間20~30億円程度です。国は、予算の充実をのぞむ自治体首長に対し「公共事業全般非常に(予算が)減ってきている」と弁解していますが、川辺川ダムの事業費は3300億円ともいわれており、文字通り桁違いです。
 ダムについては巨額の予算つけられるのに、「流す」対策への予算の積み増しはされない、むしろダムの建設が始まりダム予算が増大すると「流す」予算は減っていく、というのがこれまでの日本の水害対策の特徴です。重要なのは公共事業予算の総額ではなく、使いみち、優先順位だといえます。

<参考>
ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.04.05
ダム偏重政策が招いた「肱川大水害」。今こそダム建設継続より肱川の河道改修に全力を投じよ(牧田寛)





以下参考

ハーバー・ビジネス・オンライン  2020.09.28
球磨川の悲劇を繰り返さないために。なぜ日本の水害対策は「命を守る」視点が欠けているのか?
https://hbol.jp/229188
西島和

アマゾン
日本の堤防は、なぜ決壊してしまうのか? (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2020/9/4
https://www.amazon.co.jp/dp/4768458858/
西島 和 (著)
近年、全国各地で記録的な大雨による甚大な水害が相次いでいる。2019年10月に東日本台風が襲来した折には、巨大ダムやスーパー堤防が被害を食い止めたという声がネットで飛び交った。果たしてそれは事実なのか? 河川公共事業の住民訴訟に携わってきた著者が丁寧に解説する。 重要なのは、越水しても決壊しない堤防の整備。日本全国の堤防は土を盛っただけの“土まんじゅう"で、安全度も低い。「堤防にソイルセメントをいれて強化する技術は、海外では当たり前なのに、なぜ日本ではほとんど実施されないのか」?等、謎だらけで人命が軽視されている「日本の水害対策」の現状を周知する。
著者について
西島 和(にしじま・いずみ) 弁護士。 八ッ場ダム住民訴訟、成瀬ダム住民訴訟、 スーパー堤防事業差止訴訟にかかわるなかで、 さまざまな専門家から指導を受け、水害対策や日本の 民主主義について深く考えるようになる。 (一社)JELF理事。デジタルハリウッド大学非常勤講師(法律科目)。 2020年4月より立憲民主党政務調査会に勤務。 東京生まれ長崎育ち。 東京都江東区で夫1人、猫1匹と同居中。


朝日新聞デジタル2020年8月18日 21時37分
ダム、必要以上に下流へ放流か 豪雨時に4基で水位低下
https://digital.asahi.com/articles/ASN8L63K2N83UTIL021.html

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ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.04.05
ダム偏重政策が招いた「肱川大水害」。今こそダム建設継続より肱川の河道改修に全力を投じよ
https://hbol.jp/189521
牧田寛


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